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メタンハイドレート

ドキュメント内 陸上掘削サイエンス・プラン (ページ 46-49)

第 5 章  地下生物圏とメタンハイドレート

5.2  メタンハイドレート

地下生物圏はわれわれの生活と無関係ではない.エネルギーおよび環境問題で近年 重要性を増しているメタンハイドレートの成因にも,埋積有機物由来のものとサバ チエ反応由来のものがあり,それぞれに関わる生物過程はまだ十分に理解できてい ない. 

天然ガスハイドレート(メタンハイドレート)は永久凍土層に伴う極北陸域のみな らず,大陸周辺海域の深海底下に広範に存在する. 

日本周辺海域における広域地震探査の結果,日高・十勝沖,道南西部沖,西津軽沖,

鹿島灘沖のほか南海トラフなどにおいて,メタンハイドレートの存在を示唆する徴 候や地震波反射記録 BSR が広い範囲で観測された. 

マリック(カナダ)および南海トラフ地域における研究と調査によって,地下状態 のメタンハイドレートの産状は,砂層中の細粒ではあるが連続性が良好な孔隙充填 型ハイドレートを主体とし,将来の天然ガス資源として有望性が示唆された. 

今後,南海トラフまたはマリック地域において,メタンハイドレートの高飽和率達 成のためのメタンと間隙水の濃集メカニズムや孔隙充填型ハイドレート産状の成 因などを解明し,地下状態の地層中でのメタンハイドレート分解挙動と効率的生産 手法を検討する

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メタンハイドレートは,水分子が造る篭空間にメタン 分子が効率良く格納されている氷のような固体物質で,低 温高圧で安定であることが特徴である.ガスの種類に応じ てメタンハイドレート,二酸化炭素ハイドレートなどと呼

称するが,総称してガスハイドレートと呼ばれる.天然の ガスハイドレートは,1967 年にシベリアのメソヤハガス 田の凍土地帯において初めて発見され,その後相次いでカ ナダとアラスカ陸域のみならず大陸周辺海域の深海底下

からもその分布が報告されるようになった.わが国におい ても広域地震探査の結果,北海道周辺の日高・十勝沖,道 南西部沖,西津軽沖,鹿島灘沖のほか南海トラフなどの海 域において,ガスハイドレートの存在を示唆する徴候や地 震波反射記録 BSR(Bottom Simulating Reflector)が広 い範囲で観測されている. 

近年,地質学的・地球物理学的研究をはじめ,ODP な ど数多くのガスハイドレートをターゲットとした陸上お よび海底の掘削によって,天然ガスハイドレートを含む堆 積物試料が回収されている.これらの観察や分析結果から,

天然ガスハイドレートは極北陸域の永久凍土層に伴うも ののみならず,大陸周辺海域の深海底下に広範に賦存する ことがわかってきた.世界中に存在するガスハイドレート 中のメタンは,在来型・非在来型炭化水素資源(石油・天 然ガス)および石炭の約 2 倍に相当する資源量を有する と推定されている.このため,世界的に将来のエネルギー 資源としてのガスハイドレートへの関心が高まるととも に,地球の温室効果の一因として,または地史における炭 素循環の役割の一端を担ってきたガスハイドレートに興 味が集まっている. 

1995 年度から石油公団(現石油天然ガス・金属鉱物資 源機構)を中心とする 5 ヵ年計画の共同研究「メタンハ イドレート開発技術」が行われ,カナダ北極におけるメタ

ンハイドレート実証井掘削(1998 年)をはじめ,国の第 8 次基礎調査として東海沖南海トラフ地域における基礎 物理探査(1997 年)と基礎試錐「南海トラフ」掘削(2000 年)が実施された. 

石油公団はカナダ地質調査所/米国地質調査所と共同 で,永久凍土層下にガスハイドレートが賦存することが知 られているカナダ北極のマッケンジー河デルタ地域にお いて,メタンハイドレート実証井 Mallik(マリック)2L ‒  38 掘削プロジェクトを実施した.その結果,深度 886  ‒  952  m における細〜粗粒砂層に孔隙充填型ハイドレート

(pore‒space hydrate; 砂相粒子間孔隙を充填する)が確 認された.砂層は細粒ながら連続性が非常に良く,孔隙中 飽和率は最大で 80 %以上ときわめて高いことがわかった. 

ICDPなどの資金援助による国際共同研究「マリック 生産調査井プログラム」では,2001 年 12 月末から 2002 年 3 月中旬に同地域において再度 2 本の観測井と 1 本の 生産調査井を深度 1166 m まで掘削し,深度約 900 ‒ 1110  m においてガスハイドレート卓越層を把握した.Mallik  2L ‒ 38(1998 年)および基礎試錐「南海トラフ」(2000 年)に引き続くこれらの掘削により,地下状態の天然ガス ハイドレートの産状は,細粒ではあるが連続性が良好な孔 隙充填型ハイドレートを主体とすることが確認された. 

マリック生産調査井プログラムでは,高品質なガスハ  

図 5.2  メタンハイドレート資源開発の概念. 

イドレート含有コア試料を大量に回収することができ,さ らに生産試験によってガスハイドレート層からの出ガス に成功した.コア試料の地質学・地化学的分析のほか物 理検層・トモグラフィー解析および生産試験結果から,

永久凍土層下におけるガスハイドレートの分布と産状,分 解挙動などが詳細に解明され,それらの研究成果はカナダ 地質調査所報告(GSC Bulletin,2005)#585 として発刊 されている. 

これらの研究と調査によって,ガスハイドレートを含 む堆積物試料と良質の物理検層データが取得でき,地下状 態でのガスハイドレート分布や物理化学的特性が明らか になった.ガスハイドレートに包接(含有)されるメタン は,南海トラフ地域では微生物分解起源を,またマリック 地域では熱分解起源を主体とする. 

南海トラフやマリック地域などで報告された孔隙充填 型ハイドレートは,上述したように微細ながらきわめて連 続性が良く,また高い飽和率をもつことが特徴であるが,

地下状態でも温度上昇や圧力降下などが起こってガスハ イドレートが安定領域からはずれると,容易にかつ連続的 に分解が進むと考えられる.また,このような産状は特異 なものではなく,南海トラフ地域でも同様な産状が確認さ れたことは注目に値し,孔隙充填型ハイドレートが陸域や 海域にかかわらず分布する産状であることを示唆すると

ともに,将来の天然ガス資源としての有望性が期待される. 

現在,天然ガスハイドレートについて以下のような課 題が残されており,科学掘削による解明が待たれている. 

(1)メタンハイドレートの高飽和率達成のためのメタン と間隙水の濃集メカニズム 

(2)微生物起源メタンの生成要因と生成速度 

(3)孔隙充填型ハイドレート産状の成因,生成律速要因,

生成時期,生成場所 

(4)ガスハイドレート分布層準の上下限の確認と発現要 因,地震探査レスポンス 

(5)地下状態の地層中でのガスハイドレート分解挙動の 解明と効率的生産手法の開発 

陸上科学掘削による天然資源分野に関連する提案とし て,ガスハイドレートのほか地熱,石炭,鉱物,地下水な どの資源が考えられる.ガスハイドレートに関しては,上 記の(1),(4)および(5)を解明するために SAGD 法

(steam assisted gravity drainage; カナダアルバータ州 Hangingstone におけるオイルシェール/オイルサンドの 生産手法)を応用した複数の水平坑井掘削によるガスハイ ドレート生産試験が挙げられる.エネルギー資源に乏しい 我が国において,日本周辺海域にも多量に賦存する可能性 を秘めるガスハイドレートへの期待は大きい. 

 

 

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