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第 3 章 宮崎大学附属病院のクリニカルパス活動の問題とアクションプラン

3.6 現在のクリニカルパス活動

当初はクリニカルパスに興味のある看護師を中心として紙で作成・運用し、看護記 録の標準化がおこなわれだしたが、医師の多くは作成には参加しなかった22。オーバ ービュー形式23のクリニカルパス(図 3-2 参照)が作成され利用されだすと、記録やル ーティン業務が簡便になるなどの利点があり、クリニカルパスへの作成要求が高まっ てきた。医師の多くは作成に参加しなかったが、クリニカルパス利用に反対すること もなく、むしろ協力する傾向が、多くの作成の場で見られた。これは、大学病院とい う医師の移動が頻繁におこなわれる環境では、リスク管理するためにも医療プロセス

20) 国立大学病院の経営改善のため、国立大学協会が作成したDPC収支分析ソフト

21) 2006 年 6 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

22) 2007 年 6 月 20 日 宮崎大学附属病院 病棟看護師とのインタビューより。

23) クリニカルパスで入院から退院までの医療行為やアウトカムを時系列で1欄表示したもの。

図 3-2 オーバービュー形式のクリニカルパス(肝生検パス:紙)

の標準化が必要だと認識していたことである24。処置や投薬の確認業務の効率化と患 者の観察の普遍性・客観性をクリニカルパスで行うため、日めくり式パス(図 3-3 参 照)の作成が求められた。クリニカルパスの作成・利用の経験が深まり、利用の知識 が高まることで多くの部門では日めくり式パスが作成されるようになった25。そして、

2005 年 11 月に第 4 回クリニカルパス大会が開催され、ほとんどのクリニカルパスは 済生会熊本病院26の日めくり式クリニカルパスを作成していた。ただし、済生会熊本 病院のように、関連する職種が集まるクリニカルパス作成のワークショップは作られ ず、多くは病棟業務の中核になる看護師を中心としての活動であった。

宮崎大学附属病院の紙で行っていた紙のクリニカルパスは患者用オーバービュー、

医療者用オーバービュー、日めくり式パスで構成されていた。構造は済生会熊本病院

24) 2007 年 6 月 20 日 宮崎大学附属病院 診療科医師とのインタビューより。

25) 2007 年 6 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

26) 日本のクリニカルパス活動の先進病院。

H1

H2 Hb:

H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9

T1 T2 T3 T4 T5 E1

E2 時刻 OV# VC 担当

E3 E4 E5 E6

K1 K2 K3 K4 K5

総括所見

主治医 看護師

深夜勤:

日 勤:

総合評価 : 問題なし 問題あり パス中止

指導医署名 署名時間

□再診について理解出来ている

□本日は清拭、明日はシャワー浴、その翌日が入浴可 であることが理解出来ている

腹部エコー検査終了まで朝遅食

腹部エコー検査が終了するまでトイレのみ歩行可

採血 経過記録

腹部エコー検査 内容/行為(行動)

サイン 穿刺部消毒

時間 腹部エコー

検査後 Drサイン

Nsサイン 排尿回数/排便回数 食事量 朝食 エコーの所見

ハンザポア上に出血が無 無 ・ V 無 ・ V SpO2(95%以上)

脈拍(50≦P≦100回/分)

体温(37.5℃以下) T-Bil :

採血結果

時間 6時 退院前

血圧(180>BP>90mmHg)

穿刺部痛が無い

(face scale3以下)

平成(    )年(    )月(    )日(    )曜日

肝生検3日目(退院日)

患者アウトカム(合併症・患者状態など)

ハンザポア上に出血が無い 発熱が無い(37.5℃以下)

入院時と比較し肝炎の悪化が無い 腹部エコー所見に変化を認めない

図 3-3 宮崎大学附属病院の日めくり式パス(肝生検パスの 1 部抜粋)

に良く似ているが、アルゴリズムは含まれていない。日めくりパス形式も大まかな 統一フォーマットは出来上がっているが、診療科・病棟ごとで作成されているため、

厳密な統一されたフォーマットではない。

2007 年 1 月から電子カルテの運用が開始されると、クリニカルパス作成が促進した。

これは、日常業務で利用する電子カルテの画面構成がオーバービュー形式(図 3-4 参 照)であり、観察項目の一部が従来の日めくり式形式を採用したことで、あたかも クリニカルパスを利用した業務になったからである。この電子カルテが運用されだす と、クリニカルパスが作成されていない疾患でも医療プロセスが時系列的に整理され、

共通する処理・観察項目が容易に抽出される。その結果、クリニカルパスの作成が促

図 3-4 宮崎大学附属病院の電子カルテ画面(帝王切開パスの 1 部抜粋)

進されたと鈴木は述べた27

しかし、クリニカルパス作成に必要なアウトカム用語の統一も進捗せず、改善に必 要なバリアンス分析もおこなわれていないのが現状である。これは、クリニカルパス の作成が現在の目標であり、そこまでは手が回らないと、作成を担当している多くの 看護師は述べている28

27) 2007 年 6 月 20 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

28) 2007 年 6 月 19,20 日 宮崎大学附属病院 病棟看護師とのインタビューより。

-1日目 0日目 1日目

入院 2 3

-1 帝王切開術 1

~38 ~38 ~38

~100 ~100 ~100

~90 ~90 ~90

フリー ベッド上安静 ベッド上安静またはトイレ

まで歩行 トイレ可 バルンカテーテル留置 トイレ歩行可

乳房の状態

ベッド上安静である トイレ歩行できる 安静度が拡大する(病棟内) 血圧上昇がない(140/90mmHg以上) 術前指導が済んでいること 創痛がコントロールされている 合併症(弛緩出血、高血圧、肺塞栓)が

排泄

■ アウトカム ■ 発熱がない(38.0℃以上)

足背動脈触知 蠕動運動,排ガス有無

ドレーン排液量 疼痛 創部出血の有無 性器出血(悪露) 子宮底高(横指),子

尿量/尿比重 身長/体重

尿糖 尿蛋白

尿量減少の有無

■ 術後 タスク 血圧変化 呼吸状態

■ 生活動作 ■ 安静 体温 体温 脈拍数 脈拍数 血圧 収縮期/拡張期 血圧 収縮期/拡張期

■ バイタルサイン産科 ■ 日付

入院 基準イベント

基礎心拍数 便回数/尿回数