写真3−1−2 河川水・雨水の調査地点
一25・
3.1.3試料採取方法と調査期間 (1)河川水
河川水の採水には、山本(1999年)が使用した簡易採水器12)を高純度水で 洗浄して使用した。橋上よりロープを使って簡易採水器を河川の流心部に おろし、その表層部の水を、容器を共洗いした後に採幽した。また、流量 が極端に少ない場合は、直接河川に入り、採水器で汲み上げた。採長後、
速やかに、簡易計測器を使用し、水温、pH、 ECを測定して、とも洗いした ポリ容器に移した。ポリ容器は、破損しにくく、容器からの溶出物質も少 ない。使用したポリ容器は、全て薄い洗剤で洗浄後、水道水ですすぎ、さ らに高純度水、超純水で洗浄し乾燥させたものを使用した。(写真3+3)
(2)雨水
雨水の採水は、1週間に降った雨水をすべて採画する「1週間降水採水」
でおこなった。採水に使用した器具は、これまでのロートを利用したもの は、冬季の降雪時に、雪で詰まってしまうことから、口径280㎜、高さ300 ㎜の円筒形容器にポリエチレン製の袋をつけたバルク(一括式)式の採水 器を使用した。ポリエチレン製の袋は、秋田大学工学資源学部環境物質工 学科で雨水の採水に活用されているものと同等のものであり、袋からの溶 出物質もない。また、採水時には、降水の溜まった袋を新しいものと交換 するだけでよく、作業効率がよい。ただ、夏季には、昆虫などが混入した ことが数回あるなど、異物が混入しやすい欠点がある。(図3ヨー2)
調査は全ての地点で、2000年7月から2001年7月まで、実施した。た だし、地点Cは、2000年12,月から2001年7月までである。
3。1.4分析方法と項目
採取した試料は、実験室に持ち帰り、超純水を通したろ紙を使ってろ過 し100mlポリビンに入れて、冷暗所保存した。また、雨水については降水 量を測定した。なお、分析に利用した水は、全てイオン交換水を2回蒸留 し、さらに超純水製造器(日本ミリポアリミテッド製mi!li−Q)により処 噛した超純水を使用した。
一26一
写真3−1−3 河川水採水器
『F 類
ゾ
1/
diameter:280 mm
hight100cm
図3−1−2 雨水採水器具
一27・
(1)イオンクロマトグラフ法
河川水、雨水に含まれる主要イオンのうち、水素イオンを除くイオンは、
イオンクロマトグラフ法で測定した。
使用機器 DIONEX series 20001
標準溶液 東亜電波工業(株)製標準溶液(Na+23. OmgL−1, M4+18.Omgじ1,
K+39.lmgL−1, Mg2+ 24.3mgL−1, Ca2+40.OmgL−1,
C1−79.OmgL−1, NO2−46.OmgL−1, NOゴ124.2mgL 1,
SO42−96.1mg L『1)を50倍希釈して、各イオン当量 濃度が20μequiv L皿1(Na+、NH4+、NO2一)、
40μequivL 1(K+ 、 Mg2+ 、 Ca2+ 、 Cl一 、 NO3一 、 SO42つ
になるようにして使用した。
測定イオン 陽イオン(Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+)
陰イオン(Cl 、NO2一、NO3一、SO、2一)
陽イオン測定旧離液20醐メタンスルホン酸
(和光純薬特級メタンスルホン酸1.3mLを水で希釈し全 量を1しにする。)
再生液 0.375%テトラメチルアンモニウムヒドロキシ ド溶液
(和光純薬特級 15%テトラメチルアンモニウムヒドロ キシド溶液24.3mLを水で希釈し全量を1しにする。)
陰イオン測定 溶離液 1.8副Na2CO3+1.7細NaHCO3
(和光純薬特級Na2CO319.1gと和光純薬特級NaHCO314.3g を水に溶かして、『その溶液を10mL取り出して水で希 釈し全量を1しにする。)
再生液 25mM硫酸
(和光純薬特級濃硫酸0.75mLを水で希釈し全量を1しに する。)
一28一
(2)pHメーター法(ガラス電極法)
試料中の水素イオン濃度は、ガラス電極法で測定した。
使用機器 堀場 F−22・電極6378型
校正標準液 堀場 100−4(pH4.0)、100−7(PH7.0)、
100−9(pH9.0)
ガラス電極を試料溶液に浸漬し5分後のメーターの値を読 んだ。また、多数の試料がある場合は、直前の試料の影響が 残ることがあるので、1試料にっき3回の測定をおこなった。
(3)電気伝導度法
使用機器 堀場 C−172
(4)pH計によるアルカリ度測定法 河川水試料のみ測定した。
今回用いたアルカリ度(酸消費量)の測定は、試料水のpHが、 pH=4.8 になるまでに要した酸標準用液(0.02N H2SO4)の量を1L当たりのmg当 量(mg)もしくはこれに相当するCaCO3(1mg当量≒50mg)のmg数に換算し て表現した。本研究の場合、河川水g)pHのほとんどがpH=8.3以下、
pH=6。3以上であるので、炭酸成分の約98%はHCO3一の形で存在すると見 なし、HCO3一(1mg当量=61.01714mg)のmg数に換算した613)
試料水50mLをビーカーにとり、pH計の電極を浸し、スターラーでか き混ぜながら、0.02N H2SO4で滴定する。 pH計が指定されたpH=4.8に なったら滴定を終了する。滴定量と硫酸のファクターからアルカリ度、
さらにHCO3一の量を算出した。
・29一
3.2結果
3.2.1採取試料数
河川水・・全326個
地点Nα 地点名 採取試料数
1. 安曇川 河口付近 48個
2. 安曇川 中流下 56個
3. 安曇川 中流上 56個
4. 安曇川 上流 56個
5. 与市谷 56個
6. 麻生川 54個
雨水 ・・全181個
地点Nα 地点名 採取試料数
A. 高島町 自宅 48個
B、 朽木村
ァ立朽木生きものふれあいの里
52個
C. 朽木村 堀場製作所朽木研修所 30個
D. 大津:市 大津市立葛川中学校 51個
一30一
3.2.2データの精度の検討
現在、日本国内の主な酸性雨調査では、イオンバランスによるチェック でデータの精度の確保が図られている。イオンバランスをチェックする方
法は、電気的中性の原理からの確認(イオンバテンス法)と、電気伝導度(EC)
の計算値ど実測値の比較(伝導度法)による2種類で行われている。13)
本研究の河川水と雨水についても上記2種類の方法で検討した。
イオンバランス法
河川水(雨水)中のイオンについて、当量濃度単位で表したとき、河川水
(雨水)は電気的に中性なので、(陰イオンの総和)=(陽イオンの総和)となる。
河川水(雨水)中には、多くの種類のイオンが存在するが、量的には、主成 分となるイオン種は限られている。
雨水の場合は、測定した陽イオン6種(H+、Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+)
と陰イオン3種:(Cl一、NO3一、SO42 )がそのほとんどを占め、経験的には、
目本の雨水はこの9種のイオンでほぼイオンバランスがとれている。そこ で、陰イオンの総和をA、陽イオンの総和をCとすると
A=[Cr]+[NO3一]+[SO42一]
C= [H+]+[Na+ ]+[NH4+ ]+[K+ ]+[Mg2+ ]+[Ca2+]
となり、A/Cの比を計算して、その値が1から大きくはずれる場合はチ ェックする必要がある。
また、河川水についても、雨水と同様におこなったが、河川水は、全試 料がpH=6以上であり、HCO3一の濃度が高いため、陰イオンの総和Aにこの濃 度を加えた。
A=[Cr]+[NO3『]+[SO42『]+[HCO3一]
C= [H+]+[Na÷ ]+[NH4+ ]+[K+ ]+[Mg2+ ]+[Ca2+]
採取した全試料について、その関係を図3−2−1a、図3−2−1bに示す。河 川水、雨水ともに1:1の直線の近傍にほぼ全ての試料が分布しているこ
とがわかる。、
一31・
1000
800
L
・≧
3 600 ミ 麟
A 400
ヤ 200
0
● ●● ○
@・書●
●●
1:1
○ ●
0 200 400 600 800 1000
陽イオン総量/μequivじ1
図3辺司a安曇川・河川水のイオンバランス
.700
600
L」500
馨
冬400
劇 貿3・・
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謎200 100 0
●
1
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1:1
σ● ●
●
●
●
●●
● ●
ン 1
●
●
0 100 200 300 400 500 600 700 陽イオン総量/μequiv『
図3−2−1b雨水のイオンバランス
一32一
電導度法(EC)
河川水(雨水)の電気伝導度(EC)の値は、河川水(雨水)中の主要成分の濃 度から、それぞれのイオンの水溶液中の当量電気伝導度を用いて、下式の
ように求めることができる。
計算による電気伝導度をECcalとし、実測値をECmesとする。
ECcal={389.8[H+]+50.10[Na+]+73.55[NH4+ ]+73。50[K+ ]+53.05[Mg2+ ]+5
9.5[Ca2+]+76.35[Cl ]+71.46[NO3一 ]+80.02[SO42一]}
(河川の場合は、これに44.5[HCO3一]を加える。)
この計算による電気伝導度をEC。alと実測値をEC。。、の比を調べると、
その値が1から大きく外れる試料は、チェックを要する。採取した全試 料について、この関係を図3−2−2a、図3−2−2bに示す。河川水、雨水と
もに1:1の直線の近傍にほぼ全ての試料が分布していることがわかる。
以上の2種類の方法の結果により、本研究でおこなわれた河川水と 雨水の測定は、おおよそ正しく実施されたと考える。
一33一
100
80
T§60
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蹟 40
20
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0 20 40 60「 80 100
ECca/μScm噂1
図3−2−2a安曇川・河川水のεCの実測値と計算値の・
関係
1:1 ● ●
7
● ● ●
3●艦 f●
● 、●
●
●○ ●
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●
140 120
霊00 7
§、80
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0
0 20 40 60 80 100 120 140
ECGal/μScm騨1
図3−2−2b雨水のεCの案測値と計算値の関係
1:1
● ●
●
●
o偽 ●●●●
●
一34・
3.3考察
3.3.1降水量
図3−3−1に、本調査地域の4地点における降水量の経月変化を示す。
いずれの地点も、ほぼ同傾向を示しているが、全般に地点Aは、平野 部に位置するために、他の地点より降水量は少ない。また、冬季は、
北部に位置する地点B、Cに降水量が多い。
2000年7月下旬から9月上旬までは、降水が少なく、特に8,月は少 雨となり、建設(国土交通)省がまとめた7月から8月の琵琶湖流域平 均雨量(8月29日集計)は、累計で83mmと観測をはじめた1894年以降 で最少を記録した。図3−3−1のへ地点では、8月の降水量が10mmとな り調査期間中の最少の,月降水量であった。9,月に入ると、11日から12 目にかけて、台風14号の影響による集中豪雨となり、本調査地域で もこの週の期間に200㎜}以上の降水量となった。10月も月間を通して 雨量が多かった。この時期の降水量は、図3−3−1に示すように、B、 D 地点では、300mm近くになり、ほぼ2001年1,月の冬季の降水量と同程 度であった。以後、降水量は、11,月、12,月と減少するものの、冬季1 月から3月かげて、降雪により増加した。さらに、4月は減少するが、
梅雨時期の5月、6月に増加した。
一35・
350 300 250
蓬200 繭
盤150 100
50
0
般
+A地点
一昼一B地点
+C地点
→ξ一D地点
月(2000年7月〜2001年7月)
図3−3−1調査地域の降水量の変化
*地点Cは、2000年12月より調奎を開始した。
一36一
3。3,2pHの分布
図3−3−2aに、2000年7月から2001年7,月までの河川水の一週間毎 の6地点全地点のpHの分布を示す。河川水は、 pH=7.0〜7.2の度数が 最も多く、分布幅もpH=6.2〜pH7.8程度で狭い。
図3−3−2bに、2000年7月から2001年7月までの一週間雨水の4地 点全てのpHの分布を示す。降水は、 pH=4.6〜4.8にピークを持つ分布 となった。また、分布幅は、pH=3.8〜pH=6.6であり、河川水と比較し て広い。
一37一