第 4 章 金融情報システム事故に関する新聞報道の分析と考察
4.4 各事故報道の重大性分析
4.4.4 サービス提供事業者の WEB ニュースリリースと新聞報道の比較 . 102
一般の市民が新聞を読むパターンで多いのは,全国紙 4 紙のうち 1 紙のみあ るいは全国一般紙+経済専門紙の 2 紙を読んでいるケースであると考えられる ので,そのケースについての網羅率を算出する.いずれも母集団は 4NDB であ る.
・全国 4 紙の平均個別網羅率(2000 年~2006 年)
:全体 68%,「特大」81%,「大」73%,「中」66%,「小」50%
・全国一般紙+経済専門紙計 2 紙の平均網羅率(2000 年~2006 年)
:全体 83%,「特大」91%,「大」88%,「中」82%,「小」67%
以上より,全国一般紙 1 紙に経済専門紙 1 紙をプラスすることにより,平 均網羅率は,「全体」で68%→83%,「特大」で81%→91%,「大」で73%→88%,
「中」で66%→82%,「小」で50%→67%へ改善される.
4.4.4 サービス提供事業者のWEBニュースリリースと新聞報道の比較
年変化の影響もあると考えられる.
次に重大性レベル別のWEB-NL網羅率を図4.21に示す.図4.21より,重大性
レベルとWEB-NL網羅率はほぼ正の相関があるが,重大性レベル「大」のみは
低めである.その理由は,上に述べた事故分類の構成比率の差である.すなわ ち,WEB-NL 網羅率が最も低い犯罪行為の構成比率は,「小」6%,「中」14%,
「大」26%,「特大」14%であり,「大」の比率が最も高いので網羅率が低くなっ たと考えられる.
59 55
99
21 17
48 54 81
30.9
54.5 35.6
59.3
0 20 40 60 80 100 120
2003年 2004年 2005年 2006年
事例件数
0 10 20 30 40 50 60 70 80
NL網羅率(%)
4NDB件数 WEB-NL件数 WEB-NL網羅率(%)
図 4.20 4NDBに対するWEB-NL網羅率:金融情報システムの場合
33
84
108
44
12
41
50
27 61.4 46.3
48.8 36.4
0 20 40 60 80 100 120
小 中 大 特大
重大性
事例件数
0 10 20 30 40 50 60 70 80
NL網羅率率(%)
4NDB件数 WEB-NL件数 WEB-NL網羅率(%)
図 4,21 重大性レベル別WEB-NL網羅率:金融情報システムの場合
4.4.5 通信ネットワーク事故との比較 (1) 重大性分析に関する比較
3.4.4 項では,法律で定めるネットワーク事故(「通信がつながらない事故」) についてニュース性との関係を分析した.ここでは第 4 章における重大性レベ ルの定義に合わせて通信ネットワーク事故について事故の重大性とニュース性 の関係を全事例について分析する.
まず,通信ネットワーク事故における重大性レベルの評価指標と評価尺度を 金融情報システム事故の場合(表 4.4)と同様に表 4.7 のとおり設定する.
次に,表 4.7 を使用して金融情報システム事故と同様,①重大性が高いにも 関わらず,ニュース性が低い事例,②重大性が低いにも関わらず,ニュース性 が高い事例を調べた結果を下記に示す.
①重大性が高いにも関わらず,ニュース性が低い事例
4.4.2 項(2)②に示したと同じ条件でこのケースを抽出すると 427 件中,33 件 が該当した.この 33 件がニュース性低く扱われている理由(マイナス要因)
を推測すると下記のとおりである.
・障害地域や被害者が比較的限定的であるが,重大性が大きい事故:17 件 障害地域が数市以内または 1-2 県以内,一部機能不良,試験サービス中など.
・障害の影響が直接的に,短時間に判断しにくい事故:5 件
携帯電話インターネット,メール,IP 電話,データ通信サービスなどがつな がりにくいなど.
表 4.7 重大性レベルの評価指標・評価尺度:通信ネットワーク事故の場合
小 中 大 特大
サービス [0<t<30] or
[ 0<n<3x103] 実害なし
[ (30≦<t<120) & (n≧3x103)] or [ (t≧120) & (3x103≦n<3x104)]
迷惑や不便を与えた
[ (120≦t<480) & (n≧3x104)] or [ (t≧480) & (3x104≦n<3x105)]
損害を与えた
(t≧480) &
(n≧3x105) 大きな損害を与え た
0円<p<100万円 100万円≦p<1000万円 1000万円≦p<10億円 p≧10億円 0円<q<1万円 1万円≦q<10万円 10万円≦q<1000万円 q≧1000万円
情報 ・メールアドレス,
顧客名など
・氏名,住所,生年月日,勤務先,
電話番号など
顧客格付,取引内容,ローン残高,
融資担保設定額など
パスワード,暗証 番号,口座番号な ど
装置 0<n<1万台 1万台≦n<10万台 10万台≦n<100万台 n≧100万台
障害時間(t分)と障害加入数(n)で決まる領域
*中継線の場合は1レベルアップする
**上記指標がそぐわない場合は被害の程度によ り判定.損害の大きさは下記「料金」の金額を参 考にして判定(一部機能不良,その他など)
・下記のうち大きい方の判定を採用
・流出内容
ただし,流出件数が10件未満の場合は1レベル 下げる.
・その他ルール
(1)1ヶ月以内に起きた繰り返し事故,安全性にからむ事故(命・健康にからむもの)は,上表による評価結果を1レベルアップする.
(2)データがない事例の取扱い:データを推定できる場合は推定値を使用 大分類
料金
重大性レベル評価尺度
・改修台数(n台) ①誤請求総金額(p円)
②誤請求1件当たり金額(q円)
重大性評価指標
・相互利用等による利用環境の拡大に伴う事故:7 件 携帯電話におけるメール機能,データ通信機能など.
②重大性が低いにも関わらず,ニュース性が高い事例
①と同様にこのケースを抽出すると 427 件中,81 件が該当した.この 81 件が ニュース性高く扱われている理由(プラス要因)を推測すると下記のとおり である.
・情報セキュリティ犯罪などの犯罪行為:9 件 顧客情報漏えい.
・世の中の関心が高いトピックス性のある事故:30 件
個人情報流出(ミス),誤請求,誤接続,人気チケットの販売に伴う過負荷,
新種ワームの影響,電話会社のミスによる機能不良,設計不良など.
・障害規模は比較的小さいが,全端末またはほとんどの端末が停止する事故:
10 件
電話交換機,サーバ,通信機器などの故障によるある地域の通信停止.
・自然災害,人為的災害に付随する事故:37 事例
以上のとおり,ほとんどの事例が金融情報システム事故で引き出したマイナス 要因およびプラス要因に含まれることが分かった.通信ネットワーク事故特有 の要因として,プラス要因に「自然災害,人為的災害に付随する事故」がある が,これは通信ネットワーク事故に対するニュース性というより,自然災害等 と併せたかたちでプラス要因になっていると考えるべきであろう.
また,3.4.2項(1)で分析した重大事故の中で新聞報道されていない事例は,上 記①の「重大性が高いにも関わらず,ニュース性が低い事例」の極端な事例で ある.
(2) 網羅率に関する比較
4.4.3 項において,金融情報システム事故に関する新聞別個別網羅率を算出し
た.それと同じやり方で通信ネットワーク事故について算出した結果を下記に 示す.いずれも母集団は4NDBである.
・全国 4 紙の 1 紙平均個別網羅率(2000 年~2005 年)
:全体 62%,「特大」74%,「大」71%,「中」65%,「小」52%
:全体 80%,「特大」88%,「大」86%,「中」83%,「小」72%
以上より,全国一般紙 1 紙に経済専門紙 1 紙をプラスすることにより,平均網 羅率は,「全体」で 62%→80%,「特大」で 74%→88%,「大」で71%→86%へ改 善される.
4.4.3 項に示した金融情報システムの場合と上記通信ネットワークの場合とを
比較して図4.22に示す.図4.22より,全体的には金融と通信の網羅率はかなり 近い値である.一般紙 1 紙に経済専門紙をもう 1 紙追加すると,網羅率は金融 の場合,「全体」で1.22倍,「特大」で1.12倍,「大」で1.21倍に改善し,通信 の場合,「全体」で1.28倍,「特大」で1.19倍,「大」で1.20倍に改善する.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
小 中 大 特大 全体 小 中 大 特大 全体
網羅率(%)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
倍率
母集団:4NDB
金融 通信
①金融:全国4紙の1紙平均個別網羅率
②金融:全国一般紙+経済専門紙計2紙の平均網羅率 倍率(②/①)
③通信:全国4紙の1紙平均個別網羅率
④通信:全国一般紙+経済専門紙計2紙の平均網羅率 倍率(④/③)
図 4.22 網羅率の比較
以上は母集団として4NDBを使用しているが,3.4節で述べたように通信ネット ワークの場合,法律で定められている重大事故に関する届出データを入手した ので,それらを母集団にして網羅率を算出した.重大性レベルによらない網羅
率は既に3.4.2 項において,4NDB全体では71.6%,1紙平均では50.4%と示さ
れている.ここではこれらを重大性レベル毎に分けて算出する.母集団は重大 事故DB(通信)である.
:「全体」53%,「特大」93%,「大」47%,「中」53%
・全国一般紙+経済専門紙計 2 紙の平均網羅率(2000 年~2005 年)
:全体 62%,「特大」100%,「大」56%,「中」63%
・全国紙 4 紙のオア(4NDB)の網羅率(2000 年~2005 年)
:全体 74%,「特大」100%,「大」69%,「中」78%
注.上記網羅率の一部が3.4.2(1)で示した網羅率と異なるのは,重大性別分析 の場合,重大性レベルを区別するために一部事例を分割する必要があり,
分割事例を含めたためである.
上記により,通信ネットワークの重大事故に関する新聞報道の網羅率は,「特大」
については良いが,「大」については低い.その理由は,3.4.2項で分析した新聞 報道されていない19事例の内,17事例が重大性レベル「大」に集中しているた めである.従って,重大性レベル「大」の網羅率を改善するには,3.4.2 項に示 した改善を行う必要がある.
(3)WEBニュースリリースの網羅率に関する比較
4.4.4 項では金融情報システム事故に関するWEBニュースリリースの網羅率
(WEB-NL 網羅率)の検討を行ったが,ここでは通信ネットワーク事故につい
て同様の検討を行い,前者の結果と比較を行う.
通信ネットワーク事故の4NDBに対するWEB-NL網羅率を図4.23に示す.図
4.23 により,WEB-NL 網羅率の 3 年間の平均は 47,3%であり,金融情報システ
ム事故の場合47.6%とほぼ同じである.2005年のWEB-NL網羅率が低い原因は,
金融の場合と同様に事故内容の構成比率の変化の影響である.因みに事故内容
別 WEB-NL 網羅率(3 年平均)は,大きい順に,装置設計不良 763%,誤請求
64.0%,情報流出50.0%,サービス36.9%である.WEB-NL網羅率が最も高い装
置設計不良件数の年別構成比率を調べると 2003年 15%,2004年24%,2005 年
11%であり,2005年が最も低い.このため,その影響でのWEB-NL網羅率も低
くなったと考えられる.また,サービスのWEB-NL網羅率が低いのは,サービ ス関連事故の中には地方の比較的小さい事故も含んでいるからである.サービ ス関連を本社版のみで算出すると,62.9%に改善される.このことから,WEB