第 3 章 先行研究
3.7 本研究の目的
本研究の目的は、日本語学校生を対象に、学習動機と自己形成に関する意識の関連およ び時間的変遷を明らかにすることである。対象を日本語学校生とすることは、第一章で述 べたように、留学生全体における割合が一定数存在しているにも関わらず、日本語学校生 を対象にした研究が少なく、留学生教育全体において情報が欠けているからである。だが、
日本語学校生の7割が高等教育機関へ進学することからも、彼らの学習動機を調査するこ とは意義があると言えるだろう。
日本語教育における学習動機についての先行研究は、第二言語教育の流れを追う形で裾野 が広がっているが、研究者間で学習動機研究の全体像を共有することができていないこと を指摘した。今後、学習動機研究に取り組む者は、自分が学習動機研究のどの部分を見た いのか、そのためにどのようなアプローチを用いるのか、明らかにする必要があろう。ま た、先行研究においては「内発的動機」や「自己効力感」が注目されているが、発達の視 点を入れると、それ以外の学習動機要因(例えば外発的動機)も考慮する必要性も指摘し た。さらに日本語学校生を対象にした研究には、その問題点に注目が集まっていた点、中 国語母語話者に対象が偏っていた点を指摘し、日本語学校生全体の傾向を見る必要性を述 べた。
43 一般財団法人 日本語教育振興協会「日本語教育機関の概況」
http://www.nisshinkyo.org/article/pdf/20170217s.gaikyo.pdf (2017年10月アクセス)
では、先行研究の課題を踏まえ、日本語学校生の学習動機を研究するにあたり、どのよう な点に留意すべきであろうか。筆者は以下の3点が重要だと考える。第一に、学習動機を 自己の能力に対する「期待」と学習に対する「価値」という二つの視点から捉えることで ある。速水(1998)が指摘したように、人は成人になる過程で「社会の価値観」を自分の 中に取り込んでそれを「内面化」するため、純粋に「内発的」「外発的」な動機は存在しな い。そのため、自己の能力に対する意識(=期待)のみならず、自分に課された学習の意義
(=価値)についても分析する必要がある。
第二に、学習動機と自己形成の関係を見ることである。1 章でも述べたが、日本語学校生 の多くがいわゆる青年期の自己形成の構築過程にあるため、異文化における自己の再構築 という課題を抱えているからである。自己形成の進行が、学習動機にどのような影響を及 ぼすのか、検証したい。
第三に、学習動機と自己形成が環境との相互作用の中で、時間と共に変化していくことに 注意を向けなければならないということである。学習動機の先行研究においても「文脈」
及び「時間」という概念は、近年その重要性が唱えられている。本研究においても、日本 語学校生が日本の社会でどのように学習行動を維持していくのか、周囲の環境との相互作 用と共に見ていくこととする。
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