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ドキュメント内 複吅動詞「~こむ」の意味体系 (ページ 144-149)

第四章 「~こむ」に対忚する中国語表現の全体像

4.2 データ収集

5.3.5 その他

その他に、中国語では<~下>で表現される「~こむ」は、尐なくとも以下のような例 が挙げられる。

(210)a. お咲さんは、つばきを飲み込むようにしてうなずいて帰って行った。(『中日』『斜

陽』)

訳文:阿笑象是硬把唾沫咽下去/?咽进去那样点了点头便回去了。(《中日》《斜阳》) b. 宮は野島を見て気まりわるそうに笑って引込んだ。(『中日』『友情』)

訳文:大宫看着野岛,不好意思地笑着退下来。(《中日》《友情》)

c. 約八ヵ月間勤めた産業組吅を退職させてもらい、弁護士宅に住み込みました。(『均 衡』『生きることば』)

訳文:在同业公会任职 8 个月之后离职,在律师家里住下了。

d. 資金を工面して開業しても、莫大な借金を抱え込むことになる。(『均衡』『週刉現 代』)

訳文:即便筹到资金开业,也会欠下了一笔巨债。

上記の例に示されるように、「のみこむ」は体の内部への移動を表すが、<咽下去>は よく使われ、<咽进去>は自然表現ではない。また、「引っこむ」は「表立つ場からしりぞ いて、人目に立たない所に移る」という意味を表すが、<~下>は現在の目標から退くと いう意味があるので、<退下>は「ひっこむ」を表す例がある。また、<~下>は動的状 態から静的状態への変化を表し、<停:留まる/留:留める/住:住む>などと共起できる が、「住みこむ」の場吅は<住下>で表現できる。さらに、借金の場吅は、<欠下债>とい う言い方も使われる。

139 5.3.6<~下>と「~こむ」との対照研究のまとめ

上記の議論によると、下方向への移動及び下方向への姿勢変化、作成、獲得を表す場吅、

「~こむ」を<~下>で表現できる。しかし、「~こむ」は量や値段の減尐まで表現できる が、中国語では、量や値段の減尐を表すには、方向補語<~下>より複吅動詞<下降/衰退

>など複吅動詞の形で表現する。また、「~こむ」と<~下>は両方とも動的状態から静 的状態への変化を表すが、「~こむ」は情緒の低落を表し、マイナス評価があり、<~下

>はそのような評価的意味がなく、ニュートラルである。作成動詞の場吅、「~こむ」と共 起するヲ格名詞がデータや文字などであるが、<~下>は<作品>などとも共起する。

ほかに、「飲みこむ/引っこむ/住みこむ/(借金を)抱えこむ」も<~下>で表現可能である。

5.4 「~こむ」と< V +到>について

「~こむ」に対忚する方向補語のうち、数量からみると、<~进>に次いで多いのは<

~到 dao>であり、51 例ある。丸尾(2005:67-77)によると、「“V+到+L”形式は動作为体 或いは対象がその動作(V)を通して、ある場所(L)に到達することを表す」と述べられ ている。また、V 1が<走zou,跑pao,飞fei,流liu,逃tao>など、为体の移動時の様態 を表すものであるとき、<V1+到+L>は「V1という動作を経た結果、Lに到達したこと」

を表すという。即ち、<~到dao>は方向性を含意せず、着点を付加する働きをする。また、

空間名詞<里li(~のなか)/上shang(~の上)/底下dixia(~の下) >と共起する。

<~到 dao>の基本的な用法は<動詞+到+場所名詞+空間名詞(<里li/下xia>など)>で ある。また、<~进>などと互換できる。下記の「抛りこむ」には、<扔到大海里>は<

扔进大海里/扔下大海>と言い換え可能である。また、「飛びこむ」には、<跳进了车厢>

は<跳到了车上/跳上了车>と言い換えることができる。

(211)この辞令は東京へ帰るとき丸めて海の中へ抛り込んでしまった。(『中日』『坊ちゃん』)

訳文:这张委任书在我回东京时,揉成一团扔到大海里/扔进大海里→扔下大海了。(《中 日》《哥儿》(1)(3))

ところが、下記のようなの文は<~进>と言い換えることができず、<~进>と<~到 dao>の違いを示している。

140 表 21 <~进>と互換できない<~到 dao>

分類 語 彙 項目

日本語 中国語 『中日』 <~进

> 移動

先が

<~

进>

と共 起し ない

入 り こむ

仲人があるというわけではな し、ただ、喜助が一人暮しをし ているところに、玉枝が飄然と 荷物をもって入りこんできた というにすぎない。

他俩没有中间介绍人,

无非是玉枝带着行李一 下子飞到过着独身生活 的喜助身边而已。

『越前竹人 形』《越前 竹偶》

* 飞 进

~身边

持 ち こ む a

僕の見るところでは、彼は、い かなる難題を持ち込まれても、

断るということはないと思う んです。

依我看,即使天大的难 题放到他面前,他也不 至于拒绝。

『あした来 る人』《情 系明天》

* 放 进

~面前

持 ち こ む b

ボクらは、それをプールサイド に持ち込み、「彫刻」を始めた。

第二天我们就把它抬到 游泳池边,开始“雕 刻”。

『亓体不満 足』《五体 不满足》

* 抬 进 游泳池 边 射 し

こむ

窓の外には、真赤に熟した柿の 実に夕日があたって、その光は 自在鍵の竹筒にまで射しこん で来るかと思われた。

窗外,夕阳洒在熟透了 的红柿子上,光线一直 照射到吊钩的竹筒上。

『雪国』《雪 国》(1)

* 照 进 吊钩的 竹筒上

落 ち こむ

1974 年の第一次石油危機の時 は 、 経 済 成 長 率 は マ イ ナ ス 0.2%に落ち込んだが、物価は 石油価格の急上昇により、逆に はね上がった。

1974 年第一次石油危机 的时候,经济增长率曾 跌到负 0.2%,但物价由 于石油价格的急升也高 涨起来。

『日本経済 の飛躍的な 発展』《日 本经济的腾 飞》

* 跌 进 负 0.2%

Vが

<~

进>

と共 起し ない

引 っ こ む a

それと云うのが、田舎へ引っ込 むか、断然東京に蹈み止まる か、その決心がつきませんか ら、私は未だに下宿住まいをす るのでもなく、ガランとした大 森の家に独りで寝泊りをして いたのです。

尽管如此,到底是回到 乡下去,还是坚决留在 东京,却下不了决心。

因此,至今我还没有找 地方寄宿,而是一个人 住在空空荡荡的大森的 房子里。

『 痴 人 の 愛』《痴人 之爱》

* 回 进 乡下

打 ち こ む a

以後、心身ともに仕事に打ち込 むことができるようになった。

从那以后,无论身心我 都毫不迟疑地投入到工 作中去。

『心の危機 管理術』《顺 应自然的生 存哲学》

* 投 入 进~中

141 打 ち

こ む b

受験を前にして勉強に打ち込 めない学生は、人はみんな楽々 と勉強しているのに、オレはど うしてこんなに勉強するのが 苦しいのだろうと悩む。

在升学考试之前,没有 全身心地投入到应考学 习中去的学生想:别人 都不是那么很费劲地在 学习,而我学习为什么 那么苦啊!

『心の危機 管理術』《顺 应自然的生 存哲学》

* 投 入 进~中

持 ち こむc

古川の持っている田圃の五戸 を埋めて尻を持ち込まれた事 もある。

还有一次,我把古川田 里的水井填了,惹得人 家直闹到家里。

『 坊 ち ゃ ん』《哥儿》

(1)

* 闹 进 家里

文 脈 に 適 切 で は な い

聞 き

こむ その噂でも師匠さんは聞き込

んだのでしょう。

艺术家大概听到了这个 传闻吧。

『斜陽』《斜 阳》

*听进

上記の例で、<~到dao>が<~进>に言い換えられない理由としては以下のように考え られる。前半の例は、移動先に関係する。

「入りこむ」の例は、直訳で表すことは困難なため、意訳をしている。それに対忚する 中国語の表現は<飞到过着独身生活的喜助身边(「一人暮しをしている喜助のそばに飛んで くる」)>となり、<~身边(「~のそば」)>は中国語では、内部空間と見なせず、<~进

>と連用できない。「持ちこむ a」は<放到他面前(「彼の前に持ってくる」)>という表現 になっているが、<~面前(「~の前に」)>も<~进>と連用できない。「持ちこむ b」の 用例では、移動先は「プールサイド」であり、その意味としては、「水泳プールの周囲にあ る、休息をとったりするためのスペース」であるが、中国語では、<游泳池边(水泳プール の周囲)>になっている。<~边(~の周囲)>は内部的空間を表わす空間名詞<里 li/中

zhong>と共起しないため、内部空間のイメージが弱いと考えられる。このため、<在 zai

>と<到dao>としか共起しない。

「射しこむ」の例をみると、光が竹筒に射しているという意味であるが、着点は竹筒の 内部ではなく、その表面になるので、<~到>は<~进>と言い換えられない。また、「マ

イナス0.2%に落ち込んだ」という表現では、移動先はある抽象的な空間における一点にな

り、方向補語<~到>はこの一点に到着する意味を表わす。<~进>は空間の内部への移 動を表わすが、この内部のどこかに着くという部分は表わせないのである。これは6.1で挙 げた「降りこむ」、「乗りこむ」と同様である。

方向補語<~到>は到着を表わし、その移動先は内部空間を要求しない。が、<~进>

は空間の内部的性質を要求しているので、上記の文であげた、<~身边(「~のそば」)>、

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<~面前(「~の前に」)>、<游泳池边(水泳プールの周囲)>などと共起しない。或いは、

中国語ではこの三つの移動先は内部空間とは考えられないとも言えよう。「マイナスO.

2%に落ち込んだ」はある内部空間のおける一点であるが、<~进>は空間の内部への移 動しか表わせず、この内部における到着点と共起しない。これは、方向補語<~到>と<

~进>の相違点であるが、日本語と中国語では内部空間の見方が異なっていることをも反 映している。「マイナス 0.2%に落ち込んだ」のような例文は日本語と中国語における空間 表現の違いとみられる。

しかし、後半の例文は V が<~进>と共起しないからであると考えている。<回:戻る

>の場吅は、すでに移動方向が決まっているので、<~进>を付け加えることができない。

<投入>の場吅は、CCLでは<投入到>は800以上収集できるが、<投入>と<进去>と しか共起せず、24 例あった。また、<闹>の場吅、<闹到>は成立するが、<闹进>は自 然度が落ちて、CCLでは観察できなかった。一方、<听到>は「聞きつける/聞いて知る」

という意味で、<听进>は意見を聞いて受け入れるという意味である。上記で挙げた「聞 きこむ」の例においては「噂を聞いて情報を知る」という意味なので、<听到>は適切で ある。

さらに、下記の例のように、<~到>は後ろに場所名詞句が必要になる。また、到達だ けを表し、量的表現と共起しない。

(212) a. 泤に落ち込んだ。

訳文:陷进/陷到泥里。

b. 落ち込んでしまった。

訳文:陷进去了/*陷到了。

c. 二尺ほど落ち込んだ。

訳文:陷进去大约两尺/*陷到两尺

5.5 「~こむ」と<V+在+L>について

前述のように、日本語の複吅動詞「~こむ」の基本義は内部移動を表し、中国語の方向 補語<~进/到/上/下>に対忚する例が多いが、一部の「~こむ」は、以下のように、<V+

在+L>に対忚し、さらに、<V+在+L>表現を<~进>のような方向補語に言い換えること はできない、或いは、言い換えができても、不自然な表現となる。

(213) a. 買ったものの金額をノートに書き込んでるだけだけど。(『均衡』『Yahoo!ブログ

訳文:只是把买东西的金额写在/*写进病笔记本上。

b. 三百人の青年たちが息を殺し、ほとんど物音も立てず、机にかがみ込んで、必死 に筓案を書いていた。(『中日』『青春の蹉跌』)

訳文:三百个青年都屏柱呼吸,一点声音也不出,趴在/*趴进/*趴下桌上拚命地写答

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