• 検索結果がありません。

企業再生のための努力

ドキュメント内 技術用途の不確実性と企業の戦略行動 (ページ 68-71)

第 3 章 不確実性の増大に対応するための企業改革

2 企業再生のための努力

企業が収益基盤を持ち続けるためには、中核技術を持続的に研究開発し続けることが必 要である。しかし、持続的に既存事業に集中すること が、慣性を生み出すため、新しい変 化に対応できなくなることも指摘されている(Burgelman et al., 2004 : 邦訳pp.305-306)。

逆に、環境変化に対応できなくなる原因が特定できれば、対策を見出すこともできる。第 2節では、企業が変化に対応できなくなるプロセスについて整理すること にする。

2-1 Burgelman et al.の企業の慣性と衰退

Burgelman et al.(2004 : 邦訳pp.305-306)によれば、企業の成功は、慣性を生み、次な

る成長を阻害するという。企業は環境に適応することにより、市場での生き残りに成功す

る。企業は成功を基盤にし、成長する。成功した企業は、期間が経過するに連れ、規模が 大きくなる。規模が拡大する間に、組織の構造的・文化的な慣性が生じる 。慣性は、外部 環境が安定していれば成功し続けるが、外部環境の変化が現れた時には、組織の環境適応 を阻害する。Burgelman et al.(2004)は 、これ を成功シンドロー ムと 名付けている(図表 3-11)。

図表 3-11 : 成功シンドローム

出所 : Burgelman et al.(2004 : 邦訳pp.306)により著者加筆

成功シンドロームは、企業が成功を収めた後、成功自体がその後の成長に対して阻害要 因になることを表している。特に、阻害が発生する要因が慣性であることを強調している。

慣性は、構造的な理由と文化的な理由によって企業内部で発生する。 企業は成功するにつ れ、増大する仕事の複雑さを処理するために枠組みやシステムを発達させる。枠組みやシ ステムは、互いに結び付けているため、時間の経過と伴い変更を実施することが難しくな る。これが構造的な慣性である。文化的な慣性は、企業が成功を重ねる際に、規範、価値 観、知識が制度化されて組織内に定着したものである。構造的・文化的な 慣性は、比較的 に安定した環境の中で企業の成功に欠かせない要因である。しかし、不連続的に環境が変 化する場合には、慣性が変革の阻害要因になる。 阻害により、企業は、衰退プロセスから 出ることができなくなる。

2-2 Collinsの企業衰退プロセス

企業の衰退のプロセスに関して、Collins(2009 : 邦訳pp.47-51)は次のように述べている。

企業の衰退は、企業が成功に対して傲慢な姿勢を持ち、成功要因に対する学習を行わない ことから始まる(第 1 段階)。そして、企業が成功し続けられると認識すると共に、強みを 生かすことができない市場に進出するようになる。この進出は、規律なき拡大と呼ばれる。

拡大により、適切な人材配置ができなくなる一方、官僚制が企業内で定着 してしまう(第 2 段階)。このような状況が積み重なるにも関わらず、企業内部では問題が外部要因による一

時的なものであると、問題を軽視してしまう(第 3 段階)。しかし、問題は時間の経過と共 に大きくなり、企業経営に支障を起こす。これに対して、救世主のような指導者が現れる ことを期待しながら、リストラを繰り返すようになる(第 4 段階)。しかし、これらのリス トラ施策が失敗することによって、財務力や希望を失い、転落してしまう(第5段階)。

図表 3-12 : 衰退の 5段階

出所:Collins(2009 : 邦訳p.48)

このように、企業は、成功シンドローム(Burgelman et al., 2004)のような、成功プロセ スによる構造的・文化的な阻害に加え、成功・環境変化に対する誤認識によって、衰退し てしまうのである。

2-3 Weitzel & Jonssonの企業衰退に対する対処

Weitzel & Jonsson(1989, pp.97-107)は、企業衰退のプロセスでを五つの段階で整理し、

問題を指摘している。第1の盲目的段階では、組織内部で衰退が起こる初期症状が現れる。

この際に、衰退のシグナルを見逃してしまうことが問題である。第2の非活動的段階では、

業績や成果が悪化しているにも関わらず、対処行動を 取らないことが問題である。第3の 誤った行動段階は、有効性が必要な状況にも関わらず能率を中心にした行動をとることが 問題である。これらの問題解決が可能な期間が過ぎてしまうと企業は回復できなくなる。

そして、第4の危機段階で問題の解決に失敗し、危機に直面し、第5の死滅段階で完全に 衰退してしまうのである。Weitzel & Jonsson(1989)によれば、企業組織が衰退段階である ことを認識し、その対応策を実施することで持続的な経営を確保することが可能になると

いう。企業再生が可能であるとすれば、各段階での望ましい行動は次のようになる。第 1 段階では、現状を正確に認識するための情報を収集することである。第 2段階では、とに もかくにも迅速に行動することである。第 3段階では、問題解決のために正しい行動を選 択することである。第4段階では、組織を効果的に再編成することである。このような行 動をとることによって、企業における危機感を認識し、対処することができる。第5段階 に至っては、企業は対処のしようがない。

図表 3-13 : 衰退のプロセス

出所 : Weitzel & Jonsson(1989 : p.102)に基づいて槇谷(2012 : p.25)が作成

しかし、企業組織が衰退段階にあるが故に、企業が対応できない場合もある。対応を妨 げる要因は、慣性(Burgelman et al., 2004 : 邦訳pp.306)である。事業遂行の効率性を目 指すことによって生じた慣性の壁である。慣性による阻害は、安定した大規模組織に存在 するため、これと別の組織で環境変化に対応することが求められる。企業が衰退を避ける ために新しい事業を立ち上げる時、或いは新しい取り組みを行う際には、組織レベルで区 別することが必要となる。そして、組織レベルの区別を行うと同時に組織自体に柔軟性を 持たせること、意思決定のスピードを迅速にし、組織が挑戦的な試みを行うことが重要で ある。さらに、組織全体の目標を明確にしなければならないが、企業組織の目標を規定す る要因として、事業ドメインを取り上げることにする。

ドキュメント内 技術用途の不確実性と企業の戦略行動 (ページ 68-71)