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T 字型合流路内での固液二相流の解析と実験

第 3 章 混相内部流への適用と検証

3.2 二次元解析(One-way 解析)

3.2.4 T 字型合流路内での固液二相流の解析と実験

3.2.4 T字型合流路内での固液二相流の解析と実験

流入位置でのレイノルズ数をもとに,べき乗法則によって推定した分布を与えた.

固体粒子は支流のみから体積濃度CV =0.01で流入し,主流と合流する.固体粒子の 密度 pは2590 kg/m3p f =2.59),平均粒子径dpは425 μm(0.02125W1)である.

ストークス数はSt=0.63~1.25である.また,重力は図3.2.4-1中で下向きである.

(3) 実験装置と計測方法

① 実験装置

固体粒子のフローパターンや液相・固相の速度分布を計測することによって,T字 型合流路内における流れ場および固体粒子の挙動を調べると共に,本解析手法の有効 性を検証した.実験装置の概略を図3.2.4-2,図3.2.4-3に示す.液相は水,固体粒子は 平均粒子径425 μmの球形ガラスビーズ(最小粒子径350 μm,最大粒子径500 μm)を 用いた.解析に際しては,固体粒子径分布のばらつきが一様であると簡略化して,一 様乱数を用いて粒子径分布を与えた.

主流と支流は,二台のポンプによってそれぞれ閉ループで循環する.試験部である T 字型合流路はアクリル製であり,合流上流に整流板を取り付けて整流した.流入側 助走区間は,主流側 20W1,支流側 20W2とし,合流後の流路区間は 50W1とした.ま た,奥行き方向の幅Dは主流流路幅W1の15倍とした.合流部への流入速度分布を以 降に記す方法(LDV)で計測し,菱田ら[92]によって計測された矩形流路内での流速分 布と比較することで,本装置流入部において十分発達した乱流速度分布が形成されて いることを確認した.図3.2.4-4に流入速度分布の比較を示す.

合流後の固液混合液は貯蔵タンクの下側に流入し,固体粒子はタンク中央部に設置 W2

Q1 ,U1

Main flow W1

Gravity Q2 ,U2

x

Branch flow Mixing point (x, y) =(0, 0)

Q3 ,U3

y

図3.2.4-1. T字型合流路内での固液二相流

したフィルタによってタンク下半分の領域に分離される.これによって,固体粒子は 支流側のみに混入し,継続的に循環する.

② 計測方法

固体粒子のフローパターンの可視化,液相および固体粒子の速度分布計測について,

概略を図3.2.4-5に示す.T字型合流路は矩形であり,奥行き方向の流路中央部のみ計

測対象とした.固体粒子の可視化は,シート状の光源を照射して,シート光断面上に 存在する固体粒子のみを撮影した.液相および固体粒子の速度分布は,レーザードッ プラ流速計(LDV:TSI 社製)によって計測した.レーザプローブは,流れ方向・鉛 直方向に移動可能であり,奥行き方向の中央断面における速度分布を計測した.トレ ーサ粒子は,液相計測では4 μmのナイロン粒子,固相計測では固体粒子であるガラス ビーズそのものを用いた.

本計測の不確かさについては,流量調節,プローブのトラバース,統計処理,LDV の校正等を合成した拡張不確かさが,約8.9 %と見積もられた.この拡張不確かさは,

標準不確かさに約95 %の信頼水準を与える包含係数k =2を掛けた値に基づいている.

(4) 解析パラメータ

境界パネルの長さ : lbp /W1=0.05 境界パネル枚数 : Nbp=470 壁面上の速度参照点高さ : h/W1= 0.00147 流れ解析の時間刻み : tfU3 /W1=0.05 粒子解析の時間刻み : tpU3/W1=0.0025 一個の標本粒子が代表する実際の粒子数: Np=1

water & solid particles

water only test section :

mixing tee

tank

pump pump

flow meter

flow meter filter

color ink

図3.2.4-2. 実験装置の概略

テストセクション T字型合流路

ポンプ タンク

LDV用プローブ トラバース装置

図3.2.4-3. 実験装置全景と流速計測部

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

u

f

/U

max

y/ W

流入流速

流 路 幅

中心

壁面

: 本実験値( Re=5000) : 菱田らの実験( Re=5000)

: 1/7 乗則による推測値

図3.2.4-4. 本実験装置における試験部への流入速度分布

図3.2.4-5. 液相および固体粒子の速度計測方法

traverse system sheet lamp for visiualization

main flow

branch flow

depth : D

laser doppler velocimetry system (LDV)

(5) 解析および実験の結果と考察

① 液相流れ場

無次元時刻tU3/W1=85.0, 87.5, 90.0, 92.5における瞬時の渦要素分布と速度分布の解 析結果を図3.2.4-6に示す.速度分布のコンタは,主流方向速度ufを表している.合流 流量比はQ2/Q1=2の条件である.解析結果を見ると,合流直後の流れは大きく偏流し,

支流結合部下流側の角部から大規模なはく離渦が発生していることがわかる.合流後 の速度分布は,はく離部で生じる縮流によって一旦加速し,その後拡大して流れ方向 に減速する流れとなっている.これによって,流れ方向への圧力上昇が強まり,合流 部より下流の壁面からは,はく離渦が時々刻々発生している.この非定常な渦の発生・

発達および合体・分離によって,合流後の流れは複雑で非定常性の強い流れになって いる.合流に伴って非定常な渦が発生する現象は,同条件のインクトレースによる可 視化実験においても観察された.

次に,本解析で再現した渦スケールについて検討する.エネルギ散逸を担うコルモ ゴロフスケール は,乱流速度U3IIは乱流強度)と最大渦スケール(ここでは主流 流路幅と仮定)W1=20 mmに基づく乱流レイノルズ数Retを用いると, W1 Ret 34 の よ う に 推 算 で き る . こ こ で , 合 流 後 の 主 流 流 路 中 心 部 で の 乱 流 強 度 を

8 1

Re-

16 0.

I =0.048(本条件でのレイノルズ数Re=(U3W1)/ =15000)と見積もると,

乱流レイノルズ数はRet =(U3 I W1)/ =721となる.よって,本条件での平均的なコルモ ゴロフスケールは W1=0.0072となる.本解析で取り扱った最小の渦要素スケールと,

推算したコルモゴロフスケールとを比較すると,Sheet渦要素サイズはlvs / 7,Blob 渦要素サイズはlvb / 1.6となる.よって,本解析では,コルモゴロフスケールと同 一オーダーの渦要素スケールを再現できていることがわかる.一方,図3.2.4-6 (a)の渦 要素分布からわかるように,流路壁面から導入した渦要素は,周囲の渦要素と合体・

分離を繰り返し,様々なスケールの渦クラスタを形成している.このように,渦要素 群の非線形な運動によって,最大では流路幅スケールの渦クラスタが発生し,周囲の 渦クラスタと干渉しながら流れ場が形成されていることがわかる.また,本解析で得 られた固定点(x/W1=3.5, y/W1=0.5)での液相速度の時間履歴を図3.2.4-7に示す.この 結果から,上述のような様々なスケールの渦クラスタが合流後の流路内を通過するこ とで,変動強さおよび時間スケールの大小入り混じった速度変動が非定常に発生して いることがわかる.以上のように,本解析では,コルモゴロフスケールの小規模な乱 流渦から流路幅スケールの大規模な組織渦まで様々なスケールの渦構造を捉えること ができることを示した.

0 25 50 75 100 -2.5

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

tU

3

/W

1

u

f

/ U

3

, v

f

/ U

3

: streamwise velocity : transverse velocity u

f

v

f

図3.2.4-6. 瞬時の渦要素と液相速度分布

tU3 /W1=85.0

tU3 /W1=87.5 Q1

Q2

tU3 /W1=85.0

tU3 /W1=87.5

tU3 /W1=90.0

tU3 /W1=92.5

tU3 /W1=90.0

tU3 /W1=92.5

(a) Vortex elements (b) Fluid velocity

0 1 2 3 4 5 6 7

-1

x/W1

0 1 2 3 4 5 6 7

-1

x/W1

1 0 u

f /U3

図3.2.4-7. 液相速度の時間履歴(x/W1=3.5, y/W1=0.5)

② 固体粒子に働く外力のオーダー評価

本解析で考慮した固体粒子に働く外力それぞれについてオーダー評価した.各外力 を算出した結果を図3.2.4-8に示す.各時間ステップごとに,流れ場中に存在する全て の固体粒子について外力を求め,全固体粒子に対して算術平均した結果である.グラ フにプロットした各外力は,流体抗力(定常力)の時間平均値で正規化して示した.

その結果,本条件では流体抗力(定常力)が支配的であることがわかった.流れ場 中の全固体粒子を対象に外力を平均化すると,流体抗力(非定常力),揚力,重力,そ れぞれについて,流体抗力(定常力)に対する比は0.17,0.04,0.3程度であった.こ のように,マグナス揚力,サフマン揚力ともに,流体抗力(定常力)に対して二桁以 上小さいことがわかった.

以上の考察から,今回対象とした条件においては,揚力の効果は非常に小さく,実 質的には考慮する必要性がほとんど無いことがわかった.

また,本解析では圧力勾配力を省略したが,合流部近傍に限っては流体抗力(非定 常力のみ)と同程度の大きさの圧力勾配力が働くことがわかった.このことから,圧 力勾配力の考慮方法や,圧力勾配力が粒子挙動に与える影響などについて,今後検討 する必要があると考える.

0 10 20 30 40 50

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8

:外力の合計

:流体抗力(定常力)

:流体抗力(非定常力)

:マグナス揚力

:サフマン揚力

:重力

時間  tU

3

/ W

1

各 外 力   | F |/| F

D

|

timeave

図3.2.4-8. 固体粒子に働く外力

③ 固体粒子のフローパターン

合流流量比をQ2/Q1=1,2,3の三通りに変化させて,固体粒子の混合状態の変化に 着目した.固体粒子の瞬時分布および時間平均濃度分布について,本研究で得られた 可視化実験と解析との比較を図3.2.4-9に示す.可視化実験の時間平均画像は,シャッ タースピードを長くすることで撮影した.また,解析で得られた固体粒子の時間平均 濃度分布(x/W1=1, 2, 3, 4)について図3.2.4-10に示す.

本解析ではOne-way解析に簡易化したため,固体粒子が集中する領域では解析結果 の妥当性が低下することが予想される.そのため,三通りの合流流量比に対して固体 粒子フローパターンが大きく変化する様子を比較検討した.

合流流量比Q2/Q1=1では合流後,下側の壁面上において固体粒子がしゅう動運動す る様子が実験と解析の両者で捉えられた.本研究で取り扱った水とガラスビーズの固 液二相流では,密度差によって固体粒子には常に鉛直下向き方向の重力が作用し,液 相と固体粒子との間で相対速度が生じる.そのため,合流後およそ2W1下流で,固体 粒子の一部が下壁面に沈降する流れとなった.さらに,合流に伴う流れのかく乱作用 が小さく,一旦下壁面まで沈降した固体粒子の多くは再び浮上することなく,下壁面 をしゅう動する流れとなった.また,合流角部に発生した逆流領域では,固体粒子が トラップされ,堆積する様子が実験と解析で捉えられた.このように,Q2/Q1=1の条 件では,流路内における固体粒子の混合状態が悪いことがわかる.

Q2/Q1=2においては,合流による流れの混合が促進されており,合流後4 W1程度下 流において固体粒子がほぼ一様に混合される様子が実験と解析で捉えられた.上述の 流れ場で考察したように,本条件では合流後の流れが大きく偏流し,支流結合部下流 側の角部から非定常なはく離が時々刻々生じることが観察された.そのため,合流後 は非定常性の強い流れとなり,流れのかく乱作用が増大し,固体粒子が流路内全体に 混合された.このように,Q2/Q1=2の条件では,固体粒子の混合状態が良いことがわ かる.

Q2/Q1=3では,合流直後から上側の壁面に固体粒子が激しく衝突する様子が捉えら れた.実験,解析ともに,合流後およそ 0.5~1 W1下流において最も激しい壁面衝突 が発生していた.本条件においてはQ2/Q1=2に比べて,支流からの流入流速がさらに 増大し,支流から混入する固体粒子が持つ鉛直上向き方向の慣性力が大きくなる.そ のため,合流に伴う液相流れの急激な変化に,固体粒子が追従できなくなり,上壁面 への激しい衝突が発生したと考えられる.また,Q2/Q1=2の場合と異なり,下流にお いても固体粒子が上壁面に沿うように壁面衝突を繰り返しながら流下している.この ように,Q2/Q1 が大きい場合には,合流部近傍において,固体粒子が上壁面に大きい 角度で衝突する現象が起こるため,摩耗による破損が生じる可能性も懸念される.

以上から,今回調べた三条件の合流流量比の中ではQ2/Q1=2の条件が,混合を目的 とした装置には適していると言える.このように,合流路を混合装置として利用する ためには,合流流量比によって変化する非定常な渦運動と,その渦からの流体力によ