第2章 日本歌曲の詩の分析
第1節 ヨーロッパの模倣1ロマン主義の作曲家の歌曲の詩の分析
特徴
歌曲の歴史において、明治以降、洋楽が日本人によって作られるように なった。第1期から第2期に、このヨーロッパの模倣・ロマン主義の作曲家た
ちが活躍した。
1.滝廉太郎: 1)《荒城の月》2)《花》について 1)《荒城の月》 作詞 土井晩翠
塵三翌 春高楼の 花の宴 めぐる盃 かげさして 千代の松が枝 わけいでし むかしの光 いまいづこ
塵:垂i秋陣営の 霜の色 鳴き行く雁の 数見せて
植うるつるぎに照りそいし
むかしの光 いまいづこ 塵…茎1今荒城の 夜半の月 かわらぬ光 たがためぞ 垣にのこるは ただかつら 松に歌うは ただ嵐匿酉垂1天上影は かわらねど 栄枯は移る 世の姿 写さんとてか今もなお 鳴呼荒城の 夜半の月
・詩の形式
七・五調。各4行。四連。 起承転結の形。
・詩の内容及び特徴
第一連は、天守閣での花見の宴の華やかな情景。
第二連は、戦陣の厳しさを歌っている。会津若松の鶴ヶ城をイメージして
し・る。
第三連は、栄枯盛衰の無暗に対する思いを深めている。仙台の青葉城をイ メ]ジしている。
第四連は、再度荒城を見上げ、人の世の無常を諦観している。
2)《花》 作詞 武島羽衣
塵三田春のうら㌧の隅剛11
のぼりくだりの船人が 擢のしづくも花と散る ながめを何にたとふべき 匿:国 見ずやあけぼの露浴びて われにもの言ふ桜木を 見ずやタぐれ手をのべて われさしまねく青柳を 塵…;国 錦おりなす長堪に くるればのぼるおぽろ月 げに一刻も千金のながめを何にたとふべき
・詩の形式
七・五調。各4行。三連。
・詩の内容及び特徴
春燭漫の隅田川の美しさを歌っている。
第一連は、「擢のしずくも」のもは、擢のしずくでさえも、花吹雪のよう に見えると言いたい。それは、「ながめを何にたとふべき」という反語の修辞 法でもわかるように、たとえようもない美しさを表現している。
第二蓮は、この連は二行ずつ対比になっている。r見ずや」は修辞的疑問の 表現で、実際は、きっと見ているはずだ。という意味。
第三連は、r錦おりなす」(古今和歌集)、rげに一刻も千金の」(蘇載の詩一 節)は古典の引用である。
2.山田耕俸 1)《鐘がなります》2)《この道》について 1)《鐘がなります》作詞 北原白秋
匿三重鐘が鳴ります
かやの木山に
匿雪山は
寒空 遠酋
塵…雪一つ星さえ
ちらつくものを
睡垂1なぜに
ちらりとも 出て見えぬ
・詩の形式
五音、七音が主。二行、三行、二行、三行、四連。
・詩の内容及び特徴
晩秋から初冬にかけて、山々のつらなりの木立がすっかり落葉し、鐘の音 がかやの木の木立に響いている情景である。
第四連は、若者がいとしい娘が家を出てくるのを今か、今かと待ち焦がれ ている様子を表現している。トつ星さえちらつくものを」とあるのは、若者 の気持ちのいじらしさを衝いた表現でもある。
2)《この道》作詞 北原白秋 塵ミ垂1この道はいつか来た道 ああ さうだよ
あかしやの花が咲いてる 塵:璽 あの丘はいつか見た丘 ああ さうだよ
ほら 白い時計台だよ 塵…田 この道はいつか来た道 ああ一さうだよ
や母さまと馬車で行ったよ 匿酉理 あの票もいっか見た雲 ああ さうだよ
山査子の枝も垂れでる
・詩の形式
五・七・二・四・五・七音、各三行。四連。起承転結の形式。
・詩の内容及び特徴
192ら年、白秋は鉄道省樺太観光団に参加し、一札幌の思い出を勇の子の 目を通して甑ったものである。季節は夏である。本州の夏では感じられない さわやかな印象の歌である。
rあかしやの柁」は夏の季語である。r白い時計台」は、札幌の時言十台。rあ の丘」は、羊ケ丘。r馬車」は当時の重要な交通機関。現在は観光崩に使われ ている。r山古子」は中国産バラ科の落葉樹の低未で、春先に花をつけ、秋に 黄色の実を結ぶ。
3.信時
潔1)《北秋の》について 1)《北秋の》作詞 清水重道匿三重北秋の
かひ
峡のこごしき道のくま わが見し花に
名づけてよ 君
匿:固いなむしろ
君によそえて 呼ぱましものを
匿≡1里みつみつし
白く小さき 北秋の花・詩の形式
第一連は五・七・五・七・七音、第二・三連は五・七・七音。四行・三行・
三行。三連。
・詩の内容及び特徴
「北秋」は、地名ではなく、北方、北国の秋と捉える。
第一連のr峡」はr山と山の間」の意味、rこごし」はr岩がむきだしで険
しい」の意味、「道のくま」は「道の曲がり際。かたすみ」に意味。「てよ」
は意志・完了の助動詞「つ」の命令形で、文を強めている。山あいの険しい 道をたどっていると、そこに名もない花をみつけた。それに名前をつけてお
くれという内容。
第二連はrいなむしろ」のrいな」はr否」、rむしろ」は副詞のr寧ろ」
であるので、第一連の内容を翻し、花を傍らの女性にたとえ、愛をこめた賛 美の独白である。
第三連の「みつみつし」は、本来は古代の氏族名「久米」の枕詞であるが、
可憐な花と作者の夫人の名前(みつ子)が関係しているとも思われる。