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正答率ごとの考察

第5章 コア・ミーニングの応用における学習者の認知:研究2

5.5 考察

5.5.2 正答率ごとの考察

表 5-38 では、分析の結果から得られた高正答率の問いにおける学習者の主な認知パタ ーンの特徴がまとめられている。正答率の高い問い(Q1~Q5)において正答した学習者 からは、抽象性の高い用例(Q5)では適切な見立てと意味拡張による正答が見られなかっ たものの、それ以外の問いでは、コア・ミーニングの適切な見立てと意味拡張に基づく解 釈を経て正答する認知パターンが多数を占めていた。また、正答はしたものの、コア・ミ ーニングを用いない学習者もおり、彼らはコア・ミーニングよりも既有知識を優先して正 答していた。他にも、「曜日は on」や「上に」等の固定化した既有知識を優先して正答す る学習者も存在した。このことから、これまでの学習経験から得た知識に基づいて判断で きる場合、コア・ミーニングの応用を求められたとしても、既有知識を優先的に用いるケ

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正解とは別のコア・ミーニングによる見立てを試みて誤用した学習者(コア・ミーニング の誤適用)や、「時間といえば on(もしくは at)」のような誤った既有知識を優先する認 知パターンも存在した。また、正答以外の前置詞の持つイメージとの不適合による消去法 的判断や、コア記述を単語の意味として使用した誤答も見られた。

表5-38 正答率の高い問いにおける認知パターンの主な特徴

正答率 前置詞 問題と回答の割合 認知パターンの主な特徴

in

Q1. I told the caller to phone again ( ) 24 hours.

[TEMPORAL]

in (70.91%) on (10.91%) at (18.18%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答多数

・コア・ミーニングの誤適用

・誤った既有知識(時間といえ on / at)を優先

on

Q2. He often drops in too see me ( ) Sundays.

[TEMPORAL]

in (1.82%) on (92.73%) at (5.45%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答多数

・固定化した既有知識(曜日は on)を優先した正答

at

Q3. He laughed ( ) me.

[ABSTRACT]

in (0%) on (12.73%) at (87.27%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答多数

・正答以外の前置詞の持つイメ ージとの不適合による消去法 的判断 ・コア・ミーニングの誤適用

SPACE

Q4. He kissed her ( ) the cheek.

[on]

in (0%) on (88.00%) at (22.00%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答多数

・固定化した既有知識(「上に」 を優先した正答

・コア記述を単語の意味として 使用した誤答

TEMPORAL

Q2. He often drops in too see me ( ) Sundays.

[on]

in (1.82%) on (92.73%) at (5.45%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答多数

・固定化した既有知識(曜日は on)を優先した正答

ABSTRACT

Q5. We talked ( ) the phone.

[on]

in (7.27%) on (87.27%) at (5.45%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる 正答はなし

・既有知識を優先した正答多数

・コア・ミーニングの誤適用(誤 った記憶)

また、正答率の高い問いが持つ認知パターンからは、見なしの原理を働かせるために必 要な2つの対象物の具体的なイメージや容器的空間や時空間の空間的な見立てが容易であ

ったことが共通の特徴として見て取れた。ただ、正答率の高い問いの中でもコア・ミーニ ングの適切な応用をしていない問いもあった(Q5)。これについては、空間関係(接触)

を見立てる際の2つの対象物の抽象度が高く、イメージが困難であったことから、文脈に 単語として含まれてない対象をイメージして空間関係の理解を試みていたことが要因であ る。結果として、コア・ミーニングの選択は適切であったが、適切な応用(見なしの原理 の働かせ方と意味的動機づけ)ができていなかった。

次に、低正答率の問いについてまとめる。低正答率の問いについては表 5-39 にまとめ られている。正答率の低い問い(Q6~Q9)においては、正答した学習者は、問いによっ てはコア・ミーニングの適切な見立てと意味拡張を見せる認知パターンもあった(Q6, Q9)

が、その他はコア・ミーニングの適切な応用による正答が多くは見られず、正答と類似し た別の前置詞(into)のイメージを適用した正答が特徴として明らかとなった。一方で、

正答率の低い問い(同上)に誤答した学習者については、動詞や文脈との関係性を踏まえ なかったことによる誤答やコア・ミーニングの誤適用や混同による誤答、既有知識や原理 的な説明が可能で解釈容易な前置詞を優先した誤答、空間関係の認識や比喩的な意味拡張 の困難さに基づく誤答などの特徴があることがわかった。

表5-39 正答率の低い問いにおける認知パターンの主な特徴

正答率 用法 問題と回答の割合 認知パターンの主な特徴

in

Q6. He dipped his brush ( ) the paint.

[SPACE]

in (52.73%) on (45.45%) at (1.82%)

・コア・ミーニング(特にコア・

イメージ)の適切な見立て基づ く意味的動機づけによる正答は 少数 ・intoのイメージ適用多数

・動詞や文脈よりも視覚的イメ ージに頼る判断が多数

・動詞や文脈との関係性による 判断が希薄

on

Q7. Unemployment is ( ) the increase.

[ABSTRACT]

in (50.91%) on (20.00%) at (29.09%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てに基づく意味的動機づけに よる正答はなし

・空間関係の認識が困難

・比喩的な拡張の未達成

・コア・ミーニングの誤適用

・原理的な説明が可能・解釈容 易な前置詞を優先

at

Q8. Many children are still ( ) risk from neglect or abuse.

[ABSTRACT]

in (70.91%) on (18.18%) at (10.91%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てに基づく意味的動機づけに よる正答はなし

・語の意味の浅い理解に基づく コア・ミーニングの誤適用

161 SPACE

Q6. He dipped his brush ( ) the paint.

[in]

in (52.73%) on (45.45%) at (1.82%)

・コア・ミーニング(特にコア・

イメージ)の適切な見立て基づ く意味的動機づけによる正答は 少数 ・intoのイメージ適用多数

・動詞や文脈よりも視覚的イメ ージに頼る判断が多数

・動詞や文脈との関係性による 判断が希薄

TEMPORAL

Q9. There is no special event ( ) this time of year.

[at]

in (30.91%) on (21.82%) at (47.27%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てと意味的動機づけによる正 答多数

・コア・ミーニングの混同によ る誤答 ・コア・ミーニングの誤適用

・既有知識を優先した誤答

ABSTRACT

Q.8 Many children are still ( ) risk from neglect or abuse.

[at]

in (70.91%) on (18.18%) at (10.91%)

・コア・ミーニングの適切な見 立てに基づく意味的動機づけに よる正答はなし

・語の意味の浅い理解に基づく コア・ミーニングの誤適用

高正答率の問いと低正答率の問いの両者の間に見られる顕著な違いは、コア・ミーニン グの適切な見立てに基づく解釈の有無にある。正答率の高い問いは、見なしの原理を働か せる認知的操作を適切に行った認知パターンが多く見受けられたが、低い問いはその逆で ある。このことから、見なしの原理を働かせる見立てに基づく認知的操作の容易さの度合 いが、コア・ミーニングに基づいた適切な前置詞選択の条件となっていたことがわかる。