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フォールトと事故内容の組合せとニュース性・重大性の関係分析 138

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 156-161)

第 5 章 技術的視点での金融情報システム事故に関する新聞報道の分析と考察

5.6 フォールトと重大性レベルおよびニュース性の関係分析

5.6.3 フォールトと事故内容の組合せとニュース性・重大性の関係分析 138

表 5.8 ニュース性に対するマイナス/プラス要因とフォールトの関係 (表中の数値は事例件数)

マイナス/プラス要因 Dev F Phy. F (Int.)

Phy. F (Ext.)

Int. F (Mis.)

Int. F (M&D)

Int. F (BD) 不明 1 障害の影響が直接的に、短時間に判断しにく

い事故 2 3 6 1 5

2 障害地域や被害者が比較的限定的である

が、重大性が大きい事故 2 5 1 4 1 1

3 相互利用等による利用環境の拡大に伴う事

2 1 1 2

4 その他 1 3 3

5 不正引き出しや情報セキュリティ犯罪などの犯

罪行為 12

6 世の中の関心が高いトピックス性のある事故 13 1 6 14

7

障害規模は比較的小さいが、全端末または殆 どの端末が停止する事故または同一金融機 関での繰り返し事故

2 3 4 1

8 その他 1 2

ニュース性に対するプラス要因 ニュース性に対するマイナス要因

5.6.3 フォールトと事故内容の組合せとニュース性・重大性の関係分析

事故の重大性とニュース性を示している平均新聞数の関係は,通常,正の相 関があると考えられるが,図 5.5 に示すように「重大性が優位性を持っている 領域」(Aの領域)と「ニュース性が優位を持っている領域」(Bの領域)が存在 する.これらの領域の判定の目安として,各々の差が±0.4 以上(最大値”4”

のプラスマイナス 10%以上)か否かとした.各領域に位置する各組合せ要素につ いて,平均から外れている理由をフォールトの視点から分析する.

(1) 「重大性がニュース性より優位性を持っている領域」(Aの領域)

・処理関連 & Phy. F (Int.): 6 件

本要素の具体的な内容は,コンピュータシステム,通信機器および磁気ディ スク装置の故障による銀行または証券会社の処理遅れである.本組合せ要素 で重大性>ニュース性の事例は 4 件あり,1-2 県以内の限定的なケース 2 件 とネット証券の事故 2 件であり,これらは 4.4.2 項で述べたニュース性に対 するマイナス要因に該当する.

・処理関連 & Phy. F (Ext.): 14 件

本要素の具体的内容は,過負荷による銀行または証券取引所の処理遅れ 13 件,過負荷による銀行の処理ミス 1 件である.本組合せ要素で重大性>ニュ ース性の事例は 5 件あり,本社版で報道された事故の地域詳細報道 3 件,1-2 県以内の限定的なケース 1 件,事故の経過報道 1 件であり,前 2 者は 4.4.2 項で述べたニュース性に対するマイナス要因に該当する.

・情報関連 & Int. (BD):2 件

本要素の具体的な内容は,銀行の職員が顧客に頼まれて個人情報を顧客に伝 えた 2 件のみである.本組合せ要素で重大性>ニュース性の事例は 1 件のみ であり,4.4.2 項で述べた被害者が限定的な事故に該当する.

(2) 「ニュース性が重大性より優位を持っている領域」(Bの領域)

・サービス関連 & Dev. F:59 件

本要素の具体的な内容は,ハードウェア設計ミス 1 件,ソフトウェア設計ミ ス 58 件である.本組合せ要素で重大性<ニュース性の事例は 28 件あり,新 サービス・新システム導入時の事故,2000 年問題などの予期された問題など トピックス性のある事故 21 件,同一銀行での繰り返し事故 2 件,証券取引所

IM

PE

PI

D IM

PE

PI D

IB IM

PE

D ID

IM

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

平均重大性

サービス関連 処理関連 情報関連 犯罪行為 その他

平均重大性レベル>平均新聞数 の領域:A

平均重大性レベル<平均新聞数 の領域:B

*図中の各点のラベルは下記を示す.

D: Dev. F, PI: Phy. F (Int.), PE: Phy. F (Ext.), IM: Int. F (Mis.), IB: Int. F (BD), ID: Int.F (MD)

図 5.5 平均重大性と平均新聞数の相関図

べたプラス要因に該当する.その他の内 2 件は障害処理ソフトの不具合であ り,この 1 例を下記に示す.

-2003.6.24 日興コーディアルグループのコンピュータシステムが障害を 起こし,24 分間,顧客の注文を東証に取り次げなかった.原因は日興コー ディアル証券と東証を結ぶ回線振り分けの障害処理ソフトの不具合であ った.本事例は 24 分間のダウンであるので重大性レベルでは「小」であ るが,対象となる契約口座数は約 136 万口座(実際に取り次げなかった注 文は計 3100 件)であること,および障害時に 100%の働きを期待されてい

たと考えられる.

このように障害処理ソフトの不具合は,見かけ以上に人々に不安を与えるの で,開発サイドは擬似障害などにより事前テストを充分に行い,不具合を起 こさないようにしなければならない.

・サービス関連 & Int. F (Mis.):17 件

本要素の具体的な内容は,設定ミス,データ入力ミス,作業ミス,システム 管理ミス,ハンドリングミスなどである.本組合せ要素で重大性<ニュース 性の事例は 10 件あり,証券取引所のシステム停止 6 件,全端末またはほとん どの端末が停止 2 件,トピックス性のある事故 2 件であり,これらは 4.4.2 項で述べたニュース性に対するプラス要因に該当する.なお,これらの事例 の原因の中に,下記に示す保守作業ミス 3 件,システム管理不備 2 件が含ま れており,保守作業に関する作業手順および作業品質の向上およびシステム 管理の徹底により再発防止対策が必要である.

保守作業ミス

-H14.2.11:名古屋証券取引所で取引システムが立ち上がらず,終日売買停 止.原因は前日に取引制度変更に伴うテストを行った後,コンピュータの 電源を落とす手順を間違えたため.(全国紙 4 紙より)

-H16.3.29:日銀発券センターの情報システムで障害発生.お札の受払業務 が不可となり,日銀本店で代行.原因は保守作業の手順ミス.(全国紙 3 紙より)

-H18.4.16:郵便局のATM約 3900 台が約 1 時間使用不能.原因は保守作業 ミスにより,ホストコンピュータの一部がダウン.(全国紙 4 紙より)

システム管理不備

-H14.11.25:大阪証券取引所でメモリ不足が発生し,取引開始を約 30 分間 遅延.証券会社 1 社の回線を増やしたことによるメモリ不足発生による.

(全国紙 4 紙より)

-H15.10.29:ジャスダック市場の取引システムが約 1 時間半停止.試験運 用で発生した不要な情報が削除されずに残っていたため,ファイル容量不 足 が発生したため.(全国紙 4 紙より)

本要素の具体的な内容は,全てがプログラム不具合である.本組合せ要素で 重大性<ニュース性の事例は 7 件あり,利息・金利・手数料等金銭にからむ ミス 4 件,証券取引所における株発注ミスおよび情報配信遅れ 2 件,2000 年 問題 1 件であり,これらは 4.4.2 項で述べたニュース性に対するプラス要因 に該当する.

・情報関連 & Phy. F (Ext.): 11 件

本要素の具体的な内容は,停電 1 件,回線障害 1 件,過負荷を起因とする事 故 9 件である.その内,重大性<ニュース性の事例は 5 件あり,全て過負荷 による証券取引所からの情報配信遅れである.遅延時間は 2 分~15 分であり,

重大性レベルは小と中であるが,ニュース性高く取り扱われている.世の中 の 関心が高いということであり,証券取引所の情報システムの処理能力面 の適正化に留意する必要がある.

・情報関連 & Int. F (Mis.):26 件

本要素の具体的な内容は,設定ミス 7 件,データ入力ミス 3 件,ハンドリン グミス 3 件,ウィニーを介した情報流出 9 件,システム管理ミス 2 件である.

本組合せ要素で重大性<ニュース性の事例は 15 件あり,ウィニーを介した情 報流出 6 件,証券取引所および証券会社における誤情報配信および情報流出 4 件,主要金融機関における情報流出 3 件などであり,これらは 4.4.2 項で述 べたニュース性に対するプラス要因に該当する.

・犯罪行為 & Int. F (M&D):55 件

本要素の具体的な内容は,不正取引 33 件,情報流出(犯罪)12 件,その他情 報セキュリティ犯罪 10 件であり,その内,重大性≦ニュース性の事例は各々 10 件,12 件,9 件である.すなわち,情報流出(犯罪)とその他情報セキュ リティ犯罪は 22 件中 21 件がニュース性の方が高いか等しい.不正取引につ いては 33 件中 26 件がニュース性の方が高いか等しい.このことから,犯罪 行為は全体的に重大性よりニュース性の方が高いといえる.このことは 4.2.2 項で述べた犯罪行為が起こったこと自身がプラス要因になっているという考 察と一致する.

5.7 ディペンダビリティの視点から見た新聞報道の分析結果のまとめ

以上,新聞報道から得られた事故情報を基にフォールトの分析を行った.こ れらのデータは,実際に稼働している情報システムで起きた事故に関する全体 的なデータであり,またシステム利用者,すなわち一般市民側の視点で見たデ ータであるので,以上の分析結果は新聞報道による情報提供の現状把握および 改善,さらにはディペンダビリティ改善のために役立つ.以下にこれらの改善 のための重点課題についてまとめる.

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