を振り返ると同時に,図4.6−1のように,調べたことについて「聞 きたい」「他の人はどう考えるのか」「人に知ってもらいたい」等の内容 があるという生徒がいることが観察された。これは,「自分が調べてい る職業の情報が得られないので相手校に聞きたい」ということや逆に
「自分が得た情報を知らせたい」または「調べたことに対して相手はど う考えているか知りたい」「相手校の地域の人はどうなのか」さらに,
「相手の反応から,自分の深い振り返りを確信あるものにしたい」等,
他者との関わりを持つことで疑問を解決したい,確かなものにしたいと いう生徒の気持ちの表れであった。
*女優(Tさん)… 「女優にどうしたらなれるか(を聞きたい)」
*コンピュータ(Miさん)… 「(その仕事に就くために)上京すべきか。
私はこのことに一番不安を感じているから」
*S:E(Akiya君)… 「SEの人の苦労談(を聞きたい)」
*保育士(Asaiさん)… 「資格について(聞きたい)」
*保育士(Shiraさん)… 「相手校の保育園の様子(を聞きたい)」
*漁 業(男子2人)… 「魚の種類のデータが少ないから(聞きたい)」
*販売員(Takegaさん)… 「1日・1年間の売り上げ(を聞きたい)」
*公務員(Odaさん)… 「議会室の中の様子。めったに入ることができ ないから(注目してほしい)」
*公務員(Taさん)… 「教えることの他に何をするか。先生の裏の努力 を知ってほしい。」
*美容師(Si君)… 「国家試験の内容。難しいのかわからない(ので教
えてほしい)」
*福祉(lwaさん)… 「排便をとるときは手袋をつけない(ことを教え て,自分が確信したい)」
図4.6−1
他者との関わりそして,作成された電子ポートフォリオは,学習に関わる他者が見る ことにより,交流につながり,交流を通して自分の振り返りを確信ある ものにしたり,疑問を解決したりするものとして機能した。
また,生徒自ら振り返りを友だちに教えその反応を見ることで,自分
た図4.3−10のIwaさんの例もある。
(2)友だちの電子ポートフォリオを見て,自分とは違う考えに気づき,
ものの見方が広がる。
離島・へき地等学校の問題点として,学習がマンネリ化していること を述べたが,遠隔共同学習で電子ポートフォリオを活用したことにより,
友だちが作成した電子ポートフォリオを見て,自分が作成した電子ポー トフォリオと違う点に気づき,その相違点について積極的に聞いたり,
もう一度調べたりしていく姿が観察された。
(3)一人一人の生徒が何が分かっているのか,何が分からないのか,
また何を聞きたいのかが電子ポートフォリオから分かり,保護者・地域 の人・専門家等の他者からのアドバイスを容易にする。
生徒が作成した電子ポートフォリオは,図4.3−11のH:さんのポ ートフォリオのように,生徒がその職業についてどこまで調べたのか,
調べられなかったことは何なのか等の要素を含んでいる。その電子ポー トフォリオから,教師は生徒一人一人の学びを把握でき,図4.3−1 2のように,地域の人が具体的で的確なアドバイスができる。また,図
4.3−14のように,時間を気にせず,継続的に一人の生徒にアドバ
イスすることで,生徒がこれまでの生き方を振り返り,今の自分を見つ め,さらに将来の生き方について考えるような振り返りが起こる。この ように,電子ポートフォリオの良さが生かされていった。一154・
4.7 授業実践から得られる示唆
これまでの本実践の分析から,振り返りに結びつく授業の在り方につ いて,遠隔共同学習における電子ポートフォリオの活用の点から示唆を
まとめる。
(1)「交流に対する期待」を高め,持続させていく
振り返りのパターンには,①受け四型,②共同学習型,③アセスメン ト型,④知識オンリー型があり,自己を見つめ将来の生き方を考えるよ うな,振り返りが生起するためには,②共同学習型の振り返りと(卑アセ スメント型の振り返りが共存することが必要である。そのために教師は,
「交流に対する期待」を高め,持続させていく工夫が必要である。
交流に対する期待を高めたり,低下させたりする要因として,具体的 には,ア「生徒の交流に対する興味・関心」,イ「学習環境」,ウ「機器 の操作」,エ「交流の方法や書き込みの内容」等が考えられる。
ア「生徒の交流に対する興味・関心」については,交流に不安を持っ ている生徒に対して適切な支援が必要となる。
イ「学習環境」については,H中学校のように生徒一人一人に1台の コンピュータがあると交流も盛んになる。また,ルータの設定のミスや コンピュータの不備のためにインターネットに接続できず,交流ができ なかったということがないように,普段のメンテナンスに気をつける。
ウ「機器の操作」については,機器操作に慣れさせることが大切であ る。総合的な学習の時間は,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に 取り組む態度を育成する時間であり,まさに情報活用の実践力やネット ワークの活用能力を身につけることを求めている時間である。今後の積 極的な取り組みが必要とされる。
交流に心がけさせることが必要である。特に,提出された電子ポートフ ォリオに対して意見・情報交換する際には,励ましの言葉や相手のいい 所を指摘するような,前向きな内容が含まれることが望ましい。また,
「なぜこの職業を選んだのか」とか「このことをどう思う?」というよ うな問いかけをすることによって,生徒が自分の生き方を考えるきっか けともなる。また,各学校のグループの人数をなるべく少人数(2人程 度)にとどめ,相手校に交流相手がいるように,学習前に調整すること が必要である。しかし,調べる内容が生徒の興味・関心に基づくもので なければならないので,教師は生徒の意見をよく聞き学習意欲を失わせ ることがないように配慮することが大切である。
また,振り返りがない生徒への手だてとして,交流がうまくできるよ うな手だてをとる必要がある。具体的には,「交流方法をスキルアップ する」,「順序立てて情報を得る」,「多くの経験を積む」,「テキストだ けでなく,動画・音声・画像も活用する」,「心が安定し,我慢強い生徒 を育てる」等である。
(2)電子ポートフォリオの質を高め,使い方を工夫する
電子ポートフォリオの質や使われ方も,振り返りの有無に関係する。
電子ポートフォリオとして仕事の内容だけでなく,適性や具体的な進路,
さらに,生徒自身の考え等を,学習の目的にそった形で作成・提出して いくことが大切である。また,自分なりに理解したことを,相手にわか りやすく提示し,疑問点などを簡潔に表したり,マルチメディアを複合 的に活用したりして,電子ポートフォリオを工夫し,質を高めることも 大切である。
電子ポートフォリオを交流の原点と位置づけ,提出された電子ポート フォリオを尊重し,共同でベストポートフォリオを創りあげていくよう