第 2 章 先行研究および研究課題
2.3 日本語アスペクトの体系
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このように、「スル」と「シテイル」、「シタ」と「シテイタ」を 2 項対立させて捉える のは鈴木(1957)、奥田(1978)工藤(1995)、高橋(2003)などが挙げられる。
表 2-5. 日本語アスペクトの 2 項対立 アスペクト
テンス 完成相 継続相
非過去形 スル シテイル
過去形 シタ シテイタ
奥田(1978)に対して、達成動詞と結びついた時に、「シテイル」は「内側からの視点 をとることは不可能となり、そのため変化の後の局面に焦点をあてた結果状態の意味しか とれない」(p.83)と白井(2004)が指摘している。しかしながら、「動作の継続」におい ては、状況の成立点は動詞が表す動きの開始点であり、動きの状態が継続していることが 表されている。「結果の継続」においては、状況の成立点は動詞が表す変化の達成点であり、
結果の状態が継続していることが表される。両者は並行的な関係であり、「継続相」として 統一的に捉えることが妥当である。副島(2007)も「継続性」には「動作が始まる前の準 備段階、始まってから終わるまでの間の過程、終わった後の結果状態がある」(p.39)と指 摘している。
最後に、脱場面・文脈化されていて、実際の使用法と離れた体系的アプローチとは違っ て、言語体系(文法体系)を媒介とするテクスト的機能へのアプローチを体系・機能的ア プローチの段階とされている(工藤 1995:11)。工藤(1995)の研究は、「スル」と「シテ イル」、「シタ」と「シテイタ」の対立をなすアスペクト・テンス体系とテクスト的機能と の相関性を追求するものであり、体系・機能的アプローチをとるものと位置づけられてい る。
このようにして、他のアスペクト形式―「シテアル」、「シテオク」、「シテシマウ」、「シ テイク」、「シテクル」37などがアスペクト体系から排除されて、日本語のアスペクト研究 が進められてきた。鈴木(1957)、奥田(1977、1978)は「シテアル」などのアスペクト形 式をアスペクト体系から排除した根拠については明確に 示していないが、工藤(1995)は、
37 寺村(1984)は、「シテアル」、「シテオク」、「シテシマウ」、「シテイク」、「シテクル」などを「シテ イル」と同様に「二次的アスペクト」と呼んでいる。
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以下の理由で、「シテアル」、「シテオク」、「シテシマウ」などが「スル」―「シテイル」の アスペクト対立と比べて文法化されているとは言い難いと考えて、これら を「準アスペク ト」と呼んでいる。
・包括性の欠如―シテアル、シテオク、シテイク、シテクル
例えば「死んである」、「流れておく」、「離婚していく(くる)」とは言えない。
・他の文法的意味の共在―シテアル、シテオク、シテシマウ
シテアルには「受動+意図性」、シテオクには「意図性」、シテシマウには「感情・
評価性」が複合的にとらえられている。
・アスペクト対立の存在―シテクル(シテイク)、シテシマウ
これらは「シテクル―シテキテイル」、「シテシマウ―シテシマッテイル」のよう なアスペクト対立をもつ。
(工藤1995:32-33)
しかしながら、図 2-5 に示されているように、継続相シテイルにとって、主体という概 念が欠かせないものであるのに対して、シテアルは客体中心のアスペクトであり、シテイ ルと一体となって体系をなしていると見るべきである(金水 2000;益岡2000など)。
シテイル(進行)
主体 客体
シテアル(結果)
図 2-5. 主体動作・客体変化動詞(金水 2000:45)
また、副島(2005、2007)は従来アスペクト体系の中であまり論じられていない「シツ ツアル」、「シテアル」をアスペクト体系の中に位置づけて日本語のアスペクト体系を以下 のように構築している。本研究も「シテイル」との対立から「シテアル」、「シツツアル」
をアスペクト体系に位置づけるべきと考える。
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動的相………スル アスペクト形式
不完結相………シツツアル 静的相
主体相………シテイル 結果相
客体相………シテアル 図 2-6. アスペクト形式の意味上の分類(副島 2007:59)