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第 4 章 中国語「V 有」に関する考察

4.6 存在型アスペクト形式「V 着」、「在 V」との比較

4.6.1.2 対象指向性

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ところが、「V 着」は「パーフェクト」の用法を表すことができないのに対し、「V 有」

は「パーフェクト」の用法を表すことができる。例えば、文(4.128)では、「1926 年に散 文を書いた」という行為は基準時までに効力をもっていることが表される。しかし、「V有」

を「V着」に置き換えた文(4.129)は非文である。正しい文にするためには、時間的成分

「1926 年」を削除する必要があるが、この場合、「V 着」は「動作の継続」を表すことに なる。すなわち、「V 着」は「結果の存在」、「過程の存在」にとどまっており、「パーフェ クト」への発展が見られない。

(4.128)鲁迅 先生 在 1926 年 写有 散文 《藤野先生》。

lǔxùn xiānsheng zài nián xiě-yǒu sǎnwén téngyěxiānsheng 魯迅先生 1926 年に 書く-YOU 散文 藤野先生

(1926 年に、魯迅先生は散文『藤野先生』を書いている。)

(4.129)*鲁迅 先生 在1926 年 写着 散文 《藤野先生》。

lǔxùn xiānsheng zài nián xiě-zhe sǎnwén téngyěxiānsheng 魯迅先生 1926年に 書く-ZHE 散文 藤野先生

(作例)

129

(4.131)相片 旁边 还有 一张 纸, 上面 也 写着 我 的 xiàngpiàn pángbiān háiyǒu yīzhāng zhǐ shàngmian yě xiè-zhe wǒ de 写真 横 それから 一枚 紙 上 も 書く-ZHE 私 の 名字。

Míngzi 名前

(写真の横においてあった紙にも、わたしの名が書いてあったわ。)

(『青春之歌』)

「V 着」の表す「動作の継続」と「結果の継続」を次の図 4-15 に示すことができる。I と Fはそれぞれ動作の開始点と終了点を表す。「動作の継続」は IとFの間にある動きの状 態を静的状態のように継続的に捉える。「結果の継続」は F から始まる結果状態を継続的 に捉える。

I F I F

a. 動作の継続 b. 結果の継続 図 4-15. 「V着」の意味的特徴

一方、「V 有」も基本的に「継続性」を有するが、「V 着」とは異なり「動作の継続」で はなく、「結果の継続」を表す。例えば、「動作の継続」を表す文(4.130)に対しては、「V 有」構文に置き換えられないが、文(4.131)に対しては、「V 有」に置き換えても意味が ほぼ変わらない。

(4.132)*鸽子们 大摇大摆地 在 院子里 走有。

gēzimen dàyáodàbǎide zài yuànzili zǒu-yǒu 鳩たち 大威張りで で 庭の中 歩く-YOU

基準時 基準時

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(4.133)相片 旁边 还有 一张 纸, 上面 也 写有 我 的 xiàngpiàn pángbiān háiyǒu yīzhāng zhǐ shàngmian yě xiè-yǒu wǒ de 写真 横 それから 一枚の紙 上 も 書く-YOU 私 の 名字。

míngzi 名前

(写真の横においてあった紙にも、わたしの名が書いてあったわ。)

「V 着」と「V 有」がとりたてる局面は以下の図 4-16 に示すことができる。すなわち、

両者が重なっている部分は「結果の継続」を表す場合である。

I F

t

V着 V着/V 有 図 4-16. 「V着」と「V有」との違い

副島(2005、2007)は、「動作の継続」を動作の開始点において新しい状況が成立し、

その状況が継続していることを表すと捉えることが可能であると指摘している。「V 着」が 事態を状態化して捉えるのが基本であるため、非限界動詞に「着」が付いた場合、動きの 開始点において、限界に達成して実現された状況が継続していると捉えられる。すなわち、

「V 着」が表す「動作の継続」と「結果の継続」を「結果」というアスペクト的意味とし て一元化して捉えることができる。異なるところは、「動作の継続」においては、「結果」

の開始点は動きの開始点である。「結果の継続」においては、「結果」の開始点は動きの終 了点である。Jaxontov(1988)も「V 着」を「結果相」と位置づけて、基本的に(4.134)

のような「主体(subjective)」を表すタイプ、(4.135)のような「客体(objective)」を表 すタイプと文(4.136)のような「所有(possessive)」を表すタイプが存在すると指摘して いる。だたし、文(4.136)は、主体の状態を表しているため、やはり「主体結果相」の一 種と考えられる。前述したように、「V 有」は客体の状態に重点が置かれている。「V 有」

と「V 着」とは共に結果状態を表す「結果相」の表現であると言 える。

131

(4.134)他 坐着。

tā zuò-zhe 彼 坐る-ZHE

(彼が坐っている。)

(4.135)门 开着。

mén kāi-zhe ドア 開く-ZHE

(ドアが開いている。)

(4.136)他 戴着 帽子。

tā dài-zhe màozi 彼 付ける-ZHE 帽子

(彼は帽子を付けている。)

(Jaxontov 1988:113)

「結果の継続」を表す「V 着」と「V 有」においては、動作主が削除され、結果状態に 重点が置かれるとされている。しかしながら、文(4.137)のように、動作主は最初から不 問に付されているものの、動作主を補おうとすると、文(4.138)のように、「A+在 L+V 着+P」という形式で動作主を補うことも可能である。 鵜殿(1982)が指摘しているよう に、動作の主体が明示された文(4.138)は静態義と動態義両方を解釈することができる。

(4.137)墙上 挂着 一幅 画儿。

qiángshàng guà-zhe yīfú huàer 壁上 掛ける-ZHE 一枚 絵 (壁に絵が掛けてある。)

(4.138)他 在 墙上 挂着 画儿。

tā zài qiángshàng guà-zhe huàer 彼 に 壁上 掛ける-ZHE 絵

(彼は壁に絵を掛けたままにしてある。/彼は壁に絵をかけているところだ)

(鵜殿 1982:10)

一方、「V 有」に関しては、文(4.139)が示すように、動作の主体は義務的に削除され

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ており、補おうとしても補うことができない。つまり、存在状態の背後に動作 主の存在を 読み取ることは可能である「V 着」と比べ、動作主の存在を読み取りにくい「V 有」のほ うは動作主体との関わりが少なく、対象指向性をもっていると考えられる。

(4.139)??他 在 墙上 挂有 画儿。 tā zài qiángshàng guà-yǒu huàer 彼 に 壁上 掛ける-YOU 絵

また、文(4.140)では、「挖有(掘ってある)」は対象の存在状態を表しているが、「挖 着(掘っている)」にした文は、「動作の継続」になったため、非文となる。

(4.140)…略…兔子 为了 生存, 通常 要 在 觅食 的 区域 内 tùzi wèile shēngcún tōngcháng yào zài mìshí de qūyù nèi 兎 生存するために 通常 する 食物を探す区域内で 挖有 多个 洞穴。

wā-yǒu duōgè dòngxué 掘る-YOU 幾つか ほら穴

(生存するために、兎は食物を探す区域内で幾つかのほら穴を掘るものだ。)

(『江南时报』、2006-12-21)

(4.141)*…略…兔子 为了 生存, 通常 要 在 觅食 的 区域 内 tùzi wèile shēngcún tōngcháng yào zài mìshí de qūyù nèi 兎 生存するために 通常 する 食物を探す区域内で 挖着 多个 洞穴。

wā-zhe duōgè dòngxué 掘る-ZHE 幾つか ほら穴

(4.142)のように、文(a)では、動詞「写(書く)」に「着」がつけられて、動作主体 が論文を書いている状態を表し、「対象指向性」を積極的に表さない。一方、文(b)では、

動詞「写(書く)」に「有」が付けられており、「パーフェクト」の用法であるが、前述し たように、弱い「対象指向性」を有すると考えられる。つまり、「V着」は主体の結果状態 を積極的に表す「主体結果相」であるのに対し、「V有」は客体の結果状態を積極的に表す

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「客体結果相」であると言える。

(4.142)a. 他 写着 论文。

tā xiè-zhe lùnwén 彼 書く-ZHE 論文

(彼は論文を書いている。)

b. 20年前, 他 写有 许多 论文。

niánqián tā xiè-yǒu xǔduō lùnwén 20年前 彼 書く-YOU たくさん 論文 (20年前に彼は論文を書いている。)

(作例)

さらに、筆者は『日中対訳コーパス』に収録されている『插队的故事』と『红高粱』と いう2編の小説を対象に、「V着」が実際にどのように現れているのかを調査した。この 2 編の小説は、どちらも会話の文も多く使用されている。調査の結果、「V 着」の総出現数は 1679例であった。出現回数の10回以上の動詞を以下の表 4-5に示す。

表 4-5. 小説における「V着」の使用状況

V着

出現 回数

例文

看着 91 仲伟满意地看着他的女儿。(仲偉は満足そうに自分の娘を眺めている。)

对着 44

大抬杆子架在河堤上, 枪口对着石桥。(土手に備えつけられた旧式砲は、石 の橋を狙っている。)

跟着 39

…略…他走得缓慢又镇静,身后也没 跟着那条狗。(歩き方がゆっくりとして 落ち着いていて、うしろに犬を連れていなかったという 。)

带着 28

那个监工又转过来,提着藤条,脸上还带着那种冷静的笑容。(あの監督がま たもどってきた。藤の鞭をさげ、顔にはやはり冷たい笑みを浮かべている。)

提着/

提拎着 26

父亲提着手枪,钻进高粱地,跨过公路,走到哑巴面前。(父は拳銃をさげて 高梁畑にもぐりこみ、公路を横ぎって唖巴のところへ行った。)

拉着 23 一个土匪拉着骡子跑过来。(一人の盗賊が騾馬を引いて駆けてきた 。)

134 望着 22

母子俩都不再说话,望着窗外,…略…(親子ふたりとももう何も言わずに 窓の外を眺めていた。)

站着 21 奶奶舒适地站着,…略…(祖母はのびやかな気分で立っていた。)

盯着 19

栓儿端着长把镰刀立在河岸上,两眼 盯着上游的浪峰。(栓児は長い柄の鎌を 持って川岸に立ち、両目を上流の波頭に見据えている。)

等着/

等待着 18

监工张嘴叼了烟,又等着那人替他点燃。

(監督は口に煙草をくわえ、男が火をつけるのを待っている。)

挑着 17

一个大个子兵挑着两个空酒篓。

(大柄な一人の兵士が、空の酒籠を 2つ天秤棒で担いでいる。)

端着 17

栓儿端着长把镰刀立在河岸上,两眼 盯着上游的浪峰。(栓児は長い柄の鎌を 持って川岸に立ち、両目を上流の波頭に見据えている。)

叫着/ 叫唤着

17

劫路人在余占鳌手下熟练地叫着。(追いはぎが 、余占鰲の手の下でぺらぺら とまくしたてた。)

沿着 17

驴车沿着清平河走,清平 河只剩了几尺宽的细流。( 驢馬車は流れの幅が数尺 しかない清平河に沿って走った。)

牵着 16

父亲牵着爷爷的手,向着高粱深处走。(父は祖父の手をひいて、高梁の茂み の奥へ歩いていった。)

坐着 16

“昨儿我在饭馆里就看见她了,一个人 坐着,光喝水。”(「昨日食堂で見か けたんだ。ひとりぼっちで座って水ばかり飲んでいた」)

盼着 15 羊羔羔也盼着老羊回来。(小羊が親の帰りを待っている。)

听着 15

哑巴拄着枪,听着余大牙把那首歌子杂乱无章地唱 。(唖巴は銃を地面につい て、余大牙の調子はずれな歌に耳をかたむ けていた。)

拖着 14

刘大号拖着一条血腿,从河堤边爬过来,…略…( 劉大号が血まみれの片足 をひきずって、土手から這ってきた。)

抱着 14

外曾祖父抱着一捆干草,一把把地抽着喂 驴。(曾祖父は干し草の束をかかえ、

それをひとつかみずつ抜いて驢馬に食わせている。)

骑着 13

在这条小路上,奶奶骑着小毛驴,悠闲地行走,…略…(その小道を、祖母は 驢馬に乗ってゆったりと進む。)

打着 13 有一个队员睡着了,打着很响的呼噜。(隊員が一人、大きないびきをかいて