4.5.1 応用化学科の教育目標
応用化学科は、この数年間、従来からの応用化学科の基幹科目に加え、化学と生物の融合した有機化学、無 機化学、分析化学、生物化学、生物工学、およびそれらの周辺分野の諸科目の充実を図り、その教育を実践す ることによって応用化学科の特徴を引き出すとともに、卒業研究においても、従来の応用化学の基盤研究とと もに、生物化学、生物工学関連分野の研究にも精力的に取り組むことによって、幅広い化学知識を習得した人 材を社会に送り出してきた。すなわち、現代社会においてバイオテクノロジーが定着した今日、応用化学科 は、化学と生物が融合した視点に立ち、幅広く化学を見つめることの重要性を強調する試みを実施し、化学と 生物の境界領域を反応化学的かつ合成化学的に見つめ、化学を人間社会の生活向上に役立つ学問分野として理 解し、さらに、そのために化学を活用することのできる技術者、研究者を育成することを教育目標としている。
4.5.2 応用化学科のカリキュラムと指導の特色
応用化学科は、幅広い分野において活躍できる化学技術者、研究者、あるいは化学の知識を持って他の分野 を見ることのできる社会人の育成を目的として、きめの細かい学習指導を行っている。まず、1、2 年次では 化学の土台となる基礎知識、基礎技術の習得のために、分析化学、無機化学、有機化学、物理化学、生物化学 の基礎理論を必修として学び、さらに、化学実験を安全かつ正確に行うための基礎実験科目の充実を図り、徹 底した化学実験の基礎技術の習得のために十分な時間をとっている。すなわち、1年次の応用化学基礎実験Ⅰ、
Ⅱでは、化学のすべての分野に共通する実験技術の基礎を習得し、その技術を基礎として、2年次では分析化 学実験、有機化学実験、物理化学実験、および生物化学実験によって、より高度な実験技術の習得と、それら の分野の基礎理論の実験を通しての理解を深めるための教育を実施している。また、3年次以降の専門科目の 習得に、その基礎知識として必要と考えられる生物学Ⅰ、Ⅱも2年次までに学ぶようになっている。そして3 年次では、化学およびその周辺分野のより専門的な知識、技術を学ぶ。したがって、3年次科目には実際の化 学工業、生物化学工業における今日的な話題、課題等を、その理論から学ぶ科目が数多く配置され、さらに、
応用化学実験Ⅰ〜Ⅳにおいて、より高度な実験技術を学び、4年次の卒業論文研究に備える。そして4年次で は、学生は応用化学科の各研究室の何れかに配属され、現代社会において必要とされる先端的な化学研究に参 加し、その結果を卒業論文としてまとめる。こうして、自分で考え、実験によって確かめ、それを正確に報告 する能力を持った、実社会に役立つ人材が育成される。応用化学科はさまざまな業種と結びついており、卒業 後の進路も多分野に広がっている。さらに応用化学科の教育面での特徴として、応用化学特別講座がある。こ の講座は、本学科の卒業生を講師として招き、社会での活躍ぶりやそこに至るまでの経緯などを講演していた だくもので、学生にとっては将来の進路を身近に考える良い機会になるとともに、学習意欲の向上にも役立っ ている。また、応用化学科は中学、高校の理科の教員免除を取得できる数少ない学科でもあり、これも大きな 特徴の一つと言える。
2001−2002年度においては、応用化学科は、生物化学、生物工学分野の教育、研究の拡充、充実を積極的 に進め、従来の応用化学科のイメージの一新に勤めてきた。各研究室の研究テーマも、1)生体内酵素を模倣し た新しい触媒の開発、2) 酵素の新機能の解明とその応用、3) 快適な生活環境を監視するための環境分析シス テムの構築、4) 生物細胞による有用物質の生産、および環境汚染物質の除去、5) 新機能性無機材料の開発、
等々となっており、生物化学色が強く出ている。今後は、そうした応用化学科の特徴を積極的に外部に発信 し、社会の、そして受験生の期待に応えたいと考えている。
4.5.3 環境化学工学科
4.5.3.1 環境化学工学科の教育目標
人類は、動力機械の発明を端緒として始まった産業革命において生産技術に画期的な変革をもたらした。そ の結果社会・経済のあらゆる面に影響を及ぼし、日常生活を快適なものへと導いた。現在進行中の新産業革命 は、科学技術、経済市場、情報通信の3つの変革によってもたらされるものと考えられている。
この科学技術は、化学、量子力学(数学、物理学)、分子生物学の3分野の基礎科学に立脚している。これ らは相互に深い関わりをもっており、全く独立な分野というのはないといっても過言ではない。なかでも化学 工学は、化学を主とするプロセスの総合工学といわれている。つまり、物質やエネルギーの変換のために化学 を基礎として、物質の化学的および物理的な諸性質の理解のうえに、反応・分離・精製装置の設計と制御技術 の開発を行なうとともに、それらのシステムとしての複合化を図ることに化学工学の特徴がある。物質の変換 を例とすれば、試験管の中で、どんなに素晴らしい新物質ができても、それを必要とする多くの人達の手にわ たるためには、もっと効率よく、もっと安全に作る方法を開発する必要がある。これを実現するのが化学工学
教育 63
工学院大学の現状と課題 2001 − 2002 年度
である。すなわち、新しい物質を開発する化学の部分と、それをシステムとしてまとめあげる工学の部分から 成り立っているのが化学工学といえる。化学工学では"プロセス"と"物質(材料)"が2本の柱であるが、こ れらは不可分の関係にある。すなわち、有用な物質を生産するという目的のないプロセスはナンセンスであ り、優れたプロセスなくして有用な物質を生産することは不可能である。
最近では、それに加えて、環境、安全、資源、さらには経済や社会までをも総合的に考える学問体系に発展 している。たとえ有用な物質が大量に得られるにしても、その生産や使用の過程で二酸化炭素や酸性雨など"
環境"を汚染する有害な副産物を大量に生成する、あるいは使用後の物質が有害であるということでは、トー
タルシステムとして"よい工学"とは言えない。そこで、"プロセス"、"物質"、"環境"の調和のとれたシス テム化を行うという"環境化学工学的手法"が重要な役割を果たすと期待され、調和の取れた技術者を育成す ることを目的としている。
4.5.3.2 環境化学工学科のカリキュラムと指導の特色
1年次から4年次までのカリキュラムは以下のように構成されている。
まず、1〜2年次での専門基礎科目(専門の必修科目や選択科目)や実験科目の履修を通じて環境化学工学 の基礎的な素養を養う。引続き、2年後期と3年次に専門科目(必修科目や選択必修科目などの科目、および 専門選択科目)と専門分野の演習科目を履修することになる。
3年次までの内容は、環境保全を前提とする省資源・省エネルギー型プロセスを設計・操作できるようにな るための準備といえよう。1、2 年次の専門基礎科目で、物質の様々な性質を理解し、その上で物質やエネル ギーの収支、化学物質の平衡、化学反応の速度について基本概念を学ぶ。専門科目では、これらの概念に基づ いて、運動量・物質・熱などの移動現象、反応装置内での化学反応、物質の分離操作、化学プロセスの制御法 などの各分野を学ぶ。さらに化学プラントや半導体製造装置などの現実の対象がそうであるように、システム として取り扱うことを修得する。これらを学ぶ過程で、地球環境、バイオテクノロジー、エネルギーなどに関 係する新しい問題の解決のための基礎を学ぶことができる。
同時に専門科目は、環境に配慮した無機、金属、および高分子材料などの開発を学ぶための材料科学を修得 できるように意図されている。材料の構造・物性に関する知識と同時に、材料のもつ機能を効率的かつ安定的 に発現させるために必要なプロセス・テクノロジーに関する知識体系を身につけることが可能となっている。
さらに、材料リサイクルなどのプロセス的な視点をもった材料開発の基礎を学ぶことができる。今ひとつの特 長は、環境化学工学科研究室担当者による環境化学工学セミナーが開設されていることである。これは、4年 次の卒業論文の準備段階として、3年次にミニ卒業研究を行い、十分な予備知識に基づいて卒業論文のテーマ の選択が行なえるように配慮されている。
4年次には、いよいよ卒業論文に入るが、そこでは分離システムエ学、化学プロセスエ学、反応工学、エネ ルギー化学工学、電気化学工学、化学プロセス環境学、大気環境工学ならびに資源リサイクルエ学の研究を行 なっている研究室のいずれかに所属し、基礎的な分野から最先端の分野にわたる種々の研究テーマでの卒業研 究を1年間かけて実施する。卒論生は研究の成果を学科内の発表会で一人一人発表し、質疑応答を行う。発表 の仕方や卒業論文の書き方などの指導を受けて、社会に巣立つ準備をすること
4.5.4 マテリアル科学科
4.5.4.1 マテリアル科学科の教育目標
マテリアル(物質、素材、材料)は、様々な素材を組み合わせて、パソコン、携帯電話、自動車、冷蔵庫な ど様々な製品として私たちの豊かな生活を支えている。21世紀の社会を支えるものは"情報・エネルギー・材
料"であると言われているように、優れたマテリアルなしには、情報技術革命も新エネルギーの供給もありえ
ない。新しい世紀には、地球環境への負荷が小さくリサイクルのしやすい環境調和材料、高度技術を支える高 機能性材料、高齢化社会を支える医療・福祉材料などが必要とされる。こうした材料の開発には、原子・分子 レベルで物質の創製から評価、利用、リサイクル、廃棄までを一貫して考えることのできる技術者が不可欠で ある。
本学科では、この社会的要求に応えるために、
1. 科学(サイエンス)と技術(テクノロジー)の両面からのマテリアルの教育
2. 高分子材料、セラミック材料、金属材料の3大材料すべてに通ずる教育(他大学のマテリアルは金属材料 中心)
3. 原子・分子のレベルから物質を考えることのできるように、化学に基礎を置いた教育
4. 広い人間的・社会的視野をもち、健全で総合的な判断力をもった技術者を育成することを目指している