第4章 教師による中学生の創造性と不安の認知
第3節 教師による中学生の創造性と不安の関係についての認知
4−3−1 目的と方法
(1)目的
中学生の創造性と不安の関係を、教師はどのようにとらえているかを分 析する。また、第1章、第2章で明らかになった生徒の創造性と不安の関 係と、教師のとらえている関係の間に、どのような違いがあるか検討する。
(2)方法
第2章第2節で用いた生徒の各創造的態度得点と、本章第2節で用いた 教師による生徒の不安認知得点の相関を、性別(男・女)、学業成績別(上 位・下位)に比較する。そのことで、教師は、どのような不安が高い生徒 がどのような態度をとると感じているかを分析する。
4−2−2 結果と考察
生徒の創造的態度得点と教師による生徒の不安認知得点の相関係数を、
全体(表4−3−1)、男女別(表4−3−2)、学業成績別(表4−3−3)に示す。
(数字は相関係数 有意水準**p〈.01*p〈.05 †pく.1)
表4−3−1 創造的態度と教師の不安認知得点の各下位項目同士の相関関係 教師が認知した不安
成績や将来に 劣等感 失敗や評価に視線や疎外感 対する不安 による不安 対する不安 による不安 生 独立性
よ 徒 探究性 る の 非同調性 創 自 曖昧性 造 己 誇示性 的 評 執着性 態 価 柔軟性 度 に 得点計
一〇.02
0.00
0.02−0.04
−0.02
0.09
−0.02
0.00
一〇.25**
一〇.13*
一〇.21**
一〇.22**
一〇.22**
一〇.12*
一〇.20**
一〇.29**
一〇.21**
一〇.04
−0.20**
一〇.22**
一〇.19**
一〇.04
−0.14*
一〇.23**
一〇.05 0.01
−0.14*
一〇.07
−0.14*
0.02
−0.04
−0.09 80
表4−3−1から、教師は、劣等感による不安が独立性・非同調性・曖昧性・
誇示性・柔軟性と弱い負の相関があり、失敗や評価に対する不安が独立 性・非同調性・曖昧性と弱い負の相関があると認知していて、他の不安と の関係はあまり認あていないことがわかる。
表4−3−2 創造的態度と教師の不安認知得点の各下位項目同士の相関関係
(男女別)
教師が認知した不安
成績や将来に 劣等感による 失敗や評価に 視線や疎外感 対する不安 不安 対する不安 による不安 生 独立性
徒 探究性
の男能同調性
自 曖昧性
能子誇示性
評 執着性 価 柔軟性
に 合計
0.00
0.060.05
0.01−0.03 0.06 0.03
0.04
一〇.19*
一〇.11
−0.22**
一〇.17*
一〇.19*
一〇.10
−0.13
−0.24**
一〇.16†
0.03
−0.13
−0.16†
一〇.19*
一〇.02
−0.02
−0.14†
一〇.13
−0.05
−0.13
−0.11
−0.27**
0.00 0.00
−0.14†
よ 独立性
る 探究性創女能同調性
造 曖昧性
的子誇示性
態 執着性 度 柔軟性 合計
一〇.03
−0.06
0.00
−0.08
0.00 0.13†
一〇.08
−0.04
一〇.30**
一〇.14†
一〇.20**
一〇.27**
一〇.26**
一〇.14†
一〇.25**
一〇.33**
一〇.26**
一〇.10
−0.26**
一〇.27**
一〇.18*
一〇.08
−0.31**
一〇.32**
0.04
0.07
−0.12
−0.02
−0.01
0.04
−0.09
−0.02
表4−3−2から、男女差を見てみると、男子に比べ女子の方が、劣等感に よる不安や失敗や疎外感による不安と創造的態度との間に負の相関が強 い傾向があるとみている。
下位尺度ごとに見ると、男子の誇示性は視線や疎外感による不安と、女 子の柔軟性は失敗や評価に対する不安と、それぞれ負の相関があるととら えているところに、男女別の特色が見られる。
表4−3−3 創造的態度と教師の不安認知得点の各下位項目同士の相関関係 (学業成績別)
教師が認知した不安
成績や将来に対 劣等感 失敗や評価 視線や疎外感に する不安 による不安 に対する不安 よる不安 生 独立性
徒上探究性
の 非同調性
爵位曖昧性
己 誇示性
評群執着性
価 柔軟性
に 合計
0.00
0.02 0.02 0.00−0.12 0.18*
一〇.07 0.01
一〇.11
−0.17*
一〇.07
−0.13†
一〇.17*
一〇.12
−0.06
−0.18*
一〇。12
−0.04
−0.02
−0.16*
一〇.17*
0.03
−0.04
−0.12
一〇.02
0.00
−0.08
−0.04
−0.13 0.07
−0.05
−0.05
よ 独立性
る下探究性
創 非同調性
造位曖昧性
的 誇示性
憎憎執着性
度 柔軟性 合計
一〇.05
−0.03 0.01
−0.10 0.06 0.01 0.02
−0.03
一〇.28**
一〇.09
−0.28**
一〇.22**
一〇.19*
一〇.05
−0.24**
一〇.30**
一〇、22**
一〇,03
−0.32**
一〇.22**
一〇.12
−0.05
−0.16*
一〇.25**
一〇.04
0.02
−0.18*
一〇.08
−0.11
−0.01 0.01
−0.08
表4−3−3から生徒を学業成績の上位群・下位群に分けてその違いをみる と、教師は、成績下位群の生徒は上位群に比べ、劣等感による不安や失敗 や評価に対する不安が創造的態度と負の相関が強いと認知している。特に、
非同調性と柔軟性においてその傾向が強い。また、成績上位群の生徒は成 績や将来に対する不安が執着性と正の相関の傾向があるとみている。
以上のような結果を、第2章の創造的態度と不安の関係結果とを、照ら し合わせてみると、次のような特徴が見出せる。
実際には創造的態度と不安は負の相関関係があるが、教師はその関係を 実際より小さいものと見ていたり、逆に正の相関があるとみていたりする。
つまり、不安による創造的態度の阻害をやや楽観的に見ていると思われる。
また、創造的態度と不安の関係を各下位尺度同士の関係で見ると、関係 82
の見方が一一面的であることが分かる。さらに、成績別では高成績者、男女 別では男子の不安についての認知が、実際と離れている。
ただ、創造的態度得点は生徒の自己評価によるものであって、教師はそ のような態度としては認知していない可能性もある。
ところで、1〜3章において、視線や疎外感による不安は、非同調性 にはマイナス、柔軟性にはプラスの影響をもたらしており、自尊感情は それらの影響を創造的態度を高める方向にはたらくという結果を得た。
ところが、本章では、これら視線や疎外感による不安、非同調性・柔軟 性のといった態度が、教師によって認知されにくいという結果が出ている。
このことは注目に値すると同時に、教師が学校教育の中で生徒の創造性の 育成を図っていくにあたって、重大な問題を含んでいるといえる。