の 1 例
外傷性胸部大動脈損傷に対する 2 治験例
名古屋市立東部医療センター 心臓血管外科
○小川 辰士,須田 久雄,齊木 真郎,中井 洋佑 宮田 洋佑
【はじめに】動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は低侵 襲であり, その施行件数は増加の一途をたどっている.し かしステントグラフト内挿術に特有の合併症もあり, その 一つに非常に稀ではあるが, ステントグラフトの挿入が原 因としか考えられないような術後の心機能低下を経験する ことが報告されている.今回われわれはStanford B型大動 脈解離に対するTEVAR後に心機能低下を認めた症例を経 験したため, 若干の文献的考察を加えて報告する.【症例】
67歳女性.Marfan症候群の診断で当科通院中であり, 61 歳時にバルサルバ洞拡張に対してBentall手術の既往を認 めた.平成2X年3月にStanford B型大動脈解離を発症.
保存的に加療を行ったが短期間で経時的に偽腔が拡大した ため, 発症1か月後に下行大動脈に存在したentry閉鎖目
的にTEVARを施行した.術後経過良好で, 2か月後に外
来で施行したCT検査では偽腔の血流は完全に消失し, 下 行大動脈径は解離発症前と同レベルまで縮小した.しかし 日常生活での呼吸苦を訴えられ,入院時85.1pg/mlであっ たBNPが2000pg/mlを 超 え る ま で 上 昇. 解 離 発 症 時 の
UCGではEF 55%で局所的な壁運動低下も認めなかった
が, 8月に施行したUCGではEF 28%と著明な駆出率の低 下, 左房径の拡大(37⇒45mm)を認めた.Bentall術後より 慢性心房細動や三尖弁逆流症は認めていたものの,冠動脈 CTで冠動脈に有意狭窄などなく, ステントグラフトを内 挿した以外に心機能低下を来すような要因は考えられなか った.本症例は術前に血圧脈波検査を施行していなかった が,術後施行した同検査ではCAVIが11.2(R), 11.5(L)と 上昇しており, 血管スティフネス上昇が心機能低下に関与 している可能性が示唆された. 【考察】ステントグラフト 内挿術後の合併症として, 術後に心機能が低下する例は非 常に稀である.しかし, 血管スティフネスの上昇に伴って,
左室肥大や拡張機能障害(左房拡大)を来すことが報告され
ており, これがステントグラフト内挿術後の心不全発症に
関与していることが推測された.
P27-7
Stanford B
型大動脈解離に対する
TEVAR後に心機能 低下を認めた
1例
大隅鹿屋病院 心臓血管外科
○高橋 巴久,中山 義博,田中 秀弥,佐藤 久
【はじめに】腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療が 主流となりつつある今日であるが,傍腎動脈腹部大動脈瘤 に対しては,いまだ開腹手術が基本であり,中枢側大動脈 遮断部位,腎保護など,術式および周術期管理に工夫を要 する.当科においてステントグラフト治療導入後の4年3 カ月の間に施行した,傍腎動脈腹部大動脈瘤手術症例につ いて検討した.【症例】2010年7月から2014年10月まで に当科で施行した腹部大動脈瘤手術155例中,傍腎動脈腹 部大動脈瘤の9例を検討した.男性7例,女性2例,平均 年齢は73.2±7.4歳(61〜83歳).瘤径平均は6.5cm(5.5〜
9.5cm).破裂性腹部大動脈瘤に対する緊急手術症例は3例.
術前合併症は,虚血性心疾患5例,高血圧症8例,糖尿病 4例,大動脈炎1例,閉塞性動脈硬化症1例であり,腎機 能低下例(血清Cr値 1.5mg/dl以上)は3例であった.【手術】
8例で開腹・正中切開アプローチでYグラフト置換術を施 行し,そのうち2例が両側腎動脈上,4例が片側腎動脈上 で中枢側大動脈遮断を行った.腎動脈再建を行ったのは3 例で,乳酸リンゲル液で腎動脈灌流を行い,再建法は腎動 脈直接吻合,自家静脈グラフト間置,人工血管間置が各1 例であった.1例でステントグラフト内挿術を施行し,腎 動脈にcovered stentを留置するchimney手技を行った.開 腹手術例のうち,術後の下肢血流障害が3例あり,2例で Yグラフト脚ー大腿動脈バイパス追加,1例で血栓除去術 の追加を要した.【結果】平均手術時間は240分(119〜423 分)であった.手術死亡は1例(破裂症例)で,術翌日に多 臓器不全で死亡した.術後合併症として,術後腎機能障害 が4例(透析導入2例),長期人工呼吸器管理が3例,下肢 動脈閉塞による下肢切断が1例,グラフト感染1例,胆管 炎1例であった.待機手術症例においては,腎機能は術前 Cre 0.93±0.24mg/dlから術後Cre 1.33±0.42mg/dlまで上昇 がみられたが,透析を要することなく改善し,全例が独歩 退院した.【まとめ】非破裂・待機手術症例では,傍腎動脈 腹部大動脈瘤症例であっても,術式の工夫により,腎機能
P28-1
ステントグラフト時代における傍腎動脈腹部大動脈瘤 手術例の検討
山形大学 外科学第二
○山下 淳,内田 徹郎,五味 聖吾,浜崎 安純 黒田 吉則,水本 雅弘,林 潤,廣岡 秀人 安本 匠,船田 敏子,高橋 愛,貞弘 光章
【はじめに】胸部大動脈瘤に対する低侵襲な治療として胸部 大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)は現在,一般的 な治療として確立されてきた.さらに,最近は大動脈解離 等の症例に対しても適応が拡大されつつある.当院でも 2008年12月以降,胸部大動脈瘤に対してTEVARを導入し,
以後適応を拡大しつつある.今回,我々は胸部大動脈壁に 関連する病態に,TEVARを行い,意図的に胸部大動脈を カバーすることにより,加療が出来た症例を2例経験した ので報告する.【症例1 】65歳,女性.胸腰椎圧迫骨折に よる後湾のため前後方合併矯正術が施行され,screw挿入 された.術後のCTにてT9のscrew逸脱を認め,下行大 動脈壁に迷入している所見であったために,当科にコンサ ルトとなった.screwの単純除去のみでは出血の危険性が あったために,TEVAR後にscrewを抜去の方針とし,Th9 レベルにGore Excluder aorta extender (PXA280300)を3本 留置し,Th9のscrewを入れ替え,トラブルなく,手術終 了した.術後,特に問題なく経過し,退院となった.【症 例2】66歳,男性.胸部食道癌に対してFP併用陽子線治 療を施行された.食道癌【Mt-CRT type3 cT4(Aorta)N0M0 cStage III】にて手術目的に当院外科に紹介となり,下行大 動脈に浸潤している所見であったために,当科にコンサル トとなった.大動脈壁合併切除の必要性あり,Th9−10に TEVAR(Gore TAG TGU28210J)を行い,1週後に食道癌に 対する手術を行った.左側臥位,第4肋間開胸にて腫瘍に 到達したところ,腫瘍は予想通りに下行大動脈と強固に癒 着しており,浸潤しているもの思われた.右開胸にて今後 の手技が困難にて,右側臥位,左第5肋間開胸に変更し,
大動脈合併切除を施行した.その後,ヘマシールドパッチ にて切除部位を補強し,食道全摘,胸骨後経路頸部食道胃 管吻合術および胃管ろう増設術を施行し,手術終了した.
術後,特に問題なく経過し,退院となった.【結語】椎骨 固 定 のscrew逸 脱 お よ び 食 道 癌 の 大 動 脈 浸 潤 に 対 し て
TEVARを施行することにより,補助循環を使用すること
P27-9
Intentional covered descending aorta with TEVAR
の
2症例
獨協医科大学 心臓・血管外科
○桑田 俊之,福田 宏嗣,山田 靖之,柴崎 郁子 緒方 孝治,堀 貴行,土屋 豪,小川 博永 武井 祐介,加藤 昂
【はじめに】傍腎動脈腹部大動脈瘤(JRAA)に対しても血管 内治療が普及しつつあるが,その長期成績は不明であり,
当院においてはopen repairの方針としている.しかし諸 家の報告によると通常の腎動脈下腹部大動脈瘤に比べ JRAAに対する手術リスクは高く,術後の腎障害も問題に なることがあるとされている.そこで,当科でのJRAAに 対する治療成績をretrospectiveに検討した.【対象】2006年 4月から2014年10月末までに当科で施行した待機的腹部 大動脈瘤手術は117例で,そのうち腎動脈上腹部大動脈遮 断を要した23例(平均 74.0±8.6歳 男18例 女5例)を 対象とした.全症例の術前後の推算糸球体濾過量(eGFR)
を随時測定した.また,中枢遮断部位を片側腎動脈上とし たものをA群,両側腎動脈上としたものをB群とし,術 前eGFR値から術後最低eGFR値への低下率および,術前 eGFR値から術後14日目のeGFR値への低下率を比較検討 した.【結果】平均手術時間は351.8分.中枢遮断部位は片 側腎動脈上が12例,両側腎動脈上が11例で平均腎動脈遮 断時間は52.8分であった.両側腎動脈再建を1例,片側 の腎動脈再建を4例に施行した.術中,腎保護として17 例(74%)に腎動脈へ冷却リンゲル液の灌流を行った.手術 死亡や在院死亡はなし.術後合併症としてはイレウス 2 例,肺炎 1例,尿路感染1例,創部感染 1例を認めたが,
術後透析治療を要したものはなかった.術後の腎機能の推 移をみると,全症例での術後最低eGFRへの低下率は26.0
±20.1%であった.群別ではA群19.4±15.6%,B群33.1
±22.9% とB群において有意差はないものの(p=0.12),
腎機能の低下率が大きい傾向にあった.また,術後14日 のeGFR低 下 率 は 全 体 で1.16%±24.6%(A群−4.4±29.2
% B群 7.3±17.7%)となり,両群ともほぼ術前の腎機能に 回復した.【結論】当科におけるJRAAに対する手術加療の 成績は良好であった.ただし,両側腎動脈遮断例では透析 加療を要しないまでも一過性に腎機能が著しく悪化する症 例があり,厳重な術後管理が肝要と思われた.
P28-3
当科における傍腎動脈腹部大動脈瘤の手術成績と術 後腎機能についての考察
京都大学 心臓血管外科
○阪口 仁寿,山崎 和裕,南方 謙二,坂本 和久 瀧本 真也,平尾 慎吾,熊谷 基之,西尾 博臣 渡辺謙太郎,小泉 滋樹,中田 朋宏,池田 義 坂田 隆造
【背景と目的】腹部大動脈瘤治療におけるステントグラフト 内挿術(EVAR)の普及と進歩に伴い,手術適応となる症例 のうち解剖学的に複雑な症例の比率が高まってきている.
腎動脈再建を要しない傍腎動脈型腹部大動脈瘤に対する手 術は,アプローチの方法,大動脈遮断部位,臓器保護など 腎動脈下腹部大動脈瘤と比較し難易度や危険性が高い.腎 動脈上単純遮断を要する腹部大動脈瘤の術後腎機能と短期 成績について検討した.【対象】2011年4月から2014年3 月までの3年間に当科で経験した腹部大動脈瘤の症例数は 175例で,EVAR 33例で,開腹手術は142例だった.腎動 脈上単純遮断による人工血管置換術は23例で,術前から 維持透析だった1例を除く22例について検討した.【結果】
平均年齢は70.9歳で,男性は20人,女性2人だった.全 例喫煙歴があった.腹部大動脈瘤の最大径は平均57.0mm だった.両側腎動脈上で遮断した症例は7例,左右RA間 で遮断した症例は15例だった.平均手術時間=296.5分,
大動脈遮断=82.8分だった.血清Cre値は術前0.93mg/dl で,最大1.56 mg/dlに上昇したが,退院時は1.12 mg/dlだ った.平均在院日数は11.6日だった.早期死亡は1例で 死因は下肢虚血にともなう多臓器不全だった.術後透析を 要した症例は早期死亡の1例のみだった.【結語】腎動脈上 単純遮断によっても術後腎機能の悪化は一過性で,合併症 の発生は少なかった.術後腎機能障害の因子として術前 Cre値,及びeGFRが挙がったが,多変量解析では因子と ならなかった.
P28-2
腎動脈上単純遮断を要した腹部大動脈瘤手術症例の 検討
神戸市立医療センター中央市民病院 心臓血管外科
○小西 康信,西矢 健太,左近 慶人,中村 健 福永 直人,松尾 武彦,佐地 嘉章,小山 忠明