第 4 章 クリニカルパスからの文脈的知識の抽出と明示化
5.5 インタビュー調査
5.5.1 インタビュー調査方法
アンケート調査終了後、アンケート回答者へのインタビュー調査をおこなった。期 間は 2009 年 1 月 14 日~15 日、場所は宮崎大学医学部附属病院の医療情報部の会議室 でおこなった。
インタビュー調査では、対象者を 2 つのグループに分けたフォーカスグループ・イ ンタビューの手法を用いた。グループは、説明文を付与したクリニカルパスの目的・
意図を告知されているグループ(4.5.3 でおこなった説明文作成の検討会の参加者)、
告知されていない一般看護師の 2 つのグループに分けた。前者を A、後者を B グルー プとした。
インタビュー時間は各グループ 90 分、インタビューは説明文を付与したクリニカ
・日常業務への影響はない
・対象を新人や異動者にすれば教育的効果は高い
・看護業務の確認に利用している
・臨床の現場で経験知を伝えるツールとしては疑問
・経験知を蓄積するツールとしては有効だが、運用が困難
・説明文が根拠のある記録として利用できれば、普及する
・異なる職種間での知識コミュニケーションは促進する可能性が高い
・説明文の内容は初心者向きであり、現場で活用されていない
・患者とのコミュニケーションに大きな変化はなかった
・個人的には患者との医療内容のコミュニケーションをとれる道具にしたい
・字が小さく閲覧時間に制限があるので読みにくい、見にくい、
・説明文の内容は初心者向きだが、良くできている
・説明文で絵や図があれば、患者さんが理解しやすい
・説明文以外に指示項目の確認一覧などを加えてほしい(本システムに)
・他の職種に拡大することは良いことだが、具体的にはわからない
・他の職種との対面でのコミュニケーションが大切
・簡単に作成できるのであれば使いたいが、時間がない
・病棟や診療科単位で運用を任せてくれるなら、使い方はたくさんある
・患者の個別性に応じた指示や観察項目を理解・共有する使い方がある 患者とのコミュニ
ケーションの変化
説明文の 内容と 記載形式
職種の拡大
簡便な説明文 作成ツールの
利用法 日常業務への
影響と効果
質問項目 インタビュー結果
ルパスを利用して、「日常業務への影響と効果」、「患者とのコミュニケーションの変 化」、「説明文の内容と記載形式」、「職種の拡大」、「簡便な説明文作成ツールの利用法」
の項目を事前に書面で通知しておこなった。
倫理的配慮として、アンケート調査と同じ内容を書面で対象者に示し、口頭で同意 を得た。
5.5.2 インタビュー調査結果
各グループへのインタビューの会話を録音し、遂語録を作成し、データとした(添 付付録 D)。このデータを用いた調査結果を表 5-8、5-9 に示す。
表 5-8 A グループへのインタビュー調査結果
表 5-9 B グループへのインタビュー調査結果
看護師が事前に通知した項目以外で、患者が治療やケアプロセスに参画するための クリニカルパスのあり方について述べている。
「私は以前に自分が患者をしていたときにほかの病院でパスを使って いただいたのですが、あの、ちゃんとパスとして説明されたんですね、
あなたに、こういうクリニカルパスを使用させていただきます、で、
全部書いたモノをいただいて、入院費用まで記入されていた感じで、
すごく自分で先が見えたから、悪いけどこことここの費用だけ省いて こんだけで退院させて下さいとの話も先生と話すことができて、
パスはすごくいいなーとその時に思ったのですが、今、自分たちが
Aグループの結果以外に
・操作性が悪い(カーソルがずれると他の説明文が表示)
・説明文の内容を確認されないで看護記録になることは困る
・説明文による統一(標準化)したことを提供できるのはよいことだ
・小型携帯端末(PDA)に導入してほしい
・勉強しなくなり、考える力がなくなる
・医師は看護タスク(行為)を見ないので、説明文は読まない
Aグループの結果以外に
・説明文をよめれば患者とのコミュニケーションは変化する可能性はある
・PDAで利用できれば、患者さんへの説明が変化する可能性はある
・患者の状態に応じた説明をできる可能性はある Aグループの結果以外に
・業務の流れに沿った形や看護計画の延長の内容であれば、理解しやすい
・説明文の内容をそのまま伝えても患者は理解しない
・文章としては読みにくい Aグループの結果以外に
・現在は他の職種(薬剤師、栄養士)とで、妊婦・褥婦の指導内容に不整合が あるため混乱しているので、指導内容の整合性を高めるための利用で解決 したい
・院内の誰かが説明文を作ってくれるなら、助かる
・簡単な操作ならばクリニカルパス作成に利用したい
・患者に応じた説明ができる可能性はあるし、参考資料の作成に利用できる 簡便な説明文
作成ツールの 利 用法 職種の拡大
インタビュー結果 質問項目
日常業務への 影響と効果
患者とのコミュニ ケーションの変化
説明文の 内容と 記載形式
患者さんのための、患者さんに考えてもらうことをしていないので、
私たちのパスという感じで、患者に説明用するためのパスを使い切 れていない感じで、なんというんだろう、患者パスみたいなものが しっかりあって、患者さんがエッテー、こんな時に自分はどうなって いたらいいのですかと、みたいなことを具体的に聞いてくれれば、
多分私たちも一番最高の状態はこれですよと、アノ、言うために使う ような気がしますが、だから、今、一方的に使う側がだから、こっち が知識を与えるためだけに、なんか、与えるためだけ使っているもん だから、ここ知っているもんみたいな感じで、つい飛ばしてしまう。
多分患者さん側からもっと言われたときに使うような気がする」。
看護師が述べた如く、患者が治療やケアプロセスに参画するためのクリニカルパス の方向性を示している。さらに、説明文を付与したクリニカルパスの運用について、
説明文そのものが 1 人歩きする恐れを以下のように述べている。
「新聞といっしょで載ったらウソか本当かわからんことでも、本当み たいになって、それであとから、なんかこうしたのということになるの は、ちょっとこまるかもしれないなー。だから実際はその、あうんの 呼吸でやっているところが、なんか、リスク or ノー みたいな、
全か無かの話になると、ちょっとこまるところがあるかもしれないと いうことで。だから、システム、システムそのものでなくて、それは いいんじゃないかと僕は思っているんですけど、その、そうゆう責任 とか、誰がするのかとか、まー、そういったことをきちんと運用を決 めるのがなかなか実際のところは、運用のところがちょっと大変かも しれませんね。難しいですよ」。
上記の内容から、クリニカルパスを用いた標準的な医療の提供では、患者の個別性を 担保するための運用の留意点を指摘している。
医療提供者間での直接の対面によるコミュニケーションの重要性もインタビュー では述べられていた。
「簡単に使えるのがあれば、やっていけると思いますけど。アセス メントとプランの部分だけを診断から、この患者に気をつけること は、こうで、こうで、こうで、ていうのは、今、全部、話している んで、話して、だからコミュニケーション自体はとれてて、この患 者はこれに注意して、注意していといってますけど、あとたりんの は、おそらく、看護スタッフがカルテを見て、確認してどうこうし ているんだと思うのですが、そういう指示簿にのらん、夜はどうこ うのなどの具体的な指示じゃないところのアセスメントみたいな ものを、気をつけるべきことを、バーット、簡単に患者、患者に病棟 ローカルでやれて、ローカルで動かせるであれば、理解共有して、
あってもしゃべるんでしょうけど、その、しゃべらんことは、しゃ べったほうが早いでし、こう、一方通行じゃできませんし」。
上記で述べられた如く、医療提供者間での対面によるコミュニケーションが重要であ り、患者の個別化を支援できるシステムの開発が望まれることを示していた。
5.5.3 インタビュー結果のまとめ
表 5-8、5-9 より、インタビュー調査結果のまとめを以下に示す。
z 本システムの日常業務への影響と効果。
♦ 業務に影響を与えることはなかった。
♦ 初心者や異動者への教育的効果は高い。
♦ 説明文が根拠のある記録として利用できる。
♦ PDA(小型携帯端末)の利用で、効果は上がる。
♦ 構築したオントロジーを用いて文脈設定した説明文は、医療現場に知識コミ ュニケーションを促す可能性が高い。
z 患者とのコミュニケーションの変化。
♦ 本システムで作成した説明文で患者とのコミュニケーションに大きな変化 はなかった。
♦ PDA を利用すれば、患者と医療内容のコミュニケーションが促進する可能性 はある。
♦ クリニカルパスで患者の個別性に対応できる説明ができる可能性はある。
z 説明文の内容と記載形式。