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今後の課題

ドキュメント内 組織能力の独自性 -成長企業3社の事例- (ページ 149-160)

7. 研究成果と今後の課題

7.3 今後の課題

本稿では、これまでのところで、組織能力の研究において本稿での目的を達成し、組織 能力論をわずかながらであるが進展させるように努力してきた。しかし、今後取り組むべ き課題がいくつかある。まず初めに、組織能力構築について詳細な研究が必要であること である。次に、オープン経営であるが模倣困難であるという一見矛盾ともいえる状態を解 明すること、そして最後に、実務で使用可能な組織能力モデルを構築することが、今後取 り組むべき課題である。

(1)組織能力構築についての研究

本稿では3社のそれぞれの組織能力を研究してきた。しかしこの研究を開始した際には、

これらの能力はすでに構築されていたものである。3社の2次情報を収集することで、どの ような能力であるかはある程度まで把握することができたが、これらの組織能力がどのよ うな過程を経て構築されたのかはほとんど把握することができなかった。3社は独自性の高 い組織能力を有しているが、3社はどうして競合他社より優れた組織能力を身に付けること ができたのか、明確になっていない。今後の課題として、組織能力がどのように構築され たのかを明らかにしていくことにより、3社が組織能力を構築し得た理由を探ることが可能 と考える。

例えばシマノのコア・コンピタンスである「独自の高い技術力」は、高い技術開発力と、

高い技術で開発された製品について低コストで高品質製品を生産する力という 2 つの要素 からなる。シマノの高い技術開発力は、創業者の世界のシマノになるという強い思いが先 導に立って、高められていった。シマノはフリーホイールの開発に始まり、技術力を高め ていき、数々の高品質なシステム・コンポーネント製品を市場に投入することで、トップ メーカーの地位を獲得した。システム・コンポーネントという開発思想は、自転車部品を 相互に機能するコンポーネントの集合体と捉えるものである。シマノは複数の部品をコン ポーネント化し、コンポーネントの対象とする部品の範囲を徐々に拡大していった。それ までの自転車部品業界では分業化が進み、他社が製造する部品には進出しないという暗黙 の了解があったため、この開発思想は業界の通例に反するものであった。このように、シ マノの「独自の高い技術力」の要素の 1 つである高い技術開発力は、どのような考えのも と構築され、どのような面が優れており、どのような独自性があり、競争優位を確立して いったかということは、事例から読み取ることができる。しかし、高い技術開発力は、具 体的にどのような過程を経て、どういう取り組みを行い構築されていったのかは、知るこ とはできなかった。今後取り組むべき研究課題は、組織能力が構築された際の、様々な取 り組みの過程を調査することで、組織能力がどのように構築されたかを明らかにしていく ことである。

(2)オープン経営であるが模倣困難であることの解明

事例 3 社の経営はオープンであり論理的で透明性が高く、他社から理解しやすいもので あるが、模倣が困難である。

論理的な組織能力とは、他社が見た時に理解がしやすいということである。そして透明 性が高い組織能力とは、組織能力の多くの部分が、関係会社や取引会社など外部に見えて いるということである。これは競合他社にとっては好都合な状態である。組織能力が、透 明性が高く外部に公開されており、更に論理的で分かりやすければ、模倣しやすくなると 思われるものである。しかし、この 3 社は長い間競争優位を保っており、これは、競合他

社が組織能力を模倣することができなかったということを示している。一般的な考え方と しては、他社が知らないまたは理解できないから模倣できないと考えることが自然な考え であり、この理解できるのに模倣できないという3社の組織能力は、興味深い。すなわち、

論理的で透明性が高い組織能力、他社から容易に理解できる組織能力であっても、模倣す ることが困難だということである。

オープン経営を行い他社から容易に理解できるが、模倣困難であるということは、理解 しても模倣できない理由があるからだと考えられる。今後の課題として、解明する必要が ある。理解されるが模倣困難であることは具体的に何かと突き止めることは、競争優位の 源泉になっている組織能力の特徴を明らかにすることにつながる。

例えばミスミのコア・コンピタンスである「オープンデジタル経営」とは、顧客、協力 メーカーおよび社内に対して、基準を明確にしてオープンにし、透明性をもって効率的に 経営することである。商品の販売価格や納期がカタログに詳細に(数値的に)記載されて いるため、競合他社からするとミスミが顧客にどのような価値を提供しているか理解しや すい。オープンコンペティションでは、ミスミがベンダーを選定する基準がオープンにさ れているため、競合他社からすると、オープンコンペティションの仕組みを理解しやすい。

また社内に対しては、各チームの事業内容がオープンにされ、協力会社も参画することが 可能なことから、競合他社としても情報が得やすくなる。このようにミスミのオープンデ ジタル経営は、競合他社から理解しやすく、実際にミスミのカタログを模倣したカタログ を、競合他社も作成しだしていた。しかしミスミの売上と利益はそれ以降も上昇傾向にあ り、競争優位が保たれている。これは、競合他社はミスミの組織能力を模倣しようと試み たが、模倣しきれなかったということである。今後の研究課題は、なぜ模倣できなかった かを突き止めることで、ミスミの競争優位の源泉すなわち、組織能力を明らかにすること が可能であると考える。

(3)実務で使用可能な組織能力モデルの構築

本稿では 3 社の競争優位の源泉である組織能力を分析した。しかし経営コンサルタント でもある著者にとって組織能力を研究する 1 つの目的は、実際のビジネスに貢献すること である。研究の成果が、実際のビジネスに活用できるものであり、ビジネスの成功に貢献 することを目指している。よって今後の研究では、ビジネスの実務で使用することが可能 な組織能力モデルを作成することが課題である。

ビジネスの現場で活用することが可能な組織能力論とはどのようなものであろうか。業 界の特性、事業の特性、事業の形態、組織の体制、技術やノウハウ、関係会社との関係、

対象のマーケットなど、実際の会社は多種多様な要素がからみあい、二つとして同じ会社 は存在しない。千差万別な会社のビジネスの現場で活用できるということは、組織能力論 の基本構造が普遍的であると同時に、各ビジネス、各社の特徴にあわせて柔軟にカスタマ

イズができるということだと考えられる。このような理論を構築することができれば、多 くの会社で組織能力を構築または改善することが可能となり、競争力を高められることに つながると考える。

参考文献

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ドキュメント内 組織能力の独自性 -成長企業3社の事例- (ページ 149-160)