第 7 章 実証方法の検討と実証データの概要
2 測定変数の定義
ここでは、仮説を実証するための測定変数を設定し、測定変数の記述統計量を述べるこ ととする。構成概念の「技術の不確実性」や「研究開発部門の提案」、「事業部門の提案」、
「トップマネジメントの構造改革意志」、「事業ドメインの拡張」をそれぞれ説明し、構成 概念に扱われる測定変数に対し、平均値と標準偏差を用いて検討する。
2-1 技術の不確実性
技術の不確実性は、技術が高度化することによって増大する。技術の高度化は、企業が 技術の発展に対し、今後技術の発展の余地があるかどうかを判断することで、技術に対す る研究開発投資を行うか否かの判断を行うのである。一方で、現在の技術性能の高度化の 水準で、技術競争の激化程度を測定することができる。これは、業界の認識と自社の認識 によって測ることが可能であると考えられる。したがって、技術の不確実性は、「技術の発 展の見込み」程度、「5年間の技術の発展(業界)」程度、「5年間の技術の発展(自社)」程度 で測ることが可能であろう。
図表 7-1 : 「技術の不確実性」の測定変数
項目 設問文 1 6
技 術 発 展 の 見 込 み
貴 社 の コ ア 技 術(主 力 事 業 の 製 品 の 性 能を左右する技術)の性能は、今後も向 上する見込みがありますか。
こ れ 以 上 の 性 能 向 上 は 見 込 め な い
性 能 の 限 界 に は ま だ 到 達 し て い な い 技 術 の 発 展
可 能 性 の 認 識(業 界)
貴 社 の コ ア 技 術(主 力 事 業 の 製 品 の 性 能を左右する技術)は、この 5年間で、
どの程度性能が高くなりましたか。貴 社の性能と業界全体の性能に分けてお 答え下さい。1
性 能 は 全 く 向 上 し て い な い
性 能 が 大 幅 に 向 上 し た
技 術 の 発 展 可 能 性 の 認 識(自 社)
貴 社 の コ ア 技 術(主 力 事 業 の 製 品 の 性 能を左右する技術)は、この 5年間で、
どの程度性能が高くなりましたか。貴 社の性能と業界全体の性能に分けてお 答え下さい。1
性 能 は 全 く 向 上 し て い な い
性 能 が 大 幅 に 向 上 し た
2-2 研究開発部門の提案
研究開発部門の提案は、研究開発部門で行われる提案の程度を示す。研究開発部門では、
技術の応用の提案を行う。技術の応用に関する提案の程度が高くなれば、新規研究開発テ ーマが占める割合が増加する。一方、技術の応用の提案が高まれば、新規研究開発テーマ に関する選考基準を整備するのである。そして、選考会議の頻度も高まると考えられる。
したがって、研究開発部門の提案は、「技術の応用の提案(近年)」程度、「選考基準の確定(研 究開発)」程度、「選考会義の頻度(研究開発)」程度で測ることが可能であろう。
図表 7-2 : 「研究開発部門の提案」の測定変数
項目 設問文 1 6
技 術 の 応 用 の 提 案 ( 近 年 )
貴社の研究所(事業部門と独立した研究開 発組織)の全ての研究開発テーマのうち、
新 規 研 究 開 発 テ ー マ が 占 め る 割 合 は ど の 程度ですか。直近の年度と 5 年前に分け てお答え下さい。2
全 く な い
新 規 研 究 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト が 30% 以 上 で あ る
選 考 基 準 の 確 定(研 究 開 発)
貴社の研究所(事業部門と独立した研究開 発組織)では、新規研究開発テーマの提案 の基準がどの程度確定していますか。
全 く 確 定 し て い な い
非 常 に 確 定 し て い る
選 考 会 義 の 頻 度(研 究 開 発)
貴社の研究所(事業部門と独立した研究開 発組織)では、新規研究開発テーマの提案 を 選 考 す る 会 議 が ど の 程 度 頻 繁 に 開 か れ ますか。
全 く 開 か れ て い な い
1 ヶ月 1 回会議
が 開 か れ て い る
2-3 事業部門の提案
事業部門の提案は、新事業に関する提案である。新事業に関する提案は、既存の事業ド メインから離れる領域への進出の提案である。既存事業ドメインから離れた領域への進出 の提案は、新しい事業の立ち上げを支援する制度の整備を要する。一方で、事業部門の提 案に関する選考基準を明確に整備することや、選考会議を定期的に頻繁に開くことによっ て新しい事業を育成しようとする行動にある。したがって、事業部門の提案は、「新事業立 ち上げ支援」程度、「事業提案選考基準の明確さ」程度、「選考会義の頻度(事業)」程度、「事 業ドメイン外の市場進出提案(異業種)」程度で測ることが可能であろう。
図表 7-3 : 「事業部門の提案」の測定変数
項目 設問文 1 6
新 事 業 立 ち 上 げ 支 援
貴社では、新規事業の立ち上げを支援する
制度(社 内 ベン チ ャー 制 度、 専 門 家支 援 制
度等)はどの程度整備されていますか。
全 く 整 備 さ れ て い な い
誰でも活用でき るように整備さ れ て い る 事 業 提 案 選 考
基 準 の 明 確 さ
貴社では、新規事業の提案に対する選考基 準がどの程度明確に示されていますか。
全 く 示 さ れ て い な い
非常に明確に示 さ れ て い る 選 考 会 義 の 頻
度 ( 事 業 )
新 規 事 業 の 提 案 を 選 考 す る 会 議 が ど の 程 度頻繁に開かれますか。
全 く 開 か れ て い な い
1ヶ月 1 回会議
が開かれている 事 業 ド メ イ ン
外 の 市 場 進 出 提 案(異 業 種)
貴社では、新規事業の提案がどの程度され ていますか。川上・川下事業・隣接事業・
異業種事業に分けてお答え下さい。3
全 く 提 案 さ れ て い な い4
非 常 に 多 く の 提 案 が あ る
2-4 トップマネジメントの構造改革意志
トップマネジメントの構造改革意志は、構造改革を執行するために行う行動として現れ る。このためには、従業員に企業ビジョンを社内に浸透させなければならない。これは、
既存のビジョンでも、新しいビジョンでも変わらないのである。一方で、トップマネジメ ントは、技術・市場における変化を認識し、変化による企業の衰退可能性について発信す ることが必要である。この行動を通じて、企業内に危機感を与えることになる。 したがっ て、トップマネジメントの構造改革意志は、「トップマネジメントのビジョン共有努力(公 式)」程度、「従業員への危機感付与(技術的)」程度、「従業員への危機感付与(市場的)」程 度で測ることが可能であろう。
図表 7-4 : 「トップマネジメントの構造改革意志」の測定変数
項目 設問文 1 6
トップ マネ ジ メント のビ ジ ョン共 有努 力
( 公 式 )
貴社のトップマネジメントは、従業員と企業ビ ジョン(企業の未来図)を共有するために、公式 的(全従業員が集まる会合等)・非公式的(従業員 との食事会等)制度をどの程度活用しますか。5
全く活用 し な い
非 常 に 積 極 的 に 活 用 し て い る
従 業 員 へ の 危 機 感 付 与 ( 技 術 的 )
貴社のトップマネジメントは、従業員が普段見 逃しているリスクをどの程度指摘しますか。技 術的リスク(代替技術の出現等)と市場的リスク
(需要の減退等)に分けてお答え下さい。6
リスクに ついて全 く指摘し な い
毎 日 の よ う に 指 摘 し て い る
従 業 員 へ の 危 機 感 付 与 ( 市 場 的 )
貴社のトップマネジメントは、従業員が普段見 逃しているリスクをどの程度指摘しますか。技 術的リスク(代替技術の出現等)と市場的リスク
(需要の減退等)に分けてお答え下さい。6
リスクに ついて全 く指摘し な い
毎 日 の よ う に 指 摘 し て い る
2-5 事業ドメインの拡張
事業ドメインの拡張は、物理的・時間的・意味的特性を含めている。物理的 特性は、業 界や地域的に拡張することである。そして、時間的特性は、多角化の可能性を示すもので、
多角化の際に製品や市場に関して、限定しないことを示す。意味的特性は、競合において 既存の競合会社ではない、予測しない領域からの競合が起きる可能性 を認識することであ る。したがって、事業ドメインの拡張は、「多角化における自由度」程度、「競合の多様性 考慮」程度、「地域進出の方針」によって、事業ドメインの拡張を計ることができる。
図表 7-5 : 「事業ドメインの拡張」の測定変数
項目 設問文 1 6
地 域 進 出 の
方 針
貴社の経営戦略では、海外進 出 国 数 を ど の よ う に す る 方 針ですか。最大の競合他社に 比べてお答え下さい。
競 合 他 社 よ り 絞 り 込 む 方 針 で あ る
競 合 他 社 よ り 多 く の 国 に 進 出 す る 方 針 で あ る
多 角 化 に お け る 自 由 度
貴社の経営戦略では、多角化 する場合、製品・市場をどの 程度限定していますか。
限定した製品・市 場 以 外 に は 多 角 化 し な い
限 定 し た 製 品 ・ 市 場 以 外 に も 可 能 性 が あ れ ば 多 角 化 す る 競 合 の 多 様 性
の 考 慮 程 度
貴 社 の 経 営 戦 略 上 の 競 合 他 社は、どのように想定されて いますか。
既 存 の 競 合 他 社 の み を 想 定 し て
い る
異 な る 産 業 の 他 社 も 想 定 し て い る