まず第1点、昨年度はじめて数IAと数IIBのクラスでクラス分けテストを実施し、2クラ ス体制にしたのに続き、今年度は数IIIおよび演習(レベル1)のクラスでも2クラスにクラス 分けをすることができた。「5.27塾の近況報告」に「下位グループにとって必要なことは、ゆっ くりペースの説明をすることであったり、具体的な問題でドリルをすることによって説明した 内容をひとつずつ確認することであったりする一方、上位グループにとって必要なことは、通 り一遍の説明ではなく、より突っ込んだ説明をすることであったり、基礎的なドリルではなく、
より発展事項に触れたりしながらテンポよく授業を進めることなので、これらの要求を同時に 満たすことは非常に難しかった」と書いた通り、レベルによりクラス分けをしなければ、いい 授業をすることは難しい。特に数IIIのクラスでは、前年度に数IIBを終えて入って来ている メンバーと前年度では数IAを終えただけで、今年度に数IIBと数IIIを同時に学んでいるメ ンバーが混在しており、新しい概念を飲み込む上でかなりの差が生じていた。ただこれは毎年 のことだったし、苦戦しているグループも1年間が過ぎてみると、最低限の微分積分の計算が できるようになるので、何とかやって来たのだが、上位グループに足踏みしてもらっている感 は否めなかったのだ。ところが今年度は早い段階でクラス分けを実施することができたので、
これらの問題が一気に解決した。じっくりと基礎を身に付けることを目標にするクラスと、ど んどん応用事項を学んで行くクラスに分けたことで、上のクラスのレベルが例年と比べて断然 上がった。授業をしていて私自身も楽しい気分になる。それに前年度に数IAを終わっただけ で数IIIクラスに入って来ている高1のメンバーの中にも、上のクラスに食らい付いて来てい る者が何人かいて、これは相当に有望だ。
次に、小学生部で講義による授業を導入することにした話をしよう。中1の内容が終了して いる生徒を対象に2ヶ月に1度の割合で何らかのテーマを決めて講義をすることにしたのだ。そ れは公文式のような形式で学習を続けて行ったとしても、ひとつには刺激が乏しかったり、も うひとつはどの程度理解しているのかがこちらからは見えにくく、ついつい質問されたことに 答えるだけになってしまって、望むべき状態にぐいぐい引っ張って行くという形が作りにくい と感じて来たからだ。この新しい試みは、参加メンバーを変えてまだ2回しか実行していない が、反応は上々だった。まず何より参加したメンバーが楽しそうに帰って行ったこと、そして その内の何人かはその後の取り組みが明らかに向上した。もちろん、素早く学習を進めるため には個別指導形式の方が優れており、毎度毎度講義をするというわけにはいかないが、今のと
ころ2ヶ月に一度程度と決めて、講義形式の授業を実行して行こうと考えている。
第3点目の改革は姿勢の改善策についてだ。何週間か前の新聞に、ある営業所内の椅子をす べて取り払い、それらをバランスボールで置き換えた会社の記事が載っていた。社員の反応は
腰痛が緩和されたとか、姿勢が良くなった、腰周りが引き締まった等で、導入時の戸惑いを払 拭してあまりあるものだったそうだ。
実は、我が家にもバランスボールはトレーニング用として1個置いてあり、一応インナーマ スルに刺激を与えるために使っていた。とは言ってもインナーマスル(内側の筋肉)を鍛えて もその効果が計測しにくく、やったりやらなかったりで、またやったとしても遊び半分になっ てしまったりして、十分活用できているとは言えなかった。
しかし上記の新聞記事を読んで、そんな使い方があったのかとぴんと来るものがあり、家で 仕事をするときは基本的にバランスボールに座ることにしてみた。そうすると特にトレーニン グをしているという意識がなくても、勝手に姿勢が良くなって来る。というのは悪い姿勢で座 ろうとすると余分の力が働き、すぐに苦しくなってしまうのだ。この効果は明らかで、1週間 もしないうちにバランスが良くなったことを体感できるようになった。
これは使える! ということで、早速塾でもバランスボールを椅子代わりに使うことに決めた。
元々稲荷塾では良い姿勢を身に付けることを重視しており、そのことは「小さな数学塾のヒミ ツ」の「4.5リンゴを落とすな!」の章でも次のように論じている。
言ってしまえば「姿勢を良くしよう」とただそれだけなのだが、これは気が重 いテーマだ。何故かと言うと、目標は分かっているのに、そこにたどり着くための ルートが見つからないからだ。「顔が近過ぎるぞ!」「左手はどうなったんだ?」「深 く座れ!」「背中が丸いぞ!」 … こんなことばっかり言っていたら数学の授業にな らない。だから初めに、「椅子に深く座って、おしりの少し上をへこませるぐらいに 腹を出して、ぐっと胸を張って … 」と正しい姿勢を説明して、その後は「姿勢!」
と一喝するようにしていたが、なかなか効果が上がらない。背筋(はいきん)が弱 過ぎるのだろうか? それとも姿勢の重要さが分かっていないからなのだろうか?
今回は姿勢の重要性について2点確認することにしよう。まず第1点。通常、勉 強時間は、小学生から中学生、中学生から高校生と学年が進むたびに増えて行くも のであり、このとき「良い姿勢」は長時間の集中を支えるための必須のアイテムだ。
そういう意味で、できるだけ早い段階で正しい姿勢を身に付ける必要があるわけで、
こんなことは自明の事実と思われる。 …
もうひとつ、「良い姿勢」は頭の働き自体を良くする。体のバランスを保ったり、
周りの状況を把握したりする上で、腰から上が地面に垂直に立っていることがとて も大切だ。 …
しかし、これを書いて目標に近付いたかと言えば、決してそんなことはなく、気の重いテーマ として残り続けていたのだ。果たして今回のバランスボールはどうだろうか。とりあえず2個
のバランスボールを買って来たので、姿勢の悪い生徒から順に座って行ってもらおうと考えて いるが、いい結果が出るのではないかと期待している。
そんなことで目立った大ヒットこそないが、灘以上の塾を作るという目標に向かって塾は着 実に成長している。ところで実績はどのようにしたら出るのだろうか。「5.39方針(少し)転 換」のところで、Z会の京大マスターコースの京大クラスで14人の受験生の中で11人が京大 に受かったという話を載せたが、これは生徒が優秀だったからだ。何故優秀だったかと言うと、
選抜テストに合格した子だけを集めていたからだ。どんどん生徒が集まってくるものだからそ んなことができるのだが、どうして生徒が集まって来るのかと言えば、講師やテキスト、シス テムといったものが良いからだとは限らない。内容そのものではなく、むしろ潤沢な資金によ る宣伝とネームバリューの故にそうなっているのだ。実際Z会で夏期講習や冬期講習、直前講 習などを行うと、文字通り全国から生徒が集まって来る。そういう生徒はホテルに泊まってそ の講習期間を過ごすのだが、こんなことは稲荷塾では決して起こらない。潤沢な資金による宣 伝もネームバリューもないからだが、講師やテキスト、システム自体を見れば、これは私見に なるが、どれをとっても稲荷塾の方がはるかに優れている(と思う)。何か歯がゆいし、何か の幸運により大ブレークしないものかとついつい願ってしまうが、「地道にちょっとずつ成長す るのが良いんやで」と諭すように慰めてくれた奥野さんの声が耳に蘇って来る。奥野さんとは
「5.8テニスのすすめ」のところで書いた私の恩人だ。ちょうどこの6月11日が命日になるの で、いろんなことを思い出すが、本当に「地道にちょっとずつ成長するのが良い」んだなあと つくづく思う。そうすれば集まった生徒にシステムが追い付かないなどということは起こりえ ず、結局は最終的勝利を手にすることができるのではないかと思うのだ。近い将来、稲荷塾に も優秀な生徒がどんどんと集まって来て、選抜テストを実施することになって、そして塾のレ ベルが飛躍的に上がるそのときに備えて、地道で本質的な努力を続けて行こうと思う。(2012 年6月11日)