第 2 章 渦法と粒子追跡法による混相流解析手法と数値モデル
2.4 粒子追跡法による粒子挙動解析
2.4.5 衝突運動
(1) 衝撃運動方程式
固体粒子同士,および固体粒子と壁面との衝突運動に関しては,剛体球粒子を仮定し て,摩擦のある非弾性衝突モデル[25], [26], [82] - [84]を用いる.実験的に得られた反発係数e および動摩擦係数 fを導入することによって,衝撃力ベクトル Jijを反発力の力積と摩 擦力の力積とに分解して導出する.ここで,反発係数と動摩擦係数は,辻ら[82], [84]が用い た既存実験データを参考にした(直径 6mm の鋼球とプラスチック平板との衝突,直径 1mmのポリエチレンペレットとプラスチック平板との衝突).本計算では,e=0.875, f
=0.4を代表値として用いた.
固体粒子i と固体粒子 jの衝突を考えると,それぞれの固体粒子に対する並進と回転 運動の衝撃運動方程式は次式で与えられる.
M ,
*
pi ij pi pi
u J
u ij ij
pi pi pi
pi I
* ω d n J
ω 2 (2.4.18)
M ,
*
pj ij pj pj
u J
u ij ij
pj pj pj
pj I
* ω d n J
ω 2 (2.4.19)
ここで,nijは接触面に対して粒子iから粒子jに向かう法線方向単位ベクトルであり,
衝突後の速度と角速度を* によって示した.また,固体粒子 j を壁面とみなすことで,
固体粒子と壁面との衝突運動方程式となる.
(2) 摩擦のある非弾性衝突モデル
衝撃力Jijは衝撃モデルによって決定される.衝突現象を解析する際,衝突による材料 の塑性変形や破壊現象までを考えると,衝突の解析は非常に困難となる.そこで,これ らの影響を無視し,衝突モデルとして摩擦のある非弾性衝突モデルを用い,以下に示す ような仮定をした.
・ 衝突時の粒子の変形は無視できる.
・ 反発係数eおよび動摩擦係数 f は,衝突条件に関係なく一定である.
・ 衝突の過程において,接触点での滑りがある間,粒子間の摩擦力はクーロンの法則 に従う.
・ 衝突の過程において,接触点での滑りが一旦停止すれば,それ以後は再び滑ること はない.
さらに,二つの物体の衝突現象を,①衝突直前,②圧縮期間,③回復期間,④衝突直 後,の四つの過程に分けて考える.圧縮期間とは,接触が始まり物体間の圧力がゼロか ら増大して最大値に達するまでの期間である.回復期間とは,その後圧力が減少し再び ゼロになる期間である.解析の際,粒子の変形は考慮しないが,上記の四つの期間にお ける粒子速度と回転角速度の変化は考える.
また,衝突の条件については,以下の三つの場合が考えられる.
・ 球のすべりが圧縮期間の途中で止む場合
・ 球のすべりが回復期間の途中で止む場合
・ 衝突の全過程を通じて球がすべる場合
以上示した三つの場合に応じて,それぞれ摩擦のある非弾性衝突モデルに従い衝撃運 動方程式を解く.なお,一つの条件下での計算において,全部で26個の未知数が存在し,
各成分に対する衝撃運動方程式と境界条件の合計 26 方程式を解く.解法の詳細[82]は省 略するが,反発力の力積(法線方向)Jnと摩擦力の力積(接線方向)Jtとに分解して,
衝撃力ベクトルJijは以下のように導出できる.
ij t ij n
ij J n J t
J (2.4.20)
ij ij ij
n eM
J 1 n V
7 ] , 2 1
min[ f ij ij ij ij fij
t eM M
J n V V
ここで,nijは接触面に対して粒子iから粒子jに向かう法線方向単位ベクトルであり,tij
は接線方向の単位ベクトルである.また,Mijは以下に定義する換算質量である.
pj pi
pj pi
ij M M
M
M M : 粒子-粒子の衝突 (2.4.21)
pi
ij M
M : 粒子-壁面の衝突 (2.4.22) Vijは衝突直前の粒子jに対する粒子iの相対速度ベクトルである.
pj pi
ij u u
V (2.4.23)
また,粒子jに対する粒子iの接触点(衝突点)での相対速度ベクトルVfijは以下のよ うに算出できる.
ij pj pj pi pi ij
ij ij ij ij
f V V n n d ω d ω n
V 2
1 2
1 (2.4.24)
以上のように,摩擦のある非弾性衝突モデルに従い衝撃力 Jijを算出することができ,
衝撃運動方程式から粒子iと粒子jについての衝突後の速度と角速度をそれぞれ求めるこ とができる.
(3) 異常反発モデル
実現象においては,固体粒子の非球形形状や管内壁の粗さが衝突角度に微妙な変化を 与え,運動エネルギの方向転換が起こるため,不規則な反発(異常反発)が発生する.
この影響を考慮するため,本解析では仮想壁面モデルを用いる.この方法では,粒子の 衝突面を仮想的に傾斜させ,衝突後の粒子の速度と角速度を求める.
傾斜角には迎え角,入射角,振り角の三種類があり,それぞれ , , で表す. は 異常反発の発生基準となる入射角である.実壁面と粒子が成す実際の入射角θが,この 基準角 以下となるとき,粒子は異常反発を起すと仮定する.
本研究では,辻ら[82] - [84]が提案した と の関係式を用いる.
0
:
: (2.4.25)
ここで, , , はポリエチレンペレットの空気輸送を対象とした実験結果[82] - [84]
を参考にして以下のように与えた.
7o
3 2
1238 91
3 2
r
r Fr F
F .
10o
gD
Fr V :フルード数
V :搬送流体の平均速度 D :流路の代表径
G :重力加速度