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孔内計測とモニタリング

ドキュメント内 陸上掘削サイエンス・プラン (ページ 75-80)

第 8 章  科学掘削を支える技術

8.2  孔内計測とモニタリング

 

孔内計測においては様々な物理・化学量計測を,地下で in-situ に近い状態で,高精 度に岩石やそこに含まれる流体の物理・化学的なパラメータを計測する. 

空間的なカバーレージは狭いが,孔井において高解像度の連続的測定が可能であ り,柱状試料や地震反射断面

データだけでは得られない情報を提供する. 

   

孔内検層技術には,ワイヤライン,Measurement While  Drilling(MWD), Logging While Drilling(LWD)とモ ニタリングがあり,それぞれ,特徴があり,お互いを補う ように発達してきた. 

<ワイヤライン> 

孔井内に測定装置をケーブルを用いて下ろし,そのまわ りの物性値等の物理量を連続的に孔井深度に沿って測定 する. 

(1)Nuclear 検層 

放射線の原子核による散乱や吸収によって,地層内の孔 隙率,岩石の密度,岩石の成分(種類)を測定する目的 で用いられる手法が Nuclear 検層である.測定は放射線源 を用いて特定の原子核を対象にする方法と,自然に存在す る放射線のスペクトラムを用いて原子核の同定をする方 法とに分かれる. 

(2)音波検層 

ダイポール検層の出現により飛躍的に測定範囲の広が った音波検層は,孔隙率の予測,地震波探査によって得ら れる速度構造との対比,および地層の弾性力学的性質の測 定に不可欠となった.その後,コンピュータやシミュレー ション技術の発達に伴い,孔井内音響の物理現象が明らか

になってきており,それまでは解析することが出来なかっ た分散型の波からの情報も地層評価に利用されるように なった.その結果,地層速度の異方性に伴う亀裂の様子や 本来あるがままの(又は削井による)応力の影響,岩石強 度・ダメージ,地層中の液体・ガス比,浸透率,等々,様々 な物性情報を得ることが出来る.また,反射波イメージン グを単抗井で出来る音波検層もあり,地震探査や VSP で は捕らえることの出来ない詳細なイメージングが特徴で ある. 

(3)VSP(Vertical Seismic Profiling:  孔井地震探査法) 

近年の VSP 検層器は 3 成分地震計を受信機とし,それ をアレー状に数個から数十個孔井内に設置して,受信機を 固定して震源位置を広範囲に変えるウォークアウエイ,震 源位置を孔井上部から一定の距離をおくオフセット VSP,

震源を設置せず地層内部から発生する音波を観測するモ ニタリング等の測定がなされている.特徴的な点は,孔井 へのカップリング(高周波測定)の安定性向上,無線通信 による震源位置の同時記録,測定点間の移動時間の短縮等 を基盤として,測定前のモデリングを用いたサーベイデザ インから測定,リアルタイム・クオリティーコントロール,

解析への一連の流れが把握できるようになっていること である.地上・海上地震探査との同時 3 次元計測など大規

模のサーベイも報告されている. 

(4)厳環境下検層 

近年,掘削コストの削減,大深度孔井の必要性,又は削 井技術の向上(サイドトラックやコイルド・チュービン グ)により,これまでより厳しい環境下での検層が要求 されている.それによって,緩傾斜井内,高温・高圧力下,

又は小口径の孔井内での検層技術が近年使われ始めた. 

a.緩傾斜 

ワイヤライン検層とは,機材をその自重によって目標深 度まで降下させ,検層ケーブルを引き上げながら連続測定 する検層手法の総称である.井戸の傾斜がゆるくなれば,

自重での降下が困難になり,重力の代わりに何らかの力で 検層ツールを孔井に押し入れなくてはいけなくなる.その ために考案された方法が TLC(Tough Logging Condition)

である.これは,ドリルパイプの先端に検層機材を接続 し,ドリルパイプによって押し入れる方法である.この方 法によって水平孔でもワイヤライン検層が可能となった.

近年では,孔内圧力の高い場合,ガスキックの可能性の ある場合,又は有害なガスの存在する掘削井などでは,ド リルパイプの代わりに,地上での圧力コントロールが可能 なコイルド・チュービングによって押し入れることもされ ている. 

b.小口径 

検層機の径は石油の分野ではこれまで 4 インチ程度が 主流であった.しかし,より小口径の孔井内での測定要求 により,2 インチ半程度で基本的な測定が出来る検層器が 開発されており,小口径の孔井で使われ始めている.セン サーの感度は通常その大きさに大きく依存するので,この 機器の出現はセンサーやそのパッケージ技術の進歩無く してはありえなかった.検層機の小口径化に伴い,孔井の 屈曲半径のより小さなものにも対応できるようになった. 

c.高温・高圧 

高精度の測定が要求されるに伴い,高性能電子回路やマ イクロコンピュータの検層器への導入は不可欠である.そ れと相反して,高温環境下で高性能半導体を動作させる事 が近年の技術への挑戦であった.熱管理・デザイン及び素 子開発によって,今まで動作環境温度が 180  ℃程度であ った検層種目が,250  ℃でも同等の精度で測定できるよう になった.圧力への挑戦は,バルクヘッド設計や応力予測

技術の発展により,いままで 1400 気圧程度(140  MPa,

深さ約 5 km に相当する)の動作環境であったものが,1800 気圧程度(140 MPa,深さ約 7 km に相当する)まで可能 となっている. 

(5)地層流体検層 

地 層 流 体 の 圧 力 値 ・ 浸 透 率 の 測 定 な ど は Formation-Tester と呼ばれる検層機器によって行われる.

近年は,地層状況に合わせていろいろな検層機材(モジュ ール)を組み合わせ,最適な検層がデザインできるように なった.たとえば,低浸透性や亀裂性の地層に対しては dual パッカーを用いた検層を実施し,ケーシングがすでに 入っている状況ではそれに穿孔を開けて測定する手法を 適用することが可能である.又同時に,地下での流体の識 別について,従来は圧力勾配や比抵抗によるものが主流で あったものが,現在では光の吸収特性を利用した分光分析 を用いて,より正確な流体の識別が可能である.これによ って,地層流体の存在が確認された段階でのサンプル回収 が容易になった.現在では,油の種類(heavy,light,

condensation 等)や,二酸化炭素,メタン,エタン等地 層含有ガスの識別も可能となった. 

ケーシング越しに地層の飽和率,GOR(Gas Oil Ratio),

GWR(Gas Water Ratio)等の変化を測定する手法として,

地層内の各元素と中性子との反応を利用した検層が利用 されてきている.従来は孔隙率・飽和率や塩分濃度の測定 が主体であったが,測定に使用される放射線源(ミニトロ ン)の強度を正確に維持できる技術の開発によって,地層 内の各元素の量を正確に把握することが可能になった. 

(6)核磁気共鳴検層 

核磁気共鳴測定装置は,医療や物理・化学の分野で広く 用いられてきた手法であるが,その測定の複雑さから長い 間検層機器での利用は困難であった.近年になって,測定 技術の発達と共に可能となった核磁気共鳴検層は,現在で も最も新しい物理現象を用いた検層技術とされている.こ こでは特徴的な測定原理も記述する. 

核磁気共鳴を利用した検層への応用は,地層中の石油や 水の分子に共通に数多く存在する水素の原子核(陽子)を 対象にして始められた.核磁気共鳴検層器では,強力な永 久磁石で地層中に磁場を与え,アンテナによってその磁場 中の水素原子核に特有のラーモア周波数を与え核磁気共 鳴を起こし,その強度と緩和を測定している.この緩和を

測定することによって,孔隙中の液体の運動出来得る範囲 やその動きやすさに関連した物理量を観測できる.またシ グナルの強度は孔隙内に存在する油や水分子(その中の水 素原子核の陽子)の数に比例するが,粘土内などに存在す る水分子は,非常に強く束縛されているので,シグナル強 度には寄与しない.一方,中性子検層による孔隙率の測定 では,中性子線源を用いて水素原子核の陽子の弾性散乱を 観測することにより,束縛された水素原子核の陽子も含め て,全孔隙率(全プロトン量)を測定している.すなわち 核磁気共鳴検層では,放射線源を用いず,直接移動可能な 流体の孔隙率や孔隙サイズ,また間接的にその液体の移動 のしやすさ(自由流体孔隙率,浸透率)などが測定できる. 

以上のように,核磁気共鳴検層は,地層中液体の総体積 やその動きやすさ等,従来の検層では解釈が困難であった 分野に新しい解釈をもたらすものとなっている.近年では,

この手法は石油探査への応用のみならず,メタンハイドレ ートの飽和状況や成長の様子の把握など多岐にわたって 使用されている. 

(7)温度検層 

温度測定は科学掘削では重要な項目である.目的として は 

・  温度異常検出による破砕帯,流体移動の検出 

・  地層平衡温度の推定 

がある.温度異常検出による破砕帯,流体移動の検出につ いては近年その重要性が再認識されつつあり,精度・分解 能の高いセンサーによる多点観測技術が開発されつつあ る.地層平衡温度推定には掘削後の温度回復から平衡温度 を推定する方法と掘削後長期間待ち平衡に達した段階で 測定する方法がある. 

 

<MWD/LWD> 

孔 井 の 掘 削 中 に お け る 同 時 測 定 は MWD

(Measurement  While  Drilling) 及び LWD (Logging  While  Drilling)と呼ばれるが,その概略的な区別は次の とおりである.MWD は孔井内圧力・温度・孔井の 3 次元 的空間における孔井の方向など,主に傾斜井や水平井の掘 削に必要な測定技術を主眼にし,その装置には,発電機・

測定データのメモリー・測定データを地上に上げるための データ転送装置が含まれる.データ転送の方式は装置によ って違いがあるが,概ね孔井内の泥水を利用した圧力パル スによる.LWD は地層の電気的比抵抗,空隙率,音響的

性質などを求める,いわゆる「検層」測定技術である.独 自のメモリーを持ち,通常 MWD と組み合わせて使用され る.掘削中は遠隔測定によってデータを地上でモニターで きるが,データ転送レートが低いため得られる情報は限ら れている.そのため,揚管後にメモリーから全データを回 収した後に,データ処理を行う.1980 年代半ばに,MWD に比抵抗(ノルマル)センサーをつけて,簡単な地層の対 比に利用したことから始まった LWD は 1980 年代終わり に は CDR ( Compensated  Dual  Resistivity ), CDN

(Compensated  Density  Neutron)へと発展し,孔隙率 や水飽和率の計算に必要な最低限の測定項目が出揃うこ とになる.LWD では測定可能な比抵抗が 50  Ωm 以下で あること,深度に沿った分解能(vertical  resolution)が 低いことなどから,そのまま高度なワイヤライン検層に置 き換えるというものではなかったが,主な使用目的は地質 構造や層位と近傍の孔井との対比といった基礎的な地層 評価であった.そもそも掘削同時測定のメリットは,いか に掘削にかかる総コストを下げることに寄与できるか,と いうことに深く関係する.勿論,掘削時に測定することに よって,泥水の地層への浸透が始まる前に測定ができると いうユニークなメリットもあるが,LWD の最大のメリッ トは掘削総コスト削減である.その後の技術改良,技術革 新は単に測定精度を上げるというよりも,掘削総コスト削 減を主軸として進んできた.初期の改良項目の例をあげる. 

LWD のツールは,ドリルカラーに格納されているた めに,どうしても管内の泥水の通る断面積を制限していた.

そのため改良の第一段は,少しずつ径の大きなカラーに置 き換えて,時間あたりの泥水の流量を確保するということ がなされた.他にも,中性子検層用の検出器として当初使 用されていた GM(Geiger-Müller)管から,それより壊れ やすいとされていたが性能の優れている 3He 検出器の搭 載が可能になり,掘削速度が早くても検層精度が保てるよ うになった.一方遠隔測定データ転送では,エラー発生率 を減らす改良により,S/N 比を上げつつ実効通信速度の向 上がはかられた. 

1990 年代半ばになると,緩傾斜井・水平井・マルチラ テラル井などが出てきて,LWD もそのような孔井の掘削 の効率化に向けて発展することになる.技術発展のひとつ は,そのような井戸で,ワイヤラインツールスを降下する ことなく地層評価が出来るような検層の精度向上である.

もうひとつは,これら難易度の高い孔井を掘削しながら,

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