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第 4 章 中国語「V 有」に関する考察

4.3.3 中間的な存在

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(袁他2009:305)

4.3.4 「V 有」の表す意味の連関

上述の「V 有」構文の各用法の使用実態を把握するため、コーパスから無作為に 500件 の実例を抽出して分析した。「V有」構文の各意味用法の分析結果を表 4-2に示す。

表 4-2. 「V有」構文の使用実態

対象の存在様態 行為経験の存在 中間的存在 単なる状態 計

V有 391 73 22 14 500

% 78.2% 14.6% 4.4% 2.8% 100%

表 4-2 に示したように、「V 有」構文においては、「対象の存在様態」という意味の出現 率が一番高く(78.2%)、大半を占めている。「行為経験の存在」と「単なる状態 」という 2 つの意味用法はそれぞれ 14.6%と2.8%にとどまり、使用頻度はそれほど高くない。

基本的な用法と派生的な用法を認定するには多くな基準がある。例えば、瀬戸(2007a,b)

は多義語の基本的な用法の特徴として以下のものが挙げられている。(i)文字通りの意味 である;(ii)関連する他の意味を理解する上での前提となる;(iii)具体性(身体性);(iv)

認知されやすい;(v)想起されやすい;(vi)用法上の制約を受けにくい;(vii)意味展開 の起点(接点)となる;(viii)、言語習得の早い段階で獲得される(ix)使用頻度が高い。

松本(2009)はこれらを「概念的中心性」と「機能的中心性」に集約した上で、この両方 を併せ持ったものが基本的な用法のプロトタイプとしている。これは構文の多義性を考え る際にも有効であると考えられる。本研究は松本(2009)を参考にして「概念的中心性」

と「機能的中心性」という 2つの側面から「V テアル」の基本的な用法と派生的な用法を 考える。

「概念的中心性」に関しては、4.1 節で述べたように、I 型の「V 有」構文(「対象の存 在様態」を表す「V 有」構文)に現れる場所名詞句は動詞 V によるものではなく、「有」

によるものである。また、典型的存在構文からなる問いの文 に対して、「V 有」構文は典型 的存在構文と同じように自然に用いられる。よって、典型的存在構文の表す意味との近さ から考えると、II 型の「V 有」構文(「行為経験の存在」を表す「V 有」構文)と比べ、I 型の「V 有」構文は基本的な用法であることが言える。

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また、「機能的中心性」に関しては、 ここでは、主に形式的な制約が少ないという考え 方に基づいて基本的な用法を認定する(籾山 1992、2000)。例えば、「もの」には具体的な 物体を表す意味と人を表す意味が挙げられる。人を表す場合には「賢い者」のように修飾 語が必要に対し、物体を表す場合にはそのような制約がない。このように、制約条件の有 無に基づいて、籾山(2000)は物体を表す意味のほうを「もの」の基本的な用法としてい る。また、副島(2007)は、日本語の「V テアル」を分析する際に動作主や時を表す副詞 成分などの条件の限定の有無という観点から、「変化の結果の継続」が基本的な用法であり、

「パーフェクト」が派生的な用法であると主張している。例えば、文(4.82)と比べ、文

(4.83)、(4.84)は、それぞれ動作主「谷口」と副詞成分「一昨日」などの 限定的条件が

つけられており、派生的な用法であると考えられる。

(4.82)テーブルの上には、彼女の腕時計と眼鏡が 置いてあった。

(4.83)谷口がレンタカーを借りて、近くに停めてあるのだ。

(4.84)「しまった!」と思わず声を上げたのは、昨日の夕食を一緒に、と 一昨日、

谷口と約束してあったのだ。

(副島2007:166-168)

(4.85)、(4.86)が示しているように、中国語の「V 有」においては、I 型と比べて、II 型のほうが動作主や副詞成分などの限定的条件が多く現れるため、派生的用法であると考 えられる。

(4.85)墙上 挂有 一幅 画。

qiángshàng guà-yǒu yīfú huà 壁上 掛ける-YOU 一枚 絵

(壁に絵が一枚掛けてある。)

(4.86)新闻 中心 为 记者 准备有 午餐 和 晚餐。

xīnwén zhōngxīn wèi jìzhě zhǔnbèi-yǒu wǔcān hé wǎncān ニュースセンター 記者のために 準備する-YOU 昼食と夕食

(ニュースセンターは記者たちのために昼食と夕食を準備してある。)

(再掲)

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上述したように、I 型の「V 有」構文は II 型の「V 有」構文と比べ、存在の意味が色濃 く残っており、典型的存在構文に一番近い。その上、動作主や時を表す副詞成分などの限 定的な条件が現れないことから、基本的な用法であると考えられる。これに対し、II 型の

「V 有」構文は存在の意味を表す典型的存在構文と離れており、限定的な条件が多く、派 生的な用法であると考えられる。また、I 型の「V 有」構文は具体的な存在物がある場所 に存在していることを表すのに対し、II型の「V有」構文は抽象的な行為経験が動作主(経 験主)という概念領域に存在していることを表すという点から考え ても、II 型の「V 有」

構文は派生的な用法である。「V 有」構文の表す構文の意味は以下の図 4-5に示すことがで きる。すなわち、「行為経験の存在」は「対象の存在様態」から拡張していると考えられる。

中間的な存在 (拡張)

図 4-5. 「V有」構文で表される意味の拡張関係