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5.2 深刻度が低い場面の返信メールの構造の分析結果と考察 .1 メール全体の構造 .1 メール全体の構造

5.2.7 深刻度が低い場面の返信メールのまとめ

(1)メール全体の構造

深刻度が低い場面の返信メールの意味公式は、[件名][宛名][開始の挨拶][名乗り]

[感謝表明][メール受信の報告][キャンセル報告の了解][キャンセル報告への反 応][謝罪の受け入れ][状況の受け入れ][キャンセル理由への言及][気遣い表明]

[応援表明][残念な気持ちの表明][キャンセルに対する対応の言及][別の機会で の対面の期待][参加できる人への伝言][参加可能の期待][共有事項への言及]

[終了の挨拶][署名]の 21 種に分類できた。

21 種の中で半数以上出現している意味公式の数は、目下の場合は 6 種で、対等の場合は 5 種 である。目下へのメールには〈[件名]→[宛名]→[残念な気持ちの表明]→[キャン セルに対する対応の言及]→[別の機会での対面の期待]→[署名]〉という 6 種の出現 順序が最も多かった。一方、対等へのメールには〈[件名]→[キャンセル報告への反応]

→[残念な気持ちの表明]→[キャンセルに対する対応の言及]→[別の機会での対面 の期待]〉という 5 種の出現順序が最も多かった。この出現順序の中で、目下と対等のいず れにも用いられている意味公式は、[件名][残念な気持ちの表明][キャンセルに対

180 する対応の言及][別の機会での対面の期待]であるため、全 21 種の意味公式の中で、

全 20 例のうちの半数以上のメールに出現している意味公式は、[件名][宛名][キャ ンセル報告への反応][残念な気持ちの表明][キャンセルに対する対応の言及][別 の機会での対面の期待][署名]の 7 種となる。これらの 7 種の意味公式は深刻度が低 い場面の返信メールの構造として重要な要素で、返信メールを書く際に書くべきものだ と考えられる。意味公式をこのような出現順序で組み合わせることにより、まとまった 1 つの返信メールが成り立つ。今回のデータでは、このようなパターンを深刻度が低い 場面の返信メールの典型的な構造とみなすことにする。

(2)件名

メールの件名は深刻度が高い場面と同様に調査協力者が全員「Re:ゼミの食事会の件」

「Re:来週のお食事会について」や「Re:ごめんなさい」などのように、新しく件名をつ けずに、受け取ったままの件名で相手からのメールに返信している。このような件名の つけ方はメールを受け取った側が約束をキャンセルするという話題を続けるために、わ ざと新しく件名をつけずに、受け取ったままの件名で返信するという意図を持って行な ったのではないかと考えられる。

(3)メールの【開始部】の構造と意味公式

メールの開始部の意味公式は[宛名][開始の挨拶][名乗り][感謝表明][メール 受信の報告]の 5 種が見られたが、出現率が半数以上であった意味公式は、[宛名]のみで ある。[宛名]は全ての目下へのメールに出現しているが、対等の場合は 45.0%しか出 現していない。このことから、受け取ったメールに返信する際に、相手が目下の場合で あっても[宛名]としてまず相手の名前を書くのは、指導教員と学生のメールのやりと りがフォーマルな場面であるからだと考えられる。

また、目下の場合は[宛名]を書いてから[開始の挨拶]のみ書いている例が 1 例、

[宛名]を書いてから[名乗り]のみ書いている例が 3 例、[宛名]を書いてから[感 謝表明]のみ書いている例が 2 例、[宛名]を書いてから[メール受信の報告]のみ書 いている例が 3 例あった。そして、[宛名]を書いてから[名乗り]と[感謝表明]を 書いている人が 1 例あった。一方、対等の場合は[宛名]を書いてから[開始の挨拶]

のみ書いている例が 2 例、[宛名]を書いてから[開始の挨拶]と「感謝表明」を書い

181 ている例が 1 例あったが、[名乗り]と[メール受信の報告]を書いている例は 1 例も なかった。

(4)メールの【主要部】の構造と意味公式

メールの主要部の意味公式として[キャンセル報告の了解][キャンセル報告への反 応][謝罪の受け入れ][状況の受け入れ][キャンセル理由への言及][気遣い表明]

[応援表明][残念な気持ちの表明][キャンセルに対する対応の言及][別の機会で の対面の期待][参加できる人への伝言][参加可能の期待][共有事項への言及]の 13 種が見られた。この中で目下へのメールの 50.0%以上のメールに出現しているのは、

[残念な気持ちの表明][キャンセルに対する対応の言及][別の機会での対面の期待]

の 3 種であるが、対等の場合は[キャンセル報告への反応][残念な気持ちの表明]

[キャンセルに対する対応の言及][別の機会での対面の期待]の 4 種である。これら の意味公式は、深刻度が低い場面の返信メールの重要な内容だと考えられる。

[キャンセル報告への反応]は相手からの約束キャンセルに対する反応を表すもので ある。対等へのメールには 13 例(65.0%)出現しているが、目下へのメールには 1 例

(5.0%)しか出現していない。対等の場合は「そうなんだー」や「そうか、」という ように、相手からの約束キャンセルの報告に対してがっかりや驚きなどというような気 持ちを伝達する表現と、「そうなんだ(>_<) 来れないのか〜」や「そうなの?」などと いうように、相手のキャンセル報告を確認する表現が出現している。一方、目下の場合 の 1 例で「参加できないのですか。」というように、相手のキャンセル報告を確認する 表現が使用されている。これらの表現を用いることで、メール返信者は相手が約束をキ ャンセルしたいという情報を受け取ることになり、相手のキャンセル理由を納得してい るが、その情報は意外なので多少がっかりや驚きなどの気持ちも含まれているのではな いかと考えられる。

[残念な気持ちの表明]は約束をキャンセルした相手との食事会を楽しみにしていた が、相手が参加できなくなったために生じる残念な気持ちや寂しい気持ちを表すもので ある。[残念な気持ちの表明]は、残念なのは参加できなくなった相手だけでなく、メ ール返信者自身も残念であることを伝えるために出現していると考えられる。目下の場 合の[残念な気持ちの表明]の言語形式としては、メール返信者が全員「残念ですが、」

や「食事会は残念ですが、」などの「残念」という言葉を用いて残念な気持ちを伝えて いる。「残念ですが、」の「~が、~」のような表現は、その文はまだ終わっておらず、

182 メール返信者が「残念ですが、」の後に別のことを伝えたいということになる。また、

「食事会に参加できないとのこと、残念ですね。」や「それは残念ですね。」というよ うに、「残念です+ね」のような表現を使用している例もあった。このように、「残念」

の表現に「ね」という終助詞をつけると、メール返信者は相手が食事会に参加できなく なったことを本当に残念に思っており、相手に暖かい気持ちや感じのよい気持ちを伝達 していることになる。一方、対等の場合は目下の場合と異なり、「残念」という言葉を 用いて残念な気持ちを伝えている人は全員ではなかった。「残念」以外に「最後のゼミ の食事会に来てもらえないのは寂しいけど」というような「寂しい」の言葉を使用して いる人と、「△△くんの面白い話聞けるの期待してたけど、それはまた今度の食事会の楽 しみにしとくわ(笑)」というように、相手が今回来ていれば楽しく過ごせただろうとい う期待を表現している例があった。

[キャンセルに対する対応の言及]は幹事や店の人などの関係者へのキャンセルにつ いての連絡の報告やお願いをしたり、店の予約変更やキャンセル料の支払などについて 述べたりする、キャンセルに対する対応について言及する意味公式である。キャンセル する相手は約束をキャンセルする前に、幹事や店の人などの関係者に予約が変更できる かどうか、キャンセル料が発生するかどうかを聞いてキャンセルに対する対応を行うこ とが多いと考えられる。キャンセルする側がそのような対応を行ったため、メール返信 者も相手にキャンセルしてもいいと安心させるために、[キャンセルに対する対応の言 及]を使用していると考えられる。キャンセルに対する対応の内容を観察すると、目下 の場合は「△△さんへの連絡、よろしくお願いします。」や「それでは幹事への連絡お 願いします。」などというように、自分で幹事や店に参加できなくなった旨を伝えてお いてもらうよう依頼している例が最も多かったことがわかった。一方、対等の場合は

「一応お店の方に、キャンセル料はどの時点で、いくら発生するのか確認しておきます。

来られない場合は私が立て替えておくので、次に学校で会ったときにもらえるかな?」

や「変更は可能やけど、キャンセル料で 1,000 円かかる!!だから、1,000 円お願いし ます 」などというように、キャンセル料についてはっきり言及している例が最も多か った。

[別の機会での対面の期待]は相手が今回の食事会には参加できなくなったが、食事 会を行う機会が今後もあるので、次回はこのような食事会があれば是非誘う、是非参加 してほしいという期待を表す意味公式である。友達同士の場合はゼミの食事会だけでな く、個人で会える別の機会でも作りたいというような気持ちを表すものにもなる。相手