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新聞報道内容の正確性について

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 76-83)

第 3 章 通信ネットワーク事故に関する新聞報道の分析と考察

3.4 通信ネットワーク重大事故に関する新聞報道の分析

3.4.3 新聞報道内容の正確性について

本節では,新聞報道(4NDB)と重大事故DBの内容を比較することにより,

新聞報道の正確性を評価する.評価項目は,障害日時,障害時間,障害地域,

事故概要,障害の影響,原因等の6項目とする.評価指標は,新聞報道を重大事 故DBデータと比較し,その結果により下記5段階評価とする.ただし,「原因等」

の場合は比較結果ではなく,括弧内に示した報道の詳細レベルを使用する.

評点 比較結果 3 合っている(ユニット等装置内部レベル)

2 ほぼ合っている(装置レベル)

1 一部のみ合っている,概要は合っている(システムレベル)

0 記述なし(記述なし)

-1 差異がある(差異がある)

注 1 障害日時および障害時間で「±15分以内」は”3”,「1時間以内」は”2”,

2 障害地域で「一部地域漏れ」は”2”,「重要地域漏れ」は”1”とする.

3 事故概要で「障害内容漏れ」は”2”,「重要障害内容漏れ」は”1”,

「事実と異なる記述」は”-1”とする.

4 障害の影響で障害加入数が「±20%以内」は”2”,「±20%超」は”-1”

とする.

(1) 内容の正確性の分析

表 3.9 に 6 項目の評価項目について 5 段階評価した結果の 4 紙合計を,図 3.16

~図 3.21 に新聞毎の結果を示す.なお,本評価で使用しているデータの母集団 は重大事故 DB の全事例 69 件である.

*重大事故 DB は分割事例 6 件を含めて 73 事例であるが,分割事例のうち 4 件は障害時間または障害加入数のみの違いであるため,これらを 1 事例とし て 69 件とした.

表 3.9 評価項目別評点別記事数(4 紙合計)

-1 0 1 2 3

差異あり 記述なし 一部のみ 合っている

ほぼ合って

いる 合っている

障害日時 2 9 48 10 73 142

障害時間 10 37 11 8 76 142

障害地域 0 23 6 13 100 142

事故概要 3 0 17 22 100 142

障害の影響 4 22 12 8 96 142

原因等 0 18 19 61 44 142

合計 19 109 113 122 489 852

①障害日時

障害日時の評点別内訳は,“3”と“2”を合わせ58%,“1”34%,“0”6%,

“-1”1%である.“1”のケースは,発生時間の記述はあるが復旧時間の記述 がないか違っているケースが約8割,大まかな時間または断続的障害の一部の みしか記述されていないケースが約2割である.復旧時間の記述がないケース

要な事故の場合はできるだけフォローアップ内容をもっと報道すべきである.

また,復旧時間が異なっているケースではほとんどの場合,複数紙で同じ時 間になっているので,障害発生直後の発表と届出の値と異なっている可能性 がある.“-1”の事例は下記事例のみである.

・重大事故DB:H17.6.16 4時50分~10時34分

-新聞報道:A紙 同日 4時ごろ~8時ごろ B紙 同日 4時~8時5分

②障害時間

障害時間の評点別内訳は,“3”と“2”を合わせて59%,“1”8%,“0”26%,

“-1”7%である.障害日時に比べて“1”が少なく,復旧時間の記述がない

“0”が多い.

③障害地域

障害地域の評点別内訳は,“3”と“2”を合わせて80%,“1”4%,“0”16%,

“-1”0%である.

④事故概要

事故概要の評点別内訳は,“3”と“2”を合わせて86%,“1”12%,“0”0%,

“-1”2%である.事故概要は必ず書いてあり,狭い紙面スペースを効率良く 使って簡潔に説明されている.“1”のケースは,例えば通話とインターネッ ト接続の両方が利用不可のケースに対して通話不可しか記述されていないな ど重要内容の抜けである.“-1”は,下記2件3紙であり,いずれも誤りがあ る.

-重大事故DB:2004年7月29日のアッカネットワークス社のADSL通信設備の故 障により,同社が回線を提供しているNTTコムなどを含む12社計約14万回 線に影響

:新聞報道(A紙)-表題が「NTTコム,14万回線が不通に」となってい るため,NTTコムが14万回線の影響を受けたように勘違いされる恐れが ある.

-重大事故DB:2005年6月16日NTTドコモのFOMAが北海道全域でサービス停止

:新聞報道(A紙,B紙)-NTTドコモのFOMAが北海道全域でつながりにく

⑤障害の影響

障害の影響の評点別内訳は,“3”と“2”を合わせて73%,“1”9%,“0”16%,

“-1”3%である.“-1”は4件あるが,これらは全て障害加入数が異なるケー スであり,一例を下記に示す.

-重大事故データ:2001年9月9日,KDDIのCdmaOne携帯電話のパケット通信 サービスで約178万加入が利用不能

:新聞報道(D紙)-KDDIのインターネット接続サービス「EZウェブ」が 合計約110万台利用不能

⑥原因等

原因等の評点別内訳は,“3”31%,“2”43%,“1”13%,“0”13%,“-1”0%

である.74%は装置レベル,例えば交換機,サーバ,通信機器などまで特定さ れており,さらにその内の42%は電源の故障,光ケーブル切断,伝送部品故障,

HDD不良などの詳細原因も記されている.“1”は,設備の障害,機器の障害 などの記述のようにシステムレベルまたは大まかな切り分けのレベルの内容 である.“-1”のケースはない.

以上の6項目に関する4紙全記事についての各評点別比率を図3.22に示す.

“1” は,「一部のみしか記述されていないケース」と「一部が違っているケ ース」がある.後者のケースは113件中8件である.したがって,4NDBと重大 DBを比較して内容的に違っているのは,“-1”の19件と“1”の内一部が違って いる8件の合計27件,全体の約3%である.

各項目別平均評点を新聞毎にまとめて図3.23に示す.この中には参考のため に各通信事業者のWEBニュースリリースから得た情報についても追加してある.

因みにWEBニュースリリースの重大事故DBに対する網羅率(6年平均)は約33%

である.図3.23から下記のことがいえる.

・4NDBとWEBニュースリリースを比べると,前者が良い項目は障害地域,障 害の影響,原因等であり,後者が良い項目は障害日時,障害時間,事故概要 である.このことから,新聞報道は読者への影響に重点を置き,通信事業者 は事故の説明に重点を置いていることが分かる.

・各新聞の比較では,C紙は高い評点が多く,D紙は低い評点が多い.A紙とB

0 5 10 15 20 25 30 35 40

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

図 3.16 内容評価:障害日時

0 5 10 15 20 25 30 35 40

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

図 3.17 内容評価:障害時間

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

0 10 20 30 40 50

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

図 3.19 内容評価:事故概要

0 5 10 15 20 25 30 35 40

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

図 3.20 内容評価:障害の影響

0 5 10 15 20 25 30

-1 0 1 2 3

評点

A B C D 4NDB

図 3.21 内容評価:原因等

3 2 1 0 -1

489件/

57.4%

122件 /14.3%

113件/

13.3%

109件/

12.8%

19件/2.2%

評点

記事数/

比率(%)

図 3.22 評点別記事数比較(4紙6項目合計)

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0

障害日時

障害時間

障害地域

事故概要

障害の影響

原因等

A紙 B紙 C紙 D紙 4NDB ニュースリリース 図 3.23 評価項目別新聞別平均評点

(2)内容の正確性に関する考察

a.4NDBの 1 紙平均評点は良い順に,事故概要,障害地域,障害の影響,障害日 時,原因等,障害時間である.3NDB も順番は同じである.この順番は読者と関 係が深い項目が上位にあり,読者にとって望ましい順番である.

b.前述の分析により4NDB と重大 DB を比較して内容的に違っているのは,

3.4.3 項(1)で述べたように合計 27 件,全体の約 3%である.残り 97%の内訳は,

「合っている」と「ほぼ合っている」計 72%,「一部のみ合っている」(「一部の み違っている」を除く)12%,「記述なし」13%である.このことから内容の正 確性は比較的信頼性が高いといえる.

c.前記 b.に示した4NDBと重大事故 DB との内容の違い 27 件に関して,差異の 内容は下記のとおりである.

第一に障害時間の違い(10 件)であり,その原因は復旧時間の記述なしまた は違い 9 件,発生時間の違い 1 件である.第二に障害加入数の違い(4 件),第 三に事故概要の違い 3 件である.事故発生直後と届出時点とでは情報が異なる ケースもあると思われるが,重要な違いや追加情報はフォローアップの報道で 伝えるべきである.なお,本論文で収集した新聞記事には可能な限りフォロー アップ記事も含めている.

d.事故原因の表現に,故障,障害,不具合などいろいろ言葉が使用されている.

これらの中で多く使われているのは「故障」であり,装置の故障から操作ミス,

さらには過負荷によるダウンまで「故障」という言葉が使用されている.間違 いではないが,より正しい事故原因を伝えるために人的ミスや外部環境による 過負荷などは分けて表現した方が良い.

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 76-83)