第4章 広州アイデンティティイメージ形成のための
2.4 ポスター
ポスターは多様化したメディアの中において基本的な情報伝達手段 で、特に公共施設に掲載しやすい媒体だといえる。広州大会の公式ポス ターは主に中国全国のデザイン系学校、広告会社、デザイン会社を応募 対象者に 2008 年、2009 年で2回公募された。合計 1,288 件の応募があ り、各回入選賞 10 名と奨励賞を設定し、受賞作品を広州嶺南美術館で 展示した。入選した 10 点のポスターは、街中の駅、バス停など公共施 設に設置された。
2008 年に入選したポスターは 3 枚一組で構成され、設置スペースによ って 1 枚づつまたは一組で展示できるものがあった(図 4-5)。ポスター の真ん中の図はエンブレムを強調し、左図は、2004 年アテネオリンピッ ク男子 110m ハードル金メダリストであり、広州大会に参加予定の劉翔 氏をモチーフにしたものである。右図は、広州大会が公式競技項目にも なった広州の伝統的なドラゴンボートフェスティバルをモチーフにし たものである。ポスターに登場するアスリート達が、全力で金メダルを 勝ち取る姿を表現し、伝統的な競技項目をモチーフにした広州大会のポ スターで、広州市民の興味を引き出そうとした。
第4章 広州アイデンティテイメージ形成のための広州大会の「ものづくり」 78 図 4-5 筆者より公式ポスター
出典:筆者作成
2.5 まとめと考察 (1)まとめ
1)広州大会は、地域に根ざした国際スポーツイベントであるため、デ ザインは単純なスポーツイベントの表現ではなく、開催都市のアイデン ティティや広州の将来の展望が、広州大会のビジュアルデザインを通し てあらわされた。
2)広州大会のエンブレムとマスコットのデザインは、広州の歴史や文 化を象徴する伝説をモチーフとしたものである。エンブレムには、広州 市民の共通意識を反映し、市民の「伝説にある豊かな生活」という願望 と、政府が求める「歴史的な名城という都市イメージ、都市が持続的に 発展していくためには、広州の人々が一つになって、上昇しようとする 精神」という都市の将来の展望を合わせられた。
3)広州大会の「文化活動」イベントマークに現れた広州の文化遺産「粤 劇」、公式ポスターに現した広州伝統的なドラゴンボートフェスティバ ル等の広州独自の誇りや都市の中でも自慢できる要素が大会のデザイ ンに利用されることによって、市民により広く伝えることができたと考 えられる。
4)広州大会の「ボランティア」マークには、国際スポーツイベントに
第4章 広州アイデンティテイメージ形成のための広州大会の「ものづくり」 79
対する広州市民の心から行動するという気持ちが表現された。また、広 州大会の「環境にやさしい」マークには、自然と共生する、都市持続発 展に向かうエコの理念が主張された。
大会のための都市アイデンティティイメージ形成の最初のビジュア ルベーシックの「ものづくり」は、広州市民が共通意識にある地域にあ る独自の誇りや都市として自慢できる要素をシンボル化することで広 州が未来に向かう姿勢を伝えた。地元のデザイン会社、学校、社会応募 は、広州の誇りの要素を視覚的に見せる「形」をつくることで、大会開 催の情報を広報した。
(2)考察
地域イメージは歴史文化を継承してきた要素が多いが、それらは現代 の人々に伝わりにくく、分からない場合もある。それは作る側、決める 側、受け取る側の状況にも関係する。例えば、エンブレムのデザインで は、デザイナーは革新的なセンスで作りたいが、地域の管理者は政治的 な望みや本地域の誇りを主張したいなどの様々な考え方がある。
地域の公共事業としての「ものづくり」デザインは、対象者が住民で ある。客に買ってもらう企業商売とのデザインと違って、市民の共感を 得ることは極めて重要なことである。
市民の地域イメージの認識も向上するため、作る側、決める側はメデ ィアの選択にも配慮する必要があると考えられる。
第4章 広州アイデンティテイメージ形成のための広州大会の「ものづくり」 80
3.大会向けの都市景観イメージ
本論の「大会向けの都市景観イメージ」は、市民が都市で体感しやす い環境デザインに基づいて、前章の「都市宣言」に示した「新しいエリ アの発展及び空間構造の都市戦略」、「花園的な都市」に関わる広州大会 の色彩計画、大会の景観デザインと、都市の公共施設の美化及び建設に 関するデザインについて述べる。