第4章 教師による中学生の創造性と不安の認知
第2節 教師による中学生の不安の認知
平成9年8月
② 教師による不安認知と生徒の不安の関係の分析
教師による不安認知得点と第1章第2節で用いた生徒の対自・対他不安 得点の相関を、性別(男・女)、学業成績別(上位・下位)にみることで、
教師がそれぞれの不安をどのような不安として認知しているかを分析する。
③ 検査結果に対する教師の感想の分析
教師に生徒の不安の調査結果を提示し、その感想を聞き取り調査するこ とで、教師の不安認知傾向分析の裏付けを行う。
4−2−2結果と考察
(1)教師による生徒の不安認知得点の状況
教師の不安認知得点の結果を、学年別、男女別に表4−2−1に示す。
表4−2−1教師による生徒の不安認知得点
学年別 男女別 計
1年 2年 3年
男子 女子
N 成績や将来 Mean
に対する不安SD
劣等感 Mean による不安 SD 失敗や評価 Meanに対する不安SD
視線や疎外感Meanによる不安 SD
105 107
0.03 0.03 0.23 0.32 0.04 −0.01 0.28 0.31
−0.02 −0.01 0.40 0.52 0.06 0.06 0.25 0.28
105 0.04
0.210.05 0.24 0.04 0.22
0.040.22
151
0.010.28 0.03 0.28
−0.03
0.38 0.03 0.25
166 0.05 0.24 0.02 0.28 0.05 0.32 0.07 0.24
317 0.03
0.260.02 0.28 0.00 0.40 0.05 0.25
(2)教師による不安認知得点と生徒の相関
教師による生徒の不安認知得点と生徒の対自・対他不安得点の相関係数
を算出したものを、全体(表4−2−2)、男女別(表4−2−3)、学業成績別
(表4−2−4)に示す。(数字は相関係数有意水準**Pく01*Pく05†Pq)
表4−2−2教師による不安認知得点と生徒の対自・対他不安との関係 生徒の不安
教 師 の 認 知
成績や将来 劣等感 失敗や評価視線や疎外感 に対する不安による不安に対する不安による不安 成績や将来
劣等感 失敗や評価 視線や疎外感
0.07
0.23**0.23**
0.08
0.01 0.39**
0.33**
0.12*
一〇.02 0.22**
0.20**
0.08
0.08 0.07
0.14*0.09
表4−2−2の生徒の不安と教師の認知が一致している箇所に注目すると、
教師は生徒の劣等感による不安を最もよくとらえていることがわかる。こ れに対し、成績や将来に対する不安や視線や疎外感による不安は、教師に はとらえにくいことがわかる。これらの不安は、不安原因の対象が未知で あるために起こる不安(図1−2−3)であるため、過去の経験などと結びつ いた劣等感や、失敗や評価の不安に比べて把握できにくいものと思われる。
表4−2−3
教師による不安認知得点と生徒の対自・対他不安との関係(男女別)
生徒の不安
成績や将来 劣等感 失敗や評価視線や疎外感
に対する不安 による不安 に対する不安 による不安
教男 師子
の
成績や将来 劣等感
失敗や評価 視線や疎外感
0.08
0.18*0.17*
0.13
一〇.04 0.38**
0.32**
0.08
0.03 0.13†
0.08 0.05
0.13
−0.03
0.09 0.07 認
知女 子
成績や将来 劣等感
失敗や評価 視線や疎外感
0.05
0.28**0.27**
0,01
0.02
0.43**0.32**
0.12
一〇.08 0.29**
0.30**
0.10
0.00
0.16*0,16*
0.07
78表4−2−3より、教師は、女子に比べ男子の失敗や評価に対する不安をう まく把握できていないといえる。それを裏付けるものとして、教師の感想 の中に、「明るくふるまっていても、不安を感じている子がいることがわ かった(特に男子)。」などの意見が多かった。また、数字には表れてい ないが、感想の中に「女の子の場合、いわゆるおとなしいという形容詞で 紹介されるタイプの生徒に不安が高い。」などがあった。
「不安の高い生徒には、内にこもるタイプと外に出るタイプがあること に気づいた。両者とも、表面的には不安がないようにみえるので、つかみ にくい。」という意見が、この2つの事例を説明していると言える。
表4−2−4
教師による不安認知得点と生徒の対自・対他不安との関係 (学業成績別)生徒の不安
成績や将来に劣等感による失敗や評価に視線や疎外感 対する不安 不安 対する不安 による不安