教師の自尊感情に関する研究 : バーンアウトの予防をめざして
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(2) 教師の自尊感情に関する研究 ∼ バーンアウトの予防をめざして∼ 学校教育専攻 生徒指導コース. M O3044A 肥 後 広文. 日曜日の夜が憂欝な教師、月曜日に 年休の多い学校は少なくない。よかれ. ることによって、自信を回復し、建設的 な発想が生まれてくると考えた。そうな ると感情とは何かについて追求しなくて. と思ってやったことが生徒に伝わらず、. はならなくなる。その中で戸田正直. 保護者の不信感をかい、地域から尊敬 されず、教師同士のいがみ合いを見聞 きし、フレッシュな教師も採用の時の 喜びはどこかへ影を潜め、ベテラン教. (1980)の「アージ理論」というものに出. 師も初心を忘れ、悩んでいる。. 元気な子供、健全な学校、地域は元気 な先生から生まれる。ストレスに押しつ ぶされない、ストレスを逆に楽しんで、 エネルギーに換え、教育に当たれるよう な心理状態をつくれぬものか、いい資質 がありながらも苦しんでいる先生を救い たいという願いから始めた。 ②童 夙卜》承ど臼懸樵⑲,:・. 会った。これは肉体的な生き延びシステ ム、ホメオスタシス同様、精神的な生き 延びシステムがあると気づいた。. 人を些細なことで一喜一憂させる感情 の源は何のか。人間にとってr生きる意 味」を見失うほど辛いものはない。それ なら生きる意味とは何のだ。哲学とも宗 教ともつかない壁がある。筆者なりに追 求すると、そこに「生きがい」「やりが い」の問題が出てくる。それを追いかけ ると「価値観」が出てくる。そして「プ ライド」「自尊心」「ミエ」の問題につ いて論じた。. (研究の方法). 実態を把握し、教師を苦しめている要. ξ31童:教懸②苦悩iにミ瞬懲、、、1懸発. 因を明確にすることから、その解決法を 探ろうと考えた。そこ.で文献による研究. 現場の教師が目々、苦悩していること、. とアンケート調査より糸口を探し出して いった。. 何を求めているのか。経験上掴んだ、ス トレス解消、バーンアウト予防の知恵な どを調査し、検証し、糸口を探した。. (研究の流れ). レッサー、ストレスについて進めた。ま た、精神的なダメージを受けているとき は、自尊感情が低下しているのであって、. (研究の展開①) そこで感情のメカニズムについて、こ れは既に研究されていて新しいことでは ないかもしれないが、筆者なりに昔から. マイナスの思考が働いている中からは新. 考えていた感情の流れにっいて論じた。. しいものは生まれない。自尊感情を高め. それは刺激、認知、反応というシンプ. 先行研究より、悩みの根元であるスト.
(3) ルなものである。感情はいかにして生ま. れるか、五官を通して、様々な刺激、す なわち情報が入ってくる。その情報を快. 悪くならないように、軽くてすむようス トレスマネジメントが必要になる。. か不快か、肯定的か否定的かを脳で認知. それがリラクゼーション法で、自律訓練 法、カウンセリング、認知行動療法など. する。その認知の仕方で、次の反応、要. を論じた。. するに行動が決まるのである。その行動. ここまでは本人の努力であるが、重度. を通して、また新たな刺激が入力される。. のストレスは本人の努力だけではどうに もならない。周りの支援が必要となる。. それを繰り返す。よって好循環か悪循環 を繰り返すことになる。この悪循環の繰 り返しがバーンアウトに結びついていく. それがソーシャルサポートである。. のである。. ずは学校現場に於いて、同僚、学年・学 校、管理職、教育委員会・文部科学省、. (研究の展開②) 根本的な問題である刺激の要因で、肯 定的な情報が入るような試みが必要であ る。具体的に言うならばたくさんのこと が考えられるが、学校の中でいえば、ア ンケートより、生徒指導の在り方、教科 指導の在り方、学級経営の在り方、上手 なコミュニケーションの取り方について 論じた。悩みを書き出すことで、悩みの 事柄や質が明確化され、次の手立てが考. また家族、その他、それぞれでいかに支. えられるのである。. (研究の展開③) 刺激、情報の受け取り方も価値観の違 いより、十人十色で認知の仕方が違う。. ソーシャルサポートも様々であるが、ま. えるかを論じた。. 自尊感情を高めるために、感情のメカ. ニズムとして、刺激・認知・反応のそれ ぞれのところで、方法論を考察してきた。. 全体の流れを掴むために手を広げたが、. これはそれぞれのところで具体的な3つ 研究が必要であろう。. 結論としてはバーンアウト予防の特別 な便利な方法など無いということで各自 が3つのポイントをよく考え、自分に合 った処方箋をつくりあげることである。 ただ両サイドよりトンネルを掘るよう. でコーピング・スキル、ソーシャル・ス. に、自らの努力と周りの支援(ソーシャ ルサポート)が同じ方向を向いて進めら れ、中央で握手をする課題解決法である ようなイメージではないだろうか。. キル、アサーション・トレーニング、論 理療法等のことを論じた。. 教員採用試験の在り方も、資質など適 材適所を見問違わないためのシステムづ. 認知が変われば行動が変わる。自尊感情 が高まればバーンアウトは防げる。ここ. くりも今後の課題になるだろう。. (研究の展開④) 続いて反応(行動)であるが、否定的 な認知を覆すことができなければ、それ は過剰なストレスとなってやってくる。. それが精神症や心身症となる。それ以上. 上地安昭 指導教官 上地安昭. 主任指導教官.
(4) 目次 第1章 問題の所在と研究目的 …一一……一…一…一…… 1 第1節 病気休職者の現状 ∼バーンアウトの実態∼ 1 病気休職者数等の推移(平成10年度∼平成14年度)一一一 2 2 教師である前に一人の人間としての哲学 一一一一一一”一”一 3. 第2節 教師特有のストレス ∼バーンアウトの背景∼ 1生徒指導の問題 一一一一一一一一一一一一’”一一”一””””’” 4 2 教科指導の問題 一一…一一一一…一…一一一一−””一”””” 4 3 学級経営の問題 一…一一一一一一一…”一’一””””””一””” 5. 4 保護者の問題 一一一一一一一一一一一一一一……一一一一一一一 5. 5 教師間の問題 一一一一一一一一…一一一一一一””−”””甲一一 6. 6 教師の家庭の問題 一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一 6 7 地域の問題 一一一一一一…一一一一一甲一”一一”一”””甲””一” 6. 8 自分の健康の問題 一…一一…””−”一”一一”””一””””『 7 9 昇進の問題 一一…一一…一”””一”’””一一一一”’”””一一 7. 第3節 教師の資質 1 資質とは 一一一…一一一一一一一一一一一一一…一一””一”” 8 2 「指導力不足教員」の解消 一一一一一一一一一一一一一…一一一・ 8. 3 教師としての資質 一一…一一一一一一一一一一一一一一””一” ll 4 教師の資質に関する先行研究 …一一一一一一一…一一一一一一 11. 5 教師の資質に関する文部科学省の見解 一一一一…一一一一一 16. 第4節 研究目的と方法 1 本研究の目的 一一一……一一一…一一一一一一一一一……一一一一一 19. 2 本研究の概要と方法 一……一………一一一一………一…一 19. 第2章 ストレスと自尊感情の先行研究 …一………21 第1節ストレスのとらえ方 1 ストレスの定義 …一一一一一一一一一一一一一一一一…一一 21 2 学校現場の現状 一一一一一一一一−”−−””’一一”””一”−””” 22. 3 ストレスの要因(ストレッサー)一一一一…一一一一一一一一一 22 4 バーンアウト ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 24. 5 ソーシャル・サポート ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一 25.
(5) 第2節 自尊感情(selρesteem)のとらえ方 1 自尊感情の定義 一”一”一”一’””一”一一””””””’q”” 26. 2 教師の自尊感情 一…一……………一…一一…一一一…一一 27 3 教師の喜怒哀楽 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 29. 第3節 「やりがい」・「生きがい」のとらえ方 1 「やりがい」・「生きがい」 一一一一一一…一一一一一一一一一一 31. 2 生きる意味 …一一…一一一……一一一一一一…一一一…一一一 34 3 価値観 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 35. 4 価値観の多様化 一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 37. 第4節 プライド 1 プライドと自尊心 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 39 2 教師のプライドと自尊心 …一一一一一一一一…一一一一一…一一一・ 42. 3 教師の「プライドと自尊心」の見栄 一一一一一一一一…一一 43. 第3章 教師の苦悩に関する調査研究 一一一一一一一一一一一一一一 44. 第1節アンケート 1 アンケートの作成にあたって …………一…一一一一一一一 44 2 アンケートの考察 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 45. 第2節アンケートの自由記述 1 教師のバーンアウトの予防に関するアンケートその他より 一一59 2 バーンアウト予防のアイディア ー一…一…一一一一…一一一一一 61. 第4章 感情のメカニズムと対応 ………一一一一一一一一 68 第1節 感情のメカニズム 1 ホメオスタシスとアージ理論 …一一一一一…一一一一一一一一 68 2 感情の分類 一一一一”一一一”””’一−’””−一一””一−”一一薗”一’. 69 3 感情のプロセス ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 73 4 逃避にならないための対処 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・ 74 第2節 刺激r情報の入り口」 75 1 生徒指導の方法 一一一一一一一一一一…一一一一一一一一一一一一 76 2 学級経営の方法 一一一一一一一一一一一一一一一一…一一一一 86 3 教科指導の方法 …一一一一一一…一一一一一一一一一…一一一 90 4 上手なコミュニケーションの方法 一一一一一一一…一一一一 95.
(6) 第3節認知. 1 認知とは何か 一一一一………一一一一…一一…一…一…一 101 2 認知で何が変わるか 一…一一一…一……一一一…一一…一一102 第4節 反応(行動). 1 反応とは何か 一一………一…一一一一一一一一…一一一. 104. 2 様々な反応(1)心身に及ぼすもの 一一一一一一一一一一一一一. 104. 3 様々な反応(2)過剰なストレスから引き起こされる症状… 106 4 様々な反応(3)その他 一一一一一一一一一…一一一一…”一’. 108. 5 バーンアウトの兆侯 一…一一一一一一一一一一一一一一一…. 110. 第5章. 自尊感情を高める技法 一一……一一一…一一一一一一…111. 第1節 問題の明確化 一一……一一……一一一一……”一一…− 111 1 自尊感情回復のための流れ …一一一……一…一一一一一一一…・111. 2 客観的に自分を知る心理テスト ー一……一一……一一一一 113 第2節 それぞれに合った問題解決法・取組 1 アサーション・トレーニング …一一一一一一…一一一一一一. 116. 2 コーピング・スキル ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…. 120. 3 論理療法 一一一一一……一一一一一一一一一一…一一一一一 4 認知行動療法 一一一一一一一一一一…一…一一…一…一一一一一 5 自律訓練法 一一一…一一一一一一一一一一一一一一一一一一 6 リラクゼーション ー一一一…一一一一一−一”””’””−”. 122. 7 具体的なリラックスの方法 一一一一一一一一一一…一一一一一一…. B4. 127 129. 132. 第3節 ソーシャルサポート 1 バーンアウトの予防に必要なもの 一一一一…一一一一一…一一. 136. 2 職場環境(学校に於けるソーシャルサポート) 一一一一…. 137. (1)同僚からの支援 一一一一一一一…一一一一一一一一… (2)学年、学校からの支援 一一一一一一一一一一一一一一一一 (3)管理職からの支援 一一一一一一一一一一一一一一一一… (4)教育委員会・文部科学省からの支援 一一一一一一一…・. 137. (5)家族からの支援 一一一一一一一一一一一一一一…一一一一. 145. (6)その他の支援 一一一一一一一一一一一一一一…一一一一一. 146. 139 141. 142.
(7) 第6章. 総合考察と今後の課題. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 147. 第1節 総合考察 一一一一一一一…一……一一一一一一一一一一一一一一 147. 12345. 第2節 章のふり返りと今後の課題 第1章 問題の所在と研究目的より …一一…一一一一 第2章 ストレスと自尊感情の先行研究より 一一一一… 第3章 教師の苦悩に関する調査研究より 一一一一一一・ 第4章 感情のメカニズムと対応より 一一一一一一一一一一. 第5章. 自尊感情を高める技法より 一…一一一一…一一. 148 148. 149 150 151. 第3節まとめ 一一一一一一一一一一一…一…一一一一一一一一一一 154 引用9参考文献 一一一一一一一一一一一一一一一一……一…一一一…一一… 157. ・「教師のバーンアウトの予防に関する」アンケート. ・アンケートの集計表 ・随筆「哲学の小径」 ・謝辞.
(8) 第1章 問題の所在と研究目的 目曜目の夜が憂欝な教師、月曜日に年休の多い学校は少なくない。よかれと. 思ってやったことが生徒に伝わらず、保護者の不信感をかい、地域から尊敬 されず、教師同士のいがみ合いを見聞きし、フレッシュな教師も採用の時の 喜びはどこかへ影を潜め、ベテラン教師も初心を忘れ、悩んでいる。 文部科学省は問題先生、不適格教師の、再教育、免職に乗り出しているが、 当然、子どもの教育、幸せのためには行うべきことである。しかし大概の者 が、筆者も含め自分がそれに当たるとは思っていない。自分を棚上げしての 言動が多い。学校評議員の仕事の一つがこれにあたるのだろう。. 教師に求められているものは何だろう。よく国会で、国の最重要課題は人 づくりであると言っている。豊かな人生のための様々な仕事、組織等は人が 行うのであるから当然のことではあるが、ほっておけば人は人になると思い こんでいる節がある。. 今こそ、人為的に、意識的に人問教育を必要とする時代はないのではない か。危機意識をもち、家庭の教育力の希薄な現状で、学校は最後の砦のよう な気さえする。教師の責任は重い。. いい先生とは何だろう。一口では言えないが、子ども達に未来に希望を馳 せ、豊かな人生、社会を築きあげる人間育成もそうであろう。そういった情 熱と責任をもった教師が望まれる。. しかし、その一方、そういう純粋な先生であるが故に、つぶれていく現状 もあるのだ。不適格教員はともかく、何らかの要因で不適応を起こしている 本来熱のある教員は本人の努力以外に周りがフォローすべき手だてを考える べきである。努力が報われる元気な教師、希望を見失わない教師集団、明日 が信じられる学校には何が必要なのか、目指すべき人間像、地域社会を考え、. 元気で目の輝いた教師集団作りには何が必要か考えたい。また毎目を生き生 きと職責を全うしている教師、絶えず悩みから解放されない教師の差は、違 いはどこにあるのか、明確にし、今後の教育に生かしていくことを本研究の 目的とする。. 第1節 教師の病気休職者の現状 ∼バーンアウトの実態∼ 1000人に1人の割合で生じるような「不適格」問題と10人に1人と いった水準で生じる「不適応」問題とを混同してはなるまい。「不適応」は個 人の資質や能力だけには帰せられない面もある。※. 一1一.
(9) 教師の病気休業者数について. 1−1 表1−1. 教師の病気休職者数等の推移(平成10年度∼平成14年度). 10年度 948350 ,. 病気休職者数(B). 4376,. うち精神性疾患に. 1,715. 939369 ,. 在籍者数(A). 11年度. 12年度 930220 ). 13年度. 14年度. 927,035. 925938 ,. 4470,. 4,922. 5228,. 5303フ. 1924,. 2,262. 2,503. 2687,. る休職者数(C). 在籍者比 (B)/(A) 曹 一 − 一 一 甲 『 一 − 一 一 一 一 一 隅 『 一. (C)/(A) 『 層 一 一 一 一 一 一 一 一 暇 層 一 一 一 一 幽. (C)/(B). 0.46% 一 一 一 冒 一 一 一 一 一. 〇。18% 一 一 一 一 一 『 一 層 一. 39.2%. O.48% 0.53% 0.56% 一 一 r r 層 一 一. 〇.20% 一 一 一 一 一 一 一. 43.0%. 一 一 一 一 r 一 一 一. 〇.24% 一 一 一 一 一 一 一 一. 46.0%. 一 一 嘗 ロ ー 一 一 r r. 0。57% 一 一 一 一 一 一 r 層 甲. O。27% 一 一 一 一 一 一 一 一 一. O。29% 一 一 目 『 『 一 一 一 騨. 47.9%. 50.7%. 平成16年8月 学校基本調査報告書 ※注1. 少子化に伴い、当然教師数も減ってきているのだが、病気休業者数は年々増 加し、特に注目すべきは、精神疾患者による休職者が増えていることである。. 平成14年度にはっいに50%を越えてしまった。これは何を意味している のだろうか。打たれ弱い教師が増えたのか、精神的にもろい教師が激増してい るのか。いやそうばかりでもなさそうである。新規採用間もない若い教師なら. さもありなんだが、40,50代のベテランと言われる教師も精神疾患者には 多い。これは個人の問題ばかりではなく、いじめ、不登校、校内暴力、性非行、. 同僚との人間関係、無理解な保護者、地域の目、文科省の新たなカリキュラム ヘの不適応等、様々な問題が複雑に重なり合っている現状がある。 これらが個人では解決できないストレスになって、教師に襲いかかっている。. それでは学校の教師におけるストレスとはどんなものがあるのか確認しておき たい。. ※ 伯瀬宏隆・児玉隆治・飯塚清博1988r教職員のメンタルヘルス」実践体系. ※注1 在籍者数は文部科学省の「学校基本調査報告書」による公立の小学校、中学校、高 等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、及び養護学校の校長、教頭、教諭、助教諭、養護 教諭、養護助教授、講師、実習助手及び寄宿舎指導員(本務者)の合計. 一2一.
(10) 1−2 教師である前に一人の人間としての哲学 人間とは何だろう。人が織りなす社会とは何だろうか。その中の一人とし. ての私の存在の意味とは何なのだろう。筆者は下記のように考えることで教師 としての拠を見いだそうとしている。. ① 誕生から死に至るまでを一生といい、人生という。 生. ② 人はなぜ生まれてきたのか、なぜ死ぬのか生物学的に理解で きてもその存在の目的は理解し得ない。. ドラマ. ③ 人間存在の意味を追求する者もあるが、たいていの者は今、. 自分が存在する事実は認め、ならばその生涯を幸福なもので ありたいと願う。 死. ④それならば幸福とは何かということになる、これは幸福論だ。 図1−1 人生 ⑤ 乳幼児期における「快」「不快」は最も本能的で原始的で基本的な「感情」 である。. ⑥ しかし私たちはシンプルな世界から、非常に複雑な社会構造を築きあげて. きた。そのことは同時に非常に複雑な感情構造を作り上げてきた。なぜな らそれは上手に生きる術であった。 ⑦ どんな心理学者であろうと結論としては「人の気持ちは分からない」・ 「あるがままに生きよ」ということではないかと思う。. ⑧とは言っても、可能な限り、少しでも快の気分(幸せ)を味わって生きた いと願うのが素直なところである。. ⑨幸福論は突き詰めていけば哲学であり、宗教である。. ⑩「幸せ、幸福とはなんぞや」と問うてみれば、人それぞれに考え方がある と思うが、その追求が教師のそれにもつながっていく。. 一3一.
(11) 第2節 教師特有のストレス ∼バーンアウトの背景∼ 教師のストレスを生む問題は概ね次のような悩みではないだろうか。 1). 2) 3). 4) 5). 生徒指導についての悩み 教科指導についての悩み 学級経営についての悩み 保護者についての悩み 教師間についての悩み. 6)自分の家庭においての悩み 7)地域についての悩み. 8)自分の健康についての悩み 9)昇進願望についての悩み. 10)その他の悩み. 2−1 生徒指導の問題 各学校にはそれぞれの実態に合わせた生徒指導方針があり、規約がある。 しかし大まかには似かよっており、共通の悩みに頭を痛めている。 いわゆる問題行動といわれるものには暴力(傷害、けんか)、恐喝、窃盗、. 無免許運転、飲酒、喫煙、かけごと、不純異性行為、深夜俳徊、家出、薬物乱 用、器物破損、落書き、他校訪問等があり、細かいことを言うと髪をとめる色 ゴムの色は黒、紺、茶であり、下着は色物はダメで、靴下は白で小さなワンポ. イントまでは認める。靴は白を基調にしたものでないとならない。通学服に手 を加え、変形しては成らない等の筆者の経験がある。. 大きな事件に限らず、教師を悩ませているのはこのような目常的な頭髪や服 装の指導にやりきれない思いを持ちながらも大きなエネルギーを費やし心身共 に病んでいる教師が多いのではないだろうか。. 2−2 教科指導の問題 「先生の仕事は何ですか」と聞かれて、大概の者が「勉強を教えること」 と答えるであろうが、今や学校は勉強も教えるといった雰囲気がある。. 塾や予備校、家庭教師は目的がはっきりしている。何年か前から「学校では 躾を塾で学力を」と笑えない冗談が飛び交ってきた。今や「生きるカ」を身に っけさす時代である。. しかし学校の本来の目的は、それこそ生き抜くための学力を身にっけるこ とだったのではないか、今まで未知のものであったものを分かる喜びを味あわ せることであったのではないか。授業より生徒指導ができる先生がいい先生で あり、誰もが生徒指導が上手にならなければならないと思っている人もいる。. 確かにそれにこしたことはないが、生徒指導はできる先生にお願いし、教科指 導にもっとカを入れる必要がある。教科指導、授業は避けては通れない。. 一4一.
(12) 2−3 学級経営の問題 純粋に、素朴に「先生になりたい」と思った動機は子どもたちとのふれあ いの中で喜びを分かち合いたいとの思いから成った教師も多いのではないか。 しかし今では担任希望と副担任希望に二分される。担任希望者がいなくて困 っている学校も多い。それぞれに課題を持っている子どもたち40名ほどを上. 手に営んでいくことは並大抵なことではない。例えが良くないとは思うが同 じ敷地の中にライオンやトラ、ウサギにキリン、チューリップにコスモスなど それぞれに飢えさすことなく、枯れさすことなく育てなさいといった感じがあ る。担任ならではの喜びもあるのだが、あまりにも問題が多すぎるのである。. 担任は24時間365目営業で夜中や休日の要請にも活動しなければならな いことも多く、夜の電話にでされも神経質に反応することもある。. また、いじめ、不登校、悪質ないやがらせが起こると担任の心労は計り知れ ない。小学校の教師にあっては教科担任制でない限り、ずっと一緒にいるわけ で、ストレスが途切れることはないだろう。. さらに最近では注意欠陥多動障害(ADHD)、学習障害(LD)の子ども への対応の難しさも加わって悩みは尽きない。. 2−4 保護者の問題 施設から通う児童・生徒もいるのだが、基本的に子どもたちには、その養 育に関わる親がいる。そのタイプは大きく分けて2つのタイプがある。 一つは過保護であり、もう一つは放任である。放任という主義であればまだ 親の主導権らしき意識は入るが、養育能力も責任も持たない親が増えている。 もはや保護者とは言い難く、子どもが問題行動を起こしても、親がなかなかつ. かまらない。つかまったとしても問題意識が無いか希薄である。それどころか 余計なお世話と食ってかかる親もいる。規範意識が育っていないので偏った自 立ともえない自分の世界を持って育つ。. 過保護は現実が見えていないので、うがった教育論を頑固に持ち、学校の指 導を素直に受け入れられない。子どものためによかれとやっていることが子ど もを苦しめ、歪めていることに気がつかない。どちらも親の思惑通りに動かぬ. 時に虐待といった問題を引き起こす。「我が子に限って」という台詞はよく聞 くが、これはいい言葉でもあるらしい。特別な愛は必要であると。. 一5一.
(13) 2−5 教師間の問題 志を同じくして成ったはずの教師同士も、いつしか教育の方法論に違いを 感じ始め、やり方や結果に不満を抱くようになり、派閥のようなものができあ がる。その組織にいることで安心感を得て、逆にいないと不安でたまらない。 励まし合い、支え合うはずの仲間がストレスの最大の原因というのもよくあ る話である。また管理職との関係も大きく、いい学校にはいい管理職がいると. いうのも真理のような思いがある。ただ一先輩教師のアドバイスのつもりで 発せられた言葉が歪んで伝わったり、素直に聞くことのできない精神状態の時 もあるかもしれない。ソーシャルサポートの最も身近なものとしての教師は大 きな役割を担うと言っていいのである。. 2−6 教師の家庭の問題 これは教師の数だけ様々な問題があるだろう。一般的には妻や夫が教師の. 仕事を理解できない、理解しようとしていないとか、部活動指導でいつも家に. いないとか、小さな子どものいる家庭では子育ての方法がかみ合わない、価値 観が違うといった問題もあるだろう。. また嫁と姑の関係が上手くいかず、本人たち以上に周りのものにストレスが 溜まる。仕事を終えても家に帰る気がしない。経済的なことや未来に対しての 明るい展望がもてないなどバーンアウトの要因はいくらでもある。. 2−7. 地域の問題. 新興住宅地や古い町並みにはそれぞれによさも問題も抱えている。新興住 宅地においては、町内の自治の取組が整っていなかったり、特に賃貸マンショ ンの集合地では、一時的な住まいということで、地域を何とかしようという積 極的な意見は生まれにくい。. 古い町並みは良きにつけ悪しきにつけ、連絡網が整備されていてロコミでど んな些細なことでも伝わっていく。昔から学校は地域の一部であり、ことごと く小さな行事でも参加して当たり前のところがある。. どちらにつけ、教師への評価は厳しい、いい者にはとことんいいが、気に 入らないと思われれば、一部が全てのように評価されていくところがある。 地域の力を生かすという課題が取りざたされてから、さらに学校内だけでは ないストレスが生じている。. 一6一.
(14) 2−8 自分の健康の問題 人は誰でも大なり小なり、剛気になる健康問題を抱えている。調子がいいと きには気にもせず、普通の生活を送れるのであるが、何か歯車がおかしくなる と体に異常を訴えるようになる。そして精神を病んだりするのにつながったり もする。また逆に過度の精神的ストレスから病気を誘発するときもある。. 昔から「健康な肉体に健康な精神が宿る」とは正にその通りで、特に若いと きは健康は当たり前で、改めて考える問題でもないと思いがちだが違う。. 教員の資質の一番目に挙げてもいいものが健康であるということである。. 調子が悪いことが分かっていても、っいつい自分がやらなければ、みんなに申 し訳がないと頑張ってしまうのが教師である。体調が良かろうが悪かろうが関 係なく仕事はわくようにやってくるのが学校である。. 健康のことは本人が最も注意を払い、家族が、同僚が、管理職が気遣ってや らねばならないことである。. 2−9 昇進の間題 生涯、一教師として直接児童・生徒とふれ合って過ごすというのもいいも ので共感を得るものある。逆に何かにつけ管理職へ道筋を考えて行動している 者には不信感を抱き、尊敬の念はなかなか育たないものである。 しかし、何かを始めたときに上を目指して頑張るのはごく自然な考えに違い ない。特に教師を目指し、学級担任になり「こんなクラスを築きたい」と思う. ものは学年主任になり「こんな学年に育てたい」という思いを持つように、管. 理職になって「こんな学校にしたい」という夢を持っことは健康的な思考であ り、こういう人が現れないと逆に大変である。. だが、これには巡り合わせのようなものがあり、当人が幾ら頑張ってもタイ ミングが合わないこともある。本人の評価と教育委員会の評価のズレもあるだ. ろう。そんな中、自分の同僚や若い者が先に教頭、校長になっていくと焦りや. ねたみの感情が芽生えるのも当然のことだろう。それに家族の目や言葉が追い 打ちをかけることもあるだろう。. 経験を積み、それなりのカをつけ、管理職への道を期待する者にとっては昇 進への道が思うように進まないのは大きなストレスとなっているだろう。. 一7一.
(15) 第3節 教師の資質 適材適所という言葉があるが、人間には持って生まれた性格、才能というも. のがある。あるいは2次的に身につけた技術というものもある。様々な職種の 中で自分にあった職業に出会えるのは幸せである。しかし自分にあった職種と は何なのだろう。自分を生かせる職業に就いた者は生き生きとした生活を送れ るであろうし、それにたずさわる周りの者も幸せである。. それぞれの職業に期待される人間像というものがある。それでは教師に期 待されるものは何か、現代に期待される教師像とは何か、学校教育に必要とさ れる教師の資質について考えることは入り口の地点でのバーンアウト予防につ ながるものである。. 3−1 資質とは 教師の資質を述べる前に、まず資質とは何だろう。辞書によると「生まれ つきの性質、資性、天性、素質」ということになる。. つまり全ての人に資質は存在し、それが何に生かされるべき資質なのかと いうことだろう。それが進路指導というものであるが、なかなか難しいことで ある。資質には全ての職業に共通した資質と、その仕事特有に要求される資質 というものがあるだろう。. 全ての職業に共通した資質とは、人間としての資質となる。人間としての資 質とは、人が社会で生きていく上で必要となる資質でありコミュニケーション スキルや使命感、責任感、また人権尊重というものではないか、これはいかな る職種にも、目常的な生活、つき合いの中に必要されるもののように思われる。. これを踏まえて、さらにそれぞれの特性を生かす資質ということになるだろ う。それなら教師としての資質は何だろうと考えていかねばならない。その前 に次の報告は教師の資質の何かを示唆している。. 3−2. 「指導力不足教員」の解消. (1〉「しんどいと学級担任を返上、病気を理由に出勤しなくなった」「高圧的な. 学習指導などで、生徒・保護者との良好な関係を築けない」「英語担当なのに. 英会話ができない」。全国の教育委員会で「指導力不足教員」と認定された教 員の姿である。. 文部科学省のまとめによると、2003年度に「指導力不足教員」と認定さ. 一8一.
(16) れた公立の小中高校の教員は481人。前年度に比べて200人近くも増えた。 しかしこれはまだ一部で、今後まだまだ増えるだろうと予測されている。本県. でも男女の中学校教諭2人が「研修措置教員」と認定され、4月から個別研修 を受けている。. かつてr優勝旗」という言葉が本紙明鏡欄などをにぎわした。指導力などに 疑問のある教員が赴任した学校では学級担任にさせないなど、問題が表面化す るのを防ぐ。各校持ち回りで引き受けるから「優勝旗」。笑えない話だ。. 教育委員会や学校、地域で懸命に隠し、抑え込んでいた「指導力不足教員」. が、ここにきて表面化するようになったのはなぜか。もともと教育の中立性を 守るために、教員の身分は手厚く保護されていた。. それが変わったのは、文科省が、都道府県と政令市の教委に指導力不足教員 を認定して研修させ、場合によっては分限処分(免職や休職など)をする人事. 管理制度の導入を指示したのがきっかけだ。2001年度には「地方教育行政 の組織及び運営に関する法律」を一部改正、「指導力不足教員」の免職が可能 になった。. しかし「指導力不足教員」と認定することは、一人の教員を教壇から追放、. 教員としての命を奪うことである。認定に当たっては慎重の上にも慎重さが求 められる。. 県教委は2003年度から教員の人事管理システムを導入したが、指導力不 足教員は「レッテルはり」の懸念があるとして、「研修措置教員」としている のも、教員の人格への配慮からだ。. 「指導力不足教員」にしろ「研修措置教員」にしろ、認定を受けた後は研修 を積んで、県教委の判定を受けることになる。職場へ復帰できればいいが、研. 修でも成果が見られないとなると、一般の公務員への配転、退職の勧告、分限 免職などの処分が下される。. 指導力不足と認定された教員のうち2003年度中に5人が免職、9人が休 職、88人が依願退職した。これまで298人が研修を受けたが学校に復帰し たのは97人。必ずしも多くはない。 一口に指導力不足教員というが、その判定は難しい。本人の弁明も聴くこと にしているが、公正さや客観性を保つことは容易ではない。現場の校長の意見. だけでなく、秘密を守ることを条件にしての複数の同僚教員の意見なども参考 にしてはどうか。. 誰がみても指導力不足という教員もいるかもしれない。だが問題は、いじめ や学級崩壊が多発する中で、ベテランと呼ばれる教員でも子どもの心をつかみ にくくなっていることである。これまでの経験で対処できない。子どもとのコ ミュニケーションがうまく取れない。自信が持てず精神的に追い詰められてい. 一9一.
(17) く。「いい先生」と呼ばれていた教員が突然、指導力不足になる危険性は常に ある。. 教育現場は忙しすぎるとの声をよく聞く。授業に書類作成、校内の会議や研 修、講習、そして部活動。過密化するなかで自信を失い委縮し、指導力不足教 員のレッテルを恐れ、校長の顔色をうかがうようになれば、逆効果だろう。. 公立小中高校の教員は全国に93万人。2000人に一人が指導力不足とさ れた計算。数字だけをみると少ないかもしれない。だが保護者にしてみたら、. 2000分の1に当たったらと思うと問題は深刻だ。 (2)認定の前に支援の充実を. 授業や指導がきちんとできなかったり、子どもの意見に耳をかさず保護者と の信頼関係も結べないのでは、確かに教員として多々問題があろう。(中略). 学校教育が子どもとじかに触れ合う教員の資質、力量に負うところが大きい のは言うまでもあるまい。常に実践や指導力の向上が求められる。多様な研修. 制度が設けられ、教員が目々の授業や生徒指導への研さんに余念がないのはそ のためだ。. そこに教職の重要性と難しさが存在し、「サラリーマン化」の許されない責 務が問われる。(中略). 生徒への暴言・暴行や無断遅刻、欠席を繰り返すとあっては論外である。い ずれも教員としての指導力だけでなく、自覚と責任感に欠けていたと言わざる を得ない。. しかし、気を付けなければならないのは「指導力不足」の認定が「教師失格」 のレッテル張りとなってはならないことだ。. システムが、教員を「型」にはめ込んだり、管理強化や個人のあら探しに利 用されてはならない。定義に基づいたきめ細かな調査が必要だし、評価や認定 には教委だけでなく第三者も加わるのが不可欠である。. 沖縄県教委の「教職員の悩み相談員」への相談(2003年度)で、最多は 「研修・自己研さん」の場が少ないとの内容だった。沖縄県教育庁は、学校現 場で先輩教師から学ぶ環境が少なくなったことが影響したと分析する。. 教員の意欲、指導力の向上は欠かせない。同時に、教師が自らの教育観に基 づいて子どもに向き合える学校現場の整備が問われていることも、教育行政は 忘れてはならない。. (1)2004年5月26目(水)東奥日報 (2)2004年5月4目 沖縄タイムス (社説). 一10一.
(18) 3−3 教師としての資質 さて「指導力不足教員」という言葉が適当かどうかは考える必要があるだ ろうが、指導力不足の指導力とは何なのだろうか。. 指導力不足と認定された教員が481人、病気休業者が5303人、その 内精神性疾患者数が2687人(平成14年度)である。これはおそらく氷山 の一角に過ぎないだろう。ここで考えなければならないことは、不適応者と不. 適格者との区別である。不適応者は現場で教師としてやっていけなくなり、不 適格者もその内、不具合を生じさせるだろう。しかし不適格者が教壇に居続け ることは、本人にとっても、児童生徒にとっては尚更のこと不幸なことである。. それならば、何をもって不適格というのか、何が不適応を生じさせているの かを考えねばならない。確認しておかなければならないことは不適格者は教師 として不適格であり、人間として不適格であるといっているのではなく、他の. 職種では多大な才能を開花させる可能性がある。また不適応者は基本的に教師 としての適格性はあるが、何かにおいて、指導力に問題があるのだろう。. 適材適所というが、学校という場所に適材な教師像とはどんなものか。それ がいわゆる教師の資質と言われるものだろう。. 先述したように資質を「生まれっきの性質、資性、天性、素質」とするなら. ば”生まれっきの”といわれると些かの抵抗を感じるが、どれくらいの割合 か定かではないが確かに持って生まれた、遺伝的な要素はあるだろう。しかし 二次的に備わった、育てられたものも大きい。教師の資質とは師範学校のとき よりうたわれているが、基本的な根底に流れているものは普遍的なものがある かもしれないが、実利的に現代の、その時代の求められる教師としての資質が あるはずである。それを見つめ直すことで、適材適所を実現し、あるべき教育 の目的を達成に近づけるのではないかと考える。そのことがひいては教師のメ ンタルヘルス、バーンアウトの予防に通じるのではないか。. 3−4 教師の資質に関する先行研究 筆者の研究は資質に関する研究ではないので、詳細に触れるつもりはない が、バーンアウトの予防や現在バーンアウトを起こしている者、これから教師 を目指す者には再確認することで無益なストレスを避けることには繋がると思 えるので今暫く資質にっいて考えておきたい。. 藤中(1986)の研究によると昔より教師の資質にっいては熟考されてきた。そ. れを表としてまとめてあるので紹介して考察してみたい。. 一11一.
(19) 表1−2 アンケートによる教師の資質 藤中(1986)r教師の資質に関する研究」 明 治’. 大正∼戦前. 昭和27年 教養・常識. 昭和61年 一般教養. 人 間 と し て の 資 質. 体力. ③豊かな人間性. ③円満調和的人柄. 努力. ②教職的教養 心身の健康. 健康. ①職務に精励. 昭和53年. 明朗な性格. 明朗. 強い責任感. 責任感. ②公務に精励. 職務に勤勉. ①教育者としての使命感. 明るいユーモア. ①自覚と使命感. 勤勉・努力. 実行力. 行動力. 実行力. 父兄の信頼. 子供・父兄からの信頼感. 思想・健全. 組合員の立場と教師 使命区別. 細心・綿密. 計画性. 寛容・度量. 清濁・包容力. 温情・部下愛. 後輩の世話. 学問がある. 頭脳鋭敏 ③協力性. 調和性. 公平無私. 情熱. 郷土愛. 公平. 職業としての資質. ③教育研究に努力. ①教育研究に熱心. 教育技術. ②教育に熱心. 天職として従事 ②教育的情熱. 情熱. 慈愛・教育愛. 子供をかわいがる. 児童への愛情. ②子供が好き. 研究心. よく勉強する. ①研究心. ③研究心. 子供からの敬愛 児童から敬愛 学校経営能力 政治力 統率力. 事務的手腕. 備 考. 理想的教師像. 理想的教師像. 優秀な教師. よい教師の資質. 教師の資質. 特性. 野県教師の模. 知県小中. とされる人物. 校長と教務経. 4名. 者150名. 京都郡部. 中高校長. 150名. 国父母. 般社会人. 00名. (注)項目前の数字は、各アンケートのベスト3である。. 一12一. 国校長. 3709名.
(20) 江戸末期、吉田松陰は「命にかけて必ず伝えるべきことありて教師となる」. と言っている。現在の教師論とは違うが、使命感と責任感という点に於いて共 通するところもあるように思える。. また明治6年の「小学教師心得」で「オヨソ教師タル者ハ、学文算筆ヲ教 フルノミニ非ズ、父兄ノ教訓ヲ助ケテ飲居起居二至ル迄、心ヲ用イテ教導スベ シ故二生徒ノ中、学術進歩セス、或ハ平日不行状アラバ教師タル者越度タル可 シ・・」と述べている。要するに教師たる者、手本となるべく人格者であれと. いうことである。富国強兵の元、忠心のある教師像を求められているように思 える。. 大正∼戦前に於いては、明治期と大きな違いは無いように思えるが、円満調 和的人柄、明朗な性格と性格に触れられているのが現代に近いのが興味深い。. また聖職者、天職の項目は昔からの寺子屋の教師としての僧侶の役目がある のであろうし、現代でも教師は聖職であるという考えは残っている。. 昭和前期になると協力性や事務的手腕の項目があるのも面白い。事実は定か でないが今ほどに事務手続きが多かったとは思えないのだが、事務能力という ものはいつの時代でも求められるものらしい。. 昭和53年より豊かな人間性、ユーモア、子ども好き、教育者としての使命 感、自覚などの項目が踊っているのが興味深い、逆に言うなれば、そういった ことに乏しいということの裏返しだろう。また心身の健康、体力という項目は 筆者が教員になった昭和55年は校内暴力が全国的に激しく、心身を病んでい た人が多かったように思う。元気であるということは基本的な永遠の資質の一 つに違いない。. また昭和57年に千葉県教育委員会が「教職員研修体系化について」という 中で教師の資質を具体的な44項目にまとめているのも分かりやすいし、今で も色あせていない。それは3つにまとめられている。. 1つ目が人間性・教養r基礎的な資質力量」. 2つ目が実態把握と実際指導「児童・生徒の指導に直接関わる資質力量」 3つ目が環境条件や事務処理を含めた「児童・生徒の間接的に関わる資質力量」. 以上3つの観点で資質力量を44項目にまとめた一覧が次の表である。. 一13一.
(21) 教職員の資質力量一覧 ※注2. 表1−3 1基資礎質的力な量. 人間性 教養. 資 質 力 量 項 目 1豊かな人問性 一般的教養 門的な教養. 2.人間としての幅広い教養 .専門分野への深い教養. 観察理解する 質力量. 5.健康状態や体力を観察する資質力量. 6悩みや要求を観察する資質力量 7.生活態度を観察する資質力量. 8.家庭や地域の特性を観察する資質力量 9.学力を検査・調査し判断する資質力量. 検査・調査し判 10.意識や考え方を検査・調査し判断する資質力量 する資質力量. 11.健康や体力を検査・調査し判断する資質力量 12.家庭や地域の状況を調査する資質力量. 資料を収集し分 13。学校生活や記録から情報をっかむ資質力量 する資質力量. 4.校外から情報をつかむ資質力量. 5,文献や資料から情報をつかむ資質力量. 指導する資質力量. H児童生徒 の 指導に直接か わ る資質力量. 実態を把握する資質力量. 4.学力や考え方を観察する資質力量. 16.学校教育目標などをたてる資質力量. 計画をたてる 質力量. 7.各教科等の目標を立てる資質力量 8.学校教育目標などの具現化計画をたてる資質力量. 9.各教科等の指導計画をたてる資質力量 20.個人や集団を掌握する資質力量. 計画を展開す 資質力量. 21.実態に応じて指導する資質力量. 22.各教科等のねらいに応じて指導する資質力量. 23。指導を効果的にするために創意工夫する資質力量 24.学校、学年、学級経営について評価する資質力量. 評価する 質力量. ※注2. 5,指導計画や方法について評価する資質力量 6.個々の児童生徒を評価する資質力量. 千葉県教育委員会r教職員研修体系化について」1982. 一14一.
(22) 関にる. 対資 処質. 環境を構成利用 27。教室や学校環境を構成整備すし利用する資質力量 る資質力量. する資質力量. 事す. 記録し管理する 質力量. 0.災害を対処する資質力量 31.記録をとり保管する資質力量. 32.帳簿を処理し管理する資質力量 33.文書や連絡を処理する資質力量. 物や金を管理す 34,会計を処理する資質力量 資質力量. 望を. 28.地域や社会環境を利用し働きかける資質力量. 不測の事態に対 29.事故に対処する資質力量. す. るを資処質理 つしくいる人資的質環能境力. 皿 児童生 徒 の 指導に問接的 に関る資質力量. 資 質 力 量 項 目. 35.学校財産を管理する資質力量. 校外と連携する 36.保護者と連携協力していく資質力量 質力量. 37.地域の住民や機関団体と連絡協調する資質力量. 学校運営を円滑 38.校内の組織活動を活発にする資質力量 進める資質力量. 39.勤務・服務を適正にする資質力量 40.自己研修を進める資質力量. 研修(研究)を 41.校内研修を進める資質力量 める資質力量. 42.校内研修を生かす資質力量. 43.目常実践を研修に生かす資質力量. 44。地域の研修(研究)を推進する資質力量. 千葉県教育委員会「教職員研修体系化について」1982. この千葉県教育委員会の「教職員研修体系化について(1982)」は実に具体 的に教師に求められる資質力量をまとめている。. こんなに多くのことを求められて、いや実際はもっと多くのことを行ってい るような気さえする。っくづく教師とは大変な仕事であると再確認し、義理人. 情だけではうまく動かなくなった社会の現状を思えば、教師のバーンアウトが. 増えているのも頷ける。藤井(1986)は結論として次の3つに教師の資質をま とめている。. 1.人間として子どもとのふれあいを大切にすること(子ども愛). 2.職業として強い使命感を持ち、教育にやる気・活力があること(使命感) 3.専門職たるべく絶えず研修にはげみ、授業で勝負すること(研究、向上心). 一15一.
(23) 3−5 教師の資質に関する文部科学省の見解 さて教師の資質については、様々なところでけんけんがくがく論じられてい て、それぞれになるほどと思わせるが、(・)「公的に教師の資質は何かが、明 確に定められないまま、資質の向上ばかりが叫ばれている。よってその効果を あげることもできないはずである。こと細かく論ずるまでもなく教師は、かく. あるべしと一定の行為基準が社会通念として維持されているのか、抽象的、概 念的に教師の資質を定義することの無意味さ故か、あるいは教育政策の定める ことをひたすら遵守することが教師としてのあり方と考えられているのか。. いたずらに教師の学力、指導力、人間性、勤勉… との世間の声だけを 背景にして、学校や教師の資質等を定めるならば、教育状況はいっそう悪化す るやもしれない。jと吉本は述べている。. さて文部科学省のホームページに目を通すと生涯学習・学校教育の教員に関 することの項目に「教員を目指す皆さんへ」というところがある。その中で簡 単ではあるが教員の資質について下記のように記されている。. 教員に求められる資質能力. いつの時代も教員に求められる資質能力. ・教育者としての使命感. ・人間の成長・発達についての深い理解. これらに基づく. ・幼児・児童・生徒に対する教育的愛情. 実践的指導力. ・教科等に関する専門的知識 ・広く豊かな教養. 図1−2 教員に求められる. 今後特に求められる資質能力. 資質能力(文科省). (1)吉本二郎(大正大学)日本教育経営学会編「教師に資質向上」(1986) ”教師の資質とは何か”. 一16一.
(24) ①地球的視野に立って行動するための資質能力 ◆ 地球、国家、人間等に対する理解. ◆ 豊かな人間性 ◆ 国際社会で必要とされる基本的な資質能力 ②変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力 ◆ 課題解決能力 ◆ 人間関係に関わる資質能力 ◆ 社会の変化に適応するための知識及び技能 ③ 教員の職務から必然的に求められる資質能力. ◆ 幼児・児童・生徒や教育の在り方についての適切な理解 ◆ 教識への愛着、誇り、一体感. ◆ 教科指導、生徒指導のための知識、技能及び態度. 教育職員養成審議会「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について(第一次答申)」(平成9年7月28日) において提示。(初等中等教育局教職員課) 文部科学省ホームページ. 『生涯学習・学校教育』「教員に関すること」”教員を目指す皆さんへ”一今、求められる教師像とは?一 http:〃www.mextgojp!a乙m㎝u/shotou/kyo血’needs/index.htm(2004/8/22). 一17一.
(25) 教師の資質について論じてきたが筆者なりにまとめてみると、まずは健康 であれということ、次に教師に適した性格であるか、次に人間理解力、専門的 知識があるか、最後に実行力、実践力があるかということではないか。 これを簡単な図にすると下記のようになる。. 教師の資質についての系図. 健康. ・肉体的、精神的に健康で元気である. ・子ども(人間)好き. 人格的資質(性格). ・明朗な性格 ・強い責任感 ・健全な人権感覚(公平無私). ・その他. 子ども理解能力. 〈→. 専門的知識技能. ・児童、生徒の発達段階を知る. ・教科における専門的知識. ・人間関係の構築のうまさ. ・広く豊かな一般教養. ・コミュニケーションスキル. ・教科指導のうまさ. ・家庭環境の把握力. ・事務能力. ・その他. ・その他. ・教育に夢がある ・研究熱心. ・目指すべき児童、生徒像がある. 使命感. ・将来を見越したビジョンがある. 愈 教育活動の実践・実行 図1−3 教師の資質についての系歯. 一18一. ・思いを形にしていくカがある.
(26) 第4節 研究目的と方法 4−1 本研究の目的 本研究の主な目的は、教師の燃え尽き、バーンアウトの対処の仕方、予防 ・軽減の方法を提起することにある。. 第3節で「教師の資質」に詳しく触れたのは、バーンアウト以前にまず、 教師として適格である者が教師になっているか、教師を目指しているかという ことを述べたかったからである。適材適所であってもストレスは生じる。しか し、それならばそのストレスを乗り越え、成長の糧にできる可能性が高い。. いかなる仕事にもいえることではあるが、特に教師は肉体的、精神的に健康. な者が望まれ、人格的資質(性格)に子ども(人間)好き、明朗な性格、強 い責任感、健全な人権感覚(公平無私)等、要するにまじめさが要求される。. だがそういった人格的資質を有する者ほど精神的健康を害しやすく、肉体 的健康を失っていく者が多い。教育の基本である健康を害することで教育活 動を続けていけなくなっている教師が後を絶たない現状がある。 筆者が見る限りに於いて、教育上の諸問題に懸命に努力している教師は多い、. しかし問題の根本的な所在がどこにあるのか、明確にするのは難しいが、複雑. な社会構造や価値観の多様化は混乱を引き起こし、努力している割に結果が得 られなく、いじめ、不登校、校内暴力等、生徒指導で苦しんでいる教師に、』「指. 導力不足教員」とレッテルを貼られるような状況がある。. 全目本教職員組合の調査によれば雇用不安を抱いている教師は63.9%に及 ぶらしい。. 確かに首をかしげたくなる教師もあるだろうが、懸命な奮闘努力にもかかわら. ず指導に行き詰まり、自信を失いバーンアウトしていく教師に何らかの救いの 手を伸ばしたいのである。. 教師のメンタルヘルスに気配りをすることは、教師の健康、すなわち学校の 健全化であり、児童生徒の健全な育成につながり、ひいては地域の活性化に結 びついていくのである。. 4−2 本研究の概要と方法 バーンアウトは様々なストレッサーが要因となって引き起こされるストレ スが許容範囲を超したときに生じる。よってストレスとは何か、いかにして起 こるのかを考えねばならない。また同じストレッサーがありながらも、ストレ. 一19一.
(27) スの度合いが違うのはなぜか、つまりバーンアウトに陥る教師とそうならない 教師の違いは何かを考えることもバーンアウトの予防のヒントが隠されている に違いない。. 第1節r1−2 教師である前に一人の人間としての哲学」で述べた ように教師としての幸せ、幸福論は突き詰めていけば哲学であり、宗教である。. 幸せ、幸福とはなんぞやと問うとみれば、千差万別、人それぞれに違う。それ はなぜか、そこに感情、認知の仕方の違いがあるからだ。. 人は新しい車やコンピュータなどが手にはいると喜び、待望の赤ちゃんが 産まれると、無上の幸せを感じる。しかし、ここでイメージの世界で遊んでみ ようと思うが、自分が世界一の大金持ちで、世の中に手に入らぬものは無いと 思えるときでも、満たされないものがあるような気がするのである。衣食住足 りて礼節を知るというが、余りあるほどの衣食住と名声を手に入れても満たさ れないものがある。そんな気がする。. 1)物質的に恵まれることは幸せである. 2)物質的に恵まれても幸福感が持てないことがある. 3)究極にはr心」がr精神」が満たされないと人は幸せと感じられない. 幸、不幸は他人が決めるのではなく、自分が決めるということだ そうすると人の気持ちは一般化できるものではない、しかしごく平均的な 共通した人間の感情というものはあるのではないか、そこで私の考える「幸福 論」を論じることにも意味がでてくるのではないか。. 人は乳児期、幼児期、青年期を通じて、実に様々な経験を積み、感情を育 てていく、そしてその感情コントロールで社会人として、上手に生きていくの である。しかし、その訓練不足、理解力不足よる未熟さが、自分を苦しめるこ とになったりする。. 具体的には、以下の3点を研究の骨子とする。 1.ストレスの緩和の仕方を模索する。. 2.自信をつけ自尊感情を高めることでバーンアウトの予防に役立てる。 自尊感情の高揚のための方法を模索する。. 3.バーンアウトの危険性のある者を援助、支援する環境のあり方、ソーシャ ルスキルのあり方を模索する。. 一20..
(28) 第2章 ストレスと自尊感情の先行研究 バーンアウトはその人の許容範囲を超える過度の肉体的、精神的負荷が加 わったときに引き起こされる症侯群である。. 精神的超過負荷が肉体をむしばむ、あるいは逆もありえるだろう。心身は 相互に影響し合っている。この超過負荷がストレスであり、いかに軽減するか ということもバーンアウトの予防に関わってくる。. またストレスを感じることこそが感情である。一般にr心」といわれるこの 喜怒哀楽を感じる器官が上手に動かなくなることで、様々な歪みが起きてくる。. 乳幼児期における「快」「不快」は最も本能的で原始的で基本的な「感情」 である。そして根本的に大人社会に起こるストレスもこれに大差はない。 感情とは実にやっかいなもので、無かったらいいとさえ思えるときもあるが、. しかしこれが無ければ喜びも感動も無く、生きている意味も無くなるだろう。. 人は自尊心、自己肯定感すなわち自尊感情があるから、生きていける。無意 識の方が多いのかもしれないが、自己の存在を肯定することでバランスを保ち 生きていけるのである。. だが、バーンアウトは自尊感情が不安定になったり、見失ったときに起きる。. よって意識的に自尊感情を高めることでバーンアウトの予防ができるのではな いかと考える。. 第1節ストレスのとらえ方 1−1 ストレスの定義 足立(1999)によると「ストレス」の起源は、ハンガリーの生理学者ハンス ・セリエによって発表されたものが始まりである。セリエは、本来物理工学的. な意味合いであったrストレス」を生物体のもつ反応としてとらえ、「生物学 的ストレス症候群」と名付けたのが、そののち一般には、rストレス」として. 知られるようになった。rストレス」は精神的な面だけでなく、身体的な健康 状態にまで影響をおよぼすものと考えられている。. また、rストレス」には個人差もあり、同じようなストレッサーに対してす べての人が同じような反応を示すわけではない。そして、ストレッサーに対す る対処の成功による問題の克服ということも十分に考えられるので、「ストレ ス」のすべてが人間に悪影響を与えるとは限らないといえよう。. 一21一.
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