○飯井 克明,大仲 玄明,長田 裕明,中島 博之
【目的】無症候性の下腿限局深部静脈血栓症は,超音波の描 出能の向上と周術期のスクリーニング,担癌患者のスクリ ーニング検査の普及に伴い,診断されることがより多くな ってきている.どのような症例が中枢に進展し,症状をき たすのか依然不明である.当科では弾性ストッキングによ る圧迫療法を実施し,血栓に関する前向き研究を行ってい る.【対象】2014年2月から11月までの33例を対象とした.
診断は静脈超音波検査によって行われた.超音波検査は放 射線科医師監督のもと同一のCVT(血管診療技師)により 検査が行われている.血栓の中枢進展や有症状となった場 合に関しては,抗凝固療法を行うこととした.【結果】平均 年齢は72.8±11.5歳で,男性9例,女性24例であった.
診断の契機は静脈瘤検査9例,婦人科スクリーニング6例,
呼吸器内科スクリーニング4例,整形外科スクリーニング 2例であった.下肢静脈瘤が9例あり,悪性腫瘍の罹患は 15例であった.肺梗塞の精査がされた17例のうち肺梗塞 を認めたのが5例であった.血栓の局在は,腓腹静脈血栓 は2例(6.0%),腓骨静脈血栓は11例(33.3%),ヒラメ静 脈血栓は32例(97.0%)であった.弾性ストッキング着用
の1ヶ月後と3ヶ月後に,血液検査と超音波検査によって
評価を行った.1ヶ月後の評価ができた症例は29例であり,
3ヶ月後の評価ができた症例は20例であった.1ヶ月後の
評価においては,血栓増大が3例,血栓縮小11例,血栓 完全消失2例であった.血栓増大の2例は担癌状態であり,
1例は血栓が中枢進展し自覚症状も認めたため抗凝固療法 を行った.3ヶ月後の評価においては1ヶ月後の評価と比 較し,血栓増大が1例,血栓縮小3例であった.【考察】無 症候性の下腿限局深部静脈血栓症に対する弾性ストッキン グの着用は,弾性ストッキング着用の1ヶ月後は13例(44.8
%)が血栓縮小もしくは消失し,3ヶ月後は3例(15.0%)が 血栓縮小したため,血栓縮小効果があると考えられる.血 栓が中枢進展し抗凝固療法を行ったのは1例のみであり,
本研究による1ヶ月と3ヶ月の評価は妥当であると考えら れた.【結語】無症候性の下腿限局深部静脈血栓症に対する 弾性ストッキングの有用性については,今後引き続き検討 していく必要性がある.
P19-1
無症候性の下腿限局深部静脈血栓症に対する弾性スト ッキングの有用性の検討
済生会横浜市東部病院外科(血管外科)
○大久保博世,林 啓太,萩原 一樹,山城 直嗣 明石 卓,渋谷慎太郎,林 忍
【はじめに】静脈瘤切除術後の皮膚閉鎖の方法については術 者が経験に基づき,自分の方法で行っているのが現状であ る.通常施行されている方法は皮膚縫合,皮下縫合,合成 皮膚接着剤による閉鎖,テープによる閉鎖などがある.皮 膚用接着剤ダーマボンド(Dermabond, Johnson and Johnson Inc.)により縫合創の閉鎖環境に置く事で乾燥を防ぎ,これ により良好な早い治癒が得られるとの報告がある.我々 は,この方式を,静脈瘤切除後に応用して,吸収糸皮下縫 合を置いた上に,ダーマボンド閉鎖を試みた.この方法で 皮膚閉鎖を行うことによる接着フィルム層の形成による細 菌等の物理的侵入を低減し,SSIを減少し,良好な皮膚治 癒を目指して使用した.創のカバーなどの必要なく,シャ ワーを早期に浴びることができ,入浴できるメリットも大 きいものと考え開始した.【対象】連続38例の静脈切除患 者.全例大伏在静脈のレーザー治療後であった.【結果】浸 出液等を生じることによる皮膚閉鎖遅延,感染発生などは 無かった.しかしながら8例(21%)において,皮膚炎を生 じた.そのうち1例においては皮膚炎,色素沈着が遷延し た.その他の症例(37例)では3ヶ月後には,皮膚炎は軽減 した.【考察】文献上もDermabondによる接触性皮膚炎は 報告がある.自検例では幾分その発生頻度が高いように思 うが,これは下肢静脈瘤術後であることに起因するかもし れない.シャワーを早期に浴びることができ,入浴できる メリットと皮膚炎の発生頻度のバランスから考えて,下肢 静脈瘤患者に使用することは差し控えたほうがよいかもし れない.今後の検討課題としたいと考えている.
P18-9
静脈瘤切除後の皮膚表面接着剤による皮膚炎
ツカザキ病院 心臓血管外科○三井 秀也,山田 幸夫
血管原発性平滑筋肉腫は非常に稀な疾患である.その報告 数は世界的にみてもごくわずかしかなく,その多くは下大 静脈原発性である.中でも末梢血管原発性平滑筋肉腫はさ らに少数であり,本邦での報告例は件程度である.これに は,下大静脈原発性平滑筋肉腫では,下腿浮腫を契機とし て発見されることが多いが,末梢血管原発性ではそのよう な臨床症状を呈することは少なく,腫瘍そのものが増大す る以外,ほとんど臨床症状を呈さないことが多いためと考 えられる.外科的切除が基本的治療である反面,上記の理 由から,術前にはほとんど診断されていないことが多い.
今回,我々は,左大腿部腫瘤病変に対し,生検を兼ねた切 除を行ったところ偶発的に大腿深静脈原発性平滑筋肉腫で あることが確認された一症例を経験したのでこれを報告す る.症例は59歳,男性.左鼠径部腫瘤を主訴に受診.受 診の3か月前から腫瘤が認められるようになっていたが,
疼痛などの症状を認めなかったことから放置していた.当 初,エコー検査では左鼠径部リンパ節炎の診断にて,抗生 剤治療行い,経過観察の方針とした.しかし,その後も腫 脹改善せず,さらに増大傾向認めたことから再受診となっ た.これに対し,生検および治療目的にて鼠径部腫瘤切除 行う方針となった.手術にて左浅大腿静脈より管腔から管 外へ増大する腫瘤性病変認め,腫瘤と接する静脈壁辺縁を 切除,摘出した.周囲鼠径部リンパ節も可能な限り郭清行 った.病理検査にて平滑筋肉腫の診断となる.術後転移評 価として,CT検査,PET検査など施行したが,明らかな 転移巣は認められなかった.術後は化学療法などの追加治 療行わず,術後2年を経過した現在も再発・転移なく経過 良好である.上記症例に関し,若干の考察を踏まえたうえ で,これを報告する.
P19-3
鼠径部腫瘤で発症した大腿深静脈原発平滑筋肉腫の
1例
中部徳洲会病院 心臓血管外科
○上門あきの,西島 功,池村 綾,宮城 和史 伊波 潔
【はじめに】平成22年から26年10月までに下肢深部静脈 血栓症(DVT)を発症した68例のうち,DVT診断のための 検査を契機に悪性腫瘍の存在が明らかとなった症例は7
例,10%だった.癌種の内訳は,胃癌3,直腸癌1,腎癌1,
大腸癌再発2例だった.このうち胃癌の2例と腎癌の1例 を呈示し,担癌状態下でのDVT治療について検討する.
【 症 例 】( 症 例1)69歳, 男 性. 平 成23年10月, 右 下 肢 DVT,肺塞栓(PE)を発症.貧血と全身リンパ節腫脹を認 め精査.遠隔リンパ節転移を伴う胃癌の診断で,化学療法 の方針.胃癌病変からの出血があり,下大静脈フィルター を留置後,ワルファリンを中止した.左上腕にCVポート を留置し化学療法を行ったが,左上肢静脈血栓症と脳梗塞 を併発し,第Xa因子阻害薬による抗凝固療法を始めた.
その後は出血なく経過し日常生活に復帰,化学療法を継続 した.平成25年6月に死亡した.(症例2)50歳,女性.
平成26年3月,右下肢DVT,PEを発症.貧血と腹水を 認め精査.骨転移と癌性腹膜炎を伴う胃癌の診断で,化学 療法の方針とした.胃癌病変からの出血があり,下大静脈 フィルターを留置後,ワルファリンを中止したが,その直 後より左下肢にもDVTを発症した.両側下肢腫脹は増悪 し歩行困難となり,QOLは著しく低下した.十分な化学 療法を行えないまま状態悪化し,同年6月に死亡した.(症 例3)81歳,女性.平成23年7月,右下肢DVTを発症した.
CTで下大静脈に腫瘍塞栓を伴う右腎癌の診断.精査,治 療目的に他院に転院したが,手術適応なしと判断され,ワ ルファリン内服開始後に退院となった.伝聞によれば,症 状なく自宅で過ごしていたが,同年9月に脳出血のため死 亡した.【まとめ】DVTを合併した悪性腫瘍症例は予後不 良であることが知られている.冒頭に示した7例中,現在 生存している患者は手術を行った直腸癌1例のみである.
呈示した3例は,フィルターを留置し抗凝固療法中止後に 血栓症を来たした症例,あるいは抗凝固療法継続中に出血 を来たした症例である.腫瘍による凝固亢進状態と出血と
P19-2
下肢深部静脈血栓症を合併した悪性腫瘍の
3例
JR仙台病院 外科
○鎌田 啓介,蔡 景襄,菅原 弘光,佐藤 博子 市来 正隆