これにもとづいて,もう一度データを採集し,比較検討した結果,生 徒一人一人の「交流に対する期待」が,振り返りの生起に大きく関わっ ていることが明らかになってきた。教師は,この「交流に対する期待」
を高める手だてを常にとりながら授業を進めていくことが大切である。
ここで,「交流に対する期待」を高める要因,低下させる要因について 表4.3−4のようにまとめる。
表4.3−4
「交流に対する期待」を高める要因,低下させる要因項目 「交流に対する期待」を 「交流に対する期待」
高める要因 を低下させる要因 生徒の交流に対す *興味・関心がある *興味・関心がない
る興味・関心 *不安である
学習環境 *生徒1人にユ台のコン
*生徒1人に1台のコ
ピュータ ンピュータでない
*バグがない *バグがでる 機器操作 *操作に慣れている *慣れていない 交流の方法や書き *書き込みに返事が来る *返事が来ない
込みの内容 *交流の人数が多すぎな
*交流の人数が多く
い(1対2程度まで)
て,1対1の交流が
*返事の内容がためにな 成り立たない
る(前向きな意見) *返事の内容が貧弱で
*問いかけてくれる ある
*ほめてくれる *前向きな意見ではな
い
*言葉遣いのずれ
*書き込みの時間が足
りない
専門家・地域の人・ *現実的な意見をもらえ *専門家・地域の人・
保護者の支援
る
保護者の支援がない*前向きな意見をもらえ て,方向付けをしてく
れる
*問いかけてくれる
*考えや悩みを受容し,
随時対処してくれる
*継続的な支援をしても
らえる
4.3.4 交流がうまくできない生徒への手だて
生徒一人一人の「交流に対する期待」が,振り返りの生起に大きく関 わっていることが明らかになったが,なかには交流自体がうまくできな い生徒がいることも分かった。
そこで,交流がうまくできない生徒に,今後どのような手だてが必要 かについて提案する。
(1)交流方法をスキルアップする
当然ながら,Web上での交流は,書き込んだ言葉を媒介にして交流が 成り立つ。そのため,交流の言葉いかんで,交流が促進されたり,途切 れたりしてしまう。そこで,交流が盛んに行われ,共同学習型の振り返 りが生起したグループで使用された言葉と,交流が盛んに行われなかっ たグループで主に使用された言葉を比較分析した(表4.3−5)。
表4.3−5 交流で主に使用された言葉一覧
グループ 交流に使用された特徴的な言葉 キーワード
交流が盛んに行わ Aいろいろ調べて教えるね れたグループ B何か分かったら教えてね
C楽しみに待っててね Dよかったら見てね
E私も何か分かったら書き込んでいくので見てね Fすごい!,感心するよ,応援しているよ,
Gお互いがんばっていこうね 且元気出してね
1調べてくれて,ありがとう J返事ありがとう
Kあきらめの悪い…(汗),…(笑)
交流が盛んに行わ L返事ください れなかったグルー M返事待っています
フ。 Nどんな資格が必要?
O一日の売り上げは,いくら?
Pそちらの船乗りは何をしているの?
QOOとゆうんだけど ROO(名前の呼び捨て)
S返事なし
表4.3−5より,次のア〜クのように,返事が書きたくなるような
一136一
表現や,親密で相手を思いやる表現を身に付けることが大切である。
ア しつこい催促にならないように
相手から返事をもらいたいとき,表4.3−5のKと:しのような言葉 を使いがちだが,催促に受け止められて逆効果となる。相手が返事を書 く時間を考慮して,急がせさせないようにするようなA,B, C, Dのよ うな表現が良い。共同学習なので,Eのようなギブアンドテイクの書き 方や,Gのように共に頑張ろうという心がこもった表現は,特に良い。
イ 相手を認める「ほめ言葉」
交流が一番盛んに行われた役者・音楽グループで一番多く使われてい たのが,この相手をほめる言葉であった。相手の考えを的確に受け止め てほめることは,前向きな学習の原動力となり,おおきな歯車をスムー ズにまわすための潤滑油にもなる。
ウ 感謝の気持ちを表す
共同学習を進めると,相手から教えてもらったり,相手の言葉に感動 したり,気づかざれたりする。そのことに,1,Jのように感謝する言葉 で素直に表現することで,ネットワーク上で,相手を活かし自分も活か
されることになる。
工 相手が答えられない無理な質問をしない
調べ学習で,相手から情報を得たいとき,0のようにプライベートで 相手が調べられないような無理な質問はしないことが原則である。
オ 相手の質問に真摯に答える。
「…についてどう思いますか」という質問がきたときは,その質問に 真摯に答えることが大切である。質問の内容を理解できないときは,聞 いて的確に理解し,答えることや,もし,答えにくい場合や分からない
力 字の間違いや名前の呼び捨ては厳禁
Q,Rのような字の間違いや名前の呼び捨ては,書いた人の性格を疑 われるので十分気をつける必要がある。自分が書いた内容を送信前にチ ェックする。
キ 表情がわかるような工夫をする
テキストだけの内容だけでは,その人がどのような表情で書いたのか が分からない。そこで,Kの「…(汗)」のように,表情がわかるよう な工夫をすると表現が広がる。
ク 返事を必ず書く
相手からの書き込みには,必ず返事を書くことが交流を続ける最低必 要条件である。
(2)順序立てて情報を得る
生徒たちは,交流が始まると,相手が住んでいる状況も分からないま ま,いろいろな質問をした。例えば,「ブリのことを知っている情報を 教えてください」という書き込みがあったが,いきなり言われても生徒 たちは答えようがなかった。まず,相手の地域がどんな状況なのか,船 乗りに関する情報はどうやって得られるか等,順序立てて情報を得るこ
とが大切である。
(3>多くの経験を積む
いろいろな経験があると,経験に裏付けされた生きた交流になる。図
4.3−27は,生物関係の仕事を調べているOoさんが,福祉関係の
グループに書き込んだ内容である。ワークキャンプの経験があるOoさ んの文から,参加したときの生き生きとした様子が伝わってくる。一138一
旧時]6月21日
私は1・2年に夏休みにワークキャンプにいきました。
2年のとき、私達(4,5人)は、車椅子のことはあまり教えてもらわなか ったけど実際に乗ることができました。車椅子に乗ってるときに老人ホーム の寮母さんに「片手と足だけで乗ってみて」みたいなことを言われて実際片 手でやってみたら難iしくて障害をもつ人の大変さがわかってすごくいい経 験ができました。
老人ホームですごしていると自然と笑顔になるんだなあと思いました。
ついつい2回行ってしまった理由です。ではまた… 。
図4.3−27 00さんの書き込み
また,Ooさんの文はとても分かりやすい。普段から日記をつけたり,
本を読んだりして文章力を身につけ,ものを見る感性を磨くことも大切
である。
(4)テキストだけでなく,動画・音声・画像も活用する
本実践では,動画・音声の活用がそれぞれ2件あった。なかでも,電 子ポートフォリオとして提出された車椅子の動画を見た生徒に,振り返
りが生起したように,テキストだけでなく動画・画像により,視覚に訴 えることも大切である。
(5)心が安定し,我慢強い生徒を育てる
交流がうまくいかず,返事が来ないことに我慢できずに,「返事をく れ一」と書いた生徒がいた。また,交流相手によって言葉遣いを変えた
りする生徒もいた。ネットワークでの交流は,最初は,そう簡単にうま
ぐいぐ4、のでけかい、》1レタ理解1て 戸スか卜兆壬ヒど、曰い窯)h!ハ点ス自・ ・ v 一 一 ・一・ い 一 一 一τ」己ノ」1 》 、, 一 Lノ σ・ IH J ▼鳩 )♂己、冒 、 ノ vノいノ㍗ソ ロ
然な言葉遣いで,語りかけるような交流になるようにする。そのために は,心が安定し,どんなトラブルが起こっても冷静に対処できるような
4.4 電子ポートフォリオと振り返りの関係
実践授業で実際に作成された電子ポートフォリオは,全グループ合わ
せて36個にのぼる(参考資料4を参照)。このうち,Web上の交流を
通して,振り返りにつながった電子ポートフォリオは15個,逆に,つ ながらなかった電子ポートフォリオは21個であった。ここでは,実際に作られた電子ポートフォリオと振り返りの関係につ いて考察する。
(1)振り返りにつながった電子ポートフォリオ ア ポートフォリオを積み重ねる
医療関係の仕事を調べているグループでは,図4.4−1のように提 出された電子ポートフォリオをもとにして,他の視点から調べたことを 出し合い,前出のポートフォリオに積み重ねる形で,図4.4−2のよ うな電子ポートフォリオを共同で創りあげていった。その過程で,お互 いの生徒が新しい発見をし,振り返りにつながった。
つまり,このグループでは,電子ポートフォリオを交流の原点と位置 づけ,提出された電子ポートフォリオを尊重し,共同でベストポートフ
ォリオを創りあげていくような学習が行われた。
私達は、診療所に行きました。そこで調べたことを書きます。
1 身の回りの世話には、「入浴」と「食事の介護」「掃除」などがあります。
2 体温と血圧は必ず毎日測る。
3 患者さんは、病気に不安をもっているので、励ましたり元気ずけたりして、意欲をもって病気に たちむかわせる。
4 患者さんとの信頼関係が大切なのでコミュニケーションをよくとる。
5 結婚してからも続けられる仕事で他の仕事と比べて給料が安定している。
6 集中力と体力があって、がまんずよいひと。
7 いつも笑顔で、明るい人。
最初の写真は、話を聞いた看護婦さんです。
二枚目の写真は、患者さんがリハビリをしているところです。
三枚目は患者さんとお話しているところです。
図4.4−1 提出された電子ポートフォリオ
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