の 1 例
切迫破裂で発見された炎症性胸腹部大動脈瘤の 1 手術 治験例
米沢市立病院 心臓血管外科1
福島県立医科大学 医学部 心臓血管外科2
○佐藤 洋一1,佐戸川弘之2,藤宮 剛2,横山 斉2
【背景】感染性腹部大動脈瘤の発症頻度は低いが予後不良・
難治性の疾患で治療に難渋する.治療方針は手術を前提に 抗生剤による感染コントロールと再感染を考慮した術式の 選択につきる.短期間で感染性腹部大動脈瘤4例(うち1 例は人工血管感染)を経験しその成績を踏まえ治療方針を 検討.【対象】2014年3月から6月に感染性腹部大動脈瘤 に対して当科で瘤切除を施行した4例で,全例男性,年齢
48〜78歳に分布した.各症例の既往疾患は各々尿管結石
による腎膿瘍と前立腺癌合併,慢性C型及びB型肝炎に 起因した肝硬変,腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術,
及び閉塞性動脈硬化症であった.病変は腎動脈分岐以下の 2例,腹腔動脈分岐レベル対側1例,前回置換したグラフ ト中枢側吻合部近傍の瘤化1例であった.全例39℃台の 発熱で発症し血液培養検査で各々ESBL産生菌(E.coli),
C.parapsilosis,MSSA,MSSE(コアグラーゼ陰性表皮ブド ウ球菌)が検出された.術前に感受性抗生剤を投与し感染 コントロール(発熱なし.血液培養検査陰性,WBC,CRP 正常化<SUP>*</SUP>1例のみCRP6.78と高値)を確 認した段階で手術施行した.【手術】患部への到達経路は2 例がspiral incisionで後腹膜経路,他2例は上下腹部正中 切開を用い,単純遮断下にin-situの人工血管置換を行った.
感染瘤と感染が波及している可能性のある周囲組織を含め て一塊として切除した.3例はY grafting,1例は4分枝付 き20mmグラフトで腹腔動脈以下内臓4分枝を再建した.
全例0.2%リファンピシン浸漬処理したグラフトを使用し,
3例は有茎性に処理した大網をグラフト周囲に充填した.
グラフト感染症例はグラフト周囲に多量の膿汁が貯留し癒 着剥離にも難渋した為に出血多量となり中枢側吻合を終え た後に心室細動に陥り心マッサージを要した.【結果】3例 は術中採取した組織培養で細菌検出無く,術後炎症反応が 陰性化するまで抗生剤を継続投与した.感染再発無く退院
したが1例は術後1日目に他因子による脳梗塞を発症した.
術中心肺蘇生を行った症例は腎,および呼吸不全併発し,
P29-2
感染性腹部大動脈瘤の治療経験
鹿児島医療センター 心臓血管外科
○福元 祥浩,上野 隆幸,川井田啓介,山下 正文 森山由紀則
【目的】大動脈感染性疾患の診断は時として難渋する.本疾 患の診断や治療方針の決定にPETを使用した経験を報告 する.【対象】熱発を認めておりCTで大動脈周囲にガス像 を認めるか大動脈周囲の液貯留が増加傾向を示すものもし くは経食道エコーで疣贅を認めた場合に大動脈感染性疾患 と診断した.1999年11月から2014年10月までに当科で 経験した大動脈感染性疾患は91例でそのうち6症例にの べ8回PETを施行した(感染群).感染群は男性4例で平
均年齢60.7±17.2歳であった.全例人工血管置もしくは
TEVAR術後で下行置換後1例,胸腹部大動脈人工血管置
換術後2例,腹部大動脈人工血管置換1例(大動脈十二指 腸瘻),弓部全置換,下行置換後1例,複数回のTEVAR 後が1例であった.また同時期に人工血管置換術後で非大 動脈感染疾患の患者に対し12例にのべ14回のPETを施 行した(非感染群:全例悪性腫瘍の転移検索目的にPETが 施行された).非感染群は男性6例で平均年齢72.0±15.3 歳でであり弓部全置換術9例,腹部大動脈置換術後2例,
TEVAR後1例であった.投与したFDG薬剤が全身に均一
に分布しかつ排泄されていないと仮定し,目的部位にその 何倍の量のFDGが集積しているかをSUVとし,ある関心 領域のSUVの最大値をSUVmaxと定義した.【結果】人工 血管置換もしくはTEVAR後からFDG-PET施行までの期 間は感染群が平均18.1±33.3ヶ月で非感染群は34.5±30.2 ヶ月で両群間に差は認めなかった(P=0.17).感染群8例 は全例血液培養は陽性で熱発を認めた.CTでは6例に大 動脈周囲にガス像を認め,2例に液貯留を認めた.8例の うち3例に再人工血管置換術を2例にデブリードメントと 持続洗浄を施行し,再手術を施行した5例のうち人工血管 周囲組織の培養は4例が陽性であった.感染群のCRPは 平均6.58でSUVmax平均5.98(4.08〜8.5)であった.非感 染群14例は全例CRPは陰性で大動脈周囲のSUVmaxは 平均5.24 (2.99〜10.7)であった.12例は吻合部近傍に高集 積を認めた.また感染群,非感染群の両群間でSUVmax
P29-1
大動脈感染性疾患における
FDG-PETの役割
神戸大学大学院 医学研究科外科学講座心臓血管外科
○山中 勝弘,山本真由子,辻本 貴紀,池野 友基 後竹 康子,松枝 崇,山里 隆浩,井澤 直人 宮原 俊介,野村 佳克,坂本 敏仁,森本 直人 松森 正術,大北 裕
【はじめに】EVAR施行例の増加とともにさまざまな術後合 併症が報告されている.今回,我々はその中でも非常に稀 と考えられる術後遺残大動脈瘤炎の2例を経験したため,
ここに報告する.【症例1】70歳代男性.腎動脈下に位置す る最大径45mmの紡錘状瘤に対し,ステントグラフト内挿 術(EVAR)を施行した.術後腰動脈からのType 2 endoleak を認めていたが,瘤径増大はなく経過観察していた.術後 約10カ月頃から発熱を伴わない腰痛を自覚し,血液検査 ではWBC 7860/mm3,CRP 13.9mg/dLと炎症所見を認め,
CTにて残存動脈瘤壁の局所的な感染を疑う所見と瘤径増 大(術後+2mm)を認め遺残大動脈瘤炎と診断した.血液培 養は陰性だった.抗生物質投与にて自覚症状や炎症所見は 改善し,現在も外来にて抗生物質内服加療中であり,再発 を認めていない.【症例2】80歳代男性.腎動脈下に位置す る最大径61mmの紡錘状瘤に対し,EVARを施行した.術 後腰動脈からのType 2 endoleakを認めていたが,瘤径増 大はなく経過観察していた.術後約12カ月のフォローア ップCTにて,残存動脈瘤壁に局所的な不正な造影効果を 認め,遺残大動脈瘤炎と診断した.血液検査ではWBC 4600/mm3,CRP 1.26mg/dLと軽度炎症反応の上昇を認めた.
発熱や自覚症状はなく,血液培養は陰性だった.残存瘤径 も術後+91mmと著明な増大を認め,感染性動脈瘤破裂を 疑う所見だったが,治療希望なく保存的治療を選択し,自 覚症状,炎症所見共に改善し現在も外来経過観察中であ る.【考察】EVAR術後遺残大動脈瘤炎の報告は我々が渉猟 し得た限りでは認められなかった.我々が経験した2症例 は,糖尿病や免疫不全などの危険因子はなく,術前,術後 を通して明らかな感染症の罹患を認めておらず,原因や感 染経路は不明である.2症例ともにType 2 endoleakが続い ていることや,瘤径の増大傾向を認めることが何らかの影 響を与えているのかもしれない.我々は,画像上ステント グラフト周囲には感染兆候を認めず,抗生物質投与にて自 覚症状,検査所見ともに改善したことから保存的治療の継 続を選択した.保存的治療で改善しない場合,ステントグ ラフトへ感染が及ぶ場合,全身状態に影響を及ぼす場合等 には外科的治療を考慮する必要も考えられる.腹部大動脈 瘤に対する開腹手術後では見られない,EVAR特有の合併 症であると考える.
P29-4
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後に遺 残大動脈瘤炎を発症した
2例
済生会横浜市東部病院 血管外科1 慶応義塾大学 外科2
○萩原 一樹1,渋谷慎太郎1,大久保博世1,林 忍1 松原健太郎2,小原 秀明2,北川 雄光2
【背景】大動脈人工血管感染は人工血管置換術後の最も重大 な合併症の一つであり,その発生率は0.6−3%と稀ではな く,発症時の死亡率は20−40%,肢切断率は11%に上る とされ予後不良である.今回リファンピシン浸漬グラフト を用いた解剖学的血行再建と二期的な大網充填により良好 な結果を得た. 【症例】67歳男性.左腰痛を主訴に当院を 受診した.2年前に破裂性腹部大動脈瘤に対して緊急人工 血管置換術を施行され,その際 MRSA,Candida,Klebsi-ellaといった起炎菌による血液感染を合併し長期入院を要 していた.今回来院時の血液検査で炎症反応増高 (WBC 11300/μL,CRP 3.03 mg/dL),CTにて人工血管感染およ び吻合部仮性動脈瘤と同部からのextra-vasation,腸腰筋膿 瘍が認められた.人工血管感染とそれに伴う吻合部切迫破 裂と診断し,来院当日に緊急手術を施行した.感染人工血 管除去と十分なdebridementを行った後,リファンピシン に30分間浸漬した16×9mm Hemashieldを用いて腹部大 動脈人工血管置換術を施行した.開腹のままICU帰室し た.術後3日の血液検査で炎症反応の低下傾向を確認した ため,手術室にて止血を確認し,再度十分な洗浄を行った 後に大網充填し閉腹した.来院時の血液培養より Strepto-coccus Anginosusが検出された為,術後ABPC/SBTを投与 し術後20日頃には炎症反応はほぼ陰性化した (WBC 5400 /μL,CRP 3.37 mg/dL).陰性化後も1週間ABPC/SBTを 継続した.リハビリ完了の後,術後30日に退院となった.
現在術後2年経過し感染の再燃なく経過している.【考察】
大動脈置換術後人工血管感染に対しては感染人工血管の除 去,十分なdebridement,再血行再建が標準的な治療法と されている.再血行再建に関しては,近年では解剖学的血 行再建が非解剖学的再建に比して生命予後・開存率・肢切 断率に関して優れており,特にリファンピシン浸漬グラフ トは冷凍保存自家グラフト,自家静脈グラフトと比し良好 な結果が報告されている.また大網充填術は豊富な血流に よる免疫作用や止血効果から,古くより胃十二指腸穿孔や 肝切除後出血に用いられており,近年は感染性大動脈瘤に 対しての有用性も散見される.今回これらのevidenceに基 づく治療戦略に加え,大網のより良好な生着を期待し二期 的手術を選択することで予後不良な大動脈人工血管感染症 例に対して救命を得た.
P29-3
腹部大動脈置換後人工血管感染にリファンピシン浸漬 グラフトを用いた
1例
上尾中央総合病院 心臓血管外科
○岡野 龍威,福隅 正臣,前場 覚,古田 晃 手取屋岳夫