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【背景】急性大動脈解離の手術件数は上昇を続けており,発 症時から様々な臓器虚血症状を呈することも多く,死亡率 もいまだ高く脳虚血症状を伴う症例に対しての緊急手術の 適応には,議論の余地はある.今回当院で施行したA型 急性大動脈解離に対しての手術症例を検討したので報告す る.【対象と方法】2011年10月から2014年10月までに当 院で行ったStanford A型急性大動脈解離60例を対象とし た.60例中,来院時より心停止や心タンポナーデを含む ショック状態を合併したのは19例であった.その詳細は,

術前PCPS使用2例(10.5%),CPR実施4例(21%),心嚢 穿刺施行3例(15.7%),片麻痺を含む脳虚血症状2例(10.5

%)であった. 【結果】手術はentry切除を基本術式とし,

腋窩動脈送血・右房脱血での体外循環を確立し,低体温循 環停止下にて施行している.循環停止中の脳還流は全弓部 置換では選択的脳還流を,上行置換では逆行性脳還流を使 用した.上行置換が36例,上行弓部置換が24例,基部置 換が6例であった.CABGを追加した症例は6例,Maze を1例施行した.対象症例全体の初期治療として,心タン ポナーデによるショック状態に対しては心嚢穿刺を先行し て行い,入院から手術までの所用時間は平均4.2時間で あった.入院死亡は5例(8.3%)で,ショック状態でない 入院死亡は1例(2.4%)で,術後より高範囲脳梗塞を認め 死亡した.術前にショック状態での入院死亡は4例(21%)

で2例は術前にPCPS使用例で,残り2例は術前から脳虚 血症状を認めていた.【考察】脳虚血症状やショック状態の ない症例に関しての急性大動脈解離手術は非常に安全に行 えており,当院搬送から手術までの期間が短く,良好な成 績の原因の一つと考える.今後も,搬送体制・初期治療を 継続し,更なる症例の蓄積が必要と感じた.しかし,術前 に心停止を発症し回復しない症例や,脳虚血症状を認める ショック状態に対しては緊急手術を施行するのは検討する 余地があるといえる.

P21-4

StanfordA

型急性大動脈解離に対する治療成績:当院

【はじめに】Stanford A型急性大動脈解離に,臓器環流障害 を合併した症例の予後は一般的に不良である.突然の背部 痛,意識障害,左下肢の脱力で発症し,術後左下肢への再 環流障害でmyonephropathic metabolic syndrome(MNMS)と なり,高K血症,代謝性アシドーシスの進行認めたが,

左大腿切断行うことで,救命し得た症例を経験したので報 告する.【症例】62歳,男性,突然の背部痛とショックバ イタルを認め,他院より紹介となった.来院時,意識障害,

左下肢の運動・知覚麻痺認め,CTで偽腔開存型の

Stan-ford A型大動脈解離を認めた.偽啌による圧排で腕頭動脈

と左総腸骨動脈は閉塞し,側副血行で左大腿動脈が描出さ れた.【手術】右腋窩動脈と左外腸骨動脈に8mm人工血管 を端側吻合し送血路とし,上下大静脈脱血で体外循環を確 立した.発症から左下肢の環流再開までは約5時間であっ た.上行大動脈にはEntry tear認めず,膀胱温28℃で循環 停止とした.腕頭動脈を遮断し,右腋窩動脈からの送血は 継続しつつ,左総頸動脈,左鎖骨下動脈にカニューレを挿 入し,選択的脳分離循環を開始した.左総頸動脈分岐部付 近に大きなEntry tearを認め,J-Graft 28mm4分枝で,腕頭 動脈と左総頸動脈を再建し,部分弓部大動脈置換術を施行 した.【経過】術後ドレーン出血多く,大量輸血行ったが,

収縮期血圧は70−90mmHg台で経過し,術後1日目に再 開胸止血術を施行した.止血術後は血圧も上昇し,安定し た.血圧上昇後,徐々にCPK値,クレアチニン値の上昇 認め,MNMSによる急性腎不全と判断し,CHDFを開始 した.CHDF開始後もCPK値は上昇し,さらに高K血症

(7.0meq/L),代謝性アシドーシスを認め,CHDFでは補正 できなかった.さらに維持透析と同効率のHDFを行った が,高K血症,代謝性アシドーシス補正できなかったため,

救命には下肢切断が必要と判断し,左大腿切断術を行っ た.術中所見では大腿筋群は血色不良で虚血の所見を認め た.大腿切断術後は,劇的に高K血症,代謝性アシドー シスは改善し,CHDFでコントロール可能であった.経過 中,周術期脳梗塞を発症し,気管切開施行,縦隔炎も発症 し,治療に難渋したが,透析からも離脱でき,最終的には 自力で車いす移動可能な状態まで回復し,術後123日目に リハビリ目的に転院となった.【まとめ】急性大動脈解離に よる下肢再環流障害で,MNMSを来した症例に対して,

下肢切断を行うことで救命し得た症例を経験した.MNMS を来した症例では,救命のため,時期を逸する事なく下肢 切断を行う必要があると考えられた.

P21-6

MNMS

を発症した

Stanford A

型急性大動脈解離に対 して,下肢切断を行い救命し得た

1

熊本赤十字病院 心臓血管外科

○上木原健太,鈴木 龍介,渡邉 俊明,平山  亮 坂口  健,吉岡 祐希,毛利 雅治

【諸言】急性A型大動脈解離に対する手術成績は向上して いるが,術前ショック状態を呈していた症例の手術成績は いまだ満足のいくものではない.そのため,脳灌流障害を 合併する症例においては,術後の意識レベル回復の問題も あり,その手術適応について苦慮することが多い.今回,

術前に長時間ショック状態が続き意識障害を伴った症例に 対して,緊急手術を行い大きな合併症を認めることなく救 命できたため報告する.【症例】症例は73歳女性.胸部か ら下顎にかけて違和感あり近医を受診した.虚血性心疾患 は否定的であったため一旦帰宅となった.同日撮影されて いた胸腹部単純CTにてA型大動脈解離を疑う所見を認め ていたため2日後に同病院再受診.造影CTを撮影する準 備中に意識を消失した.ショック状態で血圧測定不能とな ったため,急性A型大動脈解離によるものと判断され,

挿管下に当院救急搬送となった.心エコーを行うと多量の 心嚢水貯留を認めたため,初療室にて心嚢ドレナージを施 行.その後より循環動態の改善を認めた.血圧測定不能と なっていた時間は約45分であった.造影CTでは上行大 動脈基部にわずかなULP形成あり.偽腔はすでに血栓閉 鎖をしていた.また,左総頸動脈に高度狭窄を認めた.頭 部CTでは明らかな皮髄境界不明瞭な部位はなく,脳梗塞 を疑うような所見もはっきりとしなかった.家族の強い希 望もあり緊急手術を行う方針とした.手術室搬送時にやや 意識レベルの改善を認めた.右大腿動脈送血,右房脱血に て人工心肺を確立.30℃を目標に冷却を行い,Vfとなっ た時点で上行大動脈を遮断した.大動脈を切開し内腔を観 察すると,CTで認めていた通り上行大動脈基部の後壁に 内膜の亀裂を認めたが,同部位より中枢側に向けて縦走す る内膜亀裂も認めた.循環停止後に遮断解除し観察する と,腕頭動脈起始部まで連続していたが遮断するスペース は確保できた.腕頭動脈起始部で遮断しなおし上行置換術 を行った.手術時間は6:26,人工心肺時間は4:01,上 行大動脈遮断時間は2:52,循環停止時間は0:01であった.

術後は発作性心房細動と肺塞栓症・深部静脈血栓症を認め たが,いずれも保存的加療で改善した.意識障害を始め明 らかな神経学的異常もなく,術後39日目に自宅に独歩退 院となった.【結語】術前に長時間ショック状態が続き意識 障害を伴った症例に対して,緊急手術を行い,大きな合併 症を認めることなく救命できたため報告する.その加療方 針について文献的考察を含めて報告する.

P21-5

術前に長時間ショック状態であった急性

A

型大動脈 解離の

1

救命例

大分県立病院 心臓血管外科

○小野原大介,山田 卓史,田崎 雄一,川野まどか

【症例】65歳,男性.血友病Bで当院小児科に通院中であ った.平成26年8月6日仕事中に突然数十秒の意識消失 あり,仰臥位で倒れているところを発見され当院救急科に 救急搬送された.気管挿管のうえ,人工呼吸器管理とされ た.造影CT検査を施行し,Stanford A型の急性大動脈 解離,心タンポナーデと診断された.手術目的に当科に紹 介され,同日緊急手術を行った.血友病Bの患者であっ たため,第9因子活性をモニタリングし,凝固因子製剤を 補充し第9因子活性が十分に増加したことを確認した後に 手術を施行した.エントリーは上行大動脈にあり,解離も 上行大動脈のみであった為,上行大動脈人工血管置換術を 施行した.第9因子活性を100%以上に保ち術中の止血は 良好であった.術後は適宜第9因子製剤を補充し100%以 上に保った.術後9日目に第9因子製剤投与終了したが,

術後14日目に心嚢液貯留を認め,再度第9因子製剤を補 充した後,局所麻酔下に心嚢ドレナージ術を施行した.そ の後経過良好で,術後32日目に独歩自宅退院となった.

【結語】血友病B患者の急性大動脈解離に対し第9因子モ ニタリングを行い,第9因子製剤を補充して上行大動脈人 工血管置換術を行い良好な結果を得た症例を経験したので 報告した.

P21-8

血友病

B

患者の急性大動脈解離に第

9

因子モニタリ ング下に上行大動脈人工血管置換術を行った

1

奈良県立医科大学 胸部・心臓血管外科

○丹羽 恒介,多林 伸起,阿部 毅寿,早田 義宏 廣瀬 友亮,山下 慶悟,平賀  俊,福場 遼平 谷口 繁樹

【症例】35歳女性【現病歴】低置胎盤,辺縁静脈洞のため妊 娠37週4日で選択的帝王切開術を施行された.術後1か 月目の夜,突然背部痛を認め近医受診.造影CT撮影され,

上 行 大 動 脈 か ら 左 総 腸 骨 動 脈 に 至 るStanford A型(De

Bakey I型)の急性大動脈解離を認めた.心エコーでも重度

の大動脈弁閉鎖不全を認め,心嚢液貯留も認めたため当院 に転院搬送(ヘリ搬送)となった.同日緊急手術を施行.【手 術】解離のentryはValsalva洞に認めており,Bentall手術 を行った.大動脈基部付近の癒着が強く,自己弁温存手術 は困難と判断した.挙児希望もあり,生体弁による Ben-tall手術を選択した.【術後経過】術後経過は良好で特に合 併症もなく退院.173cmと高身長であり,また眼科にて両 側水晶体亜脱臼を指摘.軽度の側弯も認めMarfan症候群 が疑われたが,診断基準は満たさなかった.確定診断のた め遺伝子検査が必要であったが,臨床遺伝指導医によるカ ウンセリングの結果,遺伝子検査は希望されず.当科とし てはMarfan症候群としてfollowしている.【考察】妊娠や 分娩に関連して生じた大動脈解離の報告は,妊娠後期に発 症するものがほとんどで,産褥期の発症はまれである.

2013年に報告されているShi-Min YuanらによるReviewに よると,産褥期に認めた大動脈解離の報告は1988年から 2012年の間に27例のみであった.そのうち手術例は16例,

Bentall手術例は3例のみであった.27例のうち,Marfan 症候群の症例が12例であったが特にリスクファクターを 有しない症例も11例とほぼ同数認めている.また産褥期 の時期や患者の年齢や出産経験の有無に関係なく発症して いる.産褥期であっても急性解離を疑わせる所見があれ ば,Marfan等のリスクファクターの有無にかかわらず,

急性解離を疑い積極的に精査を行うことが必要であると考 える.

P21-7

産褥期に発症した

Stanford A

型急性大動脈解離に対し て

Bentall

手術を施行した

1

島根大学 心臓血管外科

○清水 弘治,和田 浩巳,金築 一摩,今井 健介 末廣 章一,織田 禎二