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形容詞の評価性と「~こむ」の接点

ドキュメント内 複吅動詞「~こむ」の意味体系 (ページ 72-75)

第三章 「-こむ」の副詞的意味について

3.2 形容詞と副詞の評価的意味

3.2.2 形容詞の評価性と「~こむ」の接点

形容詞の評価性について、樋口(2001)は詳しく議論している。先ず、形容詞を意味的な観 点から特性形容詞と状態形容詞を分けている。

(93)形容詞の分類

a. 《特性》をさししめす形容詞

《特性》は人や物に恒常的に備わっていく特徴であって、時間の流れの中での、一

定の時間帯に生じる現象ではなく、時間外的である。

b. 《状態》をさししめす形容詞

《状態》は一定の時間帯に生じる現象であって、それはつねに具体的な時間にしば

られている。形容詞はこのように、異なる現実の断片をその意味にうつし出してい る。

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(樋口2001:44)

また、樋口(2001)によると、特性形容詞では、人間による評価は、ある基準にてらして、

それとの比較のなかで物を意味づけるが、状態形容詞では、それは人間に生じる感情をも とにして、その感情をひきおこす原因としての対象を意味づけている。前者は二つのグル ープに分けられる。

(94)特性形容詞の下位分類

Ⅰ. 資格づけ的評価

形 まるい、しかくい 色 あかい、あおい 平さ たいらな、へいたんな 透明さ とうめいな、にごった

量的な特徴 たかい、ひくい、はやい、おそい、わかい、年とった 構造 ふくざつな、たんじゅんな

抽象性 ぐたいてきな、ちゅうしょうてきな 活動のし方 いそがしい、ひまな

可能性 かのうな、ふかのうな

必然性 とうぜんな、もっともな、あたりまえな

予想と現実との不一致 ふしぎな、みょうな、きみょうな、へんか、いがいな

Ⅱ. 資格づけ的な評価+価値づけ的な評価(《いい/わるい》) 性格 まじめな、やさしい、がんこな

知性 りこうな、かしこい、ばかな、まぬけな 現象の様子 じみな、はでな

生理的な特徴 げんきな、けんこうな、びょうじゃくな

美 げひんな、じょうひんな、みっともない、はしたない 功利 べんりな、ふべんな、ひつような、ふひつような

(樋口2001:48)

前にも述べたように、《資格づけ的評価》は、物の意義が同種の他の物との関係のなかで もつ意味あいをあきらかにするもので、《価値づけ的な評価》は《いい/わるい》という人間 側の意味付けである。また、樋口(2001)は状態形容詞を以下のように分類した。

(95)状態形容詞の下位分類

Ⅰ. 人間の状態をとらえているもの

68 ① 直接的な反忚(快/不快)

生理的な状態 いたい、かゆい、まぶしい、ねむい

② 直接的な反忚(快/不快)+価値づけ的な評価(いい/わるい)

心理的な状態 うれしい、かなしい、さみしい、つらい、もったいない、うら やましい、ねたましい、しんぱいな、ふあんな、じれったい、

なさけない、ざんねんな

Ⅱ. 物の状態をとらえているもの (状態形容詞と特性形容詞との中間に位置している)

あかるい/くらい、にぎやかな/しずかな

Ⅲ. 物の状態も人間の状態もとらえているもの(状態形容詞と特性形容詞との中間に位

置している)

あつい、ぬるい、つめたい

(樋口2001:52-60)

以上のように、形容詞は特性形容詞と状態形容詞に分けられているが、「~こむ」の評価 的意味は、特性形容詞の量的な特徴のグループに入る形容詞に関係していると考えられる。

前述のように、「~こむ」は「着点領域における位置が深い」、「領域内部に留まる時間が長 い」、「領域内部に定着の程度が強い」、「領域の内部に移動する物の数量が多い」と四つの 評価的意味があるが、ここの「深い/長い/強い/多い」はいずれも量的特徴を表す。

また、樋口(2001:60)は形容詞の意味のなかにうつしだされている評価性は≪評価的な 構造≫のなかで発揮されると述べている。この≪評価的な構造≫について、以下のように 述べている。

その構造は、≪評価の为体≫≪評価の客体≫≪評価の根拠≫≪形容詞がさしだす 評価そのもの≫というすくなくともよっつの構成要素からなりたっている。≪評 価の为体≫は評価する人間のことである。…(中略)≪評価の客体≫は評価される客 体のことである。人や物、それらが引き起こす出来事などがその対象となる。≪

評価の根拠≫は物の特徴を意味づけるための基準である。人間が物とのたえまな い接触のなかでつくりあげてきた、物についての平均的な表象や人間が体験する、

その場かぎりの感情がその基準となる。≪形容詞がさしだす評価そのもの≫は形 容詞がもっているところの評価的な意味である。(樋口2001:60-61)

このような「評価的構造」を利用することによって、「~こむ」の評価性を抽出するのに 役立つ。即ち、誰が、どのような評価の対象を、どういう基準で、どのように評価するか という構造を利用して、「~こむ」の評価性を今までの曖昧な状態から脱して、体系的に明 確にすることができるということである。形容詞の評価性に関する結論を利用して、本稿 の詳しい考察内容は以下のようにまとめられる。

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(96) 形容詞の評価性と「~こむ」との繋がり

a. 「~こむ」の意味は、どのタイプの形容詞と、どのように繋がっているかという 考察により、「~こむ」の意味をいくつかのタイプに分けられる。

b. 「評価的構造」を利用することにより、「~こむ」の評価性を体系的に明確するこ と。

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