本件検討を否定する論拠としては肯守できるものではないとの意見 14 が示され、検討が進 められた。
14 この点に関し、産業界より、広告業や印刷業などの実務上は法的紛争を予防することが重要であり、現在の実務にお ける対応について根拠が不明瞭とは言い切れないとの意見が示された。
15
「逐条解説 不正競争防止法」経済産業省知的財産政策室 編著 151 頁(有斐閣、2005 年)
-15-
(ⅲ)本研究会での議論
この点に関して、普通名称、慣用表示とは没個性的な表示であり、需要者に対して「吸 引力」、すなわち、特別な訴求力を伴っている需要者吸引表示とは相容れないものであり、
このような調整を行う必要性はない(想定されない)との意見で一致した。
(3)自己の氏名の不正な目的でない使用
(ⅰ)問題意識
現行不正競争防止法第19条第1項第2号では、自己の氏名の不正の目的でない使用など をする行為について、同法第2条第1項第1号(周知表示の混同惹起行為) 、第2号(著名 表示の冒用行為) 、第15号(代理人等の商標冒用行為)の規定を適用しない旨を規定してい る。これは、自己の氏名を使用する利益は本人自身が享受すべきであるから、不正な目的 がなく使用する場合には不正競争とはならないと考えられるためである
16。
需要者吸引表示は、人の業務に係る氏名・芸名などを含む様々な表示が保護の対象とな りうることから、周知表示の混同惹起行為、著名表示の冒用行為などと同様に自己の氏名 の不正な目的でない使用との関係について整理する必要がある。
(ⅱ)論点
需要者吸引表示の「商品・役務への使用行為」 、「広告利用行為」について、不正の目的 でなく自己の氏名を①普通に用いる方法で使用し、②これを普通に用いる方法で使用した 商品の譲渡などをし、③普通に用いる方法で使用して役務を提供する行為、を適用除外と することが必要ではないか。
・需要者吸引表示の「毀損行為」は、相対的に悪性の高い行為類型なので適用除外を設け ない。
(参考)第19条第1項第2号
適用除外規定により、自己の氏名を不正の目的でなく使用等する者の表示の使用継続を 受忍しなければならない者の不利益にかんがみ、両者の利益の再調整を図るため、その使 用者に対して混同を防ぐために適当な表示を付すことの請求を認めることが必要ではない か。
(参考)第19条第2項第1号
(ⅲ)本研究会での議論
この点に関して、需要者吸引表示の保護は、その表示が有する吸引力を保護するもので
16
「逐条解説 不正競争防止法」経済産業省知的財産政策室 編著 153 頁(有斐閣、2005 年)
-16-
あり、表示の自他識別力・出所表示機能に基づいて保護を行っている商品等表示の保護(第 2条第1項第1号、第2号)とは異なること、また、ドメイン名に係る不正行為(同第12 号)では「不正の利益を得る目的で、又は他人の損害を加える目的で」との要件が課せら れており、行為の悪性との関係で適用除外が設けられていないことを踏まえると、不正競 争とされる行為に係る要件との関係もあるが、このような調整を行う必要性はないとの意 見で一致した。
(4)著名性等獲得以前からの先使用
(ⅰ)問題意識
現行不正競争防止法第19条第1項第3号では、他人の商品等表示が周知性を獲得する以 前から不正の目的でなく使用している場合に、また、同第4号では、他人の商品等表示が 著名性を獲得する以前から不正の目的でなく使用している場合には、既得権保護の見地か ら、先使用権を認め、それぞれ同法第2条第1項第1号(周知表示の混同惹起行為)又は 第2号(著名表示の冒用行為)の規定を適用しない旨を規定している
17。
需要者吸引表示は、保護される表示に「著名性」などの要件(限定)を課す方向で検討 を行っているが、著名表示の冒用行為等と同様に著名性等を獲得する前から他者が当該表 示を使用している場合における両者の関係について整理する必要がある。
(ⅱ)論点
需要者吸引表示の「商品・役務への使用行為」 、「広告利用行為」 、「毀損行為」について、
当該需要者吸引表示が保護要件(著名性など)を獲得する以前から、これを同一又は類似 の表示を使用する者又はその表示に係る業務を承継した者が不正の目的でなく①使用し、
②この表示を使用した商品の譲渡等する行為、を適用除外とすることが必要ではないか。
・需要者吸引表示の不正の目的でない毀損行為はあり得るのか。
(参考)第19条第1項第4号
著名な商品等表示の冒用(第2条第1項第2号)について、著名性獲得前からの善意で の先使用については適用除外とされている一方で、混同防止付加表示請求権は認められて いない。著名な需要者吸引表示を不正競争防止法において保護することとした場合に、混 同防止表示付加請求権は必要か否か。
(ⅲ)本研究会での議論
この点に関して、前述(2)と同様に、需要者吸引表示の保護は、その表示が有する吸
17
「逐条解説 不正競争防止法」経済産業省知的財産政策室 編著 153 頁・154 頁(有斐閣、2005 年)
-17-
引力を保護するものであり、表示の自他識別力・出所表示機能に基づいて保護を行ってい る商品等表示の保護(第2条第1項第1号、第2号)とは異なること、また、ドメイン名 に係る不正行為(同第12号)では「不正の利益を得る目的で、又は他人の損害を加える目 的で」との要件が課せられており、行為の悪性との関係で適用除外が設けられていないこ とを踏まえると、不正競争とされる行為に係る要件との関係もあるが、このような調整を 行う必要性はないとの意見で一致した。
(5)利用の目的、利用態様、不利益を考慮して除外されるもの
需要者吸引表示の保護を新たに行う場合(特に「広告利用行為」の規制を行う場合)に は、過去の裁判例でも論点となった出版活動における表現の自由とパブリシティ価値との 関係など需要者吸引表示の保護を行うことに起因する固有の事案・事情についても適用除 外の要否を検討する必要がある。
この点に関連して、これまでのパブリシティに関連した裁判例
18においても、「権利侵害 の成否及びその救済方法の検討に当たっては、人格権の支配権たる性格を過度に強調する ことなく、表現の自由や経済活動の自由などの対立利益をも考慮した個別的利益考量が不 可欠であり、使用された個人の同一性に関する情報の内容・性質、使用目的、使用態様、
これにより個人に与える損害の程度などを総合的に勘案して判断する必要があるものと解 される。」とされている。
また、別の裁判例
19においても「パブリシティ権侵害に当たるか否かは、他人の氏名、
肖像などを使用する目的、方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、右使用が専ら他 人の氏名、肖像などのパブリシティ価値に着目しその利用を目的とする行為であるといえ るか否かにより判断すべきものであって、原則的に他人の使用が禁止されている著作物の 引用の場合と同一に考えることはできない。」としている。
したがって、既存の適用除外類型との対比から導かれない需要者吸引表示にかかる適用 除外のあり方を検討するにあたっては、他人の需要者吸引表示の利用目的、利用態様、相 手方が被る被害の程度などを総合的に勘案する必要があり、さらに、現在違法とされてい ない行為については、引き続き規制されないようにすべく検討を行う必要がある。
(ⅰ)「表現の自由」との関係、報道・批評目的での利用 ①問題意識
商品化行為、広告利用行為については、例えば芸能人の写真を所収した書籍が写真集(商
品化)になるのか、週刊誌(報道)になるのかなど、報道や出版などを目的とした行為を
ドキュメント内
Microsoft Word - 01お知らせ doc
(ページ 31-34)