第 2 章 渦法と粒子追跡法による混相流解析手法と数値モデル
2.3 渦法による流れ解析
2.3.7 圧力場の計算方法
(1) 境界要素法による圧力場の定式化と計算方法
渦法では,渦度の生成,輸送及び拡散の挙動をラグランジュ的に追跡することで非定 常の非圧縮粘性流れを解析することができ,一般化されたBiot-Savartの式により任意の 位置における速度場は直ちに得ることができる.一方,圧力場は,圧力 Poisson 方程式 を解くことにより,その時刻以前の圧力場の状態とは無関係に,その時刻における渦度 場または速度場から従属的に求めることができる.従来,流れ場の圧力を得るために差 分法や境界要素法などによって,圧力 Poisson 方程式を解く手法が提案されてきたが,
いずれの方法においても流れ場に計算格子を設ける必要がある.そのため,計算格子を 設けずに解析できるという渦法の特徴が損なわれていた.そこで本研究では,Uhlman[49]
により提案された空間に計算格子を設けることなく圧力 Poisson 方程式を解く手法を用 いる.以降では,非定常の非圧縮粘性流体におけるNavier-Stokes方程式の発散をとるこ とにより得られる圧力 Poisson 方程式に,Bernoulli 関数を導入することで得られる積分 方程式を導出する.
回転と並進運動を伴う場における速度は,次式の関係を満たす.
r Ω U W
V (2.3.156)
ここに,V, W, UおよびΩは,それぞれ絶対速度,相対速度,並進速度および回転角速 度を表す.上式を時間で微分すると,次式のようになる.
W Ω r Ω Ω Ω r
U W
V 2
dt d dt d dt d dt
d (2.3.157)
また,相対速度Wの時間変化率は次式のように与えられる.
W W W
W W
2
2
t dt
d (2.3.158)
上式を式(2.3.157)に代入すると次式のようになる.
W Ω r Ω Ω Ω r
U
W W W
W V
2 2
2
dt d dt d
t dt d
(2.3.159)
ここで,以下の式が成り立つ.
Ω W
Ω r r Ω r Ω Ω r W
r Ω U
W
r Ω U W V
2
(2.3.160)
2
2
1 Ω r
r Ω
Ω (2.3.161)
式(2.3.159)に式(2.3.160)および式(2.3.161)を代入すると次式を得る.
2 2
2 2
2 2
2 1 2
2 2 1 2 2
2 2 1 2 2
r Ω Ω r
U
V W W
W
W Ω r Ω Ω r
U
Ω W V W W
W
W Ω r Ω Ω r
U
Ω V W W
W V
dt d dt d
t dt d dt d
t dt d dt d
t dt d
(2.3.162)
したがって,座標系が回転および並進運動を伴う際のNavier-Stokes方程式は,次式の ようになる.
W r Ω Ω r
V U W W
W
2 2 2
1 2 1 2
p dt
d dt d
t (2.3.163)
ここで,Bernoulli関数Hを次式のように定義すると,
2 2
2
2 2
2 U Ω r
p W
H (2.3.164)
Navier-Stokes方程式は,次式のように書き換えられる.
W Ω r
V U
W W 2
dt H d dt d
t (2.3.165)
ここで,上式の発散をとることにより,次式に示すBernoulli関数Hに関するPoisson 方程式を得る.
W Ω r
V U
W W 2 2
dt H d dt
d
t (2.3.166)
V W
2H (2.3.167)
上式に示すPoisson方程式を積分方程式化するために,上式の両辺にLaplace方程式の 基本解Gを乗じて領域V内で積分する.
V
V 2H GdV W V GdV (2.3.168)
任意のスカラーポテンシャルをfおよびgとすると,Greenの定理より次のような関係 式が満たされる.
S
V dS
n g f dV f g f
g 2 (2.3.169)
V S
V g 2f dV gn f dS g f dV (2.3.170)
ここで,f =Hおよびg =Gとすると上式は次式のように変形される.
V S
V G 2H dV Gn H dS G H dV (2.3.171)
更に,上式の右辺第二項にGaussの発散定理を導入して整理すると次式を得る.
V S
S
V dS H GdV
n H G n dS
G H dV H
G 2 2 (2.3.172)
次に式(2.3.168)の右辺を変形する.
V V V
dV G
dV G dV
G
V W
V W
V W
(2.3.173)
上式の右辺第二項にGaussの発散定理を導入すると次式を得る.
V S V
dV G
dS G dV
G
V W
n V
W V
W
(2.3.174)
したがって式(2.3.172)および式(2.3.174)を考慮すると,式(2.3.168)は次式のよ うに変形される.
V S
V S
S
dV G dS
G
dV G H n dS
H G n dS
G H
V W
n V
W
2
(2.3.175)
上式の左辺第一項に含まれる H は,式(2.3.165)より次のように書き換えることが できる.
W Ω r
U V W
W 2
dt d dt d
H t (2.3.176)
上式を式(2.3.175)に代入すると次式のようになる.
V S
S
S V
dV G dS
G n dS
H G
dt dS d dt d G t
dV G H
V W
V W
n
W Ω r
U V W
W
n 2
2
(2.3.177)
上式を整理すると次式のようになる.
S S
V S
V
dS G
dt dS d dt d G t
dV G n dS
H G dV G H
W n Ω r
U n W
V W
2 2
(2.3.178)
ここで,上式の右辺第三項の 2Wは,次式のように変形できる.
W
W W
2W
(2.3.179) また,式(2.3.178)の右辺第三項は次のように書き換えられる.
S
SGn 2WdS Gn W dS (2.3.180)
ここでStokesの定理より,スカラーポテンシャルをf,ベクトルポテンシャルをFと
すると,次の関係を満たす.
S C
S f n F dS f Fdr f F ndS (2.3.181)
上式において,f =GおよびF= ( W )とすると,次式を得る.
S C
SGn W dS G W dr G W ndS (2.3.182)
ここで,CはS上の閉曲線であり任意に選ぶことができる.
0 r W d
CG (2.3.183)
以上のことを考慮して式(2.3.178)を整理すると,次式に示すBernoulli関数Hに関す る積分方程式を得ることができる.
S S
V S
V
dS G
dt dS d dt d G t
dV G
n dS H G dV G H
n W Ω r
U n W
V
2 W
(2.3.184)
上式の右辺は,境界面上の渦度および流れ場に存在する渦度,速度が求まれば既知の 値である.一方,左辺からは影響係数が導出され,Hに関する連立方程式となっている.
以上から,境界面上のHを求めれば,任意の位置での圧力pを計算することができる.
(2) 本論文における圧力計算の取り扱い
粒子に働く外力については次節の粒子挙動解析で詳しく述べるが,流れ場の圧力勾配 によって粒子に働く外力がある.これは圧力勾配力と呼ばれており,次式で表される.
p Vp
press
F (2.3.185)
ここで,Vpは粒子の体積である.圧力pには,重力によって生じる対象場全体に働く 圧力(静水圧)と,流れによって生じる局所的な圧力がある.前者の重力による圧力に ついては,上述した圧力場の定式化で用いたNavier-Stokes方程式に外力項として重力の 効果を加えることによって,式(2.3.185)で粒子に働く外力が計算できる.ただし,本 研究では静水圧の計算は省き,重力による粒子に働く外力については,流体と粒子との 密度差によって個々の粒子に常に働く外力として,粒子挙動解析のみで考慮した.一方,
流れによって生じる局所的な圧力勾配力については,高濃度粒子流や局所的に非常に大 きな圧力変化がある場合以外は,粒子運動に及ぼす影響が小さいため,本論文では無視 した.
以上のように,本論文では,圧力場の計算と粒子挙動の計算とを直接的にカップリン グさせていない.そのため,圧力場は,必要に応じて,その時刻における渦度場または 速度場の解析結果から圧力 Poisson 方程式を解くことによって従属的に求める.また,
上述したUhlman[49]により提案された空間に計算格子を設けることなく圧力Poisson方程
式を解く手法については,既存の研究[46], [49], [50], [53]において妥当性が十分に確認されてい るため,本論文では検証を行わない.