第 8 章 実証結果
1 実証における統計学的指標
GFIの欠点を修正し、パラメータが多く複雑なモデルにペナルティを加える。同一 のGFI を与え、二つのモデルを比較した場合に、自由度の大きいモデルの値が大きくなる。つま り、GFI と AGFI の間には 1.0≧GFI≧AGFI≧0 という関係があり、1.0 に近いほど適合 度が高い。
比較適合度指標CFI(Comparative Fit Index)は、独立モデルと比較してモデルの分布と 真の分布の乖離を評価する指標であり、その範囲が 0.0 から 1.0 の範囲に収まるように定 義されており、一般的に0.9以上1.00に近いほど良いモデルと判断する。
RMSEAは、構造方程式モデルに特化して、モデルの分布と真の分布との乖離を 1自由
度あたりの量として表現した指標である。数値が 0.05以下であれば当てはまりが良いモデ ルと判断する。一方、0.1以上であれば当てはまりが悪いと判断する。
1-2 信頼性指標
Cronbach’s alphaは、信頼性指標であり、0から1までの値で表現される(Gliem & Gliem,
2003 : p.87)。一般的に0.7以上であれば、変数における信頼性があると判断できる。0.6
以上の値においては、信頼性が高いと判断されないが、分析可能なものとしてみることが できる。また、0.5以上の数値であれば、比較的に信頼性が低い。0.5未満の数値は、信頼 されないレベルである。
図表 8-1 : 信頼性指標の数値と評価
Cronbach's alpha 信頼性
0.9 ≦ α Excellent (High-Stakes testing) 0.7 ≦ α < 0.9 Good (Low-Stakes testing) 0.6 ≦ α < 0.7 Acceptable
0.5 ≦ α < 0.6 Poor
α < 0.5 Unacceptable
出所 : Gliem & Gliem(2003 : p.87)
基準において、本研究で用いられた値を分析すると、次のようになる。技術の 不確実性、
事業部門の提案、トップマネジメントの構造改革意志は、0.7 以上であり、一定の信頼性 を有すると判断できる。なお、研究開発部門の提案や、事業ドメインの拡張においては、
信頼性が低いものとされる。
図表 8-2 : モデルの信頼度
変 数 値 判定
技 術 の 不 確 実 性 0.879 Good 研 究 開 発 部 門 の 提 案 0.585 Poor 事 業 部 門 の 提 案 0.842 Good ト ッ プ マ ネ ジ メ ン ト の 構 造 改 革 意 志 0.710 Good 事 業 ド メ イ ン の 拡 張 0.575 Poor
出所 : 著者作成
研究開発部門の提案の程度において、事業ドメイン外の新しい事業ドメインの形成に影 響する測定項目として、「技術の応用の提案(近年)」、「選考基準の確定(研究開発)」、「選考 会義の頻度(研究開発)」を使用しており、技術用途の転用の提案は、既存の選考基準に当 てはまらないことが多いことを示唆する。選考会議の頻度においても、技術の応用に対す る提案と既存技術の性能向上の提案の割合の問題であり、頻度に多く影響されないのであ ろう。一方で、事業ドメインの拡張に対しても、信頼度が低いものとされる。事業ドメイ ンの拡張の測定項目は、物理的・時間的・意味的な拡張に対し、個別の質問項目を採用し ており、3つの軸が同時に広がることが的確に測定されているとは言い切れない。そして、
信頼度が低い項目に関しては、サンプルの数が少ないこ とによる影響があると考えられる。
なお、研究開発部門の提案と事業ドメインの拡張に対する信頼度は低いものの、棄却され るほどではない。
1-3 欠損値の推定(最尤法の採用)
本研究では、欠損値がやや多いため、AMOS(AMOS 22)の「平均値と切片の推定」を行 っており、この意義について検討する。IBM(1983, 2013 : p.249)によれば、一般的な欠損
値の処理には、三つの方法がある。一つ目は、データの一部に欠損値がある測定値を分析 から除外することである(サンプルごと除外)。二つ目は、各標本積率を個別に計算し、特 定の積率の計算に必要な値が欠損している場合にのみ観測値を計算から除外することであ る(ペアごと除外)。三つ目は、データを代入することである。三つのデータの除外におい ては、問題が指摘されている1ため、AMOS では、これらの方法ではなく、最尤法による 推定値を計算する(IBM, 1983, 2013 : p.250)。最尤法は、確率的な分布を用いて、ランダ ムに欠損が生じたこととして分析する方法である。この方法によれば、ランダムに欠損し たという条件が満たされる場合において、堅実な推定値が得られる。したがって、本研究 の実証結果においては、一部の限定(欠損データが完全にランダムに欠損していると仮定) が存在する。