まず、各授業直後の児童の意識を調査した質問紙Cの結果から、努力に 関する質問項目「今日の理科の授業は、いっしょうけんめいした。」、理解 に関する質問項目「今日の理科の授業は、よくわかった。」、自己効力に関 する具体的な質問項目「つきの理科の授業で、自分は学習する内容を理解 できそうだ。」「つぎの理科の授業で、自分はいろいろと工夫ができそう だ。」「つきの理科の授業で、自分は、新しい発見ができそうだ。」につい ての測定値を抽出した。
つきに全児童・全授業にわたって、児童一人ひとりの自己効力の平均値 を理解と努力のマトリックスで、一つの表にまとめた。
その結果が表13である。
ただし、「まったくそう思う」が6点、「かなりそう思う」が5点、「や やそう思う」が4点、「ややそうは思わない」が3点、「かなりそうは思わ ない」が2点、「まったくそうは思わない」が1点とした。(以下同じ)な お3点以下は人数が少なかったのでひとまとめにした。
表13 授業直後の意識からみた努力、理解、自己効力の関連
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6 5 4 3以下
6 のべ人数 57
灘 自己効力
97一 一 一 一 一 一 一 一
@5.05 一 4.60 一 一 R.75
2一 一 『 一 一 一 一 一
@4.17
5 のべ入数 103 42 8
一 一 一 一 一 一 一 一
ゥ己効力
40一 一 一 一 } 一 一 一
@4.48
一 一 一 一 一
@4.34 3.98
一 一 一 一 一 一 一 一
@3.33
理科の授業を「一生懸命した。」そして「よくわかった。」という気持ち が強いほど、自己効力が高い傾向があると思われる。このことから、「一 生懸命した。」と自分の努力を認識し、その結果学習内容が「よくわかっ た。」と思っている児童ほど高い自己効力を感じていると考えられる。
ただし、もともと自己効力が高かったために一生懸命したとも解釈可能 であるが、いずれにしても努力の実感と理解の実感と自己効力の間には相 互に関連があることはいえそうである。
5e 予備授業実践のまとめ
予備授業実践の結果をまとめると、以下のようになる。
①教師の言葉による努力帰属的な考え方のはたらきかけの、理科の自己効 力を高めることに対する有効性を認めることはできなかった。ただし、
児童の努力の実感と理解の実感、自己効力の問には相互に関連がありそ
うである。
②教師の言葉による理科の価値観のはたらきかけの、理科の学習意欲を高 めることに対する有効性も認めることができなかった。
③理科の自己効力と学習意欲および価値観と学習意欲との問にそれぞれ 相関が認められた。加えて、理科の自己効力の変化と学習意欲の変化お よび価値観の変化と学習意欲の変化の間にもそれぞれ連関が認められた ことから、それらの間には関連性があることが検証された。
なお、授業分析方法の一つであるS−T法45によるS−Tグラフに、実
際のはたらきかけを書き込んだものを巻末資料5に示す。
第3節 本授業実践
1. 予備授業実践からの改善点
本授業実践にあたり、次の3点を改めた。
①教師の言葉だけでなく、後述する意識化定着カードによるはたらきかけ
も行った。
②自己向上が本人にとって価値のあるものであるようにするため46に、努 力帰属的な考え方と理科に対する価値観の両方をはたらきかける実験群
を設定した。
③外陣を等質に近くするため、学級編成から2ヶ月を経ない学年で本授業 実践を行った。
意識化定着カードについて
予備授業実践で教師の言葉によるはたらきかけで自己効力を高めるこ とは難しいことが明らかとなったため、言葉以外のはたらきかけとして意 識化定着カードと名付けたものを考案した。これは、子どもへのフィード バックをなるべく『権威ある』大人からではなく、ほかの情報源から与え られるようにする47ためのもので、予備授業実践で使用した各授業直後の 児童の意識を把握するための調査用紙「質問紙C」を改訂して用いた。詳
しくは、7.はたらきかけの方法と具体的内容で述べる。
2. 本授業実践の目的
本授業実践の目的は、次の3点である。
①理科の自己効力を高めることに対し、努力帰属的な考え方を教師の言葉
と意識化定着カードによりはたらきかける有効性を明らかにする。
②理科の自己効力を高めることに対し、努力帰属的な考え方と理科の価値 観を教師の言葉と意識化定着カードにより同時にはたらきかける有効 性を明らかにする。
③理科の自己効力と理科の学習意欲との関連性を、本授業実践の学年でも 検証する。
3. 対象及び時期
本授業実践の対象及び時期を下に示す。
対象 大阪府内の公立小学校3年生3学級78名 時期 平成7年6月上旬〜中旬
授業実践校では、3年生が4月に新学級の編成をしたということと統制 群と二つの実験群に設定できる3学級があるという両方の条件を満たし ていた。理科という教科は3年生になってからの経験しかないが、4月か
らの2ヶ月間で「理科」に対するイメージは出来ていると考えた。
4. 本授業実践に伴う調査の実施
予備授業実践同様、本授業実践でも、それに伴う質問紙による調査を実
施した。
質問紙A(理科に対する学習意欲を測定するための質問紙)および質問 紙B(理科に対する自己効力・価値観を測定するための質問紙)の調査時 期は、次のとおりである。
・本授業実践前 平成7年5月下旬 ・本授業実践後 平成7年6月中旬
なおA・Bの両質問紙とも学級担任が実施し、所要時間は各15分程度 であった。また回答は、対象者の自己評定による。
なお前述したように、予備授業実践で用いた各授業直後の児童の意識を
把i幽するための調査用紙「質問紙C」は、本授業実践では改訂を加えて意
識化定着カードとしてはたらきかけのために用いたため、詳細について は、7.はたらきかけの方法と具体的内容で述べる。
5. 指導計画
本授業実践を行う単元である3年「空気や水と力」(全9時間)を取り上 げ、その指導計画案を下のように立案した。
第1次 第2次 第3次 第4次
空気集め…(2時間)
空気や水を圧したとき…(2時間)
空気や水で物を動かす…(4時間)
空気を閉じこめて使っているもの…(1時間)
この指導計画案は、市販の実験セットも使用しているが、基本的には教 科書48の流れにそったもの(表14)であり、指導も一般的な一斉授業の形 態である。それは予備授業実践でも述べたように、本研究の主旨が、普段 行われているごく普通の授業を展開しながら、児童の自己効力を高めるた めの教師の手だてを探ることにあるからである。
なお本授業実践も、次項で述べるように統制群と二つの実験群の3学級
で行ったが、どの群も同じ指導者が同じ指導案で指導した。
表14 指導の目標と学習の展開 第1次一第1時
・目標 空気を閉じこめた袋での遊びを通して、空気を閉じこめた袋に力を加えると、
手応えや弾力があることに気づくようにする。
・展開
学習の流れと児童の活動
1.空気はあつめることができるだろうか。
・袋になら集められる。
・風船やボートにも空気を入れたりす る。
2.どうずれば、空気をたくさん集めること ができるだろう。
・走れば、袋はいっぱい膨らむ。
・扇風機を使ったらいい。
援 助・留 意 点 等
・今までに空気を集めたと思うような経験 を出し合って、空気の存在を意識させ
る。
袋に集めた空気で、どんな遊びができるだろう。
3.集めた空気で、いろんな活動をしよう。
どんな遊びをしたいかな。
・手や体で押し合いっこ。
・ポンポンと手で突きあう。
・バレーボール遊び。
・クヅションやマット作り。
・水の中に入れて、泡にする。
4.自分たちで考えた遊びをしよう。
・空気が多く入っているほうがよく弾
?tro
・バレーボールのように突くことができ た。
・袋の上にうまく乗れた。
5.集めた空気でどんな遊びをしたか発表し よう。
・手で圧しつけるとふわふわするが、強
ドキュメント内
小学生の理科学習における自己効力に関する研究
(ページ 48-53)