「感想を書きたいのだけど,この4つの言葉はあてはまらない」とい う生徒がいたことにも配慮して,「感想です」とかいう言葉も必要と考
える。
4.8.3 開発システムの改善
前述の4.8.1,4.8.2や実践時の生徒たちの声から,電子ポ
ートフォリオシステムをどのように改善していけばいいかについて述べる。
(1)入力画面
電子ポートフォリオを提出する際の入力画面と意見を書く際の入力 画面と一緒の画面である。そのために,ポートフォリオか意見かを2つ のボタンで選ばねばならず,生徒はボタンを選ぶことを忘れて,あとか ら再び入力する手間がかかった。そこで,電子ポートフォリオを提出す る画面と,ポートフォリオに対する意見や情報を書く画面に分け,自動 的にポートフォリオか意見かの印が付くシステムに改善することが必 要である。さらに,電子ポートフォリオを提出する画面で,「調べたこ
とで規準にそって選んだポートフォリオの内容」と「そのポートフォリ オに対する自分の考えや疑問点等」に分けることで,現段階より内容を 詳細にし,入力意図をさらに明確にする。
ポートフォリオを削除したり書き直したりすると,画像や添付資料の リンクが外れ,再度選択しなければならないので改善が必要である。
6つのコミュニケーションボタンは,4.8.2でも述べたように,
生徒同士のコミュニケーションを促進したり,振り返りを支援したりす る役割を果たしている。コミュニケーションの言葉を再度検討し,画面
ンを使ったボタンにするなど工夫することで,より活発にボタンを使う ようにする。
入力画面を現段階では下にスクロールさせないと,全画面の入力がで きないので,スクロールすることなく入力できるように工夫する。
(2)表示画面
表示画面は現在の3画面で十分である。付け加えて,電子ポートフォ リオに対する意見や情報がツリー型で表示され生徒が全体構造を把握 できるように可視化された画面を工夫する。そのことで,生徒が学習を たどるとき,自分の考えが成長していく過程を容易につかむことができ るようになる。
(3)グループポートフォリオと個人ポートフォリオ
グループポートフォリオと個人ポートフォリオが,システムの表紙の 画面からしかリンクされていなかったので,どちらかに移る場合,必ず 表紙の画面にもどらないといけなかった。そこで,グループポートフォ リオと個人ポートフォリオのシステム上での位置づけを今後検討して,
生徒にとって使いやすいシステムにする必要がある。
(4)検索画面
検索画面は実践でも,学習の過程を振り返る時使用したが,生徒の使 用に支障はなく,特に改善する必要はない。
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4.9 まとめと今後の課題
問題解決的な学習が,知識を獲得するだけの表層的な学習でなく,自 分の見方や生き方に結びつくような学習にするためにはどうすればよ いかという課題と,離島・へき地等学校では,地理的要因などから学習 に深まりがみられないなどの問題があり,「生きる力」の育成をめざし た「総合的な学習の時間」をどのように構築していくかという2つの課
題がある。
そこで,本研究では,学習の振り返りを重視し,「総合的な学習の時 間」においてポートフォリオを学習に取り入れた。さらに,離島・へき 平等学校の実状を配慮し,インターネット上での電子ポートフォリオを 開発し,遠隔共同学習において活用することで前述の課題の解決をめざ
した。
まず,「総合的な学習の時間」の問題解決的な場面で,振り返りをど のように取り入れるかの授業づくりを進めた。特に,ポートフォリオを ただ単に過去を振り返るためだけのものとせず,学習に関わる人の中で 公開することで成長するポートフォリオと位置付けた。そして,インタ ーネット上で,グループでポートフォリオを作り上げる場と個人でポー トフォリオを作り上げる場の2つの場を学習環境の中に構i築し,システ ム開発に取り組んだ。
最初に,学習の振り返りを支援する電子ポートフォリオを開発するに あたって,4つの機能を考えた。その機能の中でも特長的な機能は,コ ミュニケーションを促進したり,生徒に振り返りを自然に起こさせるよ うにコミュニケーションの言葉を工夫したことである。
このような考えで実施した授業の結果,振り返りには4つのパターン
リオの質や使われ方」が関係していることが分かった。教師は常に,「交 流に対する期待」を高める要因,低下させる要因に配慮して,生徒一人 一人に適切な支援を行うことが大切であり,また,振り返りがない生徒 に対して,交流推進の手だてや電子ポートフォリオの質や使い方の支援 を講じていくことが必要である。
ポートフォリオを公開することによって,専門家をはじめとする他者 の支援:が,生徒の深い振り返りの生起に有効に働くことや,電子ポート フォリオをもとにした交流の場は,一人一人の生徒にとって意義のある 場であることが明らかになった。
システムについても,コミュニケーションの言葉を検討したり,書き 込みの内容の意図を可視化する工夫をする等,さらに生徒が使いやすい システムに改善していき,将来的に汎用性のあるものにしていきたい。
なお,本研究は,質的研究法であるグラウンデッド・セオリーの手法 で分析を進めたが,この分析結果は,B.G.グレイザーとA.L.ストラウス が著書「データ対話型理論の発見」でも記述している通り,領域密着理 論であるので,さらに実践期間を長くとり,また,様々な領域において 研究を重ね,適用範囲の広い理論に高めていくことが望まれる。
また本研究は,授業の題材を「職業調べ」という進路に関する題材に 設定した。
「総合的な学習の時間」の題材としては,他様々な題材が考えられる。
本研究で使用したシステムが,他の授業ではどのように適用できるかに 関しても今後検証していく必要がある。
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おわりに
本研究は,生徒がより広い視野を持ちながら,問題解決的な学習を展 開し,自分の見方や将来の「生き方」について考えるような深い学習を めざし,そこに,教師が生徒の学習の進捗状況を個々にアセスメントす ることができるだけでなく,生徒の自己評価の能力を育てていくことが できると期待されているポートフォリオを活用した。
また,離島・へき丹州学校の実状を勘案し,ポートフォリオを学習に 関わる人々の中で公開することで,ただ単に過去を振り返るだけでなく,
将来に向かって成長するポートフォリオと位置づけた。
そこで,遠隔共同学習において,ポートフォリオと遠隔のコミュニケ ーション情報を区別しないで取り扱う電子ポートフォリオシステムを インターネット上にWebサーバーとCGIにより開発し,コミュニケーシ ョンを促進するなどの機能を装備させ,2中学校間で進路学習の一環と して職業調べ13時間の遠隔共同授業にこのシステムを用いた。そして,
電子ポートフォリオを含む遠隔共同学習の在り方やその成果や課題を 明らかにした。
本研究から得られた知見を整理すると,次のようなことである。
(1)遠隔共同学習における電子ポートフォリオを活用した授業実践 から,生起する振り返りには4つのパターンがあり,振り返りの生起に は「交流に対する期待」と「電子ポートフォリオの質や使われ方」が関 わっていることが分かった。教師は常に生徒一人一人に対して「交流に 対する期待」を高め,持続させていく工夫をすることや,特に振り返り がない生徒に対して,交流推進の手だてをとり,電子ポートフォリオの
要である。
(2)ポートフォリオを学習に関わる人々の中で公開することにより,
電子ポートフォリオを基にした交流の場が,「自分とは違う考えに気づ き,ものの見方が広がる場」「自分の振り返りを確信あるものにしたり,
疑問を解決したりする場」 「自分が調べたことをアピールする場」等と して一人一人の生徒にとって意義のある場となることが分かった。さら に,専門家・地域の人・保護者に支援してもらうことで,振り返りがさ らに深まることも分かった。
しかし,学習の目的に応じて,学習の進め方や書き込みの仕方等につ いて専門家・地域の人・保護者と密に連絡をとり,生徒の調べ学習の進 度にあわせたサポートや交流の在り方について綿密な打ち合わせする ことや,個人のプライバシーに配慮した対策をとっていくこと等が必要
となる。
「総合的な学習の時問」の評価のあり方でポートフォリオが最近注目 され,多くの学校で実践が始まったところである。子どもの学びには試 行錯誤が不可欠であることから,その過程を長期にわたって多面的に評 価することが大切である。本来は長いスパンで授業実践をし,生徒の変 容を分析していく必要がある。
幸いに,来年度から現場に戻り研究をさらに継続することができる。
本研究の成果を現場で生かし,さらに,課題として残ったことを解決す べく研究に逼古していきたい。
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