三重ハートセンター 心臓血管外科
○西村 善幸,石井 利治
【現症】症例は39歳女性で低用量ピルを内服していた.2 週間前に腹腔鏡下胆嚢摘出術と術後肺炎の既往がある.退 院後喫煙しながらのパチンコ中に下腿浮腫と胸痛が出現し たため前医を受診し造影CTにて深部静脈血栓症および肺 梗塞と診断された.IVCフィルターを右腎静脈に留置して しまい回収を試みたが右房内に脱落した.経カテーテル回 収は不成功となり,腎静脈下にIVCフィルターを追加留 置され当院へ救急搬送となった.また当院受診時の胸部レ ントゲンで左肺動脈に切断されたガイドワイヤー先端が確 認された.当院でも経カテーテル回収を試みるも不成功の ため外科的摘除の方針となった.【術式】入室時ショックバ イタルであった.経食道心エコーで重度三尖弁逆流を認め たため三尖弁形成も行なうことにした.胸骨正中切開で手 術開始し心膜切開したところ血性心嚢水だった.上行送 血,上下大静脈脱血で人工心肺を確立した.右房切開して みるとIVCフィルターの脚が冠静脈洞に嵌頓しており,
ハンガー部分が右房内腔の肉柱に絡まっており血栓の付着 を認め回収した.次に三尖弁を観察すると前尖に大量の血 栓が付着し右室内まで連なっており血栓摘除を行なった.
三尖弁逆流の原因は後尖に認めた1cm大の欠損孔であり ウマ心膜パッチで欠損孔閉鎖し,Tailorband 27mmで弁輪 形成を行なった.左肺動脈を切開し明らかな血栓は認め ず,上葉枝にラジフォーカス断端を確認し抜去した.また 右房壁の冠静脈洞近傍に損傷がありoozingを認めたため,
これを修復した.【経過】術後24時間後に抜管,術後2日 目にICUを退室した.経胸壁心エコーでは三尖弁逆流は 制御されており,術後14日目で腎静脈下に追加留置され ていたIVCフィルターを抜去した.造影CTでは肺動脈内 血栓は消失しており,右肺の梗塞巣は縮小傾向だった.経 過順調で術後19日目に独歩退院となった.【結語】誤挿入 されたIVCフィルターの経カテーテル回収に関連する稀 有な合併症を経験したため,若干の文献的考察を加え報告 とする.
P20-9
右房内に脱落した
IVCフィルターの経カテーテル回 収時に三尖弁破壊を来たし弁形成を要した
1例
埼玉石心会病院 心臓血管外科1 さやま総合クリニック2
○高橋 亜弥1,塩見 大輔1,清水 将継1,山田 宗明1 木山 宏1,今関 隆雄2
【背景】A型急性大動脈解離の内科的治療の予後は不良であ り,緊急手術の適応になることが多い.高齢化社会を迎え,
80歳以上の高齢者にも,急性大動脈解離に対して手術を 行う機会が増加しつつある.高齢者に対する手術成績を検 討する.【対象】2007年6月から2013年12月の期間でA 型急性大動脈解離に対して手術を施行した87例を対象と した.80歳以上を高齢群(E群)14例,80歳未満を若年者(Y 群)73例にわけて比較検討した.当院の急性大動脈解離の 手術方針は,上行大動脈のみにエントリーを認める場合は 上行置換術としており,弓部にエントリーを有する場合に は全弓部置換術の方針としている.若年者の場合でエント リーが不明であり,大動脈の拡大を認める場合には全弓部 置換としている.【結果】性別はE群で男性3例,Y群42 例とE群で男性が少なかった(p=0.01).術前心肺蘇生例 はE群で多い傾向であり(E群 3例21%,Y群6例8%;p
=0.14),術前意識障害例もE群で多かった(E群 6例42%,
Y群13例18%;p=0.05).術前の大動脈最大短径はE群 で52.5±5.8mm,Y群48.7±5.7mmであり,E群で拡大し ていた(p=0.03).術式に関しては,上行置換例はE群 11 例79%,Y群 52例71%で両群間に差を認めず(p=0.57),
手術時間(E群 450±167分,Y群 458±146分;p=0.86)・
人工心肺時間(E群 184±51分,Y群 212±94分;p=0.30)
ともに差を認めなかった.早期死亡はE群1例7%,Y群 9例12%(p=0.57)であった.術後脳梗塞に関してはE群 で 多 か っ た が(E群 6例42%,Y群9例12%;p=0.01),
E群の6例はいずれも術前に意識障害またはショック状態 の患者であった.また術後気管切開症例もE群で多かっ た(E群 4例29%,Y群1例1%;p<0.01). 遠 隔 期 に 関 しては,3年生存率はE群で92.3±7.4%,Y群で79.5±
5.0%であった(p=0.03).【考察】80歳以上の高齢者であっ ても,安全に手術を施行できた.しかし,術前状態が悪く,
術後の加療に難渋する症例も多い.遠隔期成績は十分に満 足できるものであり,高齢者であるという理由で手術適応 外とせず,状態に応じた術式の決定が重要である.
P21-2
80
歳以上の高齢者に対する
A型急性大動脈解離の手 術成績の検討
済生会横浜市東部病院 心臓血管外科
○林 祥子,伊藤 努,高橋 辰郎,飯田 泰功 三角 隆彦
【初めに】80歳以上のA型急性大動脈解離に対する手術の 妥当性を短期成績および遠隔成績から検討を行った.【症 例】2003年1月〜2012年12月の間に手術を行った247例 ののうち80歳以上の急性大動脈解離の症例,33例(14.2%)
を対象とした.平均年齢は82.8±2.75歳(80−88歳),男 性6例,女性27例であった.【手術】手術は上行置換を31 例,上行弓部置換を1例,術中下行大動脈瘤の破裂を認め た1例に対して上行弓部+下行置換を行った.その他併施 手術は大動脈弁置換術1例,大動脈弁形成術1例,冠動脈 バイパス術1例,左房内血栓摘除1例,腹腔内出血に対す る止血術1例であった.平均手術時間は361±112分(293
−927分)であった.【結果】死亡を3例(9.6%)に認めた.1 例は術前破裂,ショックの症例で術後低酸素脳症のため死 亡した.2例は術後誤嚥性肺炎のため死亡した.合併症と して,脳梗塞を7例,22.5%,出血再開胸を2例,タンポ ナーデに対する解除術を3例,急性腎不全に対してCHDF を1例,胸骨骨髄炎に対する大網充填を2例,心筋梗塞を 1例,術後PCPSを必要とした症例を1例認めた.平均集 中治療室滞在期間は13±10.3日(3−43日),平均入院期間 は33±23日(3−118日)であった.在院死亡3例を除く30 例のうち27例の遠隔予後調査可能であった(追跡率90%).
平均観察期間は39.4±27.8ヵ月(3−117か月)で.遠隔死亡 を6例認めた.3例は肺炎,1例は脳梗塞,1例は心不全,
1例は老衰のため死亡した.遠隔生存率は1年:88.7%,3 年:76.9%,5年:54.6%,8年:54.6%であった.【結語】
80歳以上の高齢者のA型急性大動脈解離に対する手術は 短期成績や遠隔成績が不良であることから否定的な報告も 散見される.当院の手術成績は短期および遠隔期ともに成 績は比較的良好と考えられ,80歳以上の急性大動脈解離 に対する手術は支持しうるものと考えられた.
P21-1
80
歳以上の
A型急性大動脈解離に対する手術の検討
自治医科大学附属病院 心臓血管外科○阿久津博彦,相澤 啓,大木 伸一,三澤 吉雄
【背景】急性大動脈解離の手術件数は上昇を続けており,発 症時から様々な臓器虚血症状を呈することも多く,死亡率 もいまだ高く脳虚血症状を伴う症例に対しての緊急手術の 適応には,議論の余地はある.今回当院で施行したA型 急性大動脈解離に対しての手術症例を検討したので報告す る.【対象と方法】2011年10月から2014年10月までに当 院で行ったStanford A型急性大動脈解離60例を対象とし た.60例中,来院時より心停止や心タンポナーデを含む ショック状態を合併したのは19例であった.その詳細は,
術前PCPS使用2例(10.5%),CPR実施4例(21%),心嚢 穿刺施行3例(15.7%),片麻痺を含む脳虚血症状2例(10.5
%)であった. 【結果】手術はentry切除を基本術式とし,
腋窩動脈送血・右房脱血での体外循環を確立し,低体温循 環停止下にて施行している.循環停止中の脳還流は全弓部 置換では選択的脳還流を,上行置換では逆行性脳還流を使 用した.上行置換が36例,上行弓部置換が24例,基部置 換が6例であった.CABGを追加した症例は6例,Maze を1例施行した.対象症例全体の初期治療として,心タン ポナーデによるショック状態に対しては心嚢穿刺を先行し て行い,入院から手術までの所用時間は平均4.2時間で あった.入院死亡は5例(8.3%)で,ショック状態でない 入院死亡は1例(2.4%)で,術後より高範囲脳梗塞を認め 死亡した.術前にショック状態での入院死亡は4例(21%)
で2例は術前にPCPS使用例で,残り2例は術前から脳虚 血症状を認めていた.【考察】脳虚血症状やショック状態の ない症例に関しての急性大動脈解離手術は非常に安全に行 えており,当院搬送から手術までの期間が短く,良好な成 績の原因の一つと考える.今後も,搬送体制・初期治療を 継続し,更なる症例の蓄積が必要と感じた.しかし,術前 に心停止を発症し回復しない症例や,脳虚血症状を認める ショック状態に対しては緊急手術を施行するのは検討する 余地があるといえる.
P21-4
StanfordA