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第 4 章 クリニカルパスからの文脈的知識の抽出と明示化

4.2 医療行為オントロジーの構築

4.2.2 タスクオントロジーの構築

タスクは日ごとや手術などの大きな治療前後に時間軸で整理されている。そのため、

タスクの関係性は、医療知識に基づいてクリニカルパスか検討する必要がある。その ため、まずタスクの概念を定義した。

タスクは図 4-1 に示す如く、医療プロセスの中で他のタスクの部分,前後などに関 連しながら役割と意味を持っていた。そして,職種などの立場の違いをタスクの実施 者の目的の違いとした。

図 4-1 に示した概念構成に基づき、クリニカルパス記載内容で作成されたモデルを 図 4-2 に示す。クリニカルパスには肝生検前に血液検査以外の記載はない。

図 4-1 タスクの概念構成

図 4-2 タスクの概念モデル(肝生検前の血液検査)

このタスクの目的と意図は、医師に肝生検実施の可否判断に必要な血液検査で得ら れたデータを提供することである。そして「採血する」のタスク実施者は看護師であ り、成果物は採血された血液になる。血液検査の実施者は検査技師であり、成果物は 検査によって得られた検査結果となって、肝生検の可否判断材料になる。

クリニカルパスに記載内容からタスクの概念を図 4-1 に示す構造に整理され、その 定義を図 4-3 に示す。タスクを実施する実施者、患者自身や患者から採取されたサン プルなどのタスクで処理される対象物、タスクを実施することで得られるモノや情 報・知識としての成果物、そのタスクの前と後におこなわれる前・後のタスク、その タスクの部分としての部分タスクから構成されていた。タスクは1つ以上の目的を持 ち、タスク単独での目的、いくつかのタスクが組み合わせることで実現される目的を 合わせ持っていた。

タスクの概念定義に基づき、図 4-4 に示すタスクオントロジーは構築されている。

タスクオントロジーでは、患者に対する医療処置や投薬などの介入行為である実施タ スク、解釈や意思決定などの患者への非介入行為である判断タスクに分類できた。

実施タスクの成果物は,患者から採取された検体の検査データ,X 線や心電図など の医療機器から得られるデータ、医師や看護師などの医療者による患者観察データな どであった。判断タスクの成果物は得られたデータを解釈して導いた判断行為であり、

個々の医療専門職の知識に依存していた。

医療 タス ク

実施 タス ク

判断

タス ク 測定 タス ク

採取 タス ク

投薬 タス ク

処置 タス ク コミ ュニケー ショ

ンタ スク 達成 判断

タス ク

状態 判断 タス ク 追加 判断

タス ク 実行 タス クの 停止 判断する

タス ク 未実 施タス クの

禁止 判断する タス ク

介助 タス ク

注射 ・点滴 タス ク

図 4-3 タスクの概念定義

図 4-4 タスクオントロジー

モノ

抽象物 実在物

人体構 成物

感覚

人工物

客観的 データ

解釈データ

痛み 不安 痒み

検査機 器 画像撮 影機器

患者データ

軽減した痛み 増悪する痛み

臓器

排泄物

採取物

タスクを概念別に定義し、オントロジーを構築した結果(図 4-4)、パスで明示困難 であったタスクの目的・意図を明示化でき、その関係も位置づけできた。明示された タスクの目的と意図や関係を以下に示す.

z タスクには実施者、対象物、成果物、前後タスク、部分タスクが存在していた。

z タスクには複数の目的が存在し、他のタスクの目的と組み合わされる場合もある。

z タスクオントロジーの最上位は,実施タスクと判断タスクであった。

z 実施タスクの成果物は客観的に扱えるデータであった。

z 判断タスクの成果物は、データを個々の医療専門職の解釈でおこなわれる判断 知識であった。

z 同一タスクで複数の職種が関わる場合、タスク実施者の目的の違いが職種の違い を表していた。

タスクで扱われるモノには、実在物として採血で得られる血液などの臓器や心電図 波形や CT 撮影画像があり、抽象物としての患者データと患者データ解釈結果がある (図 4-5 参照)。

図 4-5 「モノ」のオントロジー

図 4-5 が示す「モノ」のオントロジーでは実在物と抽象物が最上位階層であり、感

覚も実在物の下の階層に含まれている。この感覚は、例えば鎮痛剤の投与で痛みが軽 減した場合、投与せずに痛みが増悪した場合のそれぞれの痛みの変化の結果を実存物 として表している。抽象物の下位層に患者データがあり、このデータには数値などで 客観的に評価できる客観データと、人間が何らかの解釈を必要としなければ意味が発 生しない解釈データがある。特に患者の主訴(例えば痛み)を解釈データとしたとき、

対応する医療従事者の解釈データを判断するための基準が無く、医療従事者の能力に よって、その対応に差がでてくる。そして、クリニカルパスを利用する医療では、解 釈データをどのように判断するかについての記載は無かった。