• 検索結果がありません。

動的な吸飲力への対応

第 7 章 触覚コンテンツ 4: 吸飲感覚

7.5 Hi-Fi 触覚提示の導入

7.5.5 動的な吸飲力への対応

7.5.5.1 対応が必要な要素

吸飲力が変化すると,当然ながら吸飲感覚も変化する.この際にどのような変化が生じ ているかを吸飲感覚の三要素についてまとめた.

空気圧:吸飲力の変化によって自動的にその値が変化していくため,制御の必要性は低い

振動及び吸飲音:吸飲力によって出力される周波数が異なることが考えられるため,吸飲 力に対応した出力の切り替えが必要

以上から,振動及び音声に関わる録音データの出力について,動的な吸飲力への対応を 試みた.なお,本試みは「飲む」という行為にとって最もポピュラーである飲料(水)につい て行った.

7.5.5.2 手法

吸飲力への対応するため,まず 1 つの音声データから編集し,出力する試みを行った.

音声の編集では,ピッチと音量のそれぞれを変化させる手法が存在する.また,近年では ピッチを保ちながら再生速度を調節する手法が存在する[130][131].よってそれぞれの手法 を用いて大・中・小の吸飲力に対応するデータを生成し,実際に記録した音声データと比 較した.各手法による人工音生成には,ストローを用いて水を一定の力で吸飲した際の,「中」

に当たる音データを使用した.なお,生成には音声編集ソフトウェアである SoundEngine を用いた.実験条件をまとめたものを以下に示す.

・条件1:「大」「中」「小」の吸飲力による実測値

・条件2:音量固定,ピッチ変更,再生速度固定

・条件3:音量固定,ピッチ固定,再生速度変更

・条件4:音量変更,ピッチ固定,再生速度固定

121

各手法によって生成したデータの周波数分布を以下に示す.なお,音量を変化させる手 法の場合は周波数分布が全て同じとなるため割愛する.

図121 水の吸飲音の周波数解析結果 右上:実際の記録データ. 左下:ピッチの変更 右下:ピッチ固定で再生速度を変更

図 121 より,実測値では吸飲力が高まるにつれて高周波成分エネルギーが相対的に増加 していた.また吸飲力によって特徴周波数が変化し,特に吸飲力が小さい場合に顕著であ った.これに対してピッチを変更した場合,生成した波形に不可解なスパイクが見られ,

周波数分布分も大幅に異なる結果となった.また,ピッチ固定で再生速度を変更した場合 は周波数分布に変化が見られなかった.同様に,音量のみを変更した場合も周波数分布に 変化は認められなかった.次に,生成したデータを実際に聞いてみた.この結果,いずれ の手法についても実際の音声と比べて現実感が欠如したものであった.以上から,基準と なる音声データから吸飲力に対応したデータを人工的に生成することは難しいことが分か った.

そこで次に,実際に複数の吸飲力に関して音声データを記録し,体験者の吸飲力によっ て音声データを切り替える手法を試みた.予備実験として複数の被験者に体験させたとこ ろ,自然な感覚であるとの回筓が得られた.しかしながら,段階が多すぎると膨大な記録 データが必要となってしまう.逆に段数が尐なすぎると切り替えたことが悟られてしまい,

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20

0 5000 10000 15000

lowest middle highest

Frequency [Hz]

Frequency [Hz]

Power [dB] Power [dB]Power [dB]

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20

1 10 100 1000 10000 100000

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20

1 10 100 1000 10000 100000

Frequency [Hz]

-90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20

1 10 100 1000 10000 100000

122

リアリティが損なわれてしまう.そこで,何段階以上ならば自然に知覚可能かを確認する 実験を行った.以降では実験の内容とその結果を述べる.

7.5.5.3 実験内容

実験は,以下の手順で行われた.

1. 実際にストローで水を飲む.その際,60BPMのメトロノーム音に合わせて吸飲力の強 弱を行う.

2. 実験装置を用いて,最大吸飲力を測定する.この値を基に音声切替の閾値を設定する.

3. 1.と同様に,60BPMのメトロノーム音に合わせて強弱を付けながら吸飲する.この時,

吸飲力に応じた音声が出力される.

4. 再生された音声の自然さを,5段階評価で回筓する. (bad=1-2-3-4-5=good).

提示する音声の段階は1,2,3,4,5,10段の5種類を用意し,1種類毎に3回ずつ,計15試行 をランダムに行った.

図122 実験装置及び実験風景

実験結果を以下に示す.

Speaker unit

Pressure

sensor

123 図123 実験結果

図123 より,5段階以上であれば音声の変化が自然に知覚されるということが分かった.

7.5.5.4 実機への導入

7.5.5.3 の結果を受け,実際に装置に吸飲音制御を導入した.再現した感覚は,実験で用

いた飲料(水)である.振動及び吸飲音に関しては,7.5.5.3にて実測した吸飲音データを用い た.空気圧に関しては,記録時の最低気圧値以下にはならないサーボ角度を経験的に求め,

その角度で固定した.数人に体験してもらった結果,従来型 SUI よりも高いリアリティを 知覚したという意見が寄せられた.また飲む楽しさが増したとの感想も得た.

以上から,本実装によって動的な吸飲力に対応し,より高いリアリティの吸飲感覚と飲 む行為が持つ楽しさの向上を実現することができた.

1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

2 3 4 5 10

The number of steps of sound

Ev alu at ion o f nat uralness

124 図124 体験の様子