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学習の振り返りを支援する電子ポートフォリオシステムの開発と遠隔共同学習による授業実践に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)学習の振り返りを支援する電子ポートフォリオシステムの開発と 遠隔共同学習による授業実践に関する研究 学校教育専攻 教育方法コース 福 水 浩 一. 1.研究の目的. その2っの利点を組み合わせた電子ポートフォ. 変化の激しいこの時代において,主体的で創. リオシステムにより,自分の学習を振り返り,. 造的な自己を確立していくことが求められてい. 多様な意見や考え方に生徒が触れることで,生. る。学校教育においては,「生きるカ」の自ら. 徒がより広い視野を持ち問題解決的な学習を展. 課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に. 開できるとともに,将来の「生き方」について. 判断し,よりょく問題を解決する資質や能力を. 考える授業の構築をめざす。そして,実践を通. 育てることやこれらのことを通して自己の生き. して,電子ポートフォリオを含む遠隔共同学習. 方を考えることができるようにすることをねら. の在り方やその成果や課題を明らかにすること. いとして「総合的な学習の時間」が2002年から. を目的とする。. 学校独自の取組が期待されるなか本格実施され. 2.研究の内容. る。. 本研究は,生徒がより広い視野を持ちながら,. その現況のなか,問題解決的な学習が断片的. 問題解決的な学習を展開し,自分の見方や将来. な知識のみの獲得におわるような表層的な学習. の「生き方」について考えるような深い学習を. にとどまらず,生徒がより広い視野を持ち,自. めざし,そこに,教師が生徒の学習の進捗状況. 分の見方や将来の「生き方」について考えるよ. を個々にアセスメントすることができるだけで. うな深い学習に至るには,どのようにすればよ. なく,生徒の自己評価の能力を育てていくこと. いかが課題である。. ができると期待されているポートフォリオを活. また,離島・へき地学校等においては地理的 要因からくる情報量の不足や人的交流の機会の. 用した。. また,離島・へき地等学校の実状を勘案し,. 不足が原因となり生徒が多様な思考ができない,. ポートフォリオを学習に関わる人々の中で公開. 学習に深まりが見られないという現状があり,. することで,ただ単に過去を振り返るだけでな. 自己を見つめ,将来の「生き方」を考える「総. く,将来に向かって成長するポートフォリオと. 合的な学習の時間」をどのように構築していく. 位置づけた。. かが課題である。. そこで,遠隔共同学習において,ポートフォ. 本研究は,生徒自ら学習を振り返ることで,. リオと遠隔のコミュニケーション情報を区別し. 次への学習活動を新しいもの,より適切なもの. ないで取り扱う電子ポートフォリオシステムを. にしていこうとする効果が期待されるポートフ. インターネット上にWebサーバーとCGIにより. ォリオと,身のまわりの人や他の学校の友だち. 開発し,コミュニケーションを促進するなどの. 同士,さらに学校を越えた人たちでっくる共同. 機能を装備させ,2中学校間で進路学習の一環. 学習の揚を設定できるインターネットに着目し,. として,職業調べ13時間の遠隔共同授業にこ.

(2) のシステムを用いた。. 推進の手だてをとり,電子ポートフォリオの質 の向上や電子ポートフォリオの使い方の支援を. 3.本論文の構成と概要. 講じていくことが必要である。. 本論文の構成は,次の通りである。. ポートフォリオを学習に関わる人々の中で. まず,第1章では離島・へき地の現状と教育. 公開することにより,電子ポートフォリオを基. 課題を示し,問題解決的な学習に取り組むため,. にした交流の場が, 「自分とは違う考えに気づ. インターネットを用いた遠隔共同学習の必要陸. き,ものの見方が広がる場」 「自分の振り返り. について述べる。また,問題解決的な学習に生. を確信あるものにしたり,疑問を解決したりす. 徒が主体的に取り組むために「学習の振り返り」. る場」 「自分が調べたことをアピールする場」. の必要性について述べる。. 等として一人一人の生徒にとって意義のある場. 第2章では,学習の振り返りに有効な方法と. となることが分かった。さらに,専門家・地域. して注目されているポートフォリオの効果につ. の人・保護者に支援してもらうことで,振り返. いて述べる。さらに,遠隔共同学習における電. りがさらに深まることも分かった。. 子ポートフォリオの在り方や「総合的な学習の. しかし,学習の目的に応じて,学習の進め方. 時間」での位置づけを整理する。. や書き込みの仕方等について専門家・地域の. 第3章では,電子ポートフォリオの機能につ. 人・保護者と密に連絡をとり,生徒の調べ学習. いて整理し,システム環境や電子ポートフォリ. の進度にあわせたサポートや交流の在り方につ. オシステムのインターフェイスを開発する。. いて綿密な打ち合わせすることや,個人のプラ. 第4章では,生徒の実態や実践校の学習環境 を考慮した授業計画に従い実践した授業につい. イバシーに配慮した対策をとっていくこと等が 必要となる。. て述べる。そして,質的分析法の一つであるグ. システムについては,コミュニケーションの. ラウンデッド子骨リーに基づき分析した結果と. 言葉を検討したり,書き込みの内容の意図を可. して,振り返りをめざす授業の在り方の知見を. 視化する工夫をしたりする等,さらに生徒が使. まとめ,最後に開発システムの評価と改善点に. いやすいシステムに改善していき,将来的に汎. ついて述べる。. 用性のあるものにしていきたい。. 4,研究の成果 本研究から得られた知見を整理すると,次の ようなことである。. また授業を「職業調べ」という進路に関する 題材に設定した。「総合的な学習の三二」の題材. としては,他様々な題材が考えられる。本研究. 遠隔共同学習における電子ポートフォリオを. で使用したシステムが,他の題材ではどのよう. 活用した授業実践から,生起する振り返りには. に適用できるかに関しても今後検証していく必. 4つのパターンがあり,振り返りの生起には「交. 要がある。. 流に対する期待」と「電子ポートフォリオの質 や使われ方」が関わっていることが分かった。. 教師は常に生徒一人一人に対して「交流に対す る期待」を高め,持続させていく工夫をするこ. 主任指導教官 正司和彦. とや,特に振り返りがない生徒に対して,交流. 指導 教官 長瀬久明.

(3) 平成12年度 学位論文. 学習の振り返りを支援する電子ポートフォリオ システムの開発と遠隔共同学習による授業実践 に関する研究. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育専攻 教育方法コース. M99115F 福 水 浩 一.

(4) はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 1. 第1章 学習の振り返りの重要性とポートフォリオ・・・・・・・・・・…. 3. 1.1 離島・へき地がかかえる教育課題・・・・・・・・・・・・・・…. 3. 1.1.1 離島・へき地の現状と教育課題・・・・・・・・・・・・・…. 3. 1.1.2 離島・へき地における遠隔共同学習の意義・・・・・・・・…. 5. 1.2 問題解決的な学習とポートフォリオ・・・・・・・・・・・・・…. 7. 1.2.1 「生きる力」と問題解決的な学習・・・・・・・・・・・…. 7. 1.2.2 学習の振り返りの重要性とポートフォリオへの期待・・・… 10 第2章. 「総合的な学習の時間」における電子ポートフォリオの活用・・・…. 13. 2.1 「総合的な学習の時間」におけるポートフォリオ・・・・・・・…. 13. 2.1.1 ポートフォリオの教育への導入・・・・・・・・・・・・…. 13. 2.1.2 「総合的な学習の時間」の評価としてのポートフォリオ・…. 17. 2.1.3 ポートフォリオ学習における「振り返り」の効果・・・・… 20 2.1.4 ポートフォリオ評価実践にみる「振り返り」・・・・・・… 25 2.2 遠隔共同学習における電子ポートフォリオの活用・・・・・・・…. 28. 2.2.1 電子ポートフォリオとは・9・・・・・・・・・・・・・…. 28. 2.2.2 電子ポートフォリオと紙ポートフォリオとの比較・・・・…. 32. 2.2.3 「総合的な学習の時間」における電子ポートフォリオの位置づけ34 2.2.4 遠隔共同学習を支える学習環境・・・・・・・・・・・・…. 36. 第3章 電子ポートフォリオシステムの開発・・・・・・・・・・・・・・…. 40. 3.1 システム開発の視点と全体構造・・・・・・・・・・・・・・・…. 40. 3.1.1 機能面からみたシステム開発の視点・・・・・・・・・・… 3.1.2 システムの全体構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 3.2 システムの機能を生かすインターフェイス・・・・・・・・・…. 40 47. 55. 3.2.1 スタートのインターフェイス・・・・・・・・・・・・・…. 55. 3.2.2 グループポートフォリオシステムのインターフェイス・・…. 56. 3.2。3 個人ポートフォリオシステムのインターフェイス・・・・…. 68.

(5) 第4章 電子ポートフォリオを用いる遠隔共同授業の実践と評価・・・・…. 4.1 授業の設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 4。1.1 授業計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 4.1.2 両校の生徒の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・… 4.1.3 実践対象の両校の学習環境・・・・・・・・・・・・…. 71. 71 78 84. 4.2 授業の様子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 4.3 授業の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 4.3.1 分析の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 71. 87 104. 104. 4.3.2 振り返りのパターンとその変化・・・・・・・・・・・・… 107 4.3.3 「交流に対する期待」を高める要因,低下させる要因・・…. 132. 4.3.4 交流がうまくできない生徒への手だて・・・・・・・・・…. 136. 4.4 電子ポートフォリオと振り返りの関係・・・・・・・・・・・…. 140. 4.5 ポートフォリオを公開することによる効果・・・・・・・・・…. 149. 4.6 問題解決的な学習における電子ポートフォリオの効果・・・・…. 152. 4.7 授業実践から得られる示唆・・・・・・・・・・・・・・・・…. 155. 4.8 開発システムの評価と改善・・・・・・・・・・・・・・・・…. 158. 4.8.1 開発システムの評価・・・・・・・・・・・・・・・・…. 158. 4。8.2 コミュニケーションボタンの効果・・・・・・・・・・…. 162. 4.8.3 開発システムの改善・・・・・・・・・・・・・・・・…. 171. 4.9 まとめと今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 173. おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 謝. 辞. 資. 料. 175. ∴・177. ’・●●’●●●●●’181.

(6) はじめに. 第15期中央教育審議会は1996年7月に発表した第一次答申におい て,自ら学び自ら考える力などの「生きる力」の育成が重要であるとし. た。さらにその答申を受けて1998年7月に発表された教育課程審言義会 の答申では「[生きる力]をはぐくむことをめざす今回の教育課程の規 準の改善の趣旨を実現する極めて重要な役割を担うもの」として「総合 的な学習の時間」を位置づけ,問題解決学習をより一層重視するととも に「自己の生き方を考えること」をねらいの一つとして掲げた。. しかし,問題解決的な学習が閉ざされた学校の中で行われ,断片的な 知識のみの獲得におわってしまうと,表層的な学習になってしまいやす く,自己の見方や「生き方」と結びつくような学習にするにはどのよう に工夫していくかが課題である。. また,離島・へき地学校等においては地理的要因からくる情報量の不 足や人的交流の機会の不足が原因となり生徒が多様な思考ができない, 学習に深まりが見られないという現状があり,自己を見つめ,将来の「生. き方」を考える「総合的な学習の時間」をどのように構築していくかも 課題である。. 本研究は,生徒自ら学習を振り返ることで,次への学習活動を新しい もの,より適切なものにしていこうとする効果が期待されるポートフォ リオと,身のまわりの人や他の学校の友だち同士,さらに学校を越えた 専門家・保護者・地域の人とともにつくる共同学習の場を設定できるイ. ンターネットに着目し,上記の2つの利点を組み合わせることのできる 電子ポートフォリオシステムにより,自分の学習を振り返り,多様な意 見や考え方に生徒が触れることで,生徒がより広い視野を持ち問題解決 1.

(7) 的な学習を展開できるとともに,将来の「生き方」について考える授業 の構築をめざす。そして,電子ポートフォリオを含む遠隔共同学習の在 り方やその成果や課題を明らかにすることを目的とする。 本論文の構成は,次の通りである。. まず,第1章では離島・へき地の現状と教育課題を示し,問題解決的 な学習に取り組むため,インターネットを用いた遠隔共同学習の必要性 について述べる。また,問題解決的な学習に生徒が主体的に取り組むた めに「学習の振り返り」の必要性について述べる。. 第2章では,学習の振り返りに有効な方法として注目されているポー トフォリオの効果について述べる。さらに,遠隔共同学習における電子 ポートフォリオの在り方や「総合的な学習の時間」での位置づけを整理 する。. 第3章では,電子ポートフォリオの機能について整理し,システム環 境や電子ポートフォリオシステムのインターフェイスを開発する。. 第4章では,生徒の実態や実践校の学習環境を考慮した授業計画に従 い実践した授業について述べる。そして,質的分析法の一つであるグラ ウンデッドセオリーに基づき分析した結果として,振り返りをめざす授 業の在り方の知見をまとめ,最後に開発システムの評価と改善点につい て述べる。. 2.

(8) 第1章 学習の振り返りの重要性とポートフォリオ. 1.1. 離島・へき地がかかえる教育課題. 1.1.1 離島・へき地の現状と教育課題 鹿児島県には210余の離島がある。このうち,学校のある島は35. 島で,その学校数は270校にのぼる。平成11年5月現在,本県の公. 立小・中学校873校のうち,50%強にあたる444校が離島・へき 斗出学校である。. また,全公立小学校のうち,11学級以下の小規模校は457校,全 公立中学校のうち5学級以下の小規模校は133校であり,小・中合わ. せると590校,67.6%にのぼる。 平成11年度,「かごしまのへき地・小規模校教育」第43号によると へき地・小規模・複式学級を有する学校の児童生徒にとって,必要度・ 緊急度の高い課題として,「心の豊かさ」「主体性・創造性」「たくまし く生きる力」「社会の変化に対応する力」等を挙げている。. また,離島・へき地等学校の生徒の長所と短所を同研究誌は次のよう に指摘する。. 表1.1−1 離島・へき地誌学校の生徒の長所と短所 長. 短 所 (1)依頼心が強く計画性がない (2)語彙に乏しく表現力がない. 所. (1)明朗で活発 (2)純真で素朴 (3)礼儀正しく仲が良い (4)勤労を厭わず根気強い (5)協調性がある. (3)思考や発想の多様性・論理 性に乏しい. (4)社会性に乏しく主体性がな い. 北海道教育大学僻地教育研究施設が示した6つのへき地特性につい て同研究誌は「交通の発達,住宅の改善,都市的生活様式の普及,テレ. 3.

(9) ビ・コンピュータなどの情報機器の普及等により,都市とへき地の差異. が明確でなくなってきたことから,へき地の捉え方を見直す必要があ る」と一見,事態は改善されつつあるとも受けとることができる記述を している。しかし,上白石弓(1999)が「体験活動の不足」「人的交流 の不足」「学習資料の不足」を,離島・へき地の学校が抱える課題に通 じる大きな要因として挙げ,松崎真(2000)もまた,「離島・へき地の 学校の構成人員の少なさがクラス全体の思考を画一化させ,個人のアイ デンティティの形成に影響を及ぼしている」ことや「離島・へき地とい う地理的な影響からくる学習のマンネリ化・受身化」を指摘するように, 学習時における課題は依然として深刻である。. 変化の激しいこの時代において,主体的で創造的な自己を確立してい くことが求められ,学校教育においては,生きる力の知的側面である自 ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりょく問題. を解決する資質や能力を育てることやこれらのことを通して自己の生 き方を考えることができるようにすることをねらいとして「総合的な学. 習の時間」が2002年から学校独自の取組が期待されるなか本格実施 される。. しかし,離島・へき地等学校においては地理的要因からくる情報量の 不足と社会的体験の乏しさが原因により生徒が多様な思考ができない, 学習に深まりが見られないという現状を抱えている。また,それ以上に 思考が深まり,自己を見つめ,振り返ることで自分の「生き方」を考え るところまでなかなかいきつかないのも現実である。そのような現状の なか,へき地学校において「総合的な学習の時間」をどのように実施し,. その趣旨を実現していくかが大きな課題とされる。. さらに,問題解決的な学習において学校図書館の活用が指摘されてい 4.

(10) るが,12学級以上の学校に配置されるとする図書司書も鹿児島県では 全体の約70%があてはまらない。へき地においては,図書蔵書も少な く,図書司書についてはへき地においては配置がない現状である。その ため資料の不足は当然学習以前に予想できることである。. 以上のように,情報不足によって生徒の「学び」が阻害されているこ とを少しでも解消するためにへき地教育においては特に,インターネッ トの活用が望まれ,推進されている。. 鹿児島県教育情報研究会(1998)によると,インターネットが普及し,. 学校の地理的条件が克服され,そのサイバースペースを生かして様々な. 人が自分なりに作った作品を発表したり交流したりして臨場感のある 共同の場を作ることで,生徒同士が相互に意見を聞き,発言し,発表力 や表現力が身に付いてくるとしてインターネットの利用活用を推進し, 「開かれた学校」の構築が期待されている。. 1.1.2 離島・へき地における遠隔共同学習の意義 前述した通り,鹿児島県は離島・へき地等学校を5割以上かかえてい る県であり,生徒たちはお互いに,異なった孤立的な風土で生活してい る。風土が違うと文化も違う。文化が違うと当然一人一人の考え方も違 う。地域の特性もそれぞれ違い, 「生き方」について考える学習も単一. 校の学習より遠隔共同で学習する方が多彩に意見交換ができ,一人一人 の考え方も深まる。. 「情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて」 (情報化の進. 展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研 究協力者会議 最終報告)(1998年8月)では,「学校教育における情報. 手段活用の基本的考え方」の各教科等の学習指導でコンピュータ等の情 5.

(11) 報手段を活用することで,次のような効果が期待できるとしている。. (1)子供たちの興味・関心や意欲をたかめ,理解を助ける (2)思考力や判断力,創造力,表現力などを培う. (3)基礎・基本と主体的な学習の方法を習得させる (4)交流,共同学習など創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開す る. 特に(4)においては「インターネットなどの情報通信ネットワーク は,その双方向性の機能を活用することによって,学習の対象を広げ, 興味や関心を掘り起こし,他の学校や地域,国境さえも越えた交流を可 能にする。」とし,「環境に関する共同調査や種子の発芽状況の観察を,. 全国のいろいろな地域の学校が同時期に同じ方法で観察し結果を比較 しあうことにより,自分の住んでいる地域や他の地域の環境や気候・風 土などに関する理解を深めるという事例もある。これらの活動では,学 習の方法や過程,その成果を共有することにより,協同する喜びを共有 することができるようになってきている。」と共同学習により学習を深 めることができるようになってきたと述べている。. 離島・へき地等学校の生徒の特性は国立研究所の研究でも明らかであ る。そのマイナス特性の原因の一つに「情報量の少なさ」が報告されて いる。これからの変化の激しい情報化時代を生き抜いていくためには, 狭い地域での学習から学校を超えた広い学習へと生徒を導き,体験やコ ミュニケーションを通して,生徒の真の生きる知恵となるよう教師が働 きかけていかなければならない。生徒たちの学びを広げていく意味で, 遠隔共同学習はこれから大いに必要とされる。. また, 「共剛で学習することによって,相手校の友だちの違った考 えに触れる機会が増え,今まで同一校で学習してきた(小学校から9年 6.

(12) 間同じ友だち)マンネリ感を一掃することができ,互いに思いや考えを 分かち合い,学ぶことの楽しさや新しい発想を知ることができ,その積 み重ねによって, 「豊かな自分」を実感できる。. 以上のことから,遠隔共同学習の意義を次のように考える。. (1)遠隔にある学校の生徒同士が,お互いの違った風土や文化から表 出される考え方を共有することで多彩なものの見方や考え方がで きる。. (2)多彩なものの見方や考え方に触れることで,自己の生き方を自問 し,アイデンティティ(自分らしさ)を発揮しながら,お互いの「知」 を分かつことができる。. 本研究は,問題解決的な学習において,子どもたちの興味・関心を引 きだし,受け身的な学習から,自ら考え,自ら学んでいこうとする資質 や能力を育成するために,インターネットを使った遠隔共同学習を積極 的に活用していく。. 1.2 問題解決的な学習とポートフォリオ. 1.2.1 「生きる力」と問題解決的な学習. 1996年7月に出された中央教育審議会第一次答申は,次代を生き るために必要な資質・能力について「生きる力」という表現で次のよう に述べている。. 我々はこれからの子どもたちに必要となるのは,いかに社会が変化しよう と,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し, よりょく問題を解決する資質や能力であり,また,自らを律しつつ,他人と ともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性であると 考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまで もない。我々は,こうした資質や能力を[生きる力]と称することとし,こ れらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。. 図1.2−1 中央教育審議会第一次答申から 7.

(13) また同答申は,「生きる力」をはぐくむために次の4つの柱を示した。. ①学校・過程・地域社会の連携と過程や地域社会における教育の充実 ②子どもたちの生活体験・自然体験等の機会の増加 ③生きる力の育成を重視した学校教育の展開 ④子どもと社会全体のゆとりの確保 なかでも③では,「生きる力」の育成を重視したこれからの学校教育 のめざす方向として. *知識を一方的に教え込むことになりがちだった教育から子どもたち が自ら学び自ら考える教育への転換 *生涯学習の基礎的な資質の育成を重視 *ゆとりのある教育環境でゆとりのある教育活動を展開 *基礎・基本の確実な習得と個性を生かした教育の重視 *子どもたち一人一人のよさや可能性を見いだし,伸ばす. *教育環境の整備 等を挙げている。. このことは「生きる力」の重要性の背景に,今の子どもたちをとりま く現状やこれからの社会に求められる資質や能力等が深く関係している ことを示している。同答申は,「生きる力」の重要性の背景を *ゆとりのない生活,社会性の不足や倫理観の問題,自立の遅れ,健康・. 体力の問題,子どもの積極性の問題,加熱した受験競争等多くの問題. が存在する *家庭の教育力の低下や地域社会の地縁的な教育力の低下 *国際化の進展・情報化の進展・科学技術の進展や環境問題,エネルギ 一問題,高齢化社会等変化の激しい先行き不透明な厳しい時代となる を挙げている。. 8.

(14) また佐野金吾(1999)は,中学生の現状を次のように指摘し,「生き る力」を喫緊の課題とする。. 「指示されたことは無事にこなすことができるが,自ら課題を発見し て取り組む積極的な姿勢にはかけるものがある。自己本位な行動をとる 生徒も多く,他人の目を非常に気にするなど人間関係についての資質や 能力が身についていない。身長は伸び体型的には大きくなっているが, 自己の健康管理や体力面での状況には憂慮すべきものがある。」. 佐野の一番目の指摘は,これまでの学校教育が指示待ち人間を作り出 してきたという反省すべき指摘である。. これからの学校教育においては,自ら求めて学ぶ主体性や様々な問題 に対して適切に処理する問題解決能力の育成が重要な取り組みの一つと なる。. 中央教育審議会の答申を受けて,1998年7月に出された,教育課程審 議会答申は,子ども一人一人に「生きる力」をはぐくませるための中核 的な時間として「総合的な学習の時間」を位置づけた。 そして「総合的な学習の時間」のねらいとして次を示している。. ①自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりょく 問題を解決する資質や能力を育てること ②学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的, 創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるよ. うにすること. この時間は横断的・総合的な学習や生徒の興味関心等に基づく具体的 な学習を通して問題解決の資質や能力を育んだり,生き方を考えたりす ることが主目的となる。 9.

(15) 本研究においても, 「生きる力」の一側面である問題解決的な学習を. 授業の中核に据えるとともに,その学習の過程で,生徒が自己を見つめ 将来の生き方について考えることを支援する授業の構i築をめざす。. 1.2.2 学習の振り返りの重要性とポートフォリオへの期待 「生きる力」をはぐくむうえで,問題解決的な学習が重要な位置を占 めるということは,前述した通りである。. では,問題解決的な学習に取り組むにあたって,どのような点に目を 向けていかなければならないだろうか。. まず,問題解決的な学習が知識を獲得するだけの学習にとどまらず, 「生活知」として実世界に生きて働く知恵となるように,また,現在や 将来への生き方を考える学習に結びつくために,体験:を重視した活動を. 取り入れる。このことは,新学習指導要領の総則編に「総合的な学習の 時間の学習活動の展開にあたっての配慮事項」として次のように示され ていることにも関係する。. 自然体験やボランティア活動などの社会体験,観察・実験,見学 や調査,発表や討論,ものづくりや生産活動など体験的な学習,問 題解決的な学習を積極的に取り入れること. 図1.2−2 新学習指導要領の総則編から. つまり,具体的な体験を通して得た知識や考え方を,実生活の様々な 課題に適用することで,よりよい生活を創造することができると考える。 また,保護者や地域の人,さらに専門家等の協力を得て問題解決的な 学習に取り組む。. 生徒の興味・関心に基づいた問題解決的な学習は,学校内だけでは解 決に至らないことを考えると,広く学校外に協力を要請するのは必然の. ・10一.

(16) ことであり,教師は,そのような場をいかに設定するかが今後の課題と もなる。. では,生徒が主体的に問題解決的な学習に取り組むようにするために は,何が大切であろうか。. 加藤幸次(1999)は,「課題解決のプロセスが一度も振り返られるこ となく直線的に考えられ,実践されている」とし,課題づくりと仮説の 設定,検証の過程,そして結果に至る活動の過程で,学習が再吟味され ない問題点を指摘している。. つまり,生徒が主体的に問題解決的な学習に取り組む学習にするため には,自分の学習がどこまで進んだのか,また,学習により何が分かっ たのかを自分で反省し,振り返ることが大切であると示唆する。また,. 学習を振り返ることは,次の学習を新しいもの,より適切なものに変え ていこうとする活動にもつながっていく。さらに,生徒が自分の学習を メタ認知の立場で捉え,問題解決のプロセスの全体を見通すことができ る力を身に付けることにもつながる。. では,どういう方法で学習の振り返りを実現させていけばよいだろう か。. これまでも,学習の過程において,形成的評価として学習を振り返ら せる方法がとられてきた。しかし,学習の過程における教材のねらいを どれだけ達成したかという目的で,評価規準を教師が決めて用いられる ことが多く,生徒は評価をさせられていたきらいがあった。. 問題解決的な学習では,生徒の試行錯誤が大切となる。生徒自身が自. 分の学びを深めていくためには,受け身的でなく能動的に学習を振り返 ることが大切となる。. そこで,本研究ではポートフォリオに注目する。. 一11一.

(17) ポートフォリオは,子どもの自己評価の習慣や能力を育てるうえで, 極めて効果的な方法であると注目されている。. 本研究では,ポートフォリオをただ単に過去を振り返るだけの記録と は捉えず,将来に向かって生徒とともに成長するポートフォリオとして 捉え,生徒一人一人の学びを多くの人との関わりのなかで再構成すると いう立場で研究を進める。 詳しくは,次章以降で述べることとする。. ・12一.

(18) 第2章 「総合的な学習の時間」における電子ポートフォリオの活用 2.1 「総合的な学習の時間」におけるポートフォリオ. 2.1.1 ポートフォリオの教育への導入 ポートフォリオ(Portfolio)は,新英和大辞典(1996)によると「紙 ばさみ・折りかばん・書類かばん,携帯用の官庁の書類入れ・有価証券 明細書」とあるように,元来は入れ物・容器のことである。そのポート フォリオがイギリスやアメリカでは,テストでは測ることのできない学 びの過程や創造性などの複雑な過程を評価する一手段として教育に取り 入れられることになる。. 鈴木秀幸(1999)は,イギリスにおける「重要な達成事項を記録する ポートフォリオ評価」といわれる方法を紹介している。それによると,. ユ994年ナショナルカリキュラムが,それまで子どものあらゆる面を 評価していくカリキュラムから,重要な点だけの達成事項を評価してい こうとするカリキュラムに新しく改訂され,そこで,子どもに重要な達 成事項が示されたときに,その事例をポートフォリオとして保存するこ とで,子どもの自尊感情を高め,自己評価能力を育成するように,公的 テストでは測ることのできない評価法が,ロンドン大学のシャリー・ク ラーク等を中心として開発され,多くの学校で実践がされてきたとして いる。. また,安藤輝次(1999)は,アメリカでのポートフォリオの教育への 導入について「全米の学校にポートフォリオが広く普及した要因として は,1980年代から多くの州で採用されてきた標準テストに対する鋭い批 判と不信があった」と述べている。. 高浦勝義(2000)は,標準化されたテストの問題点としてダーリング・ ハモンドの言葉を紹介している。 「カリキュラムにおける表面的な内容. 一13一.

(19) の網羅主義と機械的暗記主義が蔓延し,より多くの時間が必要となり,. 深く考えるプロジェクトや各種の思考誘発課題の学習が避けられがちに なる」 「テストでは,最終の答えのみが記録され,数値による得点のみ. が報告されることになり,子どもがいろいろな課題にどのように取り組 み,あるいは問題解決においてどのような諸能力を発揮したかに関する 情報を提供することができない。」. そこで,1980年代晩年から,標準化されたテストによる評価に代 わる新たな子ども評価の在り方として「真正の評価」 (Authentic as−. sessment)の必要が提議され,教育界で研究が進められてきた。 「真正の評価」とは,ArchbaldとNewmann(!988)によれば,「生徒が. 成功するか失敗するかの個々の仕事について,確かな情報を与えるアセ スメントシステムである。そのことにより,生徒にやりがいのある,重 要で意味のある仕事を与えることがもっと重要なことである。」と定義 づけている。つまり,テスト中心の評価に対して,子どもが実際に活動 する場で,その都度評価していこうとする考え方が「真正の評価」であ る。. 安藤輝次(1999)によると,「学び手を現実の社会で.も起こりうるよ. うなリアルな状況の中に投げ込み,そこでの複雑な問題と真正面から向 き合わせ,一定の基準及び規準に合致しているかどうかについて評価者 ともやりとりを重ねながら,何とか解決策を提案したり,作品を創ると いうパフォーマンスを行うための評価」であるとする。 そこで, 「真正の評価」を支える評価法としてポートフォリオが教育 学に評価法として取り入れられることになった。. 小田勝己(1999)は,アメリカではポートフォリオ学習が「新しい学 力観」の発展と車輪の両輪の様に発展してきたが,日本では学力観が十 一14一.

(20) 分に議論されずに,ポートフォリオという道具だけが注目・活用されよ うとしていると指摘をしている。. 実際に,アメリカでは日本のように「総合的な学習の時間」だけに使 われることなく,各教科でも使われている。また,評価法として使われ るのではなく,カリキュラムとしても採り入れられている。しかし,学. びの結果より過程を重視する傾向や子ども中心の教育の動向は共通の ものがある。. ポートフォリオの定義は著者によって様々な定義がされているが,K. Burke(1994)は,次のように定義する。. 「ポートフォリオは,生涯の学習者としての学生のより多くの完全な 写真を作るために,分けられたアイテムを結合する,学生の学習のコレ クションである。ポートフォリオは観察照合簿のような評価,ログ,ジ ャーナル,ビデオ,カセット,絵,プロジェクト及びパフォーマンス評 価等を含み,これらの異なるタイプの評価が学生のそれらの能力の全て の様相を表示できる。ポートフォリオは単独では意味しない個々の部分 を含んでいるが,これらが編集されたとき学生のより正確で全体的な肖 像を醸し出す。」. つまり,ポートフォリオは時系列的に調べた内容をただ単にファイル として綴じていくことではなく,生徒が自分の規準で(学校の評価規準 に照らしながら)選択した作品を編集して収録したものである。さらに,. そのポートフォリオを見ると生徒一人一人のこれまでの学習の過程や現 在の到達内容が分かり,生徒自身がこれから取り組むべき課題が明らか になるのである。. ポートフォリオとして残す作品をK.Burke は次の28種類にまとめ ている。. 一15一.

(21) 1. 宿題. 2 3. 教師が作成した簡単な小テストやテスト 生徒同士で作った課題. 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19. 20 21. 22. グループ作業(人工物や絵). 学びの記録 問題解決の記録 反省された日記 地域プロジェクト 著述活動 過程を示した著述作品の下書き スピーチ・読み・歌・質問の仕方に関するカセット 図式構成図 会議での質問 態度や意見に関する質問表 他の子どもとのインタビュー 個人または集団の観察チェックリスト メタ認知活動 自己評価. ポートフォリオの内容についての教師や親への手紙 将来の目標についての言明 規準が与えられていない自由な写真 スピーチ・競技・討論・歴史劇の演出などのパフォーマンスに関する 写真. 23 24 25 26. 綴じるには大きすぎる個人やグループによるプロジェクトの写真 生徒が登録事項を記入した時と理由,及びそれを取り消した時を記し たり論じた登録簿ないし記録 コンピュータのプログラム 実験室での実験. 27 28. 美術制作の見本(もしくは絵画) 作業遂行に関するビデオ. 図2.1−1 ポートフォリオとして残す作品 (K. Burke. 1994). 高浦勝義(2000)は,この28種類を「子どものメタ認知活動にかか わる諸能力の発達の状況をアセスメントするためにも活用することが できる」としている。. つまり,ある課題に取り組んでポートフォリオとして提出する内容を. 示すことにより,「子どもに何を学んでほしいか」という目的意識を持 たせ,教師の意図を伝えることで学習の方向付けをしていることに特徴 がある。. 一16一.

(22) 2.1.2 「総合的な学習の時間」の評価としてのポートフォリオ 今なぜ総合的学習が必要かについて,寺西和子(1996)は3つの要因 を説明している。. 「第一には,従来の各教科毎の分科主義,これがもたらす教育の閉鎖 性が問題になってきている。第二には, 「国際」 「環境」 「情報」 「人. 間」など,これまでの一つの教科におさまりきれない現代的な教育課題 が山積みされている。第三には,個性化教育が今後ますます重要になる。. 一人一人が自分の興味・関心に基づいて,主体的に課題を選び,探究し 解決し体験していく「総合課題学習」は個性化教育の有力な手だてとな る。」. これまでの学校教育は,他から与えられた課題をよりうまくこなし,. テストで良い点をとることで評価され,課題追求の過程は評価されない ことがあった。そのため,指示待ち症候群という言葉も生まれ,教師の 指示に忠実に従い,人と違った発想を排除することさえあった。. しかし,環境問題や高齢化社会,国際化問題など変化の激しく複雑に なっていくこれからの時代に生き抜いていくためには,自ら課題を持ち 問題解決し積極的に社会に関わっていく力が求められる。また,学校教 育だけで完結するのではなく,生涯を通してその力が求められる。 自ら課題を持ち問題解決していくためには,自分の学習を振り返り,. 何が分かったのか,何が足りないのかをその都度自分で評価していく必 要がある。つまり,自分の学習をモニタリングする力が必要となる。学 習の過程や結果を他から評価されると同時に,生徒自身で評価すること が求められる。. 子ども一人一人に「生きる力」をはぐくませるための中核的な時間と して「総合的な学習の時間」が位置づけられたわけだが,その時間の評. 一17一.

(23) 価をどうするかがこれまでも議論されてきた。. 「総合的な学習の時間」における評価に関する文部省の動向を考える. と,中央教育審議会の第一次答申(1996年7月)には,「子どもたちが. 積極的に学習活動に取り組むといった長所の面を取りあげて評価する ことは大切であるとしても,この時間の学習そのものを試験の成績によ. って数値的に評価するような考え方を採らないことが適当と考えられ る。」と述べた。その答申を受けて,教育課程審議会の「幼稚園,小学 校,中学校,高等学校,盲学校,聾学校及び養護学校の教育課程の基準. の改善について」(1998年7月)において「「総合的な学習の時間」 の評価については,この時間の趣旨,ねらい等の特質が生かされるよう,. 教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず,活動や 学習の過程,報告書や作品,発表や討論などに見られる学習の状況や成 果などについて,児童生徒のよい点,学習に対する意欲や態度,進歩の 状況などを踏まえて適切に評価することとし,例えば指導要録の記載に. おいては,評定は行わず,所見等を記述することが適当であると考え る。」と述べた。. 新学習指導要領においては,単に「総合的な学習の時間」のみならず,. すべての教科,道徳,特別活動の評価において「児童のよい点や進歩の 状況などを積極的に評価するとともに,指導の過程や成果を評価し,指 導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること」とした。 教育課程審議会(2000)は, 「児童生徒の学習と教育課程の実施状況 の評価の在り方について」 (答申〉において,「生きる力」を重視した. 実践の今後の展開に伴って,評価方法の工夫改善の考えを示した。その 中で,「具体的な評価の方法としては,ペーパーテストのほか,観察,. 面接,質問紙,作品,ノート,レポート等を用い,その選択・組合せを. ・18一.

(24) 工夫すること」さらに,「教科の特性や観点の趣旨にふさわしい評価の 方法を適切に選択し組み合わせるなどの工夫が大切である」と述べた。 以上の答申などから, 「総合的な学習の時間」の評価観は,教師が生. 徒の学習の進捗状況を評価することができるだけでなく,生徒の自己評 価の能力を育てていくことができるとされるポートフォリオ評価の考え 方に近いものがある。しかし,具体的な評価方法には触れられてなく, 今後各学校で工夫することが求められている。 村川雅弘(1999)は, 「総合的な学習の時間」の評価の在り方につい. て, 「「総合的な学習の時間」がねらっている力というのは,子どもが. 主体的に問題を設定し,解決していくという力。そうすると子ども自身 が自分自身の活動を振り返って,自分の活動を改善していくために子ど も自身による自己評価が大事」であると提言している。. また,澁澤文隆(1999)は「「総合的な学習の時間」のように主体的 な活動をすればするほど各生徒がそれぞれどんな変容をとげたのかをと らえる個人内評価を大切にしていく必要がある」とする。. つまり,生徒一人一人が自分の学びを点検し,どれだけ学びを深める ことができたかを実感し,そしてさらに,新たな学びへと発展させてい く評価が大切であるということである。またそれは,評価主体と評価対 象が一致した自己評価である。 以上のことから,「総合的な学習の時間」の評価の考え方は,まさに,. 生徒の自己評価の能力やメタ認知能力の育成につながるというポートフ ォリオがもつ働きに通ずるものがある。さらに,ポートフォリオを作成 することは,生徒の学習状況について教師と保護者の話し合いを効果的 にする。このことは,学校のアカウンタビリティー(Accountability) を表明する上でも効果的な役割を担うものである。. ・19・.

(25) 2.1.3 ポートフォリオ学習における「振り返り」の効果 前項で, 「総合的な学習の時間」の評価の在り方とポートフォリオが 持つ働きには共通するものがあり, 「総合的な学習の時間」の評価は,. 評価主体と評価対象が一致した自己評価が重要であると述べた。そのよ うに捉えると,自分の学習を反省し,振り返ることが重要となる。. そこでここでは,振り返りをどのように捉えたらよいか,また,振り 返りによって,どのような効果があるのかについて述べる。 安藤輝次(2000)は,「自己評価は,本来,生徒が自分なりの規準を もって振り返りたい時に振り返るものである」と定義し,「中学生の総. 合的な学習では,生徒に自己評価をさせる実践が多く見られるが,これ らの多くは自己評価の時期や項目を教師側で設定したものであり,生徒 は自己評価をさせられているにすぎない」と指摘し,他律的な自己評価 から自律的な自己評価へ転換することの重要性を示している。. また奈須正裕(2000)は、教師評価が学習の大きな位置を占めている 理由として「評価の対象となる学習活動が子どもの切実な要求に根ざし たもの、子ども主体のものではなかった」ことを指摘している。 「総合的な学習の時間」では、子どもの主体的な学びが重要視される。. 子どもたちの学びが主体的に展開され、継続されていくためには、子ど も自身が自身の学習を振り返り、モニターし、価値付けができることが 必要である。しかし、今まで教師評価にならされてきた生徒たちに、い きなり「自分で振り返り、評価しなさい」というのは,そうたやすいこ とではない。奈須正裕(2000)が、「大人でも自分で自分のことを振り. 返り価値づけるというのは難しい。それは高度な認知的技術の一種であ り、適切な訓練なり経験を積んで次第に身につけていくことが望まれ る」と指摘しているように、評価主体が生徒自身であるような教師の工. 一20一.

(26) 夫が今後求められる。. 北尾倫彦(2000)は,「自己評価力は教師と子どもの交流のなかで育つ. ものであり,はじめから子どもが持っている力ではない。どのような観 点から評価すればよいのか,自分の学習のどこに弱点があるのか,また どこがうまくいった点なのかを,それぞれ的確に把握することは大変難 しいことである。教師は子どもの考えや意見を尊重しながらも,自己評 価の観点や仕方をきちんと伝えるべきである」とし,教師の支援の重要 性を指摘している。. さらに正木孝昌(2000)は,「評価を子どもたちと教師,あるいは,子. どもたちどうしのコミュニケーションの場と考えるとき,生きた評価の 姿が浮き彫りにされてくる」とし,友だちどうしで相互に評価し合った り,教師と話し合いながら,自分の活動の状況を見つめ直したりする過 程で,今まで見えなかったものが見えてきて,活動をよ.り質的に高めて いく密度の高い言葉が交わされるようになるとしている。. このように,学習のプロセスにおいて生徒が何かに気づき,自分の学 びを深めていくなかで知を再構築していく学習にするためには,他者と のコミュニケーションはとても重要になる。. では,加藤幸次(1999)が「振り返ることによって改めて自分の足跡 あるいは成し遂げたことの意義を知ることができる」と記述しているが, 「振り返り」,をどういうふうに考えればいいだろうか。. 小田勝己(2000)はPatrisia R Cariniの著書を挙げ,広義の「振 り返り」を次のように紹介している。. 「振り返りとは,外見上はなんのつながりもないような事柄の問にパ ターンを発見することによって,構築された知識を集めたり,保管した りすることであり,また,集中すべき焦点を目的をもって選ぶことであ. ・21一.

(27) る。対象は,概念,文学的モチーフ,経験,人物などである」 また,H. Gardnerは「振り返りとは,私は今なにをしているのか,な. ぜこれをしているのか,何を成し遂げようとしているのか,それをどの ような方法で行おうとしているのか,自分の活動をどのような望ましい 形で修正しようとしているのかを,自分自身に問いかけることができる 状態を意味する」としている。. 現代はテレビ社会となり,情報が溢れている。たくさんの情報を自ら 選択し,自分の生活に生かすより,流れてくる情報を受け止める方がは るかに多い。このことは,じっくりと考えることや深く振り返ることを 阻害している原因でもある。また,学校においては,ある一定の知識を 吸収することを優先するあまり,自分の知識を構成する場がないといっ ても過言ではない。現代の子どもに「個性がない」と言われるのは,そ うした場が学校の中から奪われているためでもある。. 以上のことから,問題解決的な学習の面から,「振り返り」を本研究 では次のように捉える。. 【今学習で自分は何が分かったのか 何が分からないのか また これまでどんなことを学習してきたのか なぜこの学習をして いるのか この学習は自分にとってどういう意味があるのかを 生徒自身が認識すること】. では,ポートフォリオによる「振り返り」は具体的にどのような効果 が期待できるのだろうか。. (1)一度自分が立てた課題や解決方法が再吟味される。. ア 資料やデータがあったのか イ 学習時間について十分時間があったのか ウ 一体なぜこの課題を選んだのか ・22一.

(28) 工 今の見通しで解決に迫れるのか オ どの過程で課題に対する認識はどう変化したか (2)次の学習を新しいもの,より適切なものに変えていく。. ア 課題に対する認識の変化に伴い追求活動はどう修正されたのか (3)どのような情報をもとに結論を見出していったのかの足取りを見 ることができる。. (4)学習活動を通してどのような力を身につけたのかを見取ることが できる。. (5)今後どのように課題を継続・発展させていこうと考えているのか を見取ることができる。. 「振り返り」には,ただ単に今までの学習で何をやってきたかを振り 返る機械的な意味に近いものから,高次元にある意識や関心を働かせ, 真に自己学習力あるいは問題解決力を発揮する振り返りまで,深浅のレ ベルとして多様な「振り返り」が考えられる。. 本研究では,対象が中学生ということから,次のような振り返りを, 「深い振り返り」とする。. (1)新しい発見 今まで想像もつかなかったことを発見したということ (2)確信 今まで自分が主張していたこととか考えていたことが,誰かに支 持されて「あっ,やっぱり自分の考えが正しかった」と確信に至る こと. (3)他者からの支援による発展 今まで考えていたことは,もやもやとしてもう一つ物足りない,. ・23一.

(29) しかし誰かの意見とか考えで,より発展させるような,将来の希望 につながるような分かったということ (4)間違いの認識. 今まで自分が考えていたことが間違っていた,修正しないといけ ない。信念で正しいと思っていたけれども,間違っていたというこ とが分かったということ. (1)∼(4)の「深い振り返り」によって獲得された知識や理解は,. 生徒のこれからの生き方を考える上で,生きて働くものとなる。それは 既存の知識や理解が再構成されたものであり,生徒がこれからの生き方 を考えるうえでも重要なものである。. 本研究では,生徒の心に残り,自己の見方や生き方と結びつく「深い 振り返り」が生起する学習をめざす。. ・24一.

(30) 2.1.4. ポートフォリオ評価実践にみる「振り返り」. 日本においてポートフォリオ評価を実践している学校は,どのような 工夫をして「振り返り」を支援しているだろうか。学校の実際の取り組 みを分析し,本研究の授業の視点として生かす。. 表2.1−1 ポートフォリオ評価実践校(小学校)における振り返りの方法 学校名. ポートフォリオの種類 や内容. 振り返りの方法. 振り返り の時期. 出典. 千葉市立 本町小学. 全部の資料を入れる「元 ポートフォリオ」とお気 にいりを選ぶ「凝縮ボー. 凝縮ポートフォリ. 学習の終. 反町京子. オを作成する際. わり. 番 号. ①. 校. (2000). トフオリオ」. ②. 熊本市立 西原小学. 持ち寄った物から自分が 一番得意と思う物を選ぶ. 金井義明. 対話による. (2000). 校. ③. 北海道教 自由学習ノート 育大学附 (子どもの活動の計画・ 属釧路小 修正,活動での思いを書 学校. 自由記述ノートに 記述していくこと. 総合自由 学習の活. で振り返る. 動日. 麻生克彦 (2000). きとめたり,その子の思 いにそって自由に活用す る). ④. 福井県松 学習ファイル(ポートフ 岡町立松 オリオ)として全てを保 岡小学校. 存. 「学び方アイテム」. 1年間の. 松村 聡. の評価規準を設定. 学習結果 の振り返. (2000). し,それに従って振 り返る. ⑤. り. 熊本市立 学習プリント・写真・手 白山小学 紙等全てを「元ポートフ. 発問により振り返. 書川欣也. らせる(教師との対. (2000). 校. 話). オリオ」に入れ,その中 から 「凝縮ポートフォリ オ」として選ぶ. ⑥. ⑦. 宮崎県日 授業中に児童が書いたノ 南市立大 一トや観察記録等は個人 堂津小学 ポートフォリオへ,その. ポートフォリオを 見て自分の重要な 達成事項を確認し. 校. 中でも重要な達成事項が 見られたときはコピーし て別のポートフォリオへ. たり,学習したこと. チャレンジノート. 自己評価 相互評価. 埼玉県越 谷市立越 ケ谷小学. 福井県大 野市立森. わり. 宮元俊行 (2000). を振り返ったりす る時間を設けてい 毎時間の. 曾田敏之. 活動後・. (2000). 学習全体 を通して. 校. ⑧. 単元の終. 自分の学びを自由に表現. ポートフォリオを. したものを収める. オープンにする. 目小学校. 早川き よみ (2000). 一25一.

(31) ⑨. 秋田大学 収集の趣旨,目的,項目 教育文化 を予め決定して入れる 学部附属. 学習の過程で児童 が学習する写真を 撮り,それをポート. フォリオの収集資 料の一部として学. 小学校. 学習の終 末だけで なく,学 習の過程. 佐藤 真 (2000). で. 習を振り返る. 表2.1−2 ポート・フォリオ評価実践校(中学校)における振り返りの方法 番号. 学校名. ポートフォリオの種類. @ ⑩. 福岡教育. 蜉w附属 汢ェ中学. 振り返りの方法. 振り返り. 出典. フ時期. や内容. 保存ポートフォリオ ャ長ポートフォリオ. 対話の時間を設定. Z. ワとめポートフォリオの R種類を用意. 埼玉県杉. 学習活動で得たもの全て. 40時間 フち3時. 岸川 央 i2000). ヤを対話 フじかん ニして位 uづける. ⑪. ヒ町立杉 ロ存. 業終了. ?j. 福井県鯖 追求過程で得た資料は全. ]市立鯖. 2時間の. i学習の記録に記. ヒ中学校 ⑫. 自己評価. ト保存. 反省メモ. 授業の終. │ートフォリオ評. 墲. 田中健寿 i2000). 内藤義弘 i2000). ソ会 小学校では,①⑤⑥のように学習の過程で収集した資料を収めておく ]中学校. ポートフォリオと,そこから観点を定めて選び収めておくポートフォリ. オの2種類作成している学校が見られる。後者のポートフォリオを作成 する際に,学習を振り返り,自分の成長を確認している。特に⑤の白山. 小学校では,対話によって児童のよさを自覚させる発問に工夫が見られ る。. ②⑤⑨⑩の学校のように,ポートフォリオを作成する時に対話を重視 している学校が見られる。⑩の福岡中学校では,「対話により教師の評. 価の視点が徐々に生徒に移行し,自己評価能力を高めることが期待され る」とする。しかし,対話する教師の質や時間的な制約が問題となり, 教師の支援:が一人一人の生徒に行き届かないという点で,改善が必要で. ・26一.

(32) ある。. また④の学校では,振り返る規準を児童とともに考えて設定し,学習 ファイルから規準に即して選ぶことで振り返りを実現している。そして, その規準を児童のプレゼンカとして位置付けている。. 学習を振り返る時期については,学習や単元の途中,学習の終わり等 各学校,昏々である。しかし,学習の終わりにポートフォリオを作成し 振り返るのでは,ポートフォリオ本来の目的であるアセスメントの機能 は生かされない。. そこで,本研究では,学習の過程でポートフォリオを作成する機会を 設定し,生徒が予め設定した規準に従ってポートフォリオを作成するこ とで,振り返りを実現させる。加えて,教師との対話や振り返りカード を用いることで,学習で分かったことや分からなかったこと等の課題を 明確にさせ,今後の学習をよりよいものにしていこうとする手助けをす る。. ポートフォリオを児童一人だけのものにせず,公開している取り組み もある。. ⑥の学校では,児童が作成したポートフォリオを生徒同士交換して感 想や質問等を書かせ討論することで学習が深まったとしている。. 同じように,⑧の学校では,個人で作成したポートフォリオを生徒同 士,保護者等いろいろな人に公開し,その子のポートフォリオに対する 感想や意見,賞賛の言葉等を付箋紙に書いて貼るという取り組みをして いる。そのことで,「誰とでもオープンに接し,自分を躊躇なく表現で きるようになった。」また,「いろいろな人たちのアドバイスや承認・称. 賛・激励を受けたことで,子どもたちが一段と成長し,自信をつけてい った」と報告している。. 一27一.

(33) 第1章で,離島・へき地の問題点として「交流の不足」を挙げ多くの 人との関わりの中で,学習していくことの重要性を記述したが,離島・ へき地の問題点のみを捉えて授業を構築するのではなく,よさも存分に 生かした授業に取り組んでいかなければならない。そのことから,ポー トフォリオを学習に関わる人の中で公開し,他者から承認・称賛・激励 されて学習を進めていくことは,生徒のよさが生かされ,生徒の学習が プラスに成長していくと考える。また,お互いに議論する場や意見を言 い合う場も将来の生き方を現実的に捉えるために必要であり,それらの 機会を通して振り返りを支援し,さらにコミュニケーションを促進させ ることで,振り返りを深めていく工夫をする。. 2.2. 遠隔共同学習における電子ポートフォリオの活用. 2.2.1 電子ポートフォリオとは Helen C. Barrett(2000)は,電子ポートフォリオを次のように定義 している。. 「電子技術の使用を伴い,多くのメディア(オーディオ・ビデオ・グラ. フィック・テキスト)を集めて組織することを可能にし,基準に基づく ポートフォリオに関して言えば,データを組織し証拠を繋ぎ,ゴールま たは基準を充当するハイパーテキストのリンクを使用している。電子ポ ートフォリオは,人口の無計画なコレクションではなく,成長を実証す る振り返りのツールである。」. また,D. Niguidula(1998)は,電子ポートフォリオを「生徒の能力. を評価することを支援し,教師(または他の人)が生徒の技術及び知識 に対する洞察力を獲得することを可能にするように設計されたツール」 「生律が生徒自身で構成・記録し,および振り返りを可能にするユ個の. 一28一.

(34) マルチメディアソフトウェア」としている。. 電子ポートフォリオが注目されるようになったのは次の経緯がある。 ポートフォリオ評価については前述した通りであるが,そのポートフ ォリオの資料全てを,さらに学年が上がるごとにどう扱うかということ が問題であると考えられるようになった。つまり,膨大な紙のポートフ ォリオを整理し格納することに,長い年月を経ることによって煩雑さも 加わってくるということが問題であった。そこで,情報を集めて格納し 組織するための有用なツールとしてコンピュータが注目された。ハード ディスクかCD−ROMにグラフィカルデータ・オーディオ・VTR資料は言う. までもなく生徒の何物ページものテキストデータを置くことは学校に とってみれば魅力的だった。. D.Niguidulaらは,電子ポートフォリオを次の3つの考えで開発を進 めている。. (1)電子ポートフォリオの理想は生徒の作品をみるためのレンズであ るべきである。電子ポートフォリオの主要なメニューは各生徒の学 校のゴールから成り,生徒がポートフォリオの作品を格納する場合,. それらは学校のビジョンのどの部分を実証しているかを示す必要 がある。. (2)生徒の作品は重要・卓越した作品であるにちがいないので,ポー トフォリオを判断する人は生徒の実際の作品を見る必要があるの で,生徒の記述やプレゼンテーションがそのまま示されるようにす る。. (3)生徒のポートフォリオに付加的な情報を加える。つまり,生徒の 内省,教師の評価およびコメント,第三者からのコメントも含まれ るようにする。. 一29一.

(35) これらは,電子ポートフォリオシステムを開発する上で大いに参考に すべき点である。つまり,この電子ポートフォリオを利用するのは教師 のみならず生徒自身であり,規準に従って保存された電子ポートフォリ オに対し,教師や他者がアセスメントできる仕組みを持ったシステムで あることが必要である。. 岡本敏雄(2000)は,図2.2−1のように情報教育の学習モデルを 示し,「総合的な学習の時間」には課題ベースの学習が適しており,そ の学習においてポートフォリオ評価は不可欠であると指摘する。. 状況の認識 課題の発見 一 雛無籔講 」. 情報収集 調査・分析. 、 、. 、. 、. 、、. コラボレーシ・ン 盛≒ン , 総驚. ’ 鍵. 蒸. コラボレーション. ▼、 、. 原理発見・方法 の獲得・知識の. 計画・設計. 再構成. でモデル花とシミュレーション). 知灘有 , 発表・文書化. 問題解決 (制作・実行・実践). 、. 、. 、. 、. . 叢. きミ. リフレクション. 難 ノ ア£!. まや. ノ. ”分散認知. チ 馬 評価・改善. ポートフォリオ. インターネット基盤i. 図2.2−1 情報教育における学習モデル (岡本,2000). 一30一.

(36) そして,コンピュータネットワークの発展によって現実の学校現場で もコンピュータによるポートフォリオが可能になってきたとする。さら に,それは,「リフレクション的思考や自己効用の要素を含んだ自己評 価,他者評価のための情報源である」とし,「協調的グループ作業を有 した学習では,共同の問題解決や調査,制作,実験等の活動でのコミュ ニケーションの過程,学生の様々な方法(考え方)を体系的に蓄積でき るようなポートフォリオの設計が重要である」と述べている。. このことは,ポートフォリオとして保存されたデータが時系列に示さ れ,生徒が自分の学習を振り返る際,生徒の成長のプロセスが可視化で きるようにすることや,他者とのコミュニケーションにおける評価情報. などを体系的に電子ポートフォリオとして保存していくシステムの開 発が大切であることを示唆するものである。. 以上のことから,本研究では電子ポートフォリオを「電子技術により 多くのメディア(静止画・動画・音声・グラフィック・テキスト・各デ ータ等)をポートフォリオとして意味的に関連づけて蓄積しているも の」と捉える。その上で,電子ポートフォリオに振り返りを支援する機 能として,どのような機能が必要かを考える。. 日本の学校現場における電子ポートフォリオの実践について,鈴木敏 恵(2000)は,学習の最後や卒業に際して学習の結果をCD−ROMに残す ことを目的として電子化した例を紹介している。しかし,ポートフォリ オ本来の目的である“学習のアセスメント”という点からポートフォリ オを電子化し活用した実践は日本では少ない。そのうちいくつかを取り あげる。. 後藤康志ら(2000)は,「ネットワークのコミュニケーション機能を. 生かしたデジタルポートフォリオ」を開発している。これは,児童の学 一31一.

(37) 習の過程や成果を共有するシステムであり,その保存された電子ポート フォリオに複数の教師や保護者・外部人材が書き込みができるようにな っている。しかし,そのインターフェイスは単なる掲示板にとどまって おり,コミュニケーションを促進する機能に乏しく,また,「誰の作品 で何の学習での作品かを手動で登録する手間がかかる」と今後の課題を. 記述している。システムは,Microsoft Access2000とActive Server Pageそして, WebサーバーとしてWindows200011Sを使用している。. 石出勉ら(2000)は,「校内イントラを利用した電子ポートフォリオ 作成支援システム」を開発し,グループ内及び,グループ相互で学習の 振り返りや再吟味するための環境を構築している。現在,システムを利 用して,学校現場での実践が始まった所であり,その成果が期待される。. 本研究では,ポートフォリオを公開し,多くの他者との関わりにおい て成長するポートフォリオと位置づけているので,他者とのコミュニケ ーションを促進させる機能を考える必要がある。また,そのコミュニケ ーションがどのように行われているかを可視化することで,生徒や生徒 をとりまく他者が,書き込まれた意見の意図がはっきりわかるように工. 夫する。さらに,生徒が書き込みたくなるようなインターフェイスのデ ザインにも工夫を凝らす。. 2.2.2 電子ポートフォリオと紙ポートフォリオとの比較 現在日本の学校現場では,紙ポートフォリオを用いた実践が広まりつ つあるが,電子ポートフォリオは紙ポートフォリオと比較して,長所短 所の点から「紙ポートフォリオは,年月を経ると劣化するが,電子ポー トフォリオは劣化しない」「紙ポートフォリオは,学習を進めていくう ちに膨大な量になる。持ち運びや保管に関しては電子ポートフォリオの. 一32一.

参照

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