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第 4 章 触覚コンテンツ 1: 生物感

4.3 本手法の導入

本章で筆者が扱う生物感の提示に関して,本提案手法には以下のメリットがある.

・ 空気圧による“柔らかさ”の提示

生物の重要な特徴の一つとして,独特の柔らかさが挙げられる.生物は筋肉や内臓など のしなやかで柔らかい組織を内包しており,固い毛の上からでもその柔らかさを感じ取る ことができる.従って,柔らかいかどうかは生物か否かを判別する一つの要素と成り得る.

よって,柔らな感触を提示することで生物らしさが向上し,親しみ易さが増すものと思わ れる.本手法は,2.6で示したように柔らかな触感を提示できることから,生物を模倣した 触覚提示を行う上で効果的であると考えられる.

・ 呼吸や鼓動運動などの様々な触覚情報に対応可能な周波数帯域

生物には,呼吸のように非常にゆっくりとした動きから鼓動のように比較的急峻な動き まで幅広い周波数の出力が同時に存在する.また,運動などによりこれらは大きく変化す る.よって,本手法が持つ広周波数帯域をはじめとした優れた周波数帯域は,生物が出力 する様々な周波数の触覚情報を再現する際に大きな利点であると考えられる.

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以上から,本手法を生物感提示に用いることは有効であると考えられる.

次に,実際の有効性を実証するため,本手法を導入した触覚提示装置を製作した.製作 した装置は,触覚提示部と制御部から構成されている.触覚提示部には二組の音響スピー カ(S.J ES-06603)の他,加速度センサ(Kionix, Inc., KXM52-1050),力センサ(Nitta Corporation, FlexiForce A201-1)が搭載されている.これらのセンサ情報は制御部に搭載されているマイコ ン(ルネサステクノロジ,H8 3048F)に伝達され,センサからの情報を基に波形を生成し,ア ンプを通してスピーカに出力することが可能である.以下に装置のブロック図と触覚提示 部の外観を示す.

図39 製作した触覚提示装置のブロック図

図40 製作した触覚提示装置の外観(触覚提示部)

Force Sensor Handheld Part

Value of force

Micro Computer (H8 3048F)

Stereo Amplifier (RSDA202) Control Part

Acceleration Sensor

Speaker x 2

Signal

Value of acceleration

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この装置を用いて,インタラクションの仕方によってリアルタイムに出力波形を変化さ せることを試みた.その際,生物の状態と波形が連想できるように 3 つのシナリオを考案 し,実装した.シナリオと波形の生成内容は以下の通りである.

1. 優しく抱えた場合

安定した状態を表現するため,定常的な正弦波を出力する.この際,基本波形として

2-4Hz程度の低い正弦波を出力値する.

2. 強く押した場合

息苦しい状態を表現するため,出力振幅を小さくし,正弦波の間隔も長くする.

3. 2の状態から力を緩めた場合

息苦しい状態から解放された際の息の荒さを表現するため,正弦波の周波数を10Hz程 度まで高める.また,時間と共に落ち着いてくることを表現するため,緩めた状態を 維持すると1.の出力波形となるようにする.

図41 インタラクションの例

1. Holding softly

2. Squeezing strongly

3. Loosening grip

Generated signal

Generated signal

Generated signal

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本装置は複数の学会で実演展示された[92][93][94].その結果,多くの体験者が「生々し さ」すら感じるほどの触感を得たと評し,本手法によって生物を想起させる柔らかな触感 が提示できる可能性が示唆された.またインタラクションを導入したことにより,2.6で行 った卖純な正弦波刺激のみの場合と比較して,「驚いた」「楽しい」という種類の感想が多 く聞かれた.実際,多くの人が力の入れ加減や持ち方を様々に試していた様子から,楽し さの向上を伺い知ることができた.しかしながら,インタラクションが生物感の向上に寄 与しているとは言い難く,ただ目新しい挙動に興味を示しているだけという可能性もある.

触覚の提示内容による印象の変化についてはYohananら[91]を始め多くの研究によって明ら かにされており,インタラクションの重要性は明白である.よって今後,生物感を向上さ せるようなインタラクションの内容を吟味する必要があると考えられる.