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第 3 章 宮崎大学附属病院のクリニカルパス活動の問題とアクションプラン

3.8 クリニカルパス活動の現状

中心としてメンバーで作成された。このソフトを用いてのクリニカルパス作成の条件 が、在院日数を優先させずに収益が最大にすることであった。このように自動的に作 成されたクリニカルパスだが、利用しだすと日常業務の簡便化を医療従事者が気づき 始めた。これが契機となってクリニカルパス活動が普及しだした31。しかし、どのよ うなクリニカルパスを作成するかは手探り状態であった。そこで、クリニカルパス活 動の先進病院である済生会熊本病院のクリニカルパスを参考にしながら、新たなクリ ニカルパスを作成し始めた。

クリニカルパス導入の効果として、当初は収益性の確保を重要視していた病院であ ったが、クリニカルパスがもつ機能(医療の質を保証、チーム医療を促進、医療内容 の透明化、業務内容の標準化)に着目し、クリニカルパス委員会を病院の正式な委員 会とした。この結果、クリニカルパス委員会の決定事項にある程度の拘束力を持つこ とができた32

医師の多くがクリニカルパス活動に協力的であった:

クリニカルパス活動の中心は看護師であるが、多くの医師は作成には協力的であっ た。これは、短期間のクリニカルパス活動で日めくり式パスが作成・導入できた大き な理由の 1 つとして考えられると多くの看護師は述べている33。医師が協力的であっ た理由として、大学病院という医師の移動が多く、最低限の質を保証する標準的な医 療プロセスが必要であり、多くの医師が多忙である職場という環境もあるが、医師の 多くがクリニカルパスは看護の業務としての認識がある34。そのため、医師の業務に 直接関係することについてのクリニカルパスを用いた標準化は今後の課題であり、薬 剤師や栄養士、リハビリ関係の技師がクリニカルパス活動に関与し、積極的に発言す ることも課題であると鈴木は述べている35

電子カルテを利用することでクリニカルパス作成が促進された:

宮崎大学附属病院の電子カルテは、クリニカルパスが作成されていない疾患でも、

医療内容を電子カルテに記入していくと、オーバービュー形式と観察項目が日めくり 式パスの画面構成になる。このような電子カルテを利用することで、医療内容を時系

31) 2007 年 6 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

32) 2007 年 6 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部教授 荒木賢二氏とのインタビューより。

33) 2007 年 6 月 19,20 日 宮崎大学附属病院 病棟看護師とのインタビューより。

34) 2007 年 6 月 20 日 宮崎大学附属病院 診療科医師とのインタビューより。

35) 2007 年 6 月 20 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

列で整理し、共通する内容を並べればクリニカルパスのたたき台が容易に作成できる。

この結果、電子カルテ導入後のクリニカルパス作成は促進された。

クリニカルパス作成・運用の過程でガイドラインが設定されていない:

クリニカルパス作成が診療科・病棟単位で看護師が中心となって作成されるため、

記載されている用語の表現や意味、その粒度が病院全体で統一されていない。このた め、診療科や病棟、職種が異なれば、同じ用語でも意味や解釈に齟齬を発生し、記載 の粒度の基準が統一されていないのが現状である。さらに、大学病院の特徴として、

医療従事者の入れ替わりが多く、クリニカルパス作成に関与した人間が退職すると、

その病棟ではクリニカルパスが作成できなくなってしまう可能性がある36。そのため、

作成や運用の基準となるクリニカルパス活動のガイドライン作成が望まれている37

バリアンス分析を用いたクリニカルパスの改良がおこなわれていない:

紙のクリニカルパス運用の時点でも、バリアンス分析の集計と分析によるクリニカ ルパスの改善はおこなわれていなかった。電子カルテでのクリニカルパス運用でもバ リアンスの集計と分析はおこなわれていなかった。このため、クリニカルパスそのも のの評価、運用で得られた新たな知見を用いたクリニカルパスの改良は未実施である。

同時に、電子カルテでのクリニカルパス利用では、従来の紙のクリニカルパス利用と 異なり、バリアンス発生の意味づけが重要となってくる。そして、発生したバリアン スに対し、経験知が浅い医療従事者が無視して良いバリアンスと、緊急に対応を要す るバリアンスの判別を支援できるシステムの開発が望まれている38

クリニカルパス作成の人と職種が限定されている:

クリニカルパス作成のほとんどは病棟の中堅クラスの看護師であり、事務的手続き を医療情報部の診療情報管理士がおこなっている。クリニカルパス作成の効用として、

多様な職種の異なる知識を職種最適から患者最適に変化することであり、その過程で 作成に関与する人達は自らの職種と違う職種の知識を知るとともに、理解する努力を 試みている(山﨑, 2007)。クリニカルパス作成のメンバーや職種が固定化すると、作 成過程の効用の効果が限定されてしまう。さらに、作成者が退職するとともに、効用

36) 2008 年 9 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部准教授 鈴木斎王氏とのインタビューより。

37) 2008 年 9 月 18 日 宮崎大学附属病院医療情報部教授 荒木賢二氏とのインタビューより。

38) 2008 年 9 月 19 日 宮崎大学附属病院医療情報部教授 荒木賢二氏とのインタビューより。

で得られた知識を病院が消失する恐れがある。このため、クリニカルパス作成の効用 を、クリニカルパス作成に関与しなかったクリニカルパス利用者に伝えられるシステ ムの開発が望まれている39

3.9 クリニカルパス活動の改善のためのアクショ