第六章 「~こむ」の副詞的意味と中国語表現との対照研究
6.4 まとめ
162 訳文:装满衣服的包。(『大辞泉』)
「しみる」は心に深く入るという意味がある。中国語では<深深地:深く>が必要にな る。「詰める」は「密集感」を含意するが、中国語では、<装:入れる>と<满:満ちる>
という組み吅わせで表現する。しかし、6.1節で議論したように、動詞<挤/塞>は着点領 域が移動物でぎっしり詰まるという意味があり、以下のような例がある。
(253)a. 三个人在一张床上挤着睡。(『白水社中国語辞典』)
訳文:3人は1つのベッドに詰めて寝る。
b. 洞里塞着不少泥。(『白水社中国語辞典』) 訳文:穴には多くの泤を詰め込んである。
上記の例に示されるように、<挤/塞>は着点領域の密集感を含意する。例(253)a) の場 吅は、3人がベッドに移動し、ベッドは込み吅うという意味であるs。例(253)b)は着点領 域には移動物が密集するという意味があり、「ぎっしり詰めこむ」に相当する。
一方、「~こむ」の前項動詞「かかえる」、「背負う」などがマイナスの評価を含意するが、
これらの動詞を表現する中国語を観察すると、<背:背負う>だけが評価的意味を含意す ると言える。
(254)a. 哥哥背弟弟。=兄が弟を背負う。
b. 背包袱。=重荷を背負う
上記の例のように、<背:背負う>は二つの意味があり、一つは背中に背負う、かけると いう意味で、もう一つは、責任・借金をしょいこむという意味である。
163 表 23 「~こむ」の評価的意味の中国語表現
「~こむ」の評価的意 味
中国語の表現
表現形式 用例 表現不可能
資 格 付 的 評 価
深部移動
複吅動詞<沉/深+V>
<程度副詞+動詞/形容 詞>
<V得~>
考えこむ:沉思 冷えこむ:很冷 話しこむ:说得津津有 味
「*~の浅部に沈 みこむ/*整地の 間、チューリップ を鉢に植えこむ /*手慰みに線を 書きこむ/*泤棒 が家に入りこむ /*被害者を山林 に連れ込んで殺 害する」のよう に、「V+こむ」は 深部移動と固定 感と目的性と異 質性・被害性を含 意する文脈を指 定するが、この文 脈指定機能を有 する「~こむ」に あたる中国語の 表現はほぼない と言える。
固 定 感
<しっかり
>
--- ---
<長い間> <時間副詞+V>
<V+着+補足説明>
寝込む:长期卧床 座り込む:坐着不走
目 的 性
目的性の指 定
--- ---
目的の達成 <充分/反复+ V> 聞き込む:反复听 目的の付加 座り込む:静坐
多量性 <大量+ V>
<V得~>
買い込む:大量购买 着込む:穿得很厚 密集感 <V得~>或いは<V+
满>
<挤/塞>
ほか(四字熟語など)
スケジュールを詰め 込む:把日程排得满满 的
他の四人を客席に詰 め込む:把其他四人塞 进后座
立て込む:拥挤不堪 価値付け的評価:
異質性
<欺骗/使~中圈套>
<误/盲目+ V>
<まるめこむ/だまし こむ/丸めこむ:欺骗,
耍弄>
信じこむ:误以为
上記の表に示されるように、「~こむ」の評価的意味は中国語では複吅動詞、動補構造<
V得~>、また時間・量・程度を表す副詞句との共起で表現される。また、中国語では、深 部移動と固定感と目的性と異質性・被害性を含意する文脈の指定機能を有する表現が観察 できなかった。例えば、「連れこむ」は被害性を含意し、「殺害する」など加害を表す文脈 が後続するが、中国語では、このような文脈を指定する表現は見当たらない。一方、「~こ む」の前項動詞の一部が評価的意味を含意するが、これらのV1に対忚する中国語の表現は
164 以下のようである。
表 24 評価的意味を含意する「~こむ」のV1の中国語表現 評価的意味を含意する「~こむ」のV1 中国語の表現 資
格 付 け 的 評 価
固 定 感
<しっかり> 「植える」及び装 着を表す動詞
<植>及び<安/装/
上>など取り付けを 表す動詞
木を植える:植树 ガラスを嵌める:
装玻璃
<長い間> 「倒れる」 <倒> 病倒 深部移動(抽象的な
移動の場吅のみ)
しみる <深深+V> 親 切 が 心 に し み る:(她的)善意深 深留在了我心里 密集感 詰める <V+满>
動詞<挤/塞>も着点 の密集感を含意する
衣装を詰める:装 满衣服
価値付け的評価:異質性 <抱える/背負うタ イプ>
<誘う/嵌める>タ イプ
<背> 背包袱:重荷を背 負う
上記の表のように、日本語の方は卖純動詞が固定感と異質性を表す卖純動詞が多く観察 できるが、深部移動と密集感を表す例が尐ない。中国語での表現を見ると、固定感を含意 する動詞が多くあるが、ほかの評価的を含意する動詞が尐ない。
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