煩わしい人間関係の中で、このやっかいなる感情が無かったらどんなにかい いだろうと思うときがある。しかし、この「いいだろう」と思う気持ちこそが
感情である。
第1節 感情のメカニズム
1−1 ホメオスタシスとアージ理論
人間とは生き延びるようにプログラムされた生物である。基本的には肉体的 に生き残ろうとするシステムと精神的に生き残ろうとするシステムがどうやら あるらしい。これは意識せずとも無意識的にも行われる。
生き延びシステム
一一一一一一一一一一・ メオスタシス(homeostasis)
一一一一一一一… アージ理論 (urge theory)
ホメオスタシス(homeostasis)は恒常性維持機能とも訳され、自律神経やホ ルモンによって心身のバランスを整える機能である。簡単に言えば暑ければク ーラーの効く部屋に行きたがるし、クーラー無ければ木陰を探す。体温が上が らないよう汗をかく。飢餓状態になれば、蓄えた脂肪を燃やしてエネルギーと する。究極の状態から奇跡的に助かったという話は時々聞く話である。我々の 体は死ぬ方向ではなく、何とか生きようとする方向に動く、生き延びシステム があるということである。治癒力と言ってもいいだろう。
精神的にも肉体が何とか生きようとするように、度重なるストレスが舞い込 もうとも何とかその場を切り抜け、生き延びようとするシステムがある。
人権教育の授業をしたとき、人のrこころ」について考えさせたことがある。
いろいろな意見が出たが、要するに心とは喜怒哀楽を感じるところで、喜と 楽を感じることを望むが、怒と哀は避けたいという人間の本性がある。それに は「どうしたら?」という話し合いになった。今私がやっている研究とは正に このことではないか。こういった感情をコントロールしているのは脳であり、
そのメカニズムを知ることは重要であるが、医学的なこととなる。その脳を使 って表出される感情とはどんなものか若干書いてみよう。
感情という言葉には、感情(emotion )情動(affじct)情緒(驚eling)感傷,
情操(sentiment)激情(passion)等ある。
そこで、この「感情」についてアージ理論(urge theory)なるものがあること を知った。これは戸田正直(1980)による人間の感情および行動一般に関わ る包括的な統一理論でr生き延びシステム」生物は、不定期に多課題を時間圧 のなかで問題解決をしたり、意志決定を行ったり、行動を起こさなければなら ない。そのために情報処理の迅速化をし、並列化、自動化(チャンク化)する ために感情(アージ)システムがある。「人間は知的存在のふりをしているけ れども実は、本質的には感情で動いていて、しかもそのことを自覚していない。
しかし、感情はみかけよりも知的なシステムである。」と言っている。これは 正に我が意を得たりである。
喜怒哀楽と一口で言うが、具体的にどのようなものか、これも中学生に考え させたことがあり、その記憶をたどっていたとき、先行研究に巡り会った。
「感情の進化系図」生命の進化の流れを考えると、古い時代の生物ほど行動 はシンプルであり、人類に至ると大変複雑となる。最もシンプルな動物は、接 近と逃避の2種の行動しかなく、これがすべての始まりである。そこで感情を ある行動への誘引度と考えることにより、感情を、その後に発生する行動や変 化により分類定義できる。
それはあたかも生物の進化系図のようでもあり、進化の効果は以下の3つの 形をとる。①自然淘汰②性淘汰③血縁淘汰であり、「愛」「興味」「驚き」「怒
り」「恐怖」「嫌悪」「希望」の基本感情を基にさらに、細分化していく。戸田
(1980)の研究を下記にまとめてみる。
1−2 感情の分類
感情の一覧
愛・幸福・誇り・淋しさ・憎しみ・嫉妬・哀れみ・罪悪感
興味・可笑しさ・楽しさ・倦怠感・恋い
Hiroyuki Masukaw的Home Pageより (2003.8−25)
http:〃wwwOO4.upp.so−netnejp/kaysaka/keitozu.htm (2003−8−26)
感情の種類
驚き・当惑
怒り・不平不満・恥・軽蔑・憤り・恨み・悔しさ・焦燥感
恐怖・安心・畏怖・不安
嫌悪憂欝
希望・喜び・感謝・照れ・自信・無力感・羨望・失望
瞬間的なもの、持続的なもの、相手に向かうもの、自分に向かうもの 衝動(瞬間的で相手に向かう)
悲しみ・可笑しさ・怒り(侮辱)・憤り・照れ(謙虚)・喜び(懐かしさ)
反応(瞬間的で自分に向かう)
驚き・恥・悔しさ・安心・恐怖・畏怖・失望
気分(持続的で自分に向かう)
幸福・誇り・淋しさ・罪悪感・楽しさ・倦怠感・焦燥感・憂欝・不安 希望(勇気 野心 意志)・自信(優越感)・
無力感(劣等感 せっなさ 後悔)・不平不満(執着 頑固 意地っ張り)
態度(持続的で相手に向かう)
愛(尊敬 崇拝 愛着 責任感 勇気)・憎しみ・嫉妬・哀れみ・羨望 興味(美しさ ユーモア 憧れ)・恋・当惑・軽蔑・恨み・嫌悪(醜さ)
・感謝
これをプラス感情、マイナス感情、中立感情と分けてみると、下記のように なるのではないか。
表4−1 プラス感情・中立感情・マイナス感情
プラス感情 中立感情 マイナス感情
・可笑しさ ・照れ(謙虚) ・悲しみ
・喜び(懐かしさ) ・怒り(侮辱)
・憤り
・安心 ・驚き ・恥
・畏怖 ・悔しさ
・恐怖
・失望
・幸福 ・淋しさ
・誇り ・罪悪感
・楽しさ ・倦怠感
・希望(勇気野心意志) ・焦燥感
・自信(優越感) ・憂欝
・不安
・無力感(劣等感、後悔、
せつなさ)
・不平不満(執着、頑固、
いじっぱり)
・空しさ
・愛(尊敬 崇拝 愛着 ・憎しみ
責任感 勇気) ・嫉妬
・哀れみ
・羨望(妬み)
・興味(美しさ ユーモア ・当惑
憧れ) ・軽蔑
・恋 ・恨み
・感謝 ・嫌悪(醜さ)
こうして眺めてみると、マイナス感情の方が語彙も多いようである。人間 と隣り合わせにあるのは、どうもマイナス感情の方が近いのかも知れない。し かし、それも危機を乗り切るアージ理論、生き延びシステムに違いない。
確かに落ち着いてよく考えてみると、感情とはその場だけのもの(瞬間的)
といつまでもくよくよと、あるいは余韻に浸る(持続的)ものがある。
また自分の心の中へ、じわじわとしみじみと湧いてくる(自分に向かう)も のと、自分の喜怒哀楽の原因を作っているもの対象物へ(相手に向かう)矛先 が向かうものがある。これはジョハリの窓のごとく4つの窓ができる。
表4−2 感情の4っの窓
① 瞬問的 相手に向かう(衝動) ② 瞬間的 自分に向かう(反応)
照れ(謙虚) 驚き 畏怖
・可笑しさ ・悲しみ :・喜び :・怒り(侮辱)・懐かしさ :・憤り ・安心 ・恥 ;
:・悔しさ :・恐怖
:1
③ 持続的 相手に向かう(態度)
@薙翻 亙分κ向かラ6気別
:・愛(尊敬崇拝 :・憎しみ :・幸福 :・淋しさ
愛着勇気責任感〉:・嫉妬 ・誇り :・罪悪感
・興味(美しさ :・哀れみ ・楽しさ :・倦怠感
ユーモア憧れ):・羨望・恋 :・当惑 『・感謝 1・軽蔑 ・希望(勇気 :・焦燥感 : 野心意志) ・憂欝 :・自信(優越感) :・不安
:・恨み :・無力感(劣等感
:・嫌悪(醜さ)::: : せつなさ 後悔)
:・不平不満(執着:: 頑固意地っ張り)
プラスの感情ならば、瞬間的なものより、ずっと続いて欲しい(持続的)
と思い、自分の内に居続けてくれる(自分に向かう)に越したことはない。マ イナスの感情ならば、無いに越したことはないが、あるのなら短時間で終わっ て欲しい(瞬間的)と望むのが素直な気持ちであろう。
ならば、プラス感情ならば大きなものから④持続的で自分に向かう、③持続 的で相手に向かう、②瞬間的で自分に向かう、①瞬間的で相手に向かうの順に なるだろう。マイナス感情ならば、まったくその順番に厳しくなる。
要するにプラス感情なら持続的で自分に向かう④がよく、マイナス感情なら 瞬間的で相手に向かう①の方がまだいいと思う。だが自尊感情が著しく損傷を 受けるのは持続的で自分に向かう④であるということになる。
人に恋愛でもよくあることであるが、愛の裏側に憎しみがある。その愛が深 ければ、深いほど、裏切られたときの憎しみは同じように深くなる。その逆も 言えるだろう。
そのことはプラス感情とマイナス感情は表裏一体ということが言えないだろ うか。よって人はプラス感情が強いとき、いつ来るか分からぬマイナス感情を 恐れ、予防し、マイナス感情の時は、いつまでも続くはずがない、いつかきっ
と希望を抱いてプラス感情にしようと意識的、無意識的に努力している。
これが感情の生き延びシステムである。
1−3 感情のプロセス
我々人間は、実に目まぐるしく湧き起こる感情を時に表出したり、時に押し 殺したりして感情のコントロールをしている。その感情の流れを知ることは流 れが悪くなったとき、つまづいたとき、解決の糸口が見つけられるはずである。
ストレスを軽減する3つの方法がある。
ジャッジ!
どっちだろう
聴覚(耳)
視覚(目)
触覚(皮膚)
味覚(舌)
臭覚(鼻)
○脳 ○ 脳・筋肉
図4−1 刺激は五感を通して脳で受ける
様々な情報(刺激)は私たちの五感を通してインプットされ、脳でそれが自分 にとってどういう刺激か、考え、そして判断する。
もう少し詳しく説明するならば下記のような流れで感情のメカニズムを説明 できるであろう。
、慰、情のメカニズム