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第 4 章 触覚コンテンツ 1: 生物感

4.6 実演展示

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に対して薄膜を用いて密閉するという対策案を提示した.しかしこの案では,膜の素材感 が生じるという問題があった.これに対し,本結果からラバーなど分析結果が空気圧の場 合と近しい素材を用いることができれば,空気圧を用いた場合とあまり印象を変えること なく手掌部とスピーカとの間の密閉性を高められる可能性がある.

以上から,4.5では提示波形の周波数を変化させることで同一の筐体であっても想起させ る生物の大きさを錯覚させることができることを示した.また,テクスチャという静的触 覚を生物感提示に付加することで,動的な触覚提示は同一のものであってもその印象を操 作できることを示し,全体として触覚刺激の制御による幅広い生物感提示の可能性を示し た.

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図58 プロトタイプのブロック図

図59 プロトタイプの概観(左:小型デバイス 右:中型デバイス)

4.6.2 提示波形とインタラクション

本プロトタイプでは,これまでの実験結果を基に呼吸波形と鼓動波形の合成波を使用し た.また,提示用デバイスのサイズに合わせて周波数を調整した(小型デバイス=4~5Hz, 中型デバイス=2~3Hz).また,生物であることをより意識させるような複数のインタラク ションを実装した.その際,本手法の特徴の一つである「音声とのマルチモーダル提示」

Force Sensor

Device

Micro Computer (SH 7125F)

Stereo Amplifer (MAX9704)

Control Box

Value of Force

Signal

Waveform

Speaker x 2 Acceleration

Sensor

Value of

Acceleration

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を活用し,触覚用の波形と音声信号を合成して出力することも取り入れた.以下に合成例 を示す.

図60 触覚情報と音声情報の合成波形

実装した内容は以下の通りである.

・ 軽く持つ

落ち着いているかのように安定した呼吸・鼓動の合成波形を提示.

・ 左右にデバイスを傾ける

安定した状態を崩されるため,やや緊張したかのように周波数が高まる.

・ 上方向にデバイスを傾ける

喉を鳴らすかのような低周波振動を発生.

・ 強く押す

威嚇するような激しい振動が発生.

・ 軽く振る

楽しんでいるかのような明るい鳴き声と不規則な振動が発生.

・ 激しく振る

おびえているかのような悲鳴と小刻みな振動が発生.

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4.6.3 展示結果

筆者は,本プロトタイプを用いた実演展示を SIGGRAPH 2008[97],インタラクティブ東

京 2008[98],EC 2008[99]にて行った.その結果,多くの体験者が提示触覚の柔らかさと手

掌部全体という提示面積の広さ,そして提示波形のリアリティに関心が寄せられ,全体と して高い評価を得ることができた.

図61 展示の様子

体験者からの意見としては,生物を手で抱いているかのように感じるというものが最も 多く,ほぼ全ての体験者から聞かれた.特に実際にペットを飼った経験のある体験者から は,本プロトタイプによって自分のペットを思い出すといった報告が聞かれた.外観が全 く生物らしくない形をしているにも関わらずこのような感想が聞かれたとことから,本手 法によって生物を確実に想起させるほどの高いリアリティを持った生物感提示が実現でき たと言える.また時には,「非常に生々しく,内蔵をつかんでいるよう」といった表現も良 く聞かれ,本手法が生体的な柔らかさを十分に提示できていることの表われと言え,本手 法が有効であることの証明であると思われる.

また,小型デバイスを体験した者の多くからネズミやハムスターを抱いているようだと の感想を,中型デバイスを体験した者の多くから犬や猫を想起したとの感想をそれぞれ得

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られ,その逆を筓える人は皆無であった.このことから,デバイスのサイズに合わせた周 波数を設定したことによる生物の大きさ判別効果が確かめられた.

感情の喚起に関しては,ギュッと抱きしめる,キスをするなどの愛情表現があったこと や,ずっと抱いていたいという意見も多く聞かれたことから,親しみを喚起させる何らか の感性情報が触覚によって伝達できたのではないかと考える.

インタラクションについては,鳴き声に関する意見があった他は特に聞かれず,インタ ラクションの内容があまり理解されていなかった様に感じられた.これは,外観が生物ら しく無く,どう扱ったら良いか分からないままに体験したことが影響していると考えられ る.例えば犬や猫の形をしていれば,頭を撫でる等の触れあい方が直ぐに思い起こされる.

しかし,本デバイスは円筒形や直方体であり,通常このような形の物体に対して頭を撫で る等の行為を行うということは,発想自体が出てこない.今後インタラクションを本格的 に導入する場合は,より分かりやすい内容のものにする一方で,インタラクションが容易 な外観に変更する必要があるだろう.

以上から,4.6では実演展示用のプロトタイプを製作し広く一般に展示を行った結果,確 かにリアリティの高い生物感という触覚コンテンツの提示に成功した.また,体験者の反 応から本コンテンツがユーザに感情を喚起させる感性情報を有していることを確認した.

一方で,同時にインタラクションに関する理解度が低いという課題が残った.