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全体のまとめ

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 167-171)

第 6 章 結論

6.1 全体のまとめ

本論では,一般市民への情報システム事故情報の提供の現状について,通信ネ ットワーク事故と金融情報システム事故とに分けて分析評価したが,それらに共 通する主な結論を 1.3 節に掲げた本研究の目的に沿って下記にまとめる.

6.1.1 情報システム事故情報の市民等への提供の現状と問題点

第 3 章と第 4 章で分析した市民の立場からみた新聞報道による情報システム事 故情報のニュース性,網羅性,内容の正確性などに関する主な評価結果を以下に 示す.

(1) ニュース性を決めている要因

世の中で多数起きている事故の中からニュースとして報道するか否かの選択 に影響を与えている要因,いわゆるニュース性を決めている要因は次のとおりで ある.

・全体の半分以上を占めているサービス関連事故については,通信,金融共に1 位は障害規模,2位は障害加入数,障害端末数,契約口座数,3位は広域性で あり,規模に重点を置いている.(cf. 3.3.2項,4.3.2項)

・サービス以外の事故については,通信関係では装置設計不良関連の事故が,金 融関係では処理関連事故および犯罪行為が高いニュース性を持っており,誤処 理金額,不正処理金額および改修台数などの要因はニュース性にほとんど影響 を与えていない.ただし,金融関係では情報流出件数が,通信関係では誤請求 総額がニュース性を決める要因になっている(4.3.1項,3.3.1項).

問題点は,第一に,障害規模は小さくても個人の安全性を損なう事故のように

第二に,被害者や障害地域が比較的限定的であるが,市民にとっては重大性が高 い事故の一部が地域版においてさえもニュース性が低く扱われていること

(4.4.2 項(2)②)である.

(2) 新聞報道の網羅性

新聞報道されている事故が実際に起こっている事故全体のうち,どの程度を網 羅しているかについて知ることは現実的には不可能であるが,法律で届け出るこ とが定められているデータを母集団として新聞報道と比較することで重大事故 報道の網羅性を知ることはできる.通信ネットワークの重大事故に関しては,

3.4.2 項に示したように総務省から公開された届出データを母集団として新聞報

道(4NDB)の網羅率を算出した結果,全体では約72%であり,十分とはいえな いことが分かった.また,重大性レベル毎の網羅率では「特大」は良いが,「大」

が低いことが示された.

金融情報システム事故に関する届出データは,非公開情報であるので同様の網 羅率の算出はできなかった.このため不充分ではあるが,各金融機関がWEB上 に公開しているニュースリリース等を基に,新聞報道されていない事故情報を追 加して母集団とし,2004 年~2006 年の平均網羅率の算出を試みた(4.4.6 項(2)). その結果,全体で約 70%になったが,金融機関によっては事故情報を公開して いないため実際の網羅率はもっと小さいことは注意を要する.

さらに新聞読者のほとんどは一紙のみを読んでいると考えられるので,通信ネ ットワークの重大事故および金融情報システム事故について,新聞別,重大性レ ベル別の個別網羅率を調べた.共通的にいえることは,全国一般紙 3 紙の間では 一部を除いて大きな差はないが,経済専門紙 D 紙との間では大きな差があること である.これは新聞社の報道の目的,編集方針の違いからくると考えられる.

(3) 新聞報道の正確性 (3.4.3 項)

通信ネットワーク事故について,法律が定める重大事故に対する届出データ

(重大事故DB)と新聞報道データ(4NDB)の内容を比較することにより,報道 内容の正確性の分析を行った.比較は,障害日時,障害時間,障害地域,事故概 要,障害の影響,原因等の6項目について5段階評価を行った.その結果,内容 の正確性は総合的には比較的信頼性が高いことが分かった.

(4) 新聞間の報道事例の共通性と相違性(3.5 節)

各新聞の事故報道事例の共通性と相違性について,通信ネットワーク事故に焦 点を絞って調べた結果,複数紙で報道されている比率は4NDB 全体では 76%,1 紙平均では 90%であり,新聞間の共通性は高いことが示された.

(5) 事故の重大性とニュース性

金融情報システム事故の大分類毎の重大性レベルとニュース性の相関関係を 分析した結果,下記のことが明らかになった.

・「顧客サービス関連」事故では正の相関がある.「業務処理関連」「共通関連」

「犯罪行為」では多少相関があるが,相関は小さい.(4.4.2 項(2)①)

・「重大性が高いにも関わらず,ニュース性が低い」事例は全体の約 10%を占め ており,ニュース性が低く扱われている理由(マイナス要因)は,次の 3 つで ある.第一に障害の影響が直接的に,短時間に判断しにくい事故,第 2 に重大 性は大きいが,障害地域や被害者が比較的限定的である事故,第 3 に相互利用 等による利用環境の拡大に伴う事故である.これらのケースは,利用者にとっ て重大な事故が広く伝えられないケースであるので各新聞は改善を要する (4.4.2 項(2)②) これらは,1.1.2 項の「市民側からみた情報システム事故情 報入手の必要性」で示した①,②および③における有効な情報提供となる.

・「重大性が低いにも関わらず,ニュース性が高い」事例は全体の約 13%を占め ており,ニュース性が高く扱われている理由(プラス要因)は次の 3 つである.

第一に不正引き出しなどの犯罪行為,第二にトピックス性のある事故,第三に 障害規模は小さいが,ほとんどの端末が停止する事故または繰り返し事故であ る.これらのケースは極端でなければ生活に影響はない(4.4.2 項(2)②).

・上記と同様の分析を通信ネットワーク事故に関して行った結果,「重大性が高 いにも関わらず,ニュース性が低い」事例は全体の約 8%を占めており,「重 大性が低いにも関わらず,ニュース性が高い」事例は全体の約 19%を占めてい る.これらのニュース性に対するマイナス要因およびプラス要因は,大きな項 目としては上記金融情報システム事故の場合と共通している.ただし,通信ネ ットワークの特有なプラス要因として,自然災害および人為的災害に付随する 事故があることが明らかになった(4.4.5 項(1)).マイナス要因に対する改善

(7) 他重大事件報道との競合

新聞紙面のスペース制約による他の重大事件との競合により報道されなかっ た可能性のあるケースについて調べた.他の重大事件の条件として,“社会面ま たは経済面で 1/2 ページ以上を占め,且つ一面にも掲載されている”とした.そ の結果,通信ネットワーク事故および金融情報システム事故共に他の重大事件報 道との競合の影響はそれ程大きくないことが示された(4.4.6 項(1)).

6.1.2 技術的視点から見た新聞報道の分析と考察

第 5 章では,技術的視点での新聞報道の分析として,金融情報システム事故に 的を絞り,ディペンダビリティの視点で事故内容および事故原因(フォールト)

のトレンド分析,フォールトの詳細分析,フォールトと重大性レベルおよびニュ ース性の関係の分析などを行い,下記の点が明らかになった.なお,フォールト については,A.Avizienis, J. C.Laprieら[6.1]の分類をベースとしたが,取り扱い を容易にするために組み合わせにより 6 つのフォールトを定義して使用した.

(1) 事故内容およびフォールトのトレンド

・事故内容の件数および構成比率の年推移で増加しているのは,情報関連および 犯罪行為であることが示された.(5.2 節)

・フォールトを開発関係, 物理関係, 相互関係の 3 つのグループに集約して件数 を比較し,相互関係(人為的ミスと犯罪行為の合計)が最も増加していること が示された.(5.3 節).

(2) フォールト分類と事故分類をマトリックスにしてその要素である各組合せ 要素に関して,ニュース性と重大性の相関を調べた.その結果,平均値的に重 大性がニュース性より優位性を持つ組合せ要素とニュース性が重大性より優位 性を持つ組合せ要素があることが明らかになった.その原因は,ニュース性に 働くマイナス要因とプラス要因があり,それらは上記 6.1.1 項(5)に示した各要 因に含まれていることを示した.さらにプラス要因には,同項(5)のプラス要因 の他,障害処理ソフトミス,保守作業ミス,システム管理ミスなサービス利用 者による信頼性への期待が高い項目があることが分かった.

(3)ディペンダビリティ改善のための重点課題

項として,ソフトウェアテストの強化,ハードウェアの更なる信頼性向上,過負 荷対策,設定ミス,データ入力ミスなど人為的ミス対策,犯罪行為対策を示し,

詳細分析結果と改善のポイントを示した(5.7.2項).

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