第 4 章 金融情報システム事故に関する新聞報道の分析と考察
4.4 各事故報道の重大性分析
4.4.3 新聞別個別網羅率
本章では情報システム事故の情報源として日本における代表的な全国紙 4 紙 を使用している.しかし,読者の立場でみると 1 紙のみあるいは全国一般紙+
経済専門紙の 2 紙を読んでいるケースが多いと考えられる.一紙のみを読むと いうことはどの新聞を読むかによって事故報道の網羅率が異なるということで ある.この点を明らかにするために新聞別,重大性レベル別の個別網羅率を調 べた.ここで,個別網羅率の分母(100%)は,本論文が対象にしている 4 紙の全 事例(和集合,4NDB)とする.また,4 紙をA紙,B紙,C紙,D紙と呼ぶ.
調査結果について全体を図 4.17 に,顧客サービス関連のみを図 3.18 に,顧 客サービス関連以外を図 3.19 に示す.図 4.17 から分かるとおり,個別網羅率 は各紙によってばらついており,各紙の特徴は下記のとおりである.
・A紙:重大性が大きい事故ほど個別網羅率が上がっており,望ましいかたち である.「特大」では 86%に達している.
・B紙:「中」「大」「特大」はA紙とほぼ同じ傾向であるが,「小」の個別網羅 率が一番大きい.この原因は,自然災害や工事ミスなどによる停電や回線切 断の影響でATM等が使用できなくなった事例が B 紙では多く報道されている ことである.このケースが 12 件あり,これを除外すれば 55%となる.
の事故(「ネット機能利用不可」)の報道件数が少ないためである.
・D紙:個別網羅率は一番低いが,これは主に地域版の件数が少ないことによ る. 因みに地域版の比率は,A,B,C紙は 25%~30%であるのに対してD紙 は 14%である.D紙は経済専門紙であるため,報道目的の違いから来ていると 思われる.「小」および「中」は低いが,「大」および「特大」は高くなって おり,報道の役割を果たしている.
各紙個別網羅率の 4 紙平均は,「小」50.0%,「中」65.7%,「大」73.2%,「特大」
81.2%,「全体」67.7%である.利用者への重要事故情報の提供と言う意味では,
特に「大」と「特大」の網羅率が大切であるが,新聞によって「大」は 68%~78%,
「特大」では 74%~86%のバラツキがある.ただし,本データの母集団(100%)は 全国紙 4 紙に掲載されたものであり,4 紙で報道されている以外にも重大事故が あると考えられるので実際の網羅率はもっと低いことは注意を要する.本件に 関しては,4.4.6 項の(2)で考察する.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
小 中 大 特大
重大性レベル
網羅率(%)
A紙 B紙 C紙
D紙 4紙平均 3紙平均
N=397
図 4.17 新聞別・重大性レベル別網羅率:全体
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
小 中 大 特大
重大性レベル
網羅率(%)
A紙 B紙 C紙
D紙 4紙平均 3紙平均
N=214
図 4.18 新聞別・重大性レベル別網羅率:顧客サービス関連
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
小 中 大 特大
重大性レベル
網羅率(%)
A紙 B紙 C紙
D紙 4紙平均 3紙平均
N=183
図 4.19 新聞別・重大性レベル別網羅率:顧客サービス関連以外
一般の市民が新聞を読むパターンで多いのは,全国紙 4 紙のうち 1 紙のみあ るいは全国一般紙+経済専門紙の 2 紙を読んでいるケースであると考えられる ので,そのケースについての網羅率を算出する.いずれも母集団は 4NDB であ る.
・全国 4 紙の平均個別網羅率(2000 年~2006 年)
:全体 68%,「特大」81%,「大」73%,「中」66%,「小」50%
・全国一般紙+経済専門紙計 2 紙の平均網羅率(2000 年~2006 年)
:全体 83%,「特大」91%,「大」88%,「中」82%,「小」67%
以上より,全国一般紙 1 紙に経済専門紙 1 紙をプラスすることにより,平 均網羅率は,「全体」で68%→83%,「特大」で81%→91%,「大」で73%→88%,
「中」で66%→82%,「小」で50%→67%へ改善される.
4.4.4 サービス提供事業者のWEBニュースリリースと新聞報道の比較